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Fate/Silver or Heart 第十一訓:白夜叉
作者:亀鳥虎龍   2018/01/20(土) 22:08公開   ID:L6TukelU0BA
 鉄子から託された刀を抜き、銀時は似蔵を正面から睨む。

そんな彼に似蔵は、ゆっくりと口を開く。

「俺は目が全く見えんが、光を感じる事は出来る。 アンタはキラキラ光る、鋭い銀色だ。 しかしどうしてかな、アンタの色は……気に入らねぇ!」

互いに走り出し、正面から刃をぶつける。

「何故来た? そんな体で何が出来る? 自分のやってる事が分からないくらい、おかしくなったのかい?」

「そういうアンタも、調子が悪そうじゃねぇか? 顔色悪いぜ、腹でも壊したのか?」

「腹ァ壊してるのは、アンタだろ!」

鍔迫り合いの中、似蔵は銀時の脇腹を左手で強く掴む。

それも、昨夜の戦いで負傷した箇所を。

「ンググググ……」

痛みに耐えながらも、銀時は力を振り絞り、

「ウラァァァァァ!」

似蔵を後ろへと吹き飛ばす。

同時に自身も、後退して距離を取る。

「くくく…おい、どうした? 血が出てるよ」

彼の血で塗れた左手で、その感触を楽しむ似蔵。

しかし似蔵の左頬が、プシュと切れたのだ。

「!?」

「おいおい、どうした? 血が出てるぜ?」

「ククク……ハーハハハハハハ!」

そして再び、二人は刃をぶつけるのだった。





―白夜叉―





 場所は変わって右甲板。

敵の浪人を斬り伏せた桂とキャスターは、ようやく高杉を見つける。

彼は木箱に座りながら、楽しそうに上を眺めていた。

「ヅラ、アレ見ろよ。 銀時が来てるぜ」

二人も上を見上げると、屋根の上で銀時と似蔵が戦っている。

「紅桜相手に一人でやるらしいぞ? ククク…相変わらずバカだな。 生身で戦艦とやり合ってるもんだぜ」

似蔵の動きを観察しながら、桂はゆっくり口を開く。

「もはや、人間の動きではないな。 紅桜の伝達指令に付いて行けず、肉体からだが悲鳴を上げているはずだ。 あの男…死ぬぞ」

「なっ!?」

コレを聞いたキャスターは、驚愕を禁じ得なかった。

紅桜を使う以上、似蔵に掛かる負担は大きい。

この戦いが長引けば、途中で死ぬ可能性も高くなる。

そう察した桂は、視線を高杉へと向けた。

「貴様は知っていたはずだ。 紅桜を使えばどのような事になるかを。 仲間だぞ、なんとも思わんのか!?」

問われた高杉は、当然の如く答える。

「ありゃ、アイツが自分でやったことだ。 アレで死んだとしても、本望だろうよ」






 屋根の上では、銀時と似蔵の激戦は続いている。

「本望だと?」

「そのとおりだ! あの男は今、刀になろうとしているのだ! 高杉という名の篝火を護るための刀に! 再び闇に戻るくらいならば、自ら火に飛び込み、その勢いを増長させることも厭わん男だ!」

そんな中で村田兄妹も、互いの言葉をぶつけ合っていた。

「光に目を焼かれ、最早それ以外見えぬ! なんと…哀れで愚かな男か…しかしそこにはその善も悪も超えた美がある!! 一振りの剣と同じく、そこには美がある!!」

「俺から見りゃ、人殺しをしてる時点で、ちっともゴールデンじゃねぇがな!」

何時もの大声で叫ぶ鉄矢であったが、ライダーは怒りを露わにしている。

しかし鉄子は、悲しげな顔で呟く。

「アレのどこが美しい? あんなものが、兄者の作りたかったモノだとでもいうのか!? もう止めてくれ。 私は兄者の刀で、血が流れるところをもう見たくない!」

妹の説得に対し、鉄矢は真っ向から返す。

「ならば何故、あの男をここに連れてきた!? わざわざ死ににこさせたようなものではないか!! まさか、お前の打ったあの鈍刀で、私の紅桜に勝てるとでも……」

ドガァ!と壁にぶつかった音が聞こえ、村田兄妹もライダーも聞こえた方へと顔を向ける。

「くっ……」

「「「なっ!?」」」

壁に背を向けて倒れたのは似蔵で、コレを見た三人は驚愕を隠せなかった。

そして似蔵を吹き飛ばした相手を、銀時の姿を確認する。

「ハァ…ハァ……」

前回の深手によるダメージが残っているにも関わらず、彼は息を上げながらも立っていたのだ。

「ば、バカな!? 」

この光景に対し、鉄矢は自分の目を疑った。

「紅桜と互角…いやそれ以上の力でやり合っているだと!?」

彼にとっては、信じられない事だ。

紅桜の侵食で、似蔵は体力が衰えている。

しかし紅桜そのものの能力は、データを重ねて数段向上しているハズなのだ。

だというのに、現状はこの有様なのである。

だというのに、現状はこの有様なのである。

「(──まさか!!)」

「うおおおおおお!!」

立ちあがり、再び襲いかかる似蔵。

高速で豪快に紅桜を振るうが、銀時はそれに付いていっているのだ。

「(あの男…紅桜を上回る早さで成長している!? いや…あれは……極限の命のやり取りの中で――)」

似蔵が豪快に薙ぎ払うが、銀時はそれを跳躍で回避し、刀身へと跳び移った。

「(体の奥底に眠る、戦いの甦ったというのか!?)」

刀を突き刺し、似蔵に負傷を負わせた銀時。

「(あれが…あれが、白夜叉!)」

「うぐぅぅぅぅ〜……」

完全に形勢は逆転、銀時が似蔵を追い詰める。

刺された個所から電気が奔り、紅桜が悲鳴を上げているようにも見えてしまう。

「(――消えねぇ…何度も消そうとしても、目障りな光が……消えねぇ!)」

しかし似蔵から、メキメキと不気味な音が聞こえ、

「!?」

それを見た銀時は、驚愕するしかなかった。

「大将!」

コレを見たライダーも、思わず走りだす。

果たして、似蔵に何が起こったのか!?






 その頃、“黒”のバーサーカーと激戦中だったセイバーであったが、

「ごふっ!」

スキルとなってしまった持病の発作で、思わず膝を着いてしまう。

「あ〜、哀れな。 我が歌姫の名のもとに」

“黒”のバーサーカーが爪を振り下ろしたが、

「ハァ!」

ガキィーン!と、何かが彼の爪を防いだ。

「ジークくん!?」

現れたのはジークで、彼の手には刀が握られている。

「貴方、その怪我で!?」

「怪我の心配はない。 少し痛むが」

「しかし…」

「セイバー、貴方も吐血するほど重症のハズだ」

「これは持病です」

「俺より重症だな」

「うっ…」

反論できず、セイバーは怯んでしまう。

しかし、ジークが手を差し出すと、

「今は大丈夫か?」

「ええ、勿論です」

彼女も即座に手を掴み、そのまま立ちあがった。

「いきますよ、ジークくん! 背中を預けます!」

「ああ。 任せてくれ」

そして遂に、反撃の時が来たのである。





「あ〜〜〜、クリスティーヌ。 貴方の為に、私はその二人を殺す」

“黒”のバーサーカーが襲いかかり、ジークとセイバーも立ち向かう。

鋭い爪に対し、二人は刀を振るっていく。

ギンギンギン!と、互いの刃が火花を散らし合う。

「くっ!」

「さっきより、速度が上がってますね!」

するとセイバーは、近くに刺さっていた刀を抜き、

「ハァァァァァ!」

その場で二刀流剣技を放ったのだ。

向こうが両手の鋭い爪なら、こちらも両手の二刀剣術で対抗しようと考えたのである。

戦場で生き残るために、あらゆる戦いを経験した新撰組。

その為、二刀流剣術も例外ではない。

「ジークくん! 時間稼ぎを頼めますか!?」

「っ!? 何をする気だ!?」

「切り札を使います! といえば、分かりますか?」

「……分かった。 しかし、どのくらいだ!?」

「10秒、持ちこたえてください!」

「分かった!」

するとジークは、そのまま“黒”のバーサーカーに立ち向かい、

「ふぅ〜……いきます」

セイバーも、人斬りの顔となったのである。





「うおぉぉぉぉぉ!」

刀を振るい、“黒”のバーサーカーと激戦を繰り広げるジーク。

「無駄だ。 クリスティーヌへの愛がある限り、私は貴方には負けない」

「俺にも、帰りを待っているがいる。 だから、ここで負けるワケにはいかない!」

愛する人の為、狂気の爪を振るう“黒”のバーサーカー。

帰りを待つ恋人の為、真っ向から立ち向かうジーク。

しかし、僅かに“黒”のバーサーカーの方が圧倒していた。

「フン!」

「ぐっ!」

力の押し合いで負け、そのまま吹き飛ばされてしまったジーク。

だが、その時である。

「10秒経過。 感謝します、ジークくん」

そう言うとセイバーは、一気に跳び込んで来たのだ。

「一歩音越おとごえ…二歩無間むかん……」

跳び込んだだけで距離が縮まっていき、

「三歩絶刀ぜっとう!」

セイバーは目に見えぬ、高速の突きを放ったのだ。

無明三段突むみょうさんだんき!」

すれ違い様に放たれた突きは、“黒”のバーサーカーの霊核を3度も貫く。

「なっ―――!?」

驚きを隠せない“黒”のバーサーカーであるが、肉体が光の粒子と化し、

「あぁ…私の負けか……。 クリスティーヌ、私は貴方の元へ…」

その場で消滅したのであった。





 “黒”のランサーと激戦を繰り広げていたバーサーカー。

「ほらよ!」

「くそっ!」

飄々とした彼の性格に、流石に翻弄されていたが、

「手助けは必要かい?」

「手を貸すよ!」

ユーリがニバンボシを握り締め、カロルがハンマーを持って歩み寄って来た。

「お前等…」

「勘違いすんなよ? 似蔵にやられた借りを、コイツで返すだけだ」

「ハッ! そういう事にしてやるよ」

「おいおい、今度は3対1かよ。 オジサン的にはきついぜ」

「いいから掛って来いよ、オッサン」

「いっくぞぉぉぉ!」

「うおぉぉぉぉ!」

三人は走り出し、“黒”のランサーと激突するのである。





 三人の剣とハンマーに対し、“黒”のランサーは槍を巧みに振るう。

「ちょっ!? 少しは手加減してくんない!? マジでオジサンにはキツイんだけど!?」

真っ向勝負で相手は三人、流石に彼も苦戦を強いられてしまう。

「んじゃ、俺等は一旦さがるわ」

「うん!」

ユーリとカロルが一度後ろへ跳ぶと、バーサーカーが猛攻を仕掛けた。

「悪いがランサー! 俺達は負けるわけにはいかねぇんだ!」

バーサーカーの一撃の重さが重くなっていき、

「ウオォォォォォォ!」

咆哮と共に、鬼が如き一撃を放ったのだ。

「俺がいる限り! 真選組は……新撰組は不滅だ!」

この一撃が、“黒”のランサーの槍を弾き、

「ここが!」

「しまっ――」

二撃目で太刀傷を負わせる。

「俺が! 新! 撰! 組だぁぁぁ!」

そして腰の銃を構え、“黒”のランサーの胸を撃ち抜いたのだった。

「マジかよ…。 宝具を使うヒマもなかったぜ」

「新撰組は戦いに置いて、まず生き残る事を第一に考えてるからな。 奥の手を出す暇も与えねぇよ」

「生き残るのが第一か…。 ハハッ、それは俺も同感だね。 あーあ、真っ向勝負なんざ、俺の性に合わねぇわ。 でも、楽しめたぜ」

負けたにも関わらず、“黒”のランサーとても楽しそうな顔を見せる。

そして最後は、その場で消滅したのであった。

「つーかテメェ等、加勢に来といて戦ってねぇだろうが」

「おう。 背後の邪魔もんを片付けたとこだったんでな」

「う、うん。 そうだね」

ユーリとカロルの背後には、攘夷浪士達がその場で倒れていたのでる。






 アサシンは現在、“黒”のアーチャーに苦戦していた。

杖に仕込まれたサーベルに対し、彼は愛刀の『物干し竿』で対抗する。

しかし“黒”のアーチャーは、一度後退して棺桶型のマシンガンを放つ。

乱れ撃つ弾丸を、アサシンは刀身で弾き落とす。

それだけならまだ良い。

だが“黒”のアーチャーの恐ろしさは、その棺桶だった。

機関銃だけでなく、ミサイルまで飛んで来たのだ。

「面妖な!」

「さらばだ、“白”のアサシン」

ミサイル弾は、アサシンへと飛んで行く。

「(すまぬ、勲殿。 私はここまでだ)」

自身の死を覚悟したアサシンだが、まさにその時である。

チュドーン!と、 ミサイル弾が爆発したのだ。

それも、彼に命中する前に。

否、何者かに破壊されたのだ。

破壊した張本人は、素早い動きで移動し、

『クワー!』

フィリップの手の上に着地したのだ。

その正体はファングメモリで、フィリップはその場でファングを変形させる。

鼻先に角がある恐竜の頭部が装飾になっているガイアメモリと変わり、

《FANG》

「いくよ、相棒」

「待ってたぜ!」

《JOKER》

事務所のソファーで待機中の翔太郎も、ジョーカーメモリを構える。

「「変身!」」

翔太郎がドライバーの左スロットにメモリを挿し込み、メモリはフィリップのドライバーの左スロットに転送された。

同時に、翔太郎の肉体はその場で横に倒れる。

転送されたメモリを奥へ挿し込み、フィリップはファングメモリをドライバーの右スロットに挿し込む。

《FANG・JOKER》

そしてスロットを展開させ、彼はその姿を変えた。

白い右半身に黒い左半身、全身が刃のような鋭利さを見せる。

フィリップの肉体を基本ベースとした形態、仮面ライダーW・ファングジョーカーが降臨した。





「フィリップ殿!? なんと、そのような姿になれるとは」

Wを初めて見るアサシンも、こればかりは驚く。

「アサシン。 ここは僕等に任せれくれ」

「すまぬ。 では私は、邪魔ものを蹴散らすとしよう」

すれ違うように、アサシンはWの背後にいる敵へ向かう。

そしてWも、“黒”のアーチャーへと顔を向ける。

「面白い姿だね。 私は“黒”のアーチャー、真名はジェームズ・モリアーティだ」

『ジェームズ・モリアーティ!? あの『シャーロック・ホームズ』シリーズで有名な!?』

「“犯罪界のナポレオン”か。 僕も『ホームズ』シリーズはよく読むが、本人に会えるとは思わなかった」

「フフフフ……サインが欲しいかね?」

「もしワケないが、僕等は探偵。 つまり、貴方を倒す側だ」

「それは残念だ」

『お喋りは終わりだ。 いくぜ、フィリップ!』

「ああ。 行こう、翔太郎」

「『さあ、お前の罪を数えろ!!』」

「できるものなら、やってみたまえ」

二人で一人の探偵と、犯罪界のナポレオン。

時空を超えた対決が、始まったのである。





 杖のサーベルで襲いかかる“黒”のアーチャーに対し、

《ARM FANG》

ファングメモリの角『タクティカルホーン』を一度弾いたWは、右手首の刃『アームセイバー』で応戦する。

ガキィーン!と、ぶつかり合った刃が、火花を散らしだす。

「ほう、中々…。 では、こういうのはどうかね?」

後退した“黒”のアーチャーは、棺桶のマシンガンを放つ。

放たれた弾丸であったが、Wはアームセイバーで弾き落とす。

「では、これはどうかな?」

今度はミサイル弾を放つが、再びWはタクティカルホーンを二回弾く。

《SHOULDER FANG》

右肩に出現した刃『ショルダーセイバー』を投げ、ミサイル弾を全て破壊した。

「うそぉん!?」

これには“黒”のアーチャーも、驚愕を禁じ得ない。

この瞬間を見逃さなかったWは、咄嗟に跳び込み、

「はっ!」

その場で膝蹴りをはなった。

「ぐっ!」

「まだだよ」

更に拳を二回放ち、回し蹴りを豪快に叩き込んだ。

「デヤッ!」

「ぐはっ!」

吹き飛ばされた“黒”のアーチャーは、再び棺桶を構える。

「こうなったら、宝具ジョーカーを使わせて貰うよ」

『ならこっちも! 決めるぜ、フィリップ!!』

「ああ。 コレで決まりだ!」

宝具を解放する彼に対し、Wもタクティカルホーンを三回弾く。

《FANG・MAXIMUM DRIVE》

「はぁぁぁぁぁぁ……ハッ!」

終局的犯罪ザ・ダイナミクス・オブ・アン・アステロイド!」

右足に刃を出現させたWは飛び上がり、“黒”のアーチャーは宝具を放つ。

棺桶から魔力光が放たれるが、Wはそのまま体を高速回転させた。

「『ファングストライザー!』」

回転しながら急降下していき、魔力光線はそのまま切り裂かれていく。

そして回し蹴りの要領でWは、必殺の刃を“黒”のアーチャーに叩き込んだのだ。

これと同時に、恐竜の頭部を模したオーラが牙で噛み砕く。

ズバァーン!と、必殺技の『ファングストライザー』が決まり、

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」

“黒”のアーチャーも吹き飛ばされてしまったのだった。

「うぐっ…なんという一撃だ。 霊核にもダメージを受けたよ。 まさか、私が負けてしまうとは……何がいけなかったのか……」

「貴方と違い、僕には相棒がいる。 ただ、それだけなのさ」

仮面の奥で笑うWに対し、“黒”のアーチャーも不敵に笑ってしまう。

「そうか…相棒か……。 思えばホームズも、ワトソンという相棒がいたから、多くの事件を解決した……。 まさか、ホームズ以外の探偵に負けるとは……。 でも、楽しかったかも…ね」

満足した顔で、“黒”のアーチャーは消滅する。

「ジェームズ・モリアーティか……」

『あの犯罪界のナポレオンが相手だったとはな。 ホント、厄介な相手だったぜ』

そしてWも、彼に敬意を評したのであった。






 その頃、船内の方では、

「そらっ!」

「ヘン!」

ランサーが“黒”のライダーと交戦中であった。

「ちっ! テメェ、意外と強ぇじゃねぇか」

「当然でござる! このエドワード・ティーチ、伊達に“黒”のライダーとして召喚されたワケではないでござる」

「ほざけ!」

再び槍を振るったランサーであったが、“黒”のライダーは当然のように避ける。

「フハハハハハ! ざ〜ね〜ん☆ そんなへなちょこ攻撃は、拙者には無意味でござる。 ランサーは殿には犬の真似してワンワン鳴くのがお似合いでござる♪」

調子に乗って、“黒”のライダーは挑発をしたのだが、

「ほう……よく吼えた、“黒”のライダー」

「へ?」

ランサーの中で、何かがプツンと切れたのだ。

「なら、我が呪いの朱槍しゅそうをお望みのようだな」

朱い槍が魔力で強く光り出し、彼は両手で強く握り締める。

「その命、貰い受ける!」

放つのは、因果逆転の呪いを持つ、必殺の宝具。

付き穿つ刺棘の槍ゲイ・ボルク!」

ドスン!と、槍の矛先は“黒”のライダーの心臓を捉えた。

「が……」

「じゃあな、 “黒”のライダー。 何か言いてぇことはあるか?」

「じゃあ、最後に……」

そして最後に、“黒”のライダーは呟くのである。

「可愛い美少女達の、脇やおへそをペロペロしたかったでござ――」

「気色悪いわぁぁぁぁ!」

内容が内容だけに、ランサーが思わずドガッと蹴り飛ばし、

「あ〜〜〜〜!」

“黒”のライダーはそのまま消滅したのであった。






 アーチャーとジュディスは、“黒”のアサシンと交戦していた。

複数の個体を持つ彼等を前に、アーチャーは火縄銃で応戦する。

ジュディスも槍を振るい、何人かを薙ぎ払う。

しかし、倒してもキリがなかった。

「ちっ!」

「無駄だ、“白”のアーチャー。 貴様が仲間と連携を取ろうとも、我等には勝てん」

人海戦術を得意とする“黒”のアサシンは、勝利の笑みを浮かべている。

「そうか……ならば」

だが、その時であった。

「ジュディス、儂の後ろに跳べ!」

「!?」

この叫びにジュディスは、即座にアーチャーの背後に跳ぶ。

「貴様は、魔王の怒りを買った。 是非もなしじゃ」

ギロリと睨んだアーチャーの周囲に、無数の火縄銃が出現した。

その数、“黒”のアサシンの数倍以上。

「三千世界の屍を晒すが良い……天魔轟臨!」

そして銃口から、無数の弾丸が放たれた。

「これが魔王の“三千世界さんだんうち”じゃあっ!!」

「なにっ!?」

「しまっ――」

目には目を、数には数で挑んだアーチャー。

「「「「グアァァァァァ!」」」」

コレを浴びてしまった“黒”のアサシンは、群で消滅してしまった。

「見たか! これが第六天魔王、織田信長の実力じゃ」

「お見事ね」






「ふんぐぉぉぉぉぉぉ!」

「フン!」

新八と鍔迫り合いをしていた武市であったが、

「ふむ、道場剣術は中々の様ですが、真剣での斬り合いは初めてですね? 震えていらっしゃいますよ?」

彼の指摘通り、新八は刀を持っている手が震えていた。

「こ、これは酔剣と言ってな! よ、酔えば酔うほど強くなる幻の……」

「フフフフ…無理はせぬほうがいいですよ?」

その強がりを笑う武市であるが、刀を持っている手が震えている。

「ち、因みに私の剣技は、『志村剣』といって、あの志村けんがコントに使う……」

人の事を偉そうに言いながら、彼自身も虚勢を張っていたのだ。

「いや、お前もかいぃぃぃぃぃ!」

新八も当然、即座にツッコミを入れる。

「私はね、どっちかっていうと頭脳派タイプだから、こういうのはあの猪女にいつも任せてるんです」

「誰が猪っスかァァ!! そのへっぴり腰に一発ブチ込んでやろうか!」

近くで神楽と戦っているまた子の怒鳴り声が響く。

「実践は度胸っス先輩!! こっちが殺らなきゃ殺られるのみっスよ!」

銃口を向け、弾丸を容赦なく放つまた子。

それを見ながら神楽も、かわしながら近付いて行く。

得意の接近戦に持ち込もうとする神楽と、彼女を近付けんとするまた子。

先程の二人とは逆に、互角の勝負を繰り広げていた。

足元に放たれた弾丸を避けるため、神楽は空中へと跳ぶ。

しかし、これがまた子の狙いであった。

「(かかった! 空中では身動きとれまい! 死ねぇ!)」

バァン!と放たれた弾丸は、神楽へと向かっていく。

放った弾丸は3発で、見事にすべて命中。

「(った…)」

勝利を得たと確信したまた子だが、彼女の予想は多く外れてしまう。

「にっ!」

「なっ!?」

なんと神楽は、両手の指と歯で弾丸を受け止めたのだ。

驚くまた子であったが、神楽はそれを見逃さなかった。

「ふん!」

「がっ!」

一度着地すると、足払いで彼女を転ばす。

そして馬乗りになり、神楽は渾身の一撃を放とうとした。

「私をろうなんざ、百年早いネ! 小娘ェェェ!」

「くっ!」

自身の敗北を覚悟したまた子であったが、その時である。

ボカァン!と、天井が崩壊したのだ。

「「えっ?」」

全員が驚くが、何かが蠢いている。

「――っつ」

するとライダーが、頭から血を流しながら立ち上がった。

「ライダーさん!?」

「し、新八か?」

「一体何が!?」

驚く新八であったが、ライダーが何かを思い出す。

「そうだ、大将は!?」

誰かを探すように、彼は辺りを見渡した。

まさにその時、あるものが彼等の目に映ってしまう。

そこには、変わり果てた似蔵が立っており、

「銀さん!」

「銀ちゃん!」

「大将ォ!」

彼から伸びる触手に、身体を縛られた銀時の姿があった。


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■作者からのメッセージ
 次回で紅桜編の最終話です……多分。

新八「多分かよぉぉぉ!」
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