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Fate/Silver or Heart 第十七訓:柳生九兵衛
作者:亀鳥虎龍   2018/02/08(木) 23:21公開   ID:qb9zcFDYebk
 江戸の何処かにある廃墟。

「クククク…遂に見つけたぞ」

白いスーツ姿の男が、不敵な笑みを浮かべる。

彼こそが、翔太郎やユーリ達をこの世界に飛ばした張本人だ。

「遂に、大聖杯の居場所が分かった。 フハハハハハハハ!」

果たして彼の目的は何だろうか?

そして、大聖杯を求める理由とは?

謎が謎を呼ぶのであった。





―柳生九兵衛―





 真選組の道場にて……、

「ふぅ……」

怪我も回復し、ジークは鍛錬に復帰する事が出来た。

「ん?」

道場には彼とセイバーの二人のみで、他は誰もいない。

「今日は随分と、静か過ぎじゃないだろうか?」

「あ〜……アレが原因ですかね」

「アレ?」

首を傾げるジークに、セイバーは当然のように答える。

「実は近藤さん、とある星の女性とお見合いすることになったんだそうです」

「そうなのか?」

「ええ。 でも、近藤さんはお妙さんに思いを寄せてるのは、知ってますよね?」

「一方的だが」

「ですがね、長官の松平さんの顔に泥を塗るワケにもいかないので」

「お見合いをする事になったのか?」

「ええ。 明日のお昼辺りとか」

「でも、あの人は人望が厚いから、局長という地位に就いているのだろう? 真選組の人達を見れば分かる」

「そうですね。 ストーキングさえ止めれば、普通に良い人なんですけどね」

そう思いながらも、二人は鍛練を続けたのだった。






 深夜、路地の方では……、

「ガハッ!」

「ニトクリス殿!」

キャスターが血を吐き、桂が叫んでしまう。

「終わりだ、“白”のキャスター」

目の前の敵が剣を振るうが、桂が刀で防いだ。

「ングググ……」

「ほう、我が刃を防ぐとは。 大した腕だ」

「貴様、何者だ!」

桂の問いに対し、相手は答えた。

「私は……“黒”のセイバー」

「“黒”!?」

「“黒”と言っても、我がマスターは鬼兵隊の仲間ではない」

「何が目的だ!」

「大聖杯だ。 その為に、まずはサーヴァントを倒す」

豪快に剣を振るった“黒”のセイバー。

それを防いだ桂であったが、その一撃に耐えられず、

「うぐっ!」

吹き飛ばされてしまい、電柱へとぶつかる。

「霊核は既に破壊した。 “白”のキャスターは、じきに消滅する。 別れの言葉を交わす猶予はくれてやろう。 さらばだ」

“黒”のセイバーが立ち去ると、桂はすぐさまキャスターの元へと走り出す。





「ニトクリス殿!」

駆け寄った桂は、キャスターを抱きかかえる。

「しっかりしろ! エリザベスがすぐに来る! そうすれば医者に――」

「無理です」

「!?」

「霊核を破壊されました。 後は、消滅を待つだけです」

「………」

「憶えてますか? 初めて出会った時の事を――」

桂がキャスターを召喚した日の夜。

――我が名はキャスター、ニトクリス。 問いましょう、貴方が私のマスターですか?

――そうだ。 俺の名は桂小太郎、好物は蕎麦だ。

――何で好物を言ったんですか!? 食わせろというのですか!?

――では、宜しく頼むぞ。 ニトロクリス殿。

――ニトクリスです! 何で液体爆薬みたいな名前になってるんですか!?

――失敬、間違えてしまった。 ニートクリス殿。

――誰がニートですか! こう見えても生前、女王として働いてました!

――すまぬ、覚えにくい名前であったのでな。 気を着けるとしよう、ク●トリス殿。

――名前が下ネタになってるじゃないですか!?

――そうカッとなるのでない。

――誰の所為ですか!

――ともかく、宜しく頼むぞ。 ミートボール殿。

――もはや一文字も合ってねぇぇぇ!

桂の異常なまでの天然ボケに、ツッコむしか出来なかったキャスター。

「ホント…こんなマスターで、よく生き残れたものですよ」

「ああ、全くだな」

身体が消えかかっていき、彼女は涙ながらにこう言った。

「ですがマスター。 貴方と過ごした日々、とても楽しかったです」

「そうか……」

すると桂は、今ある令呪を使用する。

「桂小太郎の名の下に、我が盟友に全ての令呪を持って命ずる。 ニトクリス殿……今までご苦労だった。 ゆっくりと……安らかに眠ると良い」

「…はい、マス…ター……」

安からな笑顔を見せ、キャスターは消滅した。

『桂さん…』

駆けつけたエリザベスも心配するが、桂はゆっくりと立ち上がる。

「なにも言うな、エリザベス。 俺達にはやるべき事が残っている」

そして彼は、固く決意したのだ。

「聖杯を見つけ、破壊するぞ」





 翌日、万事屋の事務所にて、

「もしもし」

鳴り始めた電話へと歩み寄り、受話器を手にしたジーク。

『あっ、ジークくんですか?』

「セイバーか?」

『早朝にすみません。 事務所に来て貰えないでしょうか? 仕事の依頼で』

「俺一人でか?」

『出来れば、多数でお願いしたいのですが…』

「分かった」

ガチャンと受話器を戻し、「ふぅー」と一息つく。

「誰からですか?」

「セイバーだ。 仕事の依頼を受けて欲しいとか」

「珍しいですね」

「出来れば多数で来て欲しいそうだ」

「では、私が同行します」

そう言うと、ジャンヌが笑みを見せながら軽く挙手する。

「ヒマだし、俺も行くわ」

「私も」

「あっ、僕も!」

「ワン!」

するとユーリとジュディス、カロルとラピードも同行を志願した。

「じゃあ、他は?」

ジークが尋ねるが、ランサーがこう言ったのだ。

「他っつっても、銀時と新八、そんで神楽の嬢ちゃんも仕事でいねぇしよ。 魔人野郎と探偵の嬢ちゃんもここ出てるしよ。 翔太郎とフィリップもいねぇしよ」

「………それもそうだな」

「俺ぁ、ここで将棋でもしてるぜ」

「新八が実家から持って来てくれたんじゃ。 儂も将棋は嗜んでおったから、良い時間潰しじゃ」

「おーおー。 将棋たぁゴールデンじゃねぇか。 魔王の姐さん、俺と一局打たねぇか?」

将棋を嗜むサーヴァント3人と定春を残し、ジーク達は事務所を後にしたのだった。






 事務所を出てから30分後、真選組の事務所にて、

「すみません、仕事の依頼を頼んで」

「いや、構わない。 これも仕事の内だ」

セイバーが持ち込んだ仕事とは、資料の片付けである。

「それにしても、今日はやけに人気ひとけが少なくないか?」

ユーリが呟くと、ジーク達も辺りを見渡す。

明らかに静寂を絵に描いたような状況であった為、違和感を覚えてしまったのである。

「でしょうね…。 ほぼ全員、自室で寝込んでますから」

「病気か何かかしら?」

ジュディスが問うと、セイバーは首を横に振った。

「それがですね……」

そして彼女は、こうなった理由を説明したのである。

お妙に近藤の見合いを止める様に頼みに行った隊士達。

だが当然、了承される筈も無くボコボコにされた。

そのボコボコにされた最中に、一人の少年が現れたのだ。

これ以上は無駄と悟った土方は、隊士達に帰ることを伝える。

そして少年が未成年であった為、土方は警察としての仕事で彼を連れ出そうとした。

だが少年は反抗し、土方や隊士達に襲い掛かったのだ。

その剣技は速く、隊士達はその場で倒されてしまう。

土方は自身の刀で受け止めたが、刀はヒビが入ってしまう。

更にその少年は、お妙の知り合いらしい。

「少年の名は柳生九兵衛。 幕府お抱えの名門一族の跡取りで、お妙さんとは幼馴染だそうですよ」

資料を渡され、ジーク達は内容に目を通す。

名前や身長、更には住所先も書かれている。

「ん?」

するとジークは、住所の欄に目が入ってしまう。

「この住所……」






 報酬を貰い、ジーク達は屯所を後にする。

「ジークくん、どうしましたか?」

ジャンヌが尋ねると、ジークもそれに答えた。

「いや、あの柳生九兵衛の住所先なんだが…」

予めメモした紙と、ある物を取り出す。

それは入院していた時、看護師から貰ったメモである。

彼女の住居先が書かれており、柳生の住所先を比べた。

柳生と看護師、二人の住所先が同じであったのだ。

「間違いない、同じだ」

「えっ!?」

「どういう事だよ!?」

「明日、柳生家に行こうと思う」

「一人で行くのか?」

「…それは……」

流石に戸惑ったジークであったが、ユーリがニヤリと笑う。

「俺も同行するぜ」

「え?」

「そもそも俺、名門とかそういうのは気に食わないんでな」

「私も行こうかしら。 面白そうだし」

「何でそうなるのかな? 心配だし、僕も行くよ」

「ジークくんが心配ですから、私も同行します」

「ワン!」

彼に続くように、ジュディス、カロル、ジャンヌ、ラピードが同行すると言ったのだ。

それを聞いたジークは、小さな笑みを見せる。

「ありがとう。 じゃあ、明日に出発だ」

「はい」

「おう!」

「ええ」

「うん」

「ワン!」

明日の準備に備える為、ジーク達は事務所へと戻るのであった。






「ん……」

翌日、ジークはゆっくりと布団から起き上がった。

時刻は9時15分。

着替えを終え、リビングへと入ると、

「あっ、おはようございます」

そこにはセイバーが、お茶を啜りながら手を振っていたのだ。

「セイバー?」

「唐突にすみません。 実は、仕事の依頼がありまして」

「すまない。 今日は予定があるんだが――」

「柳生家に行くんですよね?」

「っ!? どうしてそれを!?」

「昨日のジークくんの反応に、ちょいと違和感を覚えましてね」

「……それを確かめにここに?」

「はい。 どうやら、当たりのようですね」

「はぁ…」

ニヤリと笑うセイバーに、ジークは隠し事は無理だと確信する。

「それで、依頼というのは?」

「これです」

「ん?」

セイバーが紙を差し出し、ジークもそれを受け取った。

書かれた内容を呼んだ瞬間、彼は驚きを隠せない顔となる。

「セイバー、まさかコレって!?」

「そのまさかです。 上の許可は得ているので、こちらの準備は完璧です」

「分かった。 すぐに準備する」

後から起きたジャンヌ達に状況を説明し、ジーク達はすぐに準備に取り掛かった。





 柳生家の屋敷に着いたジーク達。

正確にはジークを筆頭に、ジャンヌ、ユーリ、ジュディス、カロル、ラピード、翔太郎、フィリップ、ネウロ、弥子、ライダー、アーチャー、ランサー、バーサーカー、アサシン、セイバーの14人+1匹である。

「何で翔太郎達まで?」

「銀さんの様子がおかしくてな、昨日から気になってたんだよ」

「事情を尋ねたんだけどね……」

そう言ってフィリップは、昨日の事を話したのだ。

正確には彼も聞いた程度なので、詳しくは知らない。

依頼先の屋敷の屋根を修理していた万事屋トリオ。

その屋敷では、近藤が見合いをしていた。

近藤は見合いの席で、天人のバブルス王女となんと上手く行ってしまう。

しかし万事屋トリオ(正確には銀時と神楽)が、バブルス王女を怒らせて見合いはめちゃくちゃになってしまうのだ。

更に別室でお妙と九兵衛が居たらしく、しかも彼はお妙に無理矢理キスをしていた。

そしてお妙は、その場に居た近藤や銀時、新八、神楽に「さよなら」と告げて去ってしまった。

その目に涙を溜めて……。

お妙はそのまま柳生家へ行ったらしく、家には帰っていないのだとか。 

「しかも二人は、数日後に結婚するらしい」

「そうだったのか……」

一行は門を潜ったが、そこで信じられないものを見てしまう。

「なっ!?」

「なにコレ!?」

そこには柳生家の門下らしき男達が、再起不能の状態となっていたのだ。

「おいおい、コイツはどうなってやがる!?」

「この怪我の酷さを考えると、相当な私怨が籠ってるようだね」

「う……」

すると、男の一人が意識を取り戻した。

「おい、しっかりしろ!」

「誰にやられたんですか!」

バーサーカーとセイバーが問うと、男はこう答えたのだ。

「め、メガネの小僧…と……ゴリ…ラ……」

それだけ告げると、男は再び意識を失う。

どうやら下手人は、メガネをかけた少年とゴリラのようだ。

「……土方さん。 私、下手人の正体が分かった気がします」

「気が合うな、沖田。 俺も同じだ」

深くため息をしたセイバーとバーサーカーは、すぐさま踵を返す。

「お前等、突入するぞ」

バーサーカーがそう言うと、ジーク達も屋敷へと向かう。

するとラピードが、何かのニオイを嗅ぎ取った。






「どうした、ラピード!?」

「ワン!」

走り出したラピードを追うと、屋敷の一室へと着いた、

その中を見ると、とんでもないものを目にしてしまう。

「………オメー等、何してんだ?」

「へ?」

ユーリが尋ねると、ある人物が反応する。

そこには銀時、新八、神楽、近藤、土方、沖田の6人がいた。

「げぇぇぇ!? 何でお前等がここに!?」

「そりゃこっちの台詞だよ」

「もしかして、下手人の正体って……」

「貴方達の事だったの?」

「ラピードが嗅ぎ取ったニオイの正体って、アンタ等のだったのか……」

ジーク達が呆れてしまう中、ある人物が声をかけたのだ。

「おや、ジークさんにジャンヌさんじゃないですか」

「あっ!」

「貴女は!?」

それはジークに住居先を渡した看護師で、名を呼ばれた二人も反応する。

「お久しぶりですね。 しかし、どうしてここに?」

「あー、そうでした。 実は私達、柳生九兵衛氏に用があって来たんです」

「ほう、僕に何か?」

そう言って黒髪のポニーテールに、左目に眼帯を着けた少年が前に出た。

彼こそお妙の許嫁、柳生九兵衛である。

「初めまして。 真選組一番隊特別副官をしている者で、セイバーと申します」

「柳生九兵衛だ。 それで、僕に用とは?」

九兵衛が問うと、セイバーが笑顔でこう言った。

「アナタ、○月×日の深夜、『スナックすまいる』に行ってますね? あそこ、未成年は入店禁止なんですよ?」

「……え?」

「そこで注意しようとした警察関係者も襲ってますね? 襲われた人達からは聞いてますよ?」

「……いや…その…」

「因みにお店の防犯カメラにも、ちゃ〜んと映ってましたよ?」

「なっ!?」

この反応を見たセイバーは、「やっぱり」という顔をする。

そして視線で伝え、それを見たバーサーカーが一枚の紙を突き出しながら叫んだ。

「柳生九兵衛! 未成年法違反、そして暴行罪の罪で逮捕する!」

彼が持っているのは逮捕状で、コレを見た九兵衛は顔を青ざめてしまい、

「オイィィィィ! アイツ等、普通に仕事で来てたよぉぉぉぉ!」

本家新撰組の仕事ぶりに、流石の銀時も驚きを隠せなかったのだった。







最終章・柳生&“赤”の陣営編――スタート!


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■作者からのメッセージ
 遂に最終章、スタートです。

そして“白”のキャスターが、ここで敗退となりました。

桂「見ててくれ、ストロング殿。 必ず仇は討ってやる!」

ニトクリス「ですから! ニ・ト・ク・リ・スですってば!!」
テキストサイズ:10k

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