前回のあらすじ。
お妙を訪ねに、柳生家を訪れたジーク達。
そこで銀時達が、道場破りとして九兵衛と対面していた。
だがその最中でバーサーカーが、逮捕状を見せながら叫んだ。
「柳生九兵衛! 未成年法違反、そして暴行罪の罪で逮捕する!」
逮捕状を見せられ、九兵衛は顔を青ざめてしまい、
「オイィィィィ! アイツ等、普通に仕事で来てたよぉぉぉぉ!」
本家新撰組の仕事ぶりに、流石の銀時も驚きを隠せなかったのだった。
―激突! “白”vs“赤”!!―
逮捕状を前にし、九兵衛は顔が青ざめたままだ。
まさかあの深夜の一件が、ここまで
大事になるとは思ってなかったのだろう。
「若! ここは私にお任せを!」
「東城…」
長い髪に細めの男が、セイバーの元に歩み寄る。
彼の名は東城歩。
九兵衛の側近で、彼の守護する『柳生四天王』のリーダー。
「柳生四天王の東城歩と申します」
「真選組一番隊特別副官、セイバーと申します」
「若の罪は私が被ります。 幾らで引き受けますか?」
懐から小切手を出し、セイバーに差し出す東城。
「堂々と買収しに来やがった!?」
これには銀時もツッコミを入れるが、セイバーも懐から手錠を取り出す。
ガチャリと東城の片手に手錠をかけると、彼女は笑顔でこう言った。
「警察を買収しようとした罪で逮捕です♪」
「えっ!?」
「しかも効果ゼロだし、笑顔で手錠を掛けやがったよあの
娘!」
不利を感じた東城は、すぐさま小走りで立ち去る。
そして九兵衛の元へと駆け寄り、彼に一礼したのだ。
「若、やれるだけの事はやりました!」
「どこがだ!」
これには流石の九兵衛も、その場でツッコミを入れる。
「さて、お縄を頂戴しようじゃねぇか…。 それと……」
不敵な笑みを見せるバーサーカーであったが、視線を銀時達6人に向けた。
「テメェ等もしょっ引くから、覚悟しとけよ!」
「「「「ええええええ!?」」」」
コレを聞いた新八と銀時、土方と沖田は思わず驚愕してしまい、
「待つアル! 私達は姉御を取り戻しに来ただけアル!」
「そうだぞ、歳三さん! 俺達には捕まる理由がねぇ!」
神楽と近藤も、すぐに抗議に入ったのだ。
「道場破りに暴行罪、コイツは立派な犯罪だろうが!」
「……ですよねぇ〜」
しかし堂々と返され、反論すらできなかった。
「なんて恐ろしい男だ」
これには東城も、顔を引きつらせながら呟くのである。
バーサーカーが銀時達と口論する中、セイバーが九兵衛に声をかける。
「では九兵衛さん、大人しく逮捕されて下さいな」
「ま、待ってくれ!」
「はい?」
慌てた表情で、九兵衛は彼等にこう言ったのだ。
「新八君達は妙ちゃんを連れ戻しに、キミ達は僕を逮捕しに来たんだろ?」
「だから?」
「先程彼等が……」
――剣で生き、剣で死ぬのが侍でさぁ。 だから…
――女も剣で奪えよ。
「――と言ったんだ」
「つまり?」
「キミ達も剣で挑み、勝利したら、僕も大人しく捕まろう」
「それ、見苦しい提案じゃないですか?」
セイバーの言うとおりで、九兵衛も内心は無理があると感じていた。
「まあ…サーヴァントの気配が、この屋敷中に感じられますから、丁度良いかもしれませんがね」
「気付いていたか。 この屋敷にいるのは、“赤”の陣営のサーヴァント。 僕や四天王も、そのマスターの権利を持っている。」
「えっ!?」
「マジでぇぇぇ!?」
それを聞いた銀時は、思わず驚愕してしまう。
実際に九兵衛も、自身の手にある令呪を見せる。
「知らなかったのかよ……」
これにはランサーもツッコミを入れてしまい、アーチャーとライダーも呆れてしまった。
「あの、その事なんですが…」
そう言って看護師が、その場で挙手をする。
「私は勝負に参加しません」
「えええええ!?」
サラリととんでもない事を言った為、東城が驚きを隠せなかった。
「本気で言ってるのですか、バーサーカー殿!」
「本気です」
「えっ、あの人バーサーカーだったの!?」
看護師がサーヴァントだと知った事より、彼女が“赤”のバーサーカーだと知った事に驚く新八。
「勝負に負けたら、若は警察に捕まるのですよ!?」
「自業自得です。 それと私には、負傷者の手当てという使命があります」
「柳生家の看板と患者、どっちが大切なんですか!?」
「患者です」
「ですが――」
何としても“赤”のバーサーカーに参加を頼もうとする東城であったが、まさにその時だ。
バァン!と、彼女は銃を放ち、弾丸は東城の右頬を掠った。
「邪魔をするなら、実力を行使しますよ」
「………はい、すみませんでした!」
コレに恐怖した東城は、その場で土下座して謝罪し、
「いや、もうしてますよね!? 思いっきり銃をぶっ放しましたよね!?」
流石の銀時も、思わずツッコミを入れたのである。
バーサーカーの離脱宣告により、“赤”側は戦力が減ってしまった。
「よっしゃぁ! これで俺達に勝機が舞い込んだぞ!」
近藤が喜ぶが、“白”のバーサーカーがこう言ったのだ。
「言い忘れたが、俺も参加しねぇぞ」
「えっ!?」
「はぁぁぁぁ!?」
これには流石に、銀時も土方も驚く。
「何でだよ!?」
「俺達の目的は“柳生九兵衛の逮捕”であって、お妙さん奪還が目的じゃねぇ」
「そんな!」
「それに、道場破りの片棒を担ぐつもりはねぇしな」
「………そうですよね」
そんなワケで、“白”側もバーサーカーは不参加となったのであるが、
「私も同意です」
「セイバーさんも!?」
「マスターが仕事サボるので、その腹いせです」
「言っちゃったよこの子! 参加しない理由をサラリと言っちゃったよ!」
更にはセイバーも、自ら参加を拒否したのである。
「仕方ない。 では、私が参加しよう」
しかしアサシンだけは、戦う気満々であった。
「小次郎さん!」
「勘違いするでないぞ、近藤殿。 道場破りが逃げないように、監視役が必要だと思ったからだ」
「それでもいい! 感謝する!」
「んじゃ、俺も参加するか」
「俺も出よう」
「仕方ねぇ、俺も出るよ」
更にはユーリとジーク、そして翔太郎も参加すると言ったのだ。
「じゃあ、私は怪我人の手当てをするわね」
「僕もそっちをするよ」
「私も行きます」
「僕もそっちに回るよ」
「では先生、僕等も怪我人の手当てを♪」
「うん、そうだね」
「ワン!」
ジュディス、カロル、ジャンヌ、フィリップ、ネウロ、弥子、ラピードは、怪我人の手当てに回る為、“赤”のバーサーカーの手伝いとなる。
「助かります。 では、すぐにご案内を」
“赤”のバーサーカーに連れられ、ジュディス達は怪我人の治療へと向かった。
治療へ向かう際に、ジャンヌはジークにこう言ったのだ。
「ジークくん、あまり無茶はしないでくださいね」
「ああ、分かってる」
「では、気をつけて」
こうして、“白”の陣営と“赤”の陣営のが、柳生家で勃発したのだった。
遂に始まった“白”と“赤”の聖杯大戦。
今回は“赤”の陣営である柳生の屋敷で行われる為、柳生流の試合形式が組み込まれる。
そして銀時達は、柳生流の試合形式が説明された。
1…各陣営に分かれて、身体に皿を付ける。
2…皿を割られたら失格。
3…大将を倒したら、その時点で勝敗が決まる。
4…試合が行われるのは、柳生の敷地内全て。
5…獲物は木刀のみ。
6…1対1でも1対多数でも勝ちは勝ち。
7(特別ルール)…聖杯戦争のルール上、サーヴァントは得意な武器や宝具を使ってもよい。
との事である。
しかも柳生側は、ルール説明の後に銀時達を挑発して去って行った。
「ちくしょー! ムカつくぜアイツ等! こっちも対抗して、大将丸出しで行こうぜ。 いつ襲ってきてもOK的な感じで!」
「OKな訳ないでしょ! 一発K.O.されるわ! ってか、僕が大将なの!?」
柳生流の態度に怒り狂う近藤は、新八の股間に皿を設置した。
当然、新八からはツッコミが入る。
「仕方ねーだろ。 俺達は不本意だが、恒道館道場の門下って事になってるんだ」
「ま、そー言うこったな。 気張れよ、新八」
その後も銀時は土方に皿で眼帯を作らせたり、沖田がそれを煽ったりと収拾が付かなくなり始めていた。
「(大丈夫なんだろうか、この状況で……)」
戦う前から仲間割れを起こす彼等に、ジークは内心で不安を感じる。
暫く考えていたが、いつの間にか殆ど居なくなっていた。
残っているのは新八と近藤、ユーリと翔太郎だけである。
そして、ジークを含めれば5人だ。
「あれ、皆は?」
「実はな……」
ユーリから話を聞くと、神楽が自分の皿を割ってしまったらしい。
更に銀時と沖田が勝手に行動し、土方と神楽は代わりの皿を貰いに行ったらしい。
しかもランサーとライダー、アーチャーとアサシンも別々に行動したのだ。
「……不安が的中した」
「まあ、アイツ等に団体行動とか、チームワークなんざ無理な話しだしな」
「俺は銀さんと沖田を探す。 近藤さんは新八を頼むぜ」
「んじゃ、俺は適当に探してみるか」
「俺は土方さんと神楽を探してみる」
「えっ!?」
「お、おい!」
こうして翔太郎とユーリ、そしてジークは即座に行動に移った。
残ったのは新八と近藤のみ。
「どうしましょう、近藤さん?」
「ここで俺達が別行動するのも不味いからな。 ジークくんを追って、万事屋と総悟と合流しよう」
置き去りになった新八と近藤は、今後の流れも踏まえて行動する事となった。
一方で、近藤達から離れたジークは、
「……どうなってるんだ?」
神楽と沖田を発見したのだが、二人は柳生四天王の西野と南戸と戦っていた。
戦っていたのだが、沖田が南戸と戦って圧勝していた最中、神楽は西野に劣勢。
神楽は西野の不意打ちに腕を折られたらしく、苦戦をしていたのだ。
それを治療と称して、沖田が折れた腕を更にねじり上げる。
痛みに叫ぶ神楽は、仕返しに沖田の右脚をへし折った。
汚い仲間同士の揉め事兼同士討ちで、劣勢になってしまう神楽と沖田。
トドメを刺そうと西野が二人を追い詰め、神楽と沖田は屋敷の中へと這って逃げて行った。
「……何をしてるんだ、あの二人は?」
「ああ、全くだな」
「ん?」
助けに行こうとしたジークであったが、声の主がゆっくりと歩み寄って来たのだ。
派手な着流しを纏い、如何にも女遊びが好きそうな外見の男。
彼こそ柳生四天王の一人、南戸粋である。
「改めて、南戸粋だ」
「ジークだ」
軽く挨拶を済ませ、ジークは木刀をゆっくりと構えた。
「おいおい、肩に力が入り過ぎだろ? もうちょっと気楽にいこうぜ」
「アナタは一応敵だからな。 構えるのは当然だろ?」
「まあ、普通はそうだわな」
構えを解かないジークに、南戸はこんな提案をした。
「なあ、提案があるんだが、聞いてくれるか?」
「何だ?」
「ここはどうだ? お互い、顔を狙うのはナシにしようぜ」
「それは構わないが、何故だ?」
「顔に傷なんか付いて、それ見て泣く女がいるだろ?」
「泣く女か……」
一瞬だが、ジークの脳裏にジャンヌの顔が過る。
「泣きはしないと思うが、心配はするかもな」
「そうかい。 でも、あの金髪の
娘、なかなかの上玉じゃねぇか」
ニヤリと笑う南戸に、ジークはピクリと反応した。
「なんだと?」
「なに、ちょいと頼みがあるんだ。 俺が勝ったら……あの
娘を一回だけ、俺に抱かせてくれねぇか?」
「……本気で言ってるのか?」
「当然だろ? あんな良い女、興味を示さねぇ男はいねぇって」
「そうか…良いだろう。 ただし俺が勝ったら、彼女には手を出すな」
「おいおい、強気で言うもんじゃねぇぞ? 相手は柳生だぜ、柳生。 オメェみたいなガキンチョが、簡単に勝てるとでも思ってんの?」
「勝てるかどうかは、実際にやってみないと分からない」
「はっ、そうかよ。 ほら、掛って来いよ」
挑発する南戸であったが、まさにその時だった。
ダッ!と、ジークは真っ先に突進したのである。
そして飛び上がると同時に、南戸の顔面へと一撃を叩き込んだ。
「んが!」
突然の攻撃に南戸は、その場で怯んでしまう。
「さっき、「お互い、顔面を狙うのはナシ」と言ったな? そして俺も、「構わない」と返事をしたが、先に謝っておく」
「へ?」
「すまない、アレは嘘だ」
この一言と同時に、ジークの猛攻が放たれた。
反撃の隙を与える事を許さず、南戸は手も足も出せない。
「うぐっ……」
ボコボコにされてしまった南戸であったが、内心でジークの強さに驚く。
「(こいつ…めちゃくちゃ強ぇだと!?)」
そんな彼に、ジークは鋭い眼つきで睨み、
「コレだけは、コレだけは言っておく。 彼女には、指一本触れるなァ!」
ドゴォ!という轟音と共に、トドメの一撃を叩き込んだである。
「(コイツ…下手すりゃ…東城さんレベルだ…ぜ……)」
ジークの圧倒的な強さに敗れ、うつ伏せになるように倒れた南戸。
「確かルールでは、先に相手の皿を割った方が勝ちだったな。 なら、俺の勝ちだ」
彼の後頭部にあった皿を奪い取ると、その場で割ったジークなのであった。
続く……。