ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

Fate/Silver or Heart 第十九訓:Jは既に俺の手に/拳と拳のぶつかり合い
作者:亀鳥虎龍   2018/02/13(火) 22:07公開   ID:L6TukelU0BA
 柳生四天王の南戸を撃破したジーク。

「ジークくん!」

「無事か!?」

「あ、ああ」

後から来た新八と近藤と合流するが、二人は倒れている南戸に驚く。

「も、もしかして、ジークくんが!?」

「一応、そうなるな」

「まあ、総司ちゃんや歳三さんが鍛練に付き合ってるから、強くなってるのは当然か…」

「えぇ!? セイバーさんとバーサーカーさんがですか!?」

「ああ。 しかも、短期間で二人と互角に渡り合えるほど強くなってるからな」

「サーヴァントと渡り合える時点で、既に常識の領域を超えてますよ……」

ジークの成長の早さに、近藤も新八も驚きを隠せない。

「ん? この襖、大雑把に開いてるな…」

「近藤さん、行ってみましょう」

「そうだな」

新八と近藤が屋敷に入り、二人の後を追おうとしたジーク。

「!?」

何かの気配を感じ取り、思わず足を止める。

「どうした、ジークくん?」

「すまない、二人は先に行っててくれ」

「そうか? わかった」

二人は屋敷へと入り、ジークは茂みの方へと足を運んだ。






―Jは既に俺の手に/拳と拳のぶつかり合い―






 茂みの近くまで歩み寄ると、微かに茂みが動いていた。

「……ふぅ」

少し深呼吸をすると、彼は一言声をかけたのだ。

「そこにいるのは分かってる。 いい加減に出て来い」

そして茂みに隠れていた人物は、その姿を現した。

「あらあら、よく気付いたわね」

その正体は、蠱惑的で妖艶な踊り子衣装の女性である。

「物音を立てたら、誰だって分かる」

「フフフ…、まあ良いわ。 私は“赤”のアサシン、真名は『マタ・ハリ』よ」

「ジークだ」

すると“赤”のアサシンは、豊満な谷間から皿を取り出し、

「はい」

「!?」

それをジークへと投げ渡したのだ。

「どういうつもりだ?」

「あげるわ。 元々私、戦闘には向いてないから」

「いいのか?」

「勿論」

満更でもない笑顔を見せる“赤”のアサシン。

疑心暗鬼であったがジークであったが、彼女の皿を迷わず割ったのだ。





 自身の皿が割られるのを見届け、“赤”のアサシンは一息ついたのである。

「ふぅ〜、これで私は敗北。 ありがとう、お陰で楽になったわ」

蟲惑的な彼女の仕草は、普通の男ならば虜になってしまう。

「(銀さんなら、一発で虜になってるかもな)」

内心でそう思いながらも、ジークは本題に入る。

「それで? 自ら皿を渡した理由は? 棄権だけが目的じゃない筈だ」

「正直言うと、マスターの人使いの荒さに飽き飽きしたの。 いわゆるストライキって奴ね」

そんな彼女の背後には、過去の回想場面が浮かんできた。

――ほらほら、良い子でちゅねぇ〜。 ママにいっぱい甘えてぇ〜

――バブー、ママー。

彼女に膝枕をして貰いながら、赤ちゃん言葉になっている東城の姿が見える。

どうやら彼が、“赤”のアサシンのマスターのようだが、

「すまない、どう見ても回想の内容がおかしい。 明らかにマスターが幼児化してないか?」

「ハァ…。 「若様が構ってくれない」って泣きだすから、ついつい甘やかしちゃったのよね」

「それ以前に、アナタのマスターが開いてはいけない扉を開いてないか?」

色々な意味で、東城にドン引きするジーク。

「まあ、良いわ。 アナタに頼みたい事があるの」

「頼み?」

「あの子を…若様を止めて欲しいの」

己がマスターの主君を止めるように頼む“赤”のアサシン。

果たして、その意味とは!?






 一方その頃、銀時と沖田を捜索中であった翔太郎。

「くそっ、どこに行っちまったんだ?」

因みに彼は、沖田が銀時と別れている事は全く知らない。

「仕方ねぇ、もう少し探してみるか――」

再び探索しようとしたが、まさにその時であった。

「!?」

突然の殺気に、翔太郎はすぐに反応したのだ。

「ほう、よく気付いたな」

さっきの主は、ゆっくりと彼へと近付く。

赤い髪に中国服を纏った男で、手には一本の槍を携えている。

見るからに修羅場を潜った武人そのものだ。

そして左胸には、参加者の証の皿がついていた。

「(いきなりヤバそうな奴だな)」

帽子を深く被りながら、翔太郎は男を強く警戒する。

「ほう、中々良い目をしているな」

「アンタほどじゃねぇが、修羅場は踏んでる方でな」

「呵々、面白い! では、存分に試合うぞ」

「槍ってことは、アンタはランサーで良いんだな?」

「無論。 “赤”のランサー、李書文だ」

「李書文!? あの中国武人のか!?」

「如何にも。 それで、お主の名は?」

「…探偵の左翔太郎だ」

「では翔太郎、構えるがいい」

「ああ、いくぜ!」

こうして二人の男が、真っ向からぶつかり合った。






 槍を振るう“赤”のランサーに対し、翔太郎は木刀で応戦する。

しかし、相手は槍使いの英霊。

彼の振るう槍を、捌くだけが精一杯であった。

「ふん!」

「くっ!」

必死で攻撃についていく翔太郎であるが、槍の速度は更に増していく。

「マジでコイツはキツイ!」

一度後退した彼であったが、“赤”のランサーはそれを許さない。

「させん!」

「うおっ!」

真っ向から放たれた一突きを、直感と紙一重で避ける。

「くそっ!」

劣勢となった翔太郎であるが、まさにその時だ。

「翔太郎!」

「ジーク!?」

「使ってくれ!」

突然ジークが現れ、彼は自身の木刀を投げ渡した。

「ふんっ!」

“赤”のランサーが再び槍を振るうが、翔太郎はジークの木刀を受け取ると、

「ナイスアシストだ、ジーク!」

そのまま槍を防いだのである。

「なにっ!?」

「そこだぁ!」

そして自身の木刀を、“赤”のランサーの脇腹に叩きこんだ。





「うぐっ!」

反撃を喰らった“赤”のランサーであったが、何処か楽しそうな顔になる。

「呵々! 仲間の出現が、主の危機を救ったか。 見事なり」

「とはいえ、マグレだけどな」

すると翔太郎は、木刀を後ろへと投げ捨て、

「流石に、アンタは手強いからな。 本気でいかせてもらうぜ」

懐から取り出したベルトを、腰に巻きつけたのだ。

「ダブルドライバー……じゃない?」

それを見たジークは、ベルトに若干の違和感を覚えた。

見た目はダブルドライバーであるが、バックルのスロットが右側のみしかない。

翔太郎が装着したのは、ダブルドライバーのプロトタイプである『ロストドライバー』。

《JOKER》

ジョーカーメモリを挿し込み、スロットを横に展開した。

「変身」

その瞬間、翔太郎の姿が変わっていく。

外見はWに似ているが、全身が漆黒の戦士。

「改めて自己紹介だ。 左翔太郎、またの名を……仮面ライダージョーカー」

「面白い! ならば儂も、槍など不要! 己が拳で相手になろう!!」

“赤”のランサーも槍を捨て、その場で拳を構える。

そして再び、二人はぶつかり合ったのだった。






 ジョーカーが放った拳を、“赤”ランサーが防ぐ。

逆に“赤”のランサーの放った拳を、ジョーカーが防いだ。

拳と拳がぶつかり合い、激しい攻防戦が繰り広げられた。

「くはははははははは!!! 滾る滾る! 血が! 肉が! やはり武とは、こうでなくてはな!!」

「ヤベェ、俺も楽しくなってきた」

互いに楽しくなっていき、ジークと“赤”のアサシンは蚊帳の外となる。

「アサシン、貴女から見て、どちらが勝つと思う?」

「えっ!? それ、私に聞くの!?」

「いや、俺は翔太郎の実力は知ってるが、あのランサーの実力はよく知らない」

「それは、私も同意なんだけど」

「それもそうか…」

そんな会話をしていた二人であったが、ジョーカーと“赤”のランサーの激戦に異変が生じた。

「ふう…。 ここまで拳を交えたのは、久方ぶりよ。 しかし、互いに息が上がってきたのではないか?」

「そのようだな」

どうやら激しい攻防戦のせいで、体力が限界を迎えていたようだ。

「次で終わらせるぞ」

「ああ!」

《JOKER》

「フン!」

“赤”のランサーは全身の気を集中させ、ジョーカーはメモリをマキシマムスロットに挿し込む。

《JOKER・MAXIMUM DRIVE》

「ライダーパンチ!」

冲捶ちゅうすい!」

二人は真っ向から跳び込み、握り締めた拳が放たれる。

それも、クロスカウンターという形で……。

“赤”のランサーの拳は、ジョーカーの顔を掠った。

だがジョーカーの拳は、“赤”のランサーの顔面を捉えたのだ。

「うぐっ!」

この一撃を受けた“赤”のランサーは怯み、ジョーカーはそれを見逃さなかった。

「コレで決まりだ」

《JOKER・MAXIMUM DRIVE》

「ライダーキック!」

その場で跳び上がり、必殺のキックを喰らわせたのである。








 ジョーカーの『ライダーキック』が、“赤”のランサーの胸部を捉えた。

「ぐあぁぁぁぁ!」

直撃を喰らい、“赤”のランサーが吹き飛んでしまう。

同時に胸の皿も、粉々に割れたのである。

ジョーカーはロストドライバーの構造上、Wのようにフォームチェンジを使う事が出来ない。

しかし翔太郎の鍛え抜かれた格闘技術に、ジョーカーメモリの特性である身体能力の向上が加わる事で、初めてその本領を発揮できるのだ。

「ふぅ……」

変身を解いた翔太郎であったが、“赤”のランサーはというと、

「フハハハハ。 見事。 久しく良い勝負が出来た。 感謝するぞ、翔太郎」

「…そりゃ…どうも……」

楽しそうに笑い、翔太郎もこれにはドン引きしてしまう。

「あらあら、見事に負けたわね」

「アサシンか。 お主も負けたのか?」

「前に言わなかった? 私は戦闘向きじゃないの。 だから、わざと皿を割らせて棄権したわ」

「そうか……」

「動ける?」

「戦闘は無理だが、歩く事は可能だ」

立ち上がろうとする“赤”ランサーであったが、翔太郎が手を差し出す。

「ほらよ」

「ふっ、感謝する」

彼もその手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。

そんな彼等に、ジークも思わず笑みがこぼれる。

「お疲れ、二人とも」

「ああ」

「ウム」

「フフフッ、まさに“男の友情”って感じね」

そんな彼等の姿を、“赤”のアサシンは慈母のように見守ったのだった。




続く……。


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
 遂に仮面ライダージョーカーが来ました!

『W』といえば、このライダーを外すワケにはいきません!

僕のお気に入りのライダーの一人ですから!
テキストサイズ:7778

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.