柳生四天王の南戸を撃破したジーク。
「ジークくん!」
「無事か!?」
「あ、ああ」
後から来た新八と近藤と合流するが、二人は倒れている南戸に驚く。
「も、もしかして、ジークくんが!?」
「一応、そうなるな」
「まあ、総司ちゃんや歳三さんが鍛練に付き合ってるから、強くなってるのは当然か…」
「えぇ!? セイバーさんとバーサーカーさんがですか!?」
「ああ。 しかも、短期間で二人と互角に渡り合えるほど強くなってるからな」
「サーヴァントと渡り合える時点で、既に常識の領域を超えてますよ……」
ジークの成長の早さに、近藤も新八も驚きを隠せない。
「ん? この襖、大雑把に開いてるな…」
「近藤さん、行ってみましょう」
「そうだな」
新八と近藤が屋敷に入り、二人の後を追おうとしたジーク。
「!?」
何かの気配を感じ取り、思わず足を止める。
「どうした、ジークくん?」
「すまない、二人は先に行っててくれ」
「そうか? わかった」
二人は屋敷へと入り、ジークは茂みの方へと足を運んだ。
―Jは既に俺の手に/拳と拳のぶつかり合い―
茂みの近くまで歩み寄ると、微かに茂みが動いていた。
「……ふぅ」
少し深呼吸をすると、彼は一言声をかけたのだ。
「そこにいるのは分かってる。 いい加減に出て来い」
そして茂みに隠れていた人物は、その姿を現した。
「あらあら、よく気付いたわね」
その正体は、蠱惑的で妖艶な踊り子衣装の女性である。
「物音を立てたら、誰だって分かる」
「フフフ…、まあ良いわ。 私は“赤”のアサシン、真名は『マタ・ハリ』よ」
「ジークだ」
すると“赤”のアサシンは、豊満な谷間から皿を取り出し、
「はい」
「!?」
それをジークへと投げ渡したのだ。
「どういうつもりだ?」
「あげるわ。 元々私、戦闘には向いてないから」
「いいのか?」
「勿論」
満更でもない笑顔を見せる“赤”のアサシン。
疑心暗鬼であったがジークであったが、彼女の皿を迷わず割ったのだ。
自身の皿が割られるのを見届け、“赤”のアサシンは一息ついたのである。
「ふぅ〜、これで私は敗北。 ありがとう、お陰で楽になったわ」
蟲惑的な彼女の仕草は、普通の男ならば虜になってしまう。
「(銀さんなら、一発で虜になってるかもな)」
内心でそう思いながらも、ジークは本題に入る。
「それで? 自ら皿を渡した理由は? 棄権だけが目的じゃない筈だ」
「正直言うと、マスターの人使いの荒さに飽き飽きしたの。 いわゆるストライキって奴ね」
そんな彼女の背後には、過去の回想場面が浮かんできた。
――ほらほら、良い子でちゅねぇ〜。 ママにいっぱい甘えてぇ〜
――バブー、ママー。
彼女に膝枕をして貰いながら、赤ちゃん言葉になっている東城の姿が見える。
どうやら彼が、“赤”のアサシンのマスターのようだが、
「すまない、どう見ても回想の内容がおかしい。 明らかにマスターが幼児化してないか?」
「ハァ…。 「若様が構ってくれない」って泣きだすから、ついつい甘やかしちゃったのよね」
「それ以前に、アナタのマスターが開いてはいけない扉を開いてないか?」
色々な意味で、東城にドン引きするジーク。
「まあ、良いわ。 アナタに頼みたい事があるの」
「頼み?」
「あの子を…若様を止めて欲しいの」
己がマスターの主君を止めるように頼む“赤”のアサシン。
果たして、その意味とは!?
一方その頃、銀時と沖田を捜索中であった翔太郎。
「くそっ、どこに行っちまったんだ?」
因みに彼は、沖田が銀時と別れている事は全く知らない。
「仕方ねぇ、もう少し探してみるか――」
再び探索しようとしたが、まさにその時であった。
「!?」
突然の殺気に、翔太郎はすぐに反応したのだ。
「ほう、よく気付いたな」
さっきの主は、ゆっくりと彼へと近付く。
赤い髪に中国服を纏った男で、手には一本の槍を携えている。
見るからに修羅場を潜った武人そのものだ。
そして左胸には、参加者の証の皿がついていた。
「(いきなりヤバそうな奴だな)」
帽子を深く被りながら、翔太郎は男を強く警戒する。
「ほう、中々良い目をしているな」
「アンタほどじゃねぇが、修羅場は踏んでる方でな」
「呵々、面白い! では、存分に試合うぞ」
「槍ってことは、アンタはランサーで良いんだな?」
「無論。 “赤”のランサー、李書文だ」
「李書文!? あの中国武人のか!?」
「如何にも。 それで、お主の名は?」
「…探偵の左翔太郎だ」
「では翔太郎、構えるがいい」
「ああ、いくぜ!」
こうして二人の男が、真っ向からぶつかり合った。
槍を振るう“赤”のランサーに対し、翔太郎は木刀で応戦する。
しかし、相手は槍使いの英霊。
彼の振るう槍を、捌くだけが精一杯であった。
「ふん!」
「くっ!」
必死で攻撃についていく翔太郎であるが、槍の速度は更に増していく。
「マジでコイツはキツイ!」
一度後退した彼であったが、“赤”のランサーはそれを許さない。
「させん!」
「うおっ!」
真っ向から放たれた一突きを、直感と紙一重で避ける。
「くそっ!」
劣勢となった翔太郎であるが、まさにその時だ。
「翔太郎!」
「ジーク!?」
「使ってくれ!」
突然ジークが現れ、彼は自身の木刀を投げ渡した。
「ふんっ!」
“赤”のランサーが再び槍を振るうが、翔太郎はジークの木刀を受け取ると、
「ナイスアシストだ、ジーク!」
そのまま槍を防いだのである。
「なにっ!?」
「そこだぁ!」
そして自身の木刀を、“赤”のランサーの脇腹に叩きこんだ。
「うぐっ!」
反撃を喰らった“赤”のランサーであったが、何処か楽しそうな顔になる。
「呵々! 仲間の出現が、主の危機を救ったか。 見事なり」
「とはいえ、マグレだけどな」
すると翔太郎は、木刀を後ろへと投げ捨て、
「流石に、アンタは手強いからな。 本気でいかせてもらうぜ」
懐から取り出したベルトを、腰に巻きつけたのだ。
「ダブルドライバー……じゃない?」
それを見たジークは、ベルトに若干の違和感を覚えた。
見た目はダブルドライバーであるが、バックルのスロットが右側のみしかない。
翔太郎が装着したのは、ダブルドライバーのプロトタイプである『ロストドライバー』。
《JOKER》
ジョーカーメモリを挿し込み、スロットを横に展開した。
「変身」
その瞬間、翔太郎の姿が変わっていく。
外見はWに似ているが、全身が漆黒の戦士。
「改めて自己紹介だ。 左翔太郎、またの名を……仮面ライダージョーカー」
「面白い! ならば儂も、槍など不要! 己が拳で相手になろう!!」
“赤”のランサーも槍を捨て、その場で拳を構える。
そして再び、二人はぶつかり合ったのだった。
ジョーカーが放った拳を、“赤”ランサーが防ぐ。
逆に“赤”のランサーの放った拳を、ジョーカーが防いだ。
拳と拳がぶつかり合い、激しい攻防戦が繰り広げられた。
「くはははははははは!!! 滾る滾る! 血が! 肉が! やはり武とは、こうでなくてはな!!」
「ヤベェ、俺も楽しくなってきた」
互いに楽しくなっていき、ジークと“赤”のアサシンは蚊帳の外となる。
「アサシン、貴女から見て、どちらが勝つと思う?」
「えっ!? それ、私に聞くの!?」
「いや、俺は翔太郎の実力は知ってるが、あのランサーの実力はよく知らない」
「それは、私も同意なんだけど」
「それもそうか…」
そんな会話をしていた二人であったが、ジョーカーと“赤”のランサーの激戦に異変が生じた。
「ふう…。 ここまで拳を交えたのは、久方ぶりよ。 しかし、互いに息が上がってきたのではないか?」
「そのようだな」
どうやら激しい攻防戦のせいで、体力が限界を迎えていたようだ。
「次で終わらせるぞ」
「ああ!」
《JOKER》
「フン!」
“赤”のランサーは全身の気を集中させ、ジョーカーはメモリをマキシマムスロットに挿し込む。
《JOKER・MAXIMUM DRIVE》
「ライダーパンチ!」
「
冲捶!」
二人は真っ向から跳び込み、握り締めた拳が放たれる。
それも、クロスカウンターという形で……。
“赤”のランサーの拳は、ジョーカーの顔を掠った。
だがジョーカーの拳は、“赤”のランサーの顔面を捉えたのだ。
「うぐっ!」
この一撃を受けた“赤”のランサーは怯み、ジョーカーはそれを見逃さなかった。
「コレで決まりだ」
《JOKER・MAXIMUM DRIVE》
「ライダーキック!」
その場で跳び上がり、必殺のキックを喰らわせたのである。
ジョーカーの『ライダーキック』が、“赤”のランサーの胸部を捉えた。
「ぐあぁぁぁぁ!」
直撃を喰らい、“赤”のランサーが吹き飛んでしまう。
同時に胸の皿も、粉々に割れたのである。
ジョーカーはロストドライバーの構造上、Wのようにフォームチェンジを使う事が出来ない。
しかし翔太郎の鍛え抜かれた格闘技術に、ジョーカーメモリの特性である身体能力の向上が加わる事で、初めてその本領を発揮できるのだ。
「ふぅ……」
変身を解いた翔太郎であったが、“赤”のランサーはというと、
「フハハハハ。 見事。 久しく良い勝負が出来た。 感謝するぞ、翔太郎」
「…そりゃ…どうも……」
楽しそうに笑い、翔太郎もこれにはドン引きしてしまう。
「あらあら、見事に負けたわね」
「アサシンか。 お主も負けたのか?」
「前に言わなかった? 私は戦闘向きじゃないの。 だから、わざと皿を割らせて棄権したわ」
「そうか……」
「動ける?」
「戦闘は無理だが、歩く事は可能だ」
立ち上がろうとする“赤”ランサーであったが、翔太郎が手を差し出す。
「ほらよ」
「ふっ、感謝する」
彼もその手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。
そんな彼等に、ジークも思わず笑みがこぼれる。
「お疲れ、二人とも」
「ああ」
「ウム」
「フフフッ、まさに“男の友情”って感じね」
そんな彼等の姿を、“赤”のアサシンは慈母のように見守ったのだった。
続く……。