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Fate/Silver or Heart 第二十訓:炎【インフェルノ】
作者:亀鳥虎龍   2018/02/19(月) 14:41公開   ID:qb9zcFDYebk
 激しい攻防戦の中、“赤”のランサーに勝利した翔太郎。

二人を休ませる為、ジーク達は屋敷へと向かう。

襖を開けた瞬間、彼等はあるものを見たのである。

「「ん?」」

部屋にはユーリが座っており、自身の前に座っている女性と食事をしていた。

「すまない、食事中だったのか。 失礼した」

ジークは謝罪し、すぐに襖を閉めたのだが、

「じゃねぇよ! なにやってんだぁぁぁぁ!」

翔太郎が再び襖を開けながらツッコミを入れたのである。






 ユーリと食事をしていた女性は、お茶を啜った後にこう言った。

「腹が減っては戦は出来ぬ。 試合であれ戦であれ、食事で体力を付けるのは当然です」

白い肌に長い銀髪が、女性の美しさを映えさせる。

「まあ、主の言うとおりであるな」

「そうだな。 正直、俺も腹の音が鳴ってるしな」

「流石に俺も、腹が減っちまった」

「では。相席はよろしくて?」

「大丈夫ですよ。 茶碗も箸もまだありますので」

「では、失礼する」

部屋へ上がったジーク達は、テーブルを囲むように座り、

「「「「いただきます」」」」

食事を嗜む事にしたのだ。






 食事を終え、茶碗を片付けた一同。

「ふぅ〜。 いやぁ〜、マジで美味かったぜ」

「相変わらず、美味い食事であった。 感謝するぞ、アーチャー」

「いえいえ」

“赤”のランサーから感謝の言葉を受け、女性…“赤”のアーチャーも頬笑みで返す。

「ご馳走さん」

「ご馳走様」

「はい、お粗末さまでした」

「それで、アンタの用件は? 敵の俺達に飯を食わせてまで、場を和ませようとしたんだ。 それなりの理由があんだろ?」

ユーリが尋ねると、“赤”のアーチャーはコクリと頷く。

「実は我がマスターの主君……九兵衛殿を止めて欲しいのです」

「!?」

それを聞いたユーリは、驚愕の顔になってしまった。






「マスターの主君を止める? それって、マスターに対する反逆行為じゃねぇか?」

「そうですね。 私自身が九兵衛殿に刃向かえば、反逆行為かもしれません」

「だから事実上、敵である俺やユーリ達に頼んでいるのだろう? 俺もアサシンから、同じ事を言われた」

ジークが問うと、“赤”のアーチャーはコクリと頷く。

「正直、マスターの令呪がある以上、私は九兵衛殿を止めることはできません。 ですが、敵対関係であるアナタ方なら、止められると確信したのです」

「成程な、アンタの話しはよく分かった」

「では!」

「ただし、今の俺達は敵同士だ。 だから、語るのはコイツでだろ?」

木刀を構えるユーリは、不敵な笑みを彼女に見せる。

「剣士の戦いに言葉は不要…。 語るなら、己の刃で示せ――ですね?」

「そういうこった。 俺がアンタに負けたら、俺はそれまでの男ってことだ」

「良いでしょう。 では、外に」

「おう」

二人は外へと出ると、互いに木刀を構え、

「それでは、いざ……」

「尋常に……」

「「勝負!」」

地を蹴り、真正面からぶつかったのだった。






 激しい木刀の打ち合い。

「そらよっと!」

「くっ! ハァ!」

「おっと!」

二人は引けを取らない攻防戦を繰り広げる。

「ほほう、あの青年。 中々の腕前だ。 皿が割れていなかったら、手合わせ願いたかった」

「すまない、サラッと物騒な事は言わないでくれ」

戦いを見守る“赤”のランサーの発言に、ジークは引き気味のツッコミを入れた。

しかし誰もが、この戦いに目を奪われてしまう。

ユーリの剣技は型が無く、まるでジャグリングをするかのように剣を振るう。

その証拠に一度上に投げた木刀を、再び手でキャッチしている。

一方で“赤”のアーチャーは芸達者であった。

右手の木刀を振るいながら、左手の薙刀で距離を取っている。

「やるじゃねぇか。 久々に楽しめるぜ」

「それは、こちらの台詞です」

勝負は互角、どちらも勝負を譲らない。

しかし、その時だ。

「そこだ!」

懐に飛び込んだユーリが、一気に勝負に出た。

「戦迅狼波!」

拳を突きだすと同時に、狼を模した衝撃波が放たれ、

「ぐっ!」

コレを喰らった“赤”のアーチャーは、容赦無く吹き飛ばされたのだ。





「よっしゃ! 一丁あがり!」

ガッツポーズを決めるユーリ。

一方で“赤”のアーチャーは、ゆっくりと立ち上がる。

「見事ですね。 危うく皿を割られるところでしたよ」

しかし彼女の額には、あるものが伸びていたのだ。

それは二本の、鋭い角。

飾りではない、本物の角だ。

コレを見たユーリは、ゴクリと唾を飲み込む。

「おいおい、アンタ何者だ?」

「我が名は“赤”のアーチャー。 真名は、巴御前」

手に持っていた薙刀の矛先には、炎が纏っており、

「参りましょう、ユーリ殿。 今度は、手加減無しです」

「ハッ、面白ぇ! んじゃ俺も、飛ばしていきますか! オーバーリミッツ、解放!」

そしてユーリも、潜在能力を解放したのだ。

「いくぜ!」

「参ります!」

その場で地を蹴り、二人は再びぶつかったのである。






 木刀と薙刀がぶつかり合い、余波で砂や砂利が吹き飛ぶ。

「オラァ!」

「ハァァァァァ!」

この光景に、ジーク達も驚きを隠せない。

「凄い…」

「ほう、打ち合いの余波で砂が舞い散るとは…」

彼等が見守る中、“赤”のアーチャーが動いた。

ユーリの木刀を弾くと、自身も薙刀を投げ捨てる。

懐に飛び込み、両手で彼の身体を掴むと、

「でやぁぁぁぁ!」

なんと豪快に、容赦無く投げ飛ばしたのだ。

「がっ!」

投げ飛ばされたユーリは、地面へ倒れてしまい、

「くそっ!」

一度崩された体勢を整えようとする。

しかしそれは、既に遅かったのだ。

“赤”のアーチャーは弓を構え、ゆっくりと弦を引いていた。

「受けるがいい! これぞ我が宝具にして、最強の奥義!」

「やばっ――」

真言・聖観世音菩薩オン・アロリキヤ・ソワカ!!」

矢尻に炎を纏った矢が放たれ、真っ先にユーリへと向かっていく。

「させるかァ!」

咄嗟にユーリは木刀を両手で構えると、そのままフルスイングしたのだ。

木刀の刀身に矢が辺り、そのまま野球ボールのように吹き飛ばした。

「うっしゃ!」

「な、なんと――」

宝具を破られ、呆然とした“赤”のアーチャー。

だがこの隙を、ユーリは見逃さなかった。

「そんじゃ、お仕舞いにしようぜ!」

一瞬で懐に入り、木刀を容赦なく振るう。

「閃け、鮮烈なる刃! 無辺の闇を鋭く切り裂き、仇なす者を微塵に砕く……」

あらゆる方向からの攻撃を、目にも止まらぬ速さで叩き込み、

ざんこうろうえいジン!」

トドメの一撃が、彼女の皿を砕いた。

「……決まったぜ」

「ふっ…お見事です」

不敵な笑みと共に、“赤”のアーチャー……巴御前は倒れたのである。






 その同時刻、森の方では、

「うぐっ!」

アーチャーが一人のサーヴァントに追い詰められていた。

漆黒の甲冑を纏い、顔はバイザーで隠れている。

「“赤”のキャスター。 貴様、生きておるか?」

「ええ、大丈夫」

褐色の肌に獣耳、エキゾチックな衣装を纏った女性も倒れていた。

彼女は“赤”のキャスターで、真名はシバの女王。

「終わりだ」

「くっ!」

アーチャーは火縄銃を向けるが、甲冑の英霊はそれよりも速く、

「無駄だ」

黒いサーヴァントが、彼女の身体を斬り裂いた。

「ゴフッ…」

斬り伏せられたアーチャー。

「貴様もだ」

「!?」

更には“赤”のキャスターも斬られてしまう。

二騎のサーヴァントは倒れ、黒いサーヴァントも立ち去る。

「(すまぬ、神楽……儂は、此処までだ)」

アーチャーは内心で呟きながら、“赤”のキャスターと共に消滅したのであった。





続く……。

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 次回、ジークがある人物と戦います。
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