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Fate/Silver or Heart 第二十二訓:文明の破壊者
作者:亀鳥虎龍   2018/03/01(木) 23:57公開   ID:L6TukelU0BA
 ルーラーは現在、万事屋の玄関前にいた。

「――って、私の事を忘れるなぁぁぁ!」

約五話分も忘れられ、烈火のごとく激怒する。

「お妙さんが屋敷に戻ってこない! 万事屋を尋ねたても誰もいない! 真選組のサーヴァントもいない! 何で中立役の私が、除け者扱いなのよぉ!」

屋敷に戻ってこないお妙を心配し、万事屋の事務所と真選組の屯所を訪れたルーラー。

だが万事屋には定春しかおらず、真選組も幹部クラスがいないのだ。

「しかもサーヴァントの気配が、何処か一点に集ってるようだし……仕方ない!」

翔太郎が置いていたハードボイルダーに跨り、アクセルをその場で吹かせる。

「とにかく! すぐに向かわないと!」

そして彼女は、すぐさま現場へと向かったのだった。

「待ってろシャバ憎ども!」

しかしその姿は、完全にレディースそのものである。





―文明の破壊者―





 銀時達の前に現れた“黒”のセイバー。

「もう一度言おう、私は大聖杯を奪いに来た」

「大聖杯?」

銀時が傾げると、新八が「まさか」という顔になる

「あれですよ銀さん! 聖杯戦争の勝者だけが手に出来る万能の杯!」

「あっ、アレか」

新八の話しを聞き、銀時はすぐさま思い出す。

「大聖杯は現在、この屋敷の何処かに保管されていると聞く。 柳生家は幕府――この国の国家のお抱えだ。 大切に保管しているのではないか?」

“黒”のセイバーが問うと、九兵衛と敏朴斉が目を大きく開いてしまう。

「おじい様。 確かパパ上が、幕府からそのような命を受けたと聞いていましたが」

「どうやら、ヤバい展開になったようじゃの」

しかし、その時である。

「おのれ、賊めぇぇぇ!」

「柳生家を敵に回したこと、とくと後悔しろぉぉぉぉ!」

柳生の門下生たちが、一斉に向かって来たのだ。

「っ!? よせ、近付くな!」

九兵衛が叫ぶが、“黒”のセイバーが剣を振るった。

「邪魔だ」

まさにその瞬間、凄まじい衝撃波が放たれたのだ。

「「「うわぁぁぁぁぁ!」」」

門下の殆どが吹き飛び、誰もが驚愕してしまう。

「次はお前達だ」

銀時達四人に視線を向け、睨まれた本人達は、

「ご指名だぜ、ぱっつぁん」

「みたいですね」

「九兵衛よ、覚悟は良いか?」

「勿論です、おじい様」

「いくぜ!」

真っ先に、“黒”のセイバーへと挑んだのだった。





 銀時が正面から攻撃するが、“黒”のセイバーはそれを防ぐ。

「くっ!」

「遅いぞ、その程度か」

「でやぁぁぁぁ!」

新八が後ろから襲いかかるが、それは無意味に終わった。

背後からの気配に、“黒”のセイバーが反応したのだ。

攻撃を避けると、そのまま彼の手を掴み、

「フン!」

「うわぁぁぁぁ!」

銀時の方へと投げ飛ばした。

「んが!」

新八の背中に顔が当たった銀時は、彼と主に吹っ飛んでしまう。

今度は九兵衛と敏朴斉が、左右から挟み打ちをしてきた。

「無駄だ」

しかし“黒”のセイバーは、九兵衛の木刀を剣で防ぎ、敏朴斉を蹴りで吹き飛ばす。

「おじい様!」

「人の心配か? それは戦いに置いて、悪い文明だぞ」

「くっ!」

九兵衛を弾き飛ばすと、彼女は再び剣を構える。

「どうした…私を倒すんじゃないのか?」

「くっ!」

奥歯を噛み締める九兵衛であるが、すぐさま体勢を立て直す。

「ハァァァァァ!」

地を蹴り、真っ向から走る九兵衛。

「(僕だけなんだ。 妙ちゃんを守れるのは、僕だけだ――)」

神速と謳われる剣を、その場で容赦なく振るった。

「妙ちゃんを守れるのは――僕だけなんだぁぁぁぁ!」

しかし“黒”のセイバーは、それを片手のみで防いだ。

「なっ!?」

「常人にとっては速くても、私にとっては遅いぞ」

驚愕する九兵衛であったが、それよりも速く、

「終わりだ」

“黒”のセイバーが、容赦無く剣を振るったのである。




 ブシュゥゥゥ!と、斬られた身体から血が噴き出し、

「な…に……」

九兵衛はその場で倒れてしまう。

「安心しろ、急所は外してある」

「(か、身体が…身体が動かない!?)」

起き上がろうとするが、九兵衛は起きる事が出来ない。

まるで身体に、鉛か何かを付けられたような感じだ。

「自慢の剣を防がれ、敵に斬り伏せられた。 コレによって、お前の精神が折れてしまった」

「僕の精神…だと?」

「そうだ。 どんなに強い戦士でも、精神が折れるような敗北を受ければ、身体が動かなくなってしまう。 お前の場合、自慢の神速を防がれた事と、護りたい者の眼前での敗北だ」

「ふざけるな! 僕は負けていない! 僕が生きている限り、僕は負けていない!」

必死で叫ぶ九兵衛であるが、身体が動く事が出来ない。

「そうか…敗北を認めないというのか……敗北を認めない敗者は、この世で最も悪い文明だ」

「キミに分かるか!? 女でありながら、男して生きなきゃならなかった僕の気持が!? 分かるはずもないだろ!!」

「そうか……お前も男して生きていたのか」

「……え?」

「私も女でありながら、男として生きてきた。 私の周りには、多くの臣下たちがいた。 “殺戮の機械”である私を恐れず、『大王』と呼んで慕ってくれた。 私はそんな彼等の意に応え、王として最後まで責務を貫いた」

男して生きた女――。

この言葉を知った九兵衛は、驚愕を隠しきれない状態である。

「お前に敗因があるとすれば――お前は女でありながら、男として生きた自分を呪った事だ」

「何を言って……」

「同じ“男して生きた女”として、ハッキリ言おう。 男して生きる事を受け入れた私と、男して生きた事を呪ったお前では、精神の強さが違う」

「!!!?」

この事実を突きつかせられ、九兵衛は何も言えなかった。

「己を呪って生きたお前では、私を倒す事は出来ない」

ゆっくりと歩み寄り、“黒”のセイバーは剣を上に上げる。

「さらばだ、この世で最も弱き戦士よ。 もう一度言うぞ。 敗北を認めない敗者は―――悪い文明だ」

そして容赦なく、その刃を振るったのだった。





 柳生家の何処かにある蔵。

「お〜! 遂に見つけたぞ!」

白いスーツの男は、黄金に輝く杯を発見する。

「素晴らしい……コレが、コレが大聖杯! 想像以上に小さめだが、贅沢は言えんな」

大聖杯を目にし、男はそれを手に取った。

「フハハハハハ! 遂にやったぞ! 私はとうとう、大聖杯を手に入れたぞぉ!」

そして喜びあまり、勝利の笑いを上げたのだ。

だが、その時であった。

「ほう、そいつはスゲェ話しじゃねぇか」

「!?」

背後からの声に、男は咄嗟に振り返る。

そこには翔太郎とフィリップ、ユーリにジークが立っていた。

「バカな!? 何故お前達が!?」

が、全部吐いてくれたよ」

「まさか柳生家の中に、数人の部下を潜入させていたとはな…」 

「流石にコイツは予想外だったぜ」

「さらにサーヴァントを柳生家で暴れさせ、その隙に大聖杯を奪う。 姑息だが、中々の手腕だ」

実はユーリと翔太郎が倒した門下は、男の手先だったのだ。

彼等から情報を聞きだし、それを頼りにここまで辿ったのである。

「鬼ごっこはもう終わりだ。 そろそろ正体を見せな」

翔太郎に問われ、男は不敵な笑みを見せる。

「良いだろう、教えてやる!」

そう言って男は、遂に正体を現した。






 男の正体は、青緑の肌に眼鏡をかけた人物。

「俺の名は陀絡。 宇宙海賊『春雨』にいた男だ」

「春雨って、鬼兵隊と組んだ連中だよな?」

「まさか、春雨の命令か!?」

「春雨? ふざけるな、あんな連中と一緒にするな」

堕落は拳を強く握り、彼等に怒りを表した。

「嘗て…坂田銀時に破られた俺は、半死半生の身で春雨に帰還した。 しかし春雨の連中は、俺をボロ雑巾のように切り捨てやがった! それどころか、俺を時空転移装置の中にブチ込みやがった!」

「つまり、処刑されたという事か…」

「全くもってその通りだ。 しかし連中にとって誤算だったのは、俺を飛ばした先が別世界である事。 そこで俺は、『財団X』と出会ったんだ。 俺はガイアメモリの研究を活かし、究極のメモリ『ディメンションメモリ』を完成させた。 実験が必要だったが、モルモットはすぐに思いついた。 風都の“涙”を拭う探偵がな…」

ニヤリと笑う陀絡に、翔太郎とフィリップがすぐに納得する。

「成程、俺達は実験台だったという事か」

「そうだ。 今度は別世界『テルカ・リュミレース』に飛び、そこの人間を別次元に飛ばした」

「俺等もアンタのモルモットかよ。 あの依頼、ニセモンだったのかよ」

苛立った顔で睨むユーリであったが、陀絡はメモリを構えた。

《ディメンション》

メモリを挿入すると、銀色に彩られた怪人へと変わる。

『次元の記憶』を宿す、ディメンション・ドーパントへと変身したのだ。

「そしてこの世界で、聖杯戦争が行われていると知り、俺はチャンスと感じた。 坂田銀時への復讐というチャンスをな!」

それを聞いた四人は、即座に構えたのだが、

「成程、話しはよく分かった」

「うおっ!?」

背後からネウロが現れ、翔太郎が飛び跳ねてしまう。

「い、イキナリ背後から現れんな! ビックリするだろうが!」

「よし、決めたぞ♪」

ネウロは中指を伸ばし、そのままディメンションに向け、

「陀絡、まずは貴様を叩き潰す。 我が輩が直々にな」

不敵な笑みを見せたのである。

それを聞いたディメンションも、不敵な笑みを見せた。

「ほう、面白い。 やってみろ!」

こうして、ネウロとディメンションの対決が始まったのである。





 その頃、敷地の方では、

「……!?」

「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」

“黒”のセイバーが振り下ろした刃を、銀時と新八が防いだのだ。

それにより、九兵衛は間一髪を免れた。

「驚いた、敵を助けるつもりか?」

この問いに対し、二人は木刀を構える。

「敵だろうが味方だろうが関係ない」

「人の喧嘩に横槍した大バカヤローを、俺達はブッ倒すだけだ」

それを聞いた“黒”のセイバーは、不敵に笑みを浮かべた。

「面白い。 では決闘の邪魔をした侘びとして、お前達は容赦なく、全力で相手しよう。 “黒”のセイバー、真名はアルテラ。 好きに呼んでも構わん」

「万事屋銀ちゃん所長、坂田銀時!」

「恒道館道場当主、志村新八!」

「いくぞ!」

「いざ!」

「尋常に!」

「「「勝負!」」」

こうして、最後の戦いが始まろうとしていたのだ。






続く。





〜オマケ〜

 ようやく柳生の屋敷へと辿りついたルーラー。

「ようやく着いたわ」

バイクから降りると、右手の拳と左手の掌をぶつけ、

「うっしゃ! カチコミいくわよ!」

完全にスケバンのそれとなっていた。


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