■一覧に戻る
■別話を閲覧する
■感想を見る・書く
俺の片目は戦争兵器
ラブレターの傍らで
(オリジナル)
 入学式も終わり、本格的にスタートし始めた。     
 一面に広がる桜、暖かい春風。        
 しかし、俺にとってはどうでもいいことだった。      
 春休みから右目が改造されてたら人目が気になって何もできないからだ。     
 しかも春休み最終日に追い討ちをかけるように、幼馴染みとちょっとギクシャクしてしまうという有り様。      
 「よー蝉島」          
 「突然、後ろから話しかけられると心臓に悪い」       
 気配を消して背後から忍び寄るってお前は忍者か。      
 「すまんすまん、それより今日は幼馴染みと一緒じゃないんだな」        
 「なんか俺の一言で機嫌損ねちゃってさぁ」       
 将錯は大きく頷く。       
 そんなことをしゃべりながら歩いていたらあっという間に校門に到着。     
 俺と将錯は入り口へ向かう。        
 自分の下駄箱を開けた。     
 すると靴の上に一枚の用紙が置いてあった。      
 「なぁ将錯、これなんだろう」       
 将錯は俺の下駄箱を覗きこむ。       
 「ここ、これは、ラララ、ラブレターではないかな」      
 そんな馬鹿なと思いながらもその用紙につづられている文章を朗読する。     
 「放課後に体育館裏へ来てください」       
 それだけだった。        
 「ほら、やっぱりそうだよ」        
 「変なやつの罠だったらどうするんだよ」      
 「行ってみるだけ行ってみろよ」       
 「わかったよ」         
 俺たちは自分達の教室へ向かった。      
                 
                 
 私の名前は宗友 明夏 高校二年生。      
 春休みに菊から、「自慢できるくらい可愛い」と言われて以来菊とは距離を置いている。      
 なぜかと言うと少しこそばゆいのだ。       
 菊から可愛いなんて言われたの初めてだったから恥ずかしくてその場から走って逃げてしまった。     
 実質、菊と会うだけで少し恥ずかしいのだ。      
 「ああ、どうしよう」      
 「みょーうーか」        
 「なんだ雪か」         
 「どうしたのそんなに落ち込んで」      
 「落ち込んでないよ」      
 「ばればれだよ明夏」      
 そうか人から見てもわかるくらい落ち込んでるのか私は。       
 「珍しく蝉島君と一緒じゃないじゃない」      
 「いろいろあってね」      
 「いろいろって何があったのよ」       
 私は答えに詰まった。ほんとのことを言うのがどれだけ恥ずかしいか。      
 「どうしたの沈黙して、言いたくないなら無理に聞き出すのも悪いか」     
 「ごめんね雪」         
 雪は他の友達のところへ歩み寄って行った。     
 「仲直りしないとな」      
 そう自分に言い聞かせる。        
 菊が他の誰かと付き合いそうもないし大丈夫だよね。     
 少し自分に甘い言葉だったがそう思うことしかできないのだ。     
 そう願うことしかできないのだ。       
 私の頬を春風がかする。そんな些細なことにも懐かしみを感じてしまうのだ。   
 「今日も一日頑張るかな」           
 しかし、今日という一日が明夏の運命を変えることになるとはこのときは思ってもいなかった。
 そんな激動の一日だったとは。
作者: 青木 (ID:********)
投稿日:2016/02/28(日) 09:27
閲覧数:1918
BYTE数:2 KB (1487字)

<<前話  目次  次話>>

■感想を見る・書く
■別話を閲覧する
■一覧に戻る