外伝その27


――ベアキャットを撃退に成功した501。執務室でミーナは昨年の事を思い出していた。昨年から変わったこの世界の歴史を。そして別世界の未来で造られた超兵器群の力を。


――去年の今頃だったわね……スーパーロボットというものがどういうものか知ったのは。

昨年の1944年にて初めて知った並行時空の存在。そしてそこで生み出された超兵器の数々。どれもこの時代の常識が通用しなかった。


『ストナーァァァァァァサァァァァンシャイィィィン!!』

真ゲッターロボが放った最大の一撃は閃光と爆発を伴いながらネウロイの巣を、そしてその眼下のガリアを包み込む。

「な、なんて攻撃だ!?ネウロイの巣をスッポリ包み込んじまった!」

「で、でもあれじゃガリアも!」

シャーリーとは裏腹に、リーネが狼狽えた声で言う。ストナーサンシャインはその威力圏内にガリア全土を覆い尽くすネウロイの巣を入れている。その爆発は地を裂き、空の雲をすっかり散らしてしまっている。ガリアが消えてしまうのではないかと考えたからだ。ペリーヌもこの常識外れの光景に大いに狼狽し、

「な、何てこと……これではガリアは……ガリアは……」

……とへたり込んでしまった。ミーナ達カールスラント勢もこのあまりの威力にもはや言葉も無かった。

『バーロー。フランス……もといガリアは大丈夫だぜ。見な』

竜馬が真ゲッターロボ越しにガリアの方角を指指す。ストナーサンシャインが収まったのだ。すると。そこには信じられない事に、多少地形は変わったもの、市街地などの居住区そのものは無傷のガリアの姿があった。ストナーサンシャインはネウロイだけを完全消滅させた事を妙実に表していた。

「ガリアに威力を伝えないで、ネウロイにだけ効果を発揮したぁ!?なんつーバケモンだよ!?」

エイラが真ゲッターロボが見せたこの所業に驚きを隠せないと、言った様子を見せる。。何せ国一個分を包み込むほどの爆発にも関わらず、ある特定の目標に対して効果を発揮するなど兵器としての常識を超えていたからだ。



「提督!別方面よりネウロイ接近!!」

「奴ら、真ゲッターのあの光に気づいたな……直掩部隊は戦闘準備!」


――あの時、真ゲッターロボが放った大技……ストナーサンシャインはガリアを完全に人の手に戻したけど、同時に各地域のネウロイを活発化させてしまった……ワイド島分遣隊にも連絡が直ちに取られて、戦線に加わってもらったわね。トゥルーデはあの子に対してバツの悪そうな顔してた……まぁあの時のトゥルーデは精神的に荒れてたし、仕方がなかったけど……。

ワイド島分遣隊とは、1944年当時に501基地近くの島に展開していたウィッチ部隊の事である。501が撃ち漏らしたりしたネウロイを落としたりするために設立されていた。1944年当時はリーネの姉のウィルマ・ビショップが在籍していた。そこにも出動命令が出されたのだ。その時、バルクホルンはかつて自身がワイド島へ追い出したような形となってしまった501設立時のメンバーであったラウラ・トートに対して、後に何らかの負い目を感じたのか、ラウラに自身の未熟さと行いを戦場で詫びた。ラウラもバルクホルンに「気にしてない」と言い、わだかまりを解消したという。501も戦線に参加し、最後の戦いとして奮戦した。

「へぇ〜あなたがリーネのお友達」

「はい!宮藤芳佳です!リーネちゃんのお姉さんと会えるなんて嬉しいです!」

「あれ?お姉ちゃん、あがり迎えたはずじゃ……?」

「この間までね。私のところにもこの艦隊の人達が来てね。変な風呂敷被せられたら、あら不思議、若返っちゃったの」

「えぇ〜!?」

ウィルマは妹と妹の親友である芳佳に自身が若返った旨を伝える。そのために引退は当分先になったともリーネに伝える。

――それであの大型ネウロイが現れた。あのネウロイはまるで……。


「なんだあれは!?」

その場にいた地球連邦軍の全将兵が震撼した。現れたネウロイの姿はかつてのコスモ・バビロニア建国戦争にて猛威を振るったクロスボーン・バンガード最大最強のモビルアーマー「ラフレシア」を模したかのような風体だったからだ。


「何……あれ…花!?」

「花の形のネウロイだと……?新型か!」

『待て!そいつに手を出すな!そいつは普通の奴とは違う!!』

「何ッ!?どーいう事だ!?」

シーブックの警告に思わず問いかける坂本であるが、その答えはすぐに出た。それはまるでカロッゾ・ロナの魂がネウロイとして転生したかのような猛弾幕が展開されたからだ。


「うわわわっ!?」

弾幕の中を避けられるエイラをしてもそう言わしめるほどの猛攻撃。その能力はこれまでのネウロイを凌駕し、モビルスーツにも通用する出力のビームを放っていた。その証拠にそのビームがジムVの胴体装甲を貫通し、撃墜する光景があちらこちらで見られた。

「ああっ!」

「モビルスーツのあの装甲をぶち抜くだって!?今までとは桁違いだ!」

「くそっ、ならこれで!」

坂本が刀を引き抜き、吶喊しようとするが、シーブックに制止される。

「やめろ少佐!」

「私には魔眼がある。あのネウロイのコアを破壊さえ出来ればいい。そのためなら命は惜しくはない」

「なら僕に任せればいい」

「なっ!?いくらお前のガンダムが高機動型と言っても……あんな弾幕を、第一、ウィッチに比べてモビルスーツはデカすぎる……」

「ああいう手合いの相手は一度しているんでね。ジュドー、この子達の面倒は頼むぞ」

「アイアイサー」

シーブックは意を決し、F91を加速させた。その加速はガンダムの名を持つだけあって、ジム系の量産型とは一線を画するモノ。最も現時点でシーブックが使ってるモノは量産型F91をチューンアップして、オリジナルと同等、もしくはそれ以上のポテンシャルを出せる逸品であるが。

「無理だ、当たるぞ!!」

F91の機動を見たエイラが叫ぶ。ビームはF91に向けて集中されていく。如何にエイラでも避けられるか自信がないほどに。ウィッチより遥かに大きいモビルスーツでは命中は必至だと、誰もが思ったその瞬間だった。F91から光が発しられ始めたのだ。

「な、なんだぁ!?」

「え、F91から光が……!」

「こ、これは一体……!?」

「よっしゃ!!これで勝つる!!」

その光景にジュドーの声が弾む。疑問に思ったエイラがジュドーに問いかける。F91の光が何を意味するのか。

「ジュドー、説明しろ!ありゃ何だ!?」

「あれがF91の真骨頂。バイオコンピュータがパイロットの技量を認めた場合にのみ発動する最大稼働状態だよ。あの状態になったらF91は歴代の中でも最強クラスの機動性を発揮できるんだ」

「なんだって、最大稼働!?」

その言葉の通り、F91の肩や足などの各部の放熱フィンが展開され、機体全体から光を発する。これはオリジナルのF91と同等以上の機能を付加させるチューンアップの際にサイコフレームでコックピット周りを補強し、バイオコンピュータをアップデートするなどの措置が行われた際の副産物であり、サイコフレームがウィッチ達の「守りたい」という意志とシーブックの意志に共振した結果である。これはかつてのνガンダム張りの現象であった。

「鉄仮面の亡霊め!!」

シーブックはネウロイの姿がかつて自らが倒したラフレシアに似通っている事から、そう毒づく。そして次の瞬間、F91は“分身”した。

「何ィ、分身の術だとぉ!?いったいどういう事だ!?」

坂本はF91が分身した事に己が目を疑い、思わず魔眼で確認を取るが……やはりどう見ても分身している。

「やはり分身している。おいジュドー、あれは何だ!」

「その辺は俺じゃ上手く説明できないから、あとで整備班長から聞いてくれ。とにかくサイコフレームとバイオセンサーの共振とF91の機能のおかげだよ」

「何ィ!?それじゃ分からないぞー!」

坂本が文句言うのも無理ないが、F91がこの時に見せたMEPE、俗に言う質量を持った残像は実際、肉眼で見ても欺瞞効果を生んでいた。装甲表面を剥離させる事でバイオコンピュータなどを冷却させるために、その場に残像が残る。剥離した金属片はガンダムの各部装甲そのままの形で剥離するので、肉眼で見ても欺瞞されるというわけだ。

「見える!」

F91は質量を持った残像を以ってしてネウロイに肉迫する。それはネウロイすら残像を攻撃してしまうほどに疾く、鋭かった。

「“ヤツ”はそこだぁぁぁぁっ!!」


坂本の叫びに応えるかのように、シーブックは愛機をネウロイのコアの直上に位置させ、腕のビームライフルに加え、ウェスバーを展開して最大出力で放つ。

「なんとぉ――――ッ!!」


そして号砲一閃、ネウロイはコアを撃ちぬかれて崩壊したのだ……。





――あの一発は劇的だったわ。何せF91がヒロイックな働きを見せた事でモビルスーツに対して懐疑的だった上層部も完全に信用したし、スーパーロボットに対しては恐れすら抱いた。国一個を一機で滅ぼせるマシーンは神か悪魔のどちらに映ったのかしら?

あの戦いからこのロマーニャで501が再結成されるまでの間、ミーナはスーパーロボットに関する資料を未来から取り寄せて読み漁っていた。その過程でマジンガーの存在を知った。未来で言うところの「現在形スーパーロボット」の始祖であったマジンガーZの活躍を記録映像で目にした。マジンガーZは未来世界での空母機動部隊一個分の戦闘力と、超合金Zという強固な装甲を持った強力なマシーンであった。記録映像で、機械獣と呼ばれた敵のロボットをほぼ寄せ付けない強さを見せつけていた。操縦者は開発者の実孫の兜甲児。その強さはマスメディアによって半ば「我らが鉄の城」と神格化される程だったという。

「でも、マジンガーZでも歯が立たない強敵が現れて、Zは敗北した……それまでの神通力が嘘のように、無残に破壊されて」

マジンガーZ敗北の日の新聞やニュース中継の映像は見たが、まるで処刑される直前のイエス・キリストの如き様相を呈し、見てられないほどに傷ついた姿だった。そしてマジンガーZが倒れ伏したその瞬間、まるでこの世の終わりのようだったとされている。それを救うかのように現れたグレートマジンガーが注目を浴び、更にはマジンカイザー……。

上層部がこの一連のマジンガーシリーズ発展の過程で総合性能が飛躍している事にある種の恐れを抱いたというが、とり越し苦労だと思うのだが。

「鉄の城、偉大な勇者に……魔神皇帝。ネーミングセンスはともかくも。とんでもなく強力なマシンなのは理解できた。そして宇宙も守れる魔神。いずれ、この目で見てみたい。…‥‥今から考えてみれば、あのネウロイの出現がネウロイの攻勢の始まりだったかも知れない。結果的にあの実験は失敗したけれど、一筋の光も残した。ネウロイには人類とのコミュニケーションを図ろうとした勢力がおり、それはあれを境に主力となった、強化型とは対立している事。宮藤さんが言ったことは的はずれじゃない」

ミーナはこの日の日誌にこう書き残した。歴代のマジンガーへの興味を垣間見せつつ、芳佳が示した光明は決して間違ってはいないと、彼女がネウロイへの考えを変えつつある事が妙実に表れていた。そして、翌日の事であった。














――502の残りのメンバーが補給修理地点のギリシャの港にて二式飛行艇の修理を待っている所に、ある二人の男達が護衛の任についていた。宇宙刑事シャリバン=伊賀電と宇宙刑事シャイダー=沢村大の二人だ。

「俺は伊賀電」

「同じく沢村大。君達の護衛を引き受けた。よろしく」

往時そのままの姿の二人はかつてマドーやフーマと戦っていた時同様の私服姿。ウィッチ達に護衛の任についた旨を説明する。

「あなた達が軍よりもっと凄い護衛なんですか?なんかそう見えないですけど」

「まぁ、そうだろうねぇ」

沢村大がジョーゼット・ルマール――通称ジョゼ――に同意する。自分らは一見すると、何も変哲の無い扶桑人青年なのだから。軍人よりよほど頼りになると言っても、どうも信じられない感じがするのだ。

「君達は君達の常識じゃ測れない敵に狙われている。ティターンズでもない、敵にね。そいつらから君等を守る為に俺たちは来たというわけだ」

「でも、ティターンズでさえ私たちの常識超えてるのにもっと常識外れの奴らがいるんですか?」

「ああ。クライシス帝国。異次元から地球を侵略してきてるあくどい奴らさ。そいつらは強力な怪人を使って地球を自分たちの移民先にしようと企んでいる。しかも地球人を抹殺するのを前提にね。俺たちはクライシスから君達を守るために宇宙から来たというわけさ。宇宙刑事だしね」

「と、いうことは宇宙の警察官なんですか、
あなた達って」

「そういう事。最も普通の警察じゃ無いから君達が考えてる警察とは装備が違うけどね」

伊賀電は502の残りのメンバーに自分達が宇宙刑事である事を明かす。宇宙刑事という存在が地球で有名となり、銀河連邦に地球が加盟した事で、以前のように正体を隠す必要が無くなったためだ。

「伊賀さん達はどーやってこの世界に?」

「ああ、俺達は超次元戦闘母艦を個人個人で与えられていてね。それで来た。わかりやすくいうと宇宙戦艦みたいなものさ」

「個人で宇宙戦艦ん!?あんたたちの組織って何から宇宙守ってるんだよ?」

ヴァルトルート・クルピンスキーが伊賀のこの発言に驚く。個人単位で宇宙戦艦というのはオーバーにも思えるからだ。

「宇宙規模の犯罪シンジケートや宇宙海賊、それと侵略国家の軍隊かな。まだまだあるけど」

「うへぇ……」

502のメンバーは伊賀と大のこの発言に唖然としてしまう。宇宙刑事というのは普通の警察業務の他に、軍隊的な仕事も一部行なっているという。そのためにこなすべき任務が過酷なのは容易に想像がつくからだ。刑事といっても実質的にはリベリオンの西部開拓時代の保安官と巡回判事の仕事に加え、軍隊の業務を兼任しているようなモノだと思われるからだ。

















――そうして数時間ほど雑談を続けていると、伊賀達の言うとおりにその敵が現れた。クライシス帝国である。


「嬢ちゃん達を501のもとには行かせん。ここで死んでもらうぜ」

襲撃してきたのはクライシス帝国・怪魔ロボット大隊であった。指揮官のガデゾーン自ら出向くあたり、合流阻止に力を入れているのが分かる。

「貴様は!」

「俺はクライシス帝国・怪魔ロボット大隊の指揮官、ガデゾーン。ウィッチの嬢ちゃんものともお前らを葬ってやる」

サイドアームである、ショットガン型のレーザーガンを片手にそう宣言する。彼の傍らには自身が造り上げたロボット戦士である、メタヘビーとエレギトロンを従えている。メタヘビーは怪魔界とこの世界の地球を繋ぐウォーターラインの防衛の要、エレギトロンは地球と怪魔界を繋ぐゲートを完全に開くのに必要な鍵を手に入れる為に造られたロボットである。

「怪人を二体も引き連れるなんて大層なサービスじゃないかい、ガデゾーンさん」

「ふふふ……我々はこの地球で既に複数の作戦を練っている。お前らでも阻止は難しいだろーて」

「そいつはどうかな?」

伊賀電は服を脱いで、バトルスーツ姿となり、ある一定のポーズを取り、コードを変身コードを発する。

「赤射ぁッ!!」

そして次の瞬間には赤いパワードスーツを纏う戦士となっていた。そしてヒーローのお約束の名乗りを上げる。

「宇宙刑事シャリバン!!」

――宇宙刑事シャリバンは僅か1ミリ秒で赤射蒸着を完了する。では赤射プロセスをもう一度見てみよう。

「赤射ぁッ!」

灼熱の太陽エネルギーが、グランドバースの増幅システムにスパークする。増幅された太陽エネルギーは赤いソーラーメタルに転換され、シャリバンに赤射蒸着されるのだ!!

「蒸結!!」

「宇宙刑事シャイダー!!」

沢村大もシャリバン同様に、変身する。彼の場合は青いパワードスーツを纏う。シャリバンが赤いのとは対照的だ。

――宇宙刑事シャイダーは僅か1ミリ秒で焼結を完了する。ではその原理を説明しよう!

「蒸結!!」

宇宙刑事シャイダーは、バビロス号から発射されるプラズマブルーエネルギーを浴びて、僅か1ミリ秒で焼結を完了する!



「あのぉ〜さっきから説明のナレーションみたいな声がどこからか入るのは何でなんでしょうか?」

ジョゼの疑問にクルピンスキーが答える。彼女は状況を飲みこんだようで、半ば諦めたように言った。

「さぁ、お約束じゃないのか?こういう時の」

「は、はぁ」

「お約束ねぇ……」

宇宙刑事の“お約束”にいささか呆れてしまい、ため息を漏らすヴァルトルート・クルピンスキー、エディータ・ロスマン、ジョーゼット・ルマールの三人であった。この報は501基地の菅野達にも伝えられた。

「何ィ、ジョゼ達が襲われた!?」

「ああ。補給修理先でクライシスに襲われたらしい」

「くそぉ〜クライシスの野郎共め!この世界まで手を伸ばしてやがったのか!」

この頃には菅野たちなどもクライシス帝国の事は知っており、その陣容も知られていた。なので、菅野達もちょくちょく話題に出していた。501の中で交戦経験があるのはシャーリー、ルッキーニ、ハルトマンの三人だ。

「あいつらしつこいからな〜それで?」

「ヒーローが二人護衛についてるから大丈夫だってさ」

「向こうにゃどれだけヒーローいんだ?」

「さぁ。もうなんでもござれって感じかもね」

菅野はヒーローがあまりに多い向こうの世界にいささか呆れたようだ。ハルトマンとニパもそれに同意し、ハルトマンはなんでもござれと言ったが、事実、その通りだった。



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