役者は揃い 運命の劇がはじまる 

だが彼等は知らない 自分達がピエロである事を

知らないが故に幸せであるが 知らされた時に不幸になるかは

誰にも分からない



僕たちの独立戦争  第十二話
著 EFF



―――ネルガル会長室―――

「―――という訳でその人物に会おうと思います、会長」

プロスの発言に、エリナが叫んだ

「何いってるの!! そんな事する必要はないわ。SSを動かして拘束すればいいじゃない」

「いや、プロス君。君にまかせるよ、できればこちらに引き込んで欲しい」

「わかりました、ではその方向で進めます会長」

「だから、人の話をきいてるの!!」

叫ぶエリナにプロスが答えた

「エリナさん、彼女を敵に回してクリムゾンや他の企業に行かれるのはマズイのです。

 どこまで知られているか分からず、拘束に失敗して他の企業に行かれるのは困るのです」

「そうだね、場所の特定はできるかいプロス君」

「いえ戸籍はありますが、現在の住所も不明です。会うまでは何も分かりません」

「姿を見せない、慎重な女性だね。………もしかしてそうなのかな」

「はい、その可能性もありますので………」

黙り込む二人にエリナが

「何よ、どういう事心当たりでもあるの」

「ええ、一人あるんです。もしその人物なら敵にしては不味いんです」

「そうだね、ネルガルには致命的な事になるからその場で処理も不味いね」

「はい、単独で処理した後にもう一人に知られると、ネルガルのSSでは対処出来るかどうか」

「ちょっと、そんなに危険な相手なの!!どうするのよ」

顔を青ざめるエリナを見ながら、アカツキはプロスに

「うまく交渉してくれたまえ、プロス君。紅の魔女――クリムゾンウィッチ――さんに」

「はい、その事を含めて交渉にあたります会長」

エリナが声も出せないなか、二人は厳しい顔で話し続けた


―――オセアニア 連合軍基地 応接室―――


「ロバート・クリムゾン会長ですね、私を呼ばれたのはどういう事でしょうか」

静かに探るように話す青年仕官にロバートは話す

「アルベルト・ヴァイス中佐だな、君にある部隊を活用してもらう事になった。

 本格的に始動するのは来年からだが、君にはその部隊の戦術の訓練を行ってもらう事になるだろう。

 その為一時軍ではなくクリムゾンの機動兵器の実験に付き合って欲しい」

ロバートは簡潔に話したがアルベルトは逆に疑い始めた

「申し訳ありませんがクリムゾンと個人的に付き合う事はありません。

 その件は聞かなかった事にして下さい、では失礼します」

ロバートの申し出を断り部屋から出ようとしたアルベルトにロバートは事実を告げた

「この戦争の真実を知りたくはないかね、茶番の戦争の裏話を」

その言葉にアルベルトは振り返り尋ねた

「どういう意味ですか、この戦争が茶番ですか。犠牲者が出ているのですよ、遊びじゃないのです。

 冗談は止めてください、兵士達が怒りますよ」

「そうだな、だが君は木星蜥蜴の正体を知りたくはないか、私は知っているよ。

 此処では言えんが現在の戦況を知っているのかね、火星を軍が見捨てた事を知っているのか」

「それはどういう事です、軍が火星を見捨てたなんて嘘でしょう。

 フクベ提督の活躍で木星蜥蜴の侵攻が止まったと報告されてます、いい加減な事を言わないで下さい」

「何も知らないのだな、フクベ提督は敗戦を隠す為のスケープゴートだよ。

 君も分かっている筈だ、地球は負け続けている事に」

ロバートが話す事にアルベルトは言い返せなかった

「ただ火星は無事だよ、独自で生き残る為に頑張っているよ。君はどうする市民を見捨てるかね」

「見捨てませんよ、軍はそんな事はしません。最期まで守りますよ」

「ならば私に手を貸して欲しい、この茶番を終わらせたい。

 その為に君を選んだ、クリムゾンと関係が無く公正で不正が出来ない人物が必要なのだ。

 今の軍は危険なのだ、このままでは泥沼の戦争になるだろう。

 クリムゾンではなく私個人に力を貸してくれないか、今すぐ答えなくてもいい。

 一週間待つ、君の決断で被害を少なくしたい………待っているよ」

全てを話すとロバートは席を立ち、帰って行った

(どう言う事だ、クリムゾンではない独自の行動か、戦争の事も聞かないと不味いな。

 この戦争は何処かおかしい、どうやら裏があるな………軍を変えるか。

 火星の事は事実だろう政府も軍も信じられないな、どうするべきか)

アルベルト・ヴァイスの決断が一つの転機になる事を彼はまだ知らない


―――サセボシティー 雪谷食堂―――


「ここですか、会見場所は」

「ミスター、ここに人材がいるのか」

「はい、これから会う人物は非常に重要な方で、決して怒らせないようにお願いします」

翌日、プロスはゴート・ホーリーを伴って雪谷食堂にやって来た

「いらっしゃいませー」

中には一人のサングラスをかけた女性がいるだけだった

プロスはその女性に声をかけた

「貴女がアクア・ルージュメイアンさんですか」

「そうです。プロスペクターさんとゴート・ホーリーさんですね」

二人はその席に座り食事をしてから会話を始めた時、その女性がサングラスを外した

その女性の瞳を見たプロスは驚きに眼を瞠った

「そっその瞳は、まさか貴女は……ですがありえない」

「ええ、ネルガルのプロトタイプのマシンチャイルドですが、驚きましたか」

驚くプロスを愉快に笑うアクアに

「ですが、ホシノ・ルリが最初の成功例のはずですが」

「ええ、私達の実験データーから彼女が生まれました。

 私達は失敗作として廃棄される所を極秘に救われ、生き残ったんです。

 ただクロノはネルガルの実験施設の事を知り、潰したので連絡を入れましたが、

 正直まだ人体実験を行っているネルガルには失望しました」

アクアの静かな怒りにプロスは

「あれは社長派の仕業でして、全て処理しましたので心配しないで下さい」

「まだ何も終わっていないのにそんな事を言わないで下さい、いい加減気付いた方がいいですよ。

 自分の首を絞めて、死に掛けている事に、

 ネルガルはいまだ先代の会長の下に動いている事に気付きなさい」

アクアが静かに現在のネルガルの状況を話すがプロスには分からず聞く事にした

「……どういう事ですか、今の会長は先代とは違いますが」

「いえ、そっくりですよ。考え方こそ人道主義ですが、実験している事は変わりません。

 モルモット扱いされた事がない人は本当の苦しみを知らないんですね。

 何の為に社長派の資料を送ったのか、全て無駄に終わりましたよ。

 ネルガルは何も変わる事はなかった、クロノもこの事に憤りを感じてますよ」

アクアの悲しく憂いを含んだ声に二人は言い返せなかった

「…………それでは用件を伝えましょうか」

「そうですな、私どもの計画の事で交渉があるようで」

「実は片道で悪いんですが、火星まで乗せて貰えませんか。……ネルガルの戦艦に」

「えっと、どういう事ですか。できれば詳しく教えていただけないかと」

「火星に家族がいるんです。戦争が始まって戻れない所に船があるので声をかけたんです」

「……………そうですか、危険ですよ。このまま地球に残った方がよろしいかと」

「無理です。地球にいる限り、常にネルガルに怯えて生きる事を続けなければなりません」

「今の会長なら保護してくれますよ」

「嘘ですね。未だに人体実験を承認している人物など信じられませんね。

 それに火星の事でもはやネルガルを信じる事が完全に出来なくなりました」

アクアの言い分にプロスは言い返せなかったが、ここで気付けなかった事を火星で後悔する事になる

「……3日待ちます。時間と場所はここで、返事はその時でいいです」

「分かりました、では3日後にここで返事をします」

「先程の会話ですが、必ず会長に伝えてください」

「…………よろしいので、船に乗れなくなりますよ」

「ええ、ダメな時は時間はかかりますが、クリムゾンに協力します。

 火星にいた時に機動兵器の開発に携わったので、優遇してくれるでしょう」

「……ネルガルとしてはそれは困るんですが、こちらで働きませんか。

 貴方ならネルガルとしても優遇しますし条件もクリムゾンより良くしますよ」

「ですから、実験体になって殺されたくないんです。信用されない事ばかりするから困るんです。

 同じマシンチャイルドの子供達に貴方達は何をしましたか。

 モルモット扱いの使い捨ての道具にしている会社には居たくはないですね。

 交渉が終わるまでは動きませんので、安心してください」

にこやかに微笑みながら拒絶するアクアにプロスは声が出なかった



―――ネルガル会長室―――


「………という訳で交渉は難航してます」

プロスの説明にエリナが

「ふざけないで、何様のつもりよ!!私が交渉に出て従わせるわ。

 ダメならSSを使いましょう、拘束して処理すれば問題ないわ。いいでしょう会長」

「ダメです。エリナさんが出れば、最悪その場で殺されますよ」

「だったら先に拘束してから、会えば問題ないでしょう」

「これまで慎重に行動する女性が姿を現したんですよ。切り札は複数持っているでしょう。

 おそらく自分に何かあれば、必ず報復する手段を持っていますよ、エリナさん」

「……………プロス君、僕が会いたいんだがダメかな」

普段のアカツキとは違う雰囲気に二人は驚いた

「僕のどこが父上にそっくりなのか、いまだに父の下で動いているとか、どうしても聞きたいんだ」

「………おやめになった方がいいですよ、会長。彼女はネルガルを完全に信用してません。

 会っても答えはくれません。むしろ会長の心に毒の言葉を植え付けるでしょう。

 その彼女にネルガルの言葉を信じて頂けないでしょう。

 戦争がなければ彼女はネルガルに接触する必要はないのですから」

プロスの確信めいた発言にエリナが

「そこまで言わなくてもいいじゃない。やっぱりSSを使いましょう。

 一応尾行して居場所は確認したんでしょ」

「だから危険なんです。人気の少ないビジネスホテルなんて私達を試すようなものです」

「都合がいいじゃない。ばれないし手間が省けるし」

「相手もそう考えますよ。罠に飛び込んで………最悪SSが全滅になるかも知れません」

プロスの返事にエリナは沈黙した

「………もういい。わかった彼女の要求をのもう。契約は片道で火星で降りてもらう。

 火星が全滅していてもだ。それが条件で、変更するならここに連れて来てくれたまえ、プロス君」

「いいのですか、会長」

「これなら、ここに来るだろう。火星で一人死ぬ気はないだろう」

「いえ、彼女は来ないでしょう。ネルガルに来るくらいなら死を選ぶでしょう」

プロスの返事に二人は声も出なかった

「私見ですが彼女はかなりの修羅場を潜りぬけ、覚悟を持つ女性です。生き抜く力は十分持っていますし、

 今の会長の言葉で私にも彼女が言った意味が分かりました」

「プロス君、………教えてくれるかい」

「会長は命を軽んじているからです。未だ人体実験を続けている事を非難していますが、

 それを止めずに続けているからです。

 このような状態では彼女はネルガルの敵になるでしょうが文句は言えませんな。

 何故なら彼女はネルガルの人体実験の被害者で、今も続けている事に嫌悪しています。

 言っておきますがエリナさん、貴女は彼女にとって憎むべき存在ですから余計な真似はしないで下さい。

 もし勝手に動いて彼女を怒らせたなら、貴女を処理して彼女との和解を優先しますので」

プロスの言葉にアカツキは動揺し、エリナは自分が非難されプロスの非情な考えを聞かされて動揺していた

「それでは、その条件で交渉をつづけます。失礼します、会長」

プロスが退出し、エリナが逃げるように部屋を出ると

そこには力なくうなだれるアカツキの姿だけが残った



―――3日後 サセボシティー 雪谷食堂―――


「ではこの条件でよろしいですか」

「ええ後腐れないので、最高の条件ですね」

「それでは契約書にサインをお願いします」

渡された契約書を受け取り、アクアは契約書を調べた

「特に問題はないですが、これはなんですか」

アクアが聞いた条件にプロスは

「これに気付きましたか、一応戦艦ですので恋愛などされると困るんです」

「いえ、こんな小さな文章で書かれたら気付かないでしょう。後でもめますよ」

「それより消さないんですか。気付いた方は消されてますよ」

「これでも火星にクロノがいますから、それに遊びじゃないんです。火星に行くのは」

サインを終え、アクアは

「では片道ですがよろしくお願いします。

 それからここの見習いさんがIFSを持つ火星の出身ですから都合がいいんじゃないですか」

アクアの問いかけにプロスは考えて答えた

「確かに厨房で男手が欲しいと頼まれてましたし、……スカウトしますか」

(引っかかりましたね、これで彼の保険の問題は無くなりジャンプの件も不明に出来ますね)

密かに計画が成功した事をアクアは気付かせないように普通にプロスに話しかけた

こうしてテンカワ・アキトの戦争後の借金生活の問題が解決された事に誰も気付かなかった

…………歴史は少しづつ変化していく

「ではプロスさん、失礼します」

「はいそれではナデシコでお待ちしております」

アクアが出て行くとプロスがスカウトを始めた



―――サセボシティー 地下ドック―――


「これがネルガルの誇る、起動戦艦ナデシコです。いかがです、アクアさん、テンカワさん」

「ナデシコ、変な形っすね」

「これは手厳しい。この艦の持つ構造では致し方ないことで、ですが性能は問題ありません」

「……プロスさん、死ぬ気ですか」

ナデシコを見つめながらアクアは真剣な様子でプロスに尋ねた

「どういう意味でしょう、アクアさん」

「そのままの意味ですよ。戦艦にしては武装が少なすぎますし、これでは試作艦に見えますよ」

アクアの発言にアキトが聞いた

「アクアさん、そんな事分かるんですか」

「ええ、主武装はグラビティーブラスト一門、他はミサイルのみですか。

 これでは戦艦とは言えませんよ、駆逐艦ならいいですが」

「……問題がありますか、十分戦えますが」

「たしかに一対一なら勝てるでしょう、数で押し切られると危険ですね。

 艦長は実戦経験はありますか、豊富な方ならいいですが、経験の無い人物は危険ですよ」

アクアが告げる事にプロスは考えるが既に決まった事を変更出来ないので聞かなかった事にした

「……そうですか、では次に格納庫に案内します」


格納庫についた三人が見たものは、奇妙な踊りをするロボットであった

「何っすか、あれは」

「あれが噂の機動兵器ですか、なかなかいい動きをしますね。プロスさん」

アキトの疑問にアクアが答える様にプロスに尋ねた

「はい、ネルガルの誇る、エステバリスですが…………ヤマダさんですね。操縦しているのは」

プロスの声に気付いたパイロットが

「ちが――う、俺の名はダイゴウジ・ガイ!! 博士、ナデシコは俺が守ってみせるぜ」

「誰が、博士だ。その二人はパイロットか、プロスさん」

三人の側に来たメガネをかけた整備士にプロスが

「いえ、彼は火星出身のコックでして、こちらはオペレーターの方です」

「そうか、俺はウリバタケ・セイヤ。この船の整備班長だ、よろしくな」

「テンカワ・アキトっす。よろしくお願いします」

「アクア・ルージュメイアンです。……ウリバタケさん、あのままでいいんですか」

アクアの言葉に後ろを振り返ったウリバタケは

「見せてやるぜ、この正義の魂の熱き滾りを、

 これが俺の必殺のガイ・スーパーナッパアアアア―――――!!!!!」

叫びと共に上に突き出される、右拳。一瞬動きが止まるが重力に従って機体が倒れてくる

派手な音が格納庫に響くと辺りは騒然となった

「あの馬鹿、エステに傷付けやがって」

「ああ、こんな所で無駄な出費が…………」

開かれたコクピットから出てきたヤマダが

「手があって、足がある。これこそロボット、男のロマンだよ。ロボットの操縦はよ!!」

興奮するヤマダにウリバタケが

「たしかにロマンだが、……おめえ足折れてないか」

「そういえば、…………痛かったりするんだな、これが」

「タ、タンカ持って来い、急いで医務室に連れて行ってこーい」

周囲が慌てるなか、アクアはエステバリスに乗り込み

「ウリバタケさーん、この機体ハンガーに乗せて損傷のチェックしますよー」

と暢気に声をかけた

「すまねー、そうしてくれると助かるよー」

と声を出すウリバタケにあわせて、

「中にある超合金ゲキガンガーを返してくれー」

とヤマダの声に

「後で返しますよ〜ヤマダさん」

「ちがーう、俺の名はダイゴウジ・ガイだー」

と叫びながらタンカで医務室に運ばれて行った、その時大きな揺れと警報が鳴り響いた

「プロスさん、敵襲ですね。他のパイロットはいますか」

「いえ、パイロットはヤマダさんだけです。残りの方は宇宙で訓練中です」

プロスがアクアに現在の状況を話すと、アクアは考えてプロスに話した

「ではこのまま待機します。状況が分かり次第、連絡して下さい」

「どういう事ですか、操縦経験があるのでしょうか」

「アクアさん、何をするんです。………まさか危険です、俺がやります」

心配するアキトにアクアは微笑んで

「大丈夫ですよ、テンカワさん。これでも火星で操縦訓練を受けたパイロットです。

 誰かアキトさんを食堂まで連れて行ってください」

「おう、サイトウ連れて行ってやれ。アクアちゃん、問題はあるか」

サイトウに連れられて行くアキトを見ながら

「いえ、問題ありません。いい機体ですね、ブレードには劣りますが」

「ブレード、何だそれは。これが新型じゃないのか」

「火星の機動兵器です。それより武器はないんですか」

「すまん、イミディエットナイフしか使えん。他はまだ組み立て中だ」

「囮には十分です、離れてください。エレベーターまで行きます」

「………ではアクアさんにお任せします、私はブリッジへ行きます」

そう言ってプロスはブリッジに向かった


ブリッジでは一人の軍人が喚いていた

「何とかしなさいよ、あんたたち!!」

「なんとかって言っても、私たち軍人じゃないしー」

操舵士のハルカ・ミナトがこたえ

「兵隊さんがいるから、大丈夫ですよ」

と通信士のメグミ・レイナードが答えるなか

「地上の残存兵力、減少しています60%切りました」

淡々と答えるホシノ・ルリの声が響いた

「攻撃よ、攻撃。地上に主砲を撃ちなさい!!」

「地上には兵隊さんがいるんだけどー、いいの」

「それって、非人道的ですね」

軍人が一人喚き、操舵士と通信士が非難するなかでオペレーターのホシノ・ルリが

「無理です。マスターキーを持つ艦長がいないので、ナデシコは動く事も出来ません」

「そうなの、困ったわねー」

「そうですか、艦長はまだですか。予定では着ている筈なんですが困りましたね」

ミナトの声と同時にプロスがブリッジに入って来た

「ミスター、サセボに来ている事はわかっているんだが、遅刻だな」

ゴートの声に軍人が喚くなか

「お待たせしましたー、私が艦長のミスマル・ユリカでぇす、V(ブイッ)!!」

「待ってよー、ユリカー」

遅れてくる艦長と副長にブリッジが呆れるなか

「バカばっか」

ホシノ・ルリの声が響いた

「艦長、遅刻の件は後で聞きますが、どう切り抜けますか」

慌てる事無く、プロスが切り出した声に

「エステバリスを囮に時間を稼ぎ、ナデシコは発進し、

 敵を誘導後グラビティーブラストで決まりです!!」

「うむ、いい作戦だ」

「だが、艦長。パイロットのヤマダ・ジロウは骨折で出撃出来ないが……」

フクベに続いた、ゴートの発言に

「ええー、なんでー、他にパイロットはいないんですかー」

「いえ既に待機しておられます。ホシノさん、映像をブリッジに」

ユリカの疑問に答えたプロスの指示でウィンドウを開いたルリは眼を瞠った

『作戦を教えて下さい、ゴートさん』

「うむ、囮を頼む。時間は10分、敵をここまで誘導して欲しい以上だ」

『分かりました、地上にでます』

「は、はいエレベーター地上にでました」

「ではナデシコ発進準備を急いでください」

ユリカの命令にブリッジは準備を始め、ナデシコは発進した


ブリッジではアクアの動きに全員が驚いていた

「すげえ、すげえよ俺より上だぜ、何処に居たんだよ。軍ならエースで通用するぜ!

 ネルガルの専属のパイロットなのか、ゴートの大将さんよ」

「いや違うぞ、だが見事な操縦だ。これほどとは……ミスターはご存知で」

ゴートの問いにプロスはその光景を見ながら答えた

「いえ、これほどの技術があるとは思いませんでした」

アクアのエステバリスはその手にあるイミディエットナイフが一撃でバッタとジョロを切り裂き、

バッタとジョロの攻撃を流れるように避け、まるで舞を観ている気にさせた

ホシノ・ルリは作業をしながら考えていた

(私より年上のマシンチャイルドがいたなんて、……やっと会えた仲間ですね)

「エステバリス、誘導しながらポイントに到着、グラビティーブラストチャージ完了」

「では浮上して下さい、パイロットにナデシコに飛び乗るように連絡を」

ユリカの指示でエステバリスがナデシコに飛び乗った

「グラビティーブラスト、目標まとめて全部!って―――!!」


ナデシコから放たれたグラビティーブラストを見ながら

(始まりましたね、あんな未来にはしません。必ず変えてみせます)

アクアは決意を新たにして、通信を開始した

「これより帰艦します。よろしいですか」

『はい、お疲れ様でした、えーっと』

「アクア・ルージュメイアンと言います。よろしくね」

『メグミ・レイナードです。メグミでいいですよ、アクアさん』

「では帰艦します、メグミさん」

『すいません、アクアさん。皆さんに紹介しますのでブリッジまで来て頂けますか』

「そうですね、プロスさん。では帰艦後ブリッジに行きます」


ブリッジに到着したアクアにクルーとの紹介が行われた

「アクア・ルージュメイアン、サブオペレーターです。皆さん、よろしく」

「アクアさん、こちらがフクベ提督です」

「うむ」

「こちらが副提督のムネタケ少将です」

「よろしく、なかなかやるじゃない。あたしの為に頑張んなさいよー」

「通信士のメグミ・レイナードさんです」

「改めて、よろしくお願いします。アクアさん」

「操舵士のハルカ・ミナトさんです」

「よろしくね〜、アクアちゃん」

「こちらがオペレーターのホシノ・ルリさんです」

「……ども、ホシノ・ルリです。よろしくアクアさん」

アクアはルリの前に膝をついて顔の高さを合わせて手を差し出し

「アクア・ルージュメイアンよ、ルリちゃん。お友達になりましょうね」

優しく微笑みながら、声をかけた

「えっと、……はい、アクアさん」

戸惑いながら、手を出すルリにアクアは左手で頭を撫でながら

「はい、いい子ですね。ルリちゃん、よろしくね」

「……私、子供じゃありません。少女です」

頬を赤く染めながらこたえた。その光景を見ながらプロスが

「アクアさん、こちらが艦長のミスマル・ユリカさんです」

「私が艦長のミスマル・ユリカです。よろしく〜V(ブイッ)」

「副長のアオイ・ジュンさんです」

「アオイ・ジュンと言います。よろしくお願いします」

ブリッジのメンバーとの顔あわせが終わると

「さて艦長、副長、遅刻についてお聞きしたいんですが」

プロスの質問に慌て始める二人を見ながらアクアはハルカ・ミナトに尋ねた

「ハルカさん、二人とも遅刻されたんですか」

「あーミナトでいいわよ、アクアちゃん。仲良く二人で遅刻したの」

「そうなんですか、随分いい加減な人達ですね。ミナトさん」

「意外とキツイわねー、アクアちゃん」

「いえ、時間通りなら被害も少ないのではと思ったんです。今更ですが」

「……そう、でも死者は出てないわよね、ルリちゃん」

「はい、怪我人は多数でていますが、死者はでていません」

「そうですか、よかったわ。街中を移動したので心配したんです」

ルリの声にアクアは嬉しそうに答えた

「でもどうして副長も遅れたんですか、艦長に付き合って遅刻したんですか」

メグミの指摘に二人が答えられないでいるところへ

「プロスさん、ナデシコを移動させてからにしましょう。また敵が来たら困るので」

「そうですね、アクアさん。遅刻の件は後で聞きますが、では艦長」

「はいっ、それではナデシコ発進!!」

ユリカの号令と共にナデシコのクルー作業を開始した

「プロスさん、私はどこに座ればいいですか」

「アクアさんはこちらのシートに座って下さい。

 実はオペレーターが確保出来るとは思わなかったので、急遽作った予備のシートです」

シートについたアクアは周囲を見てプロスに話した

「そうですか。ではコレを医務室のヤマダさんに返してきていいですか」

「何ですか、コレは」

「エステバリスに置き忘れた、荷物です。ついでに食堂にいきますがいいですか」

「はい、今日はこのまま休んで下さい。本当に助かりました、アクアさん」

「お役に立てて何よりです。お疲れ様です、皆さん」

アクアは挨拶をするとブリッジを離れた

(まずは成功ですか。ヤマダさんを助けて、サツキミドリを何とかしないと)

アクアはこれから起こる出来事に対処するべく考え始めた

未来を変える為に










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EFFです。

ナデシコ発進ですね、アクアの頑張りは報われるのか。
とりあえずアキトの借金生活は改善されました(爆)
ご期待下さい


感想

EFFさんまたまた連続投下!

まだまだかなりのストックがあるそうです(汗)

8月はEFFさんの話題で一杯になりそうですね!

とまあ、それはさておき感想を。

最初の二本は火星と木星の動向を中心に、残る二本はナデシコへの乗り組みについてのアクア嬢の動きですね。


木星に対する報復攻撃、かなり派手にいってますね〜、兵器の配備も進みはじめています。

ただ、火星に生きる人々は現在残り百九十数万人ほど…

食料プラント、衣料プラント、など工場や農作業をする人々がやはり大部分であります、

そして、戦闘できない子供と老人を引くと、軍事にまわせる人員は多くて一割。

兵器生産、兵器開発、補修、物資補給など戦闘班以外の人たちが大部分となる事を考えて、戦闘班に回せる人員は三割でも多いほうです。

よって、だいたい六万人といった所でしょうか…無理して集めて10万人でしょうね…

その十万人全員に船や戦闘ロボットが与えられるわけもありません。

やはり、船員か白兵戦要員として乗り込むか、基地の防衛が中心ですね。

急造の火星戦艦は片手で数える程度でしょう。ロボットも数を作るには人手が足りません。100体を出ることは無いのではないかと。

そうなれば、火星は苦しい戦場となるでしょうね。クリムゾンのてが差し伸べられても互角まで行くのかどうか…

気になる所です。まあ、奇襲をかけるなら、火星の後継者ばりの事が出来るでしょうがね。


アクア、ネルガルに乗り込む…派手に立ち回ってますね〜

ネルガルの上層部もたじたじ…(汗)

ガイ骨折しなかったんですね…不死身生物ガイ誕生か!?

駄目人間は、ま〜た妙な感想を… はぁ、でも今回私も出てきていますが…立場は微妙ですね…

二回目と言う訳ではないんですから…この先扱いが不安です。(汗)

なぜなら、既にIFS強化体質の人間は5人出ていますから…

もっと、目立つ方法を考えねばなりませんね、とりあえずアキトさん以外のIFS強化体質の人を
っておきますか…

うわ…過激発言を…(汗)

当たり前です!今まで出ていなかった上にその他大勢扱いなん て…

ナデシコ始まって以来の
暴挙です!!



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