流れは変わり始めた 少しずつ違う方向へ

その中で私達は歩いて行く その先をみつめて

よりよい未来になるか それは分からない

だけど自分で決めた事なら 全てを受け入れ認め

進んで行こう あの赤き星へ



僕たちの独立戦争  第十四話
著 EFF



「さてアオイ・ジュン氏のこれからの処遇についてどうしますか」

アクアの発言にユリカが

「はい!ジュンくんは副長としてこのままナデシコに乗ってもらいます」

「艦長、契約違反をした者に処分も無く元に戻す事は賛成できん」

ゴートが反対の意見を出し、プロスが

「一応、減俸3ヶ月という事でいかがですか」

「その前にナデシコに復帰する意思があるのか、確認するべきです。

 ただ戻る場合、副長は不味いと思います。艦長に意見を述べずただ従うだけの人物は問題があります。

 おそらく戻れば艦長の仕事を回され、艦長が遊び呆けるかも知れません」

アクアの真面目な顔で言われた事にブリッジは静かになった

「まぁたしかにねぇ。艦長には甘いしね。問題あるかも」

ミナトが今までの事を思い出してそう言うと

「うーん、どうも艦長には逆らえないし、仲良く遅刻もしたしマズイですねー」

メグミもそれに続いた

「そっそんな事ありません。ジュンくんは私の一番の友人です。だから大丈夫です」

「それならいいです。ただしアオイさんが言っても自分の仕事は自分で処理してください。

 アオイさんが気を利かしても公私の区別はキチンとしてください」

アクアの声にブリッジクルーが頷き、プロスが

「それではアオイ・ジュンさんの件は終わります。ナデシコはコロニー・サツキミドリへ向かいます。

 艦長、何かありますか」

「いえ、ないです。ではナデシコ発進します」

「その前にプロスさん。相転移エンジンの全力稼動を行いたいのですが、よろしいですか」

「アクアさん、どういう事でしょうか。問題でもありますか」

「はい、宇宙空間での稼動は初めてです。ここで問題を洗い出してサツキミドリで直します。

 サツキミドリの後で問題が出るのは危険です」

アクアが話す内容にプロスも考えて決断した

「…………確かにそうですな。ではウリバタケさんと相談の上で始めようと思います。

 サツキミドリには予定より早く着きますがクルーの皆さんは交代で休憩してもらいましょう」

プロスの声にブリッジのメンバーは喜んだが

(これでサツキミドリは無事になるかしら)

アクアだけがこれから起こる事に注意していた



―――クリムゾン造船施設―――


ボソンの光とともに高機動空母に改修されたキャンサーが出現した

そして降りて行く乗員達を出迎えるタキザワにクロノが近づいて来た

「タキザワさん、ご苦労様です。こっちのみんなは元気にしてますか」

「ああ、元気だよ。飯が美味いと喜んでいたよ。私もだがな」

苦笑するタキザワを見ながら、クロノも

「そうですね、俺も最初はそう思いましたよ。地球は恵まれていますから」

「…………そうかもな、火星はこれから良くなるしな」

談笑する二人にロバート・クリムゾンが近づき

「初めまして、ロバート・クリムゾンだ。ウチの技術者が世話になり礼を言う」

「いえ、こちらも助かりました、ロバート会長。

 彼はクロノ・ユーリ、A級ジャンパーの一人で火星独立プロジェクトの一員です」

「クロノ・ユーリです。ロバートさん、お世話になります」

「こちらも知恵を借りる事になるかもしれん。よろしくな、クロノ君。

 さてネルガルが動いたぞ。……まあ、とんでもない事ばかり起しているぞ」

「そうですか。……クロノ、どうするこのまま行くと火星はまた戦場になるな」

「ええ、木連はこの機に乗じて火星を制圧するでしょう。

 ですがそれは向こうの都合で火星は木連を火星から追い出すつもりです」

「できるのかね、今の状況でそれだけの事が」

「新型のエクスストライカーが稼動したのか、クロノ」

「はい、ナデシコが火星に来る頃には火星全土に配備されます。

 数は十分ではありませんがチューリップの撃破だけなら出来るでしょう。

 時間は掛かりますが火星を木連から開放する事が可能になりました。

 今回火星に来るネルガルの戦艦は火星の政府の命令を無視し、火星に降りるでしょう。

 それを機に地球に独立を宣言する予定です。

 ネルガルの非を明らかにしこの暴挙に抗議という形にしようと思います」

クロノが火星の状況を話すとロバートもクリムゾンの考えを述べる

「ではクリムゾンはこれをマスコミを通じて、

 発表しネルガル非難と政府に独立の承認へと動けばいいのかね」

「…………助かりますが危険ですよ。

 政府が認めるとは思えませんし、クリムゾンに迷惑が掛かります」

「タキザワさん、これはもう決定した事です。クリムゾンは火星の独立に協力しますよ」

ロバートの宣言にクロノとタキザワは頭を下げた

「気にしないでくれたまえ、こちらも世話になっているからな。

 どうだろう、これからの火星の戦略について聞きたいのだがいいかな」

「はい、そのために来ました。我々はパートナーである会長に説明は必要だと判断しています」

「そうですか、では聞かせて貰おうか。クリムゾンの未来に係わる事ですからな」

「では技術者をお返しします。そしてお預けした技術者を返してもらいます」

「うむ、では行こうか。より良い未来を模索する為に」

3人は連れ立ってここを離れた



―――ネルガル会長室―――


「そうか、役にたっているんだね。彼女は」

『はい、正直ここまで動くとは思えませんでした』

「でもスゴイわね。パイロットとしても、兵士としても一流だし、ウチに来てくれないかしら」

『無理ですな。彼女はネルガルの裏を知っています、自分が実験体だった事を忘れないでしょう』

「そうかしら、ホシノ・ルリを使えば何とかならないかしら」

『…………エリナさん、死にたいのなら構いませんが私を巻き込まないで下さい』

「じょ冗談よ、悪かったわ」

プロスの声に慌てて答えたエリナに

「そうだね。僕もまだ死ぬ気は無いよ、エリナ君。

 できれば火星の機動兵器について詳しく教えてくれるとありがたいんだが」

『無理ですな、ブレードストライカーの事は教えてもらえるかもしれませんが、

 他の事はダメでしょう。彼女は火星の技術者でネルガルの技術者ではありませんから』

「……そうだね。契約を盾にしたらヤバイしね」

「でも火星に行くからクリムゾンに行かないだけ良いんじゃないかしら」

「……そうでもないよ。彼女が仲介したのかは分からないけど、

 ブレードストライカーの地球でのライセンス契約をクリムゾンが収得したんだ。

 つまりクリムゾンは火星と繋がっているかもしれない」

アカツキの発言にエリナが驚き詰め寄った

「どっどういう事、次のトライアルに間に合うのエステバリスより上の性能かしら」

「参考出品で出されるそうだよ。EOSがまだ不十分でIFS形式の機体だそうだ。

 最終的にはIFS無しでも動く機体になるみたいだね」

「……そう、マズイ事になるわね。

 軍でもIFSを嫌うからエステバリスもEOSを付けるべきかしら」

「そうだね、その件はエリナ君にまかせるよ。

 ナデシコの運用記録を軍に見せればエステバリスも認めてくれるさ」

「そうね、軍と揉めたのはまずかったわ。

 クリムゾンがこんなに早く追いつくとは思わなかったし、独占できた筈なのにね」

『なんにせよ、そう甘くはないと言う事ですか。

 …………申し訳ありません。艦長がここまでおかしな事をするとは思いませんでした』

「……そうだね。ここまで揉めるとは思わなかったけど、

 これで火星の事をごまかせるから良いかな」

『では火星へ向かい、遺跡とイネス博士を回収でよろしいですか』

「ああ、火星の政府の事は気にしなくてもいいよ。

 力づくでも良いから彼等にはナデシコにどうする事も出来ないからね」

アカツキの発言にプロスが頷き、連絡を終えた

だが彼等は何も知らない、火星がネルガルの行動を知り尽くしている事を

そしてネルガルが罠に入って来るのを待っている事に



―――クリムゾン造船施設 会議室―――


手渡されたレポートを読んで、ロバートは顔色を変えていた

それだけの事がテンカワファイルに書かれていた

「…………信じられないが、事実なのだろう。人体実験に遺伝子改造か気分のいいものではないな。

 ネルガルはどうしているかな」

「志願制で実験を続けています。失敗しかありませんが、いずれ気付くでしょう。

 その時が問題になるでしょう。火星の誰かが犠牲になるでしょう」

「……そうだな、このレポートは良く出来ている。まさに預言書といえるな」

「預言書ですか、…………そうかもしれません。

 最悪の事態に向かう可能性があり、それを避ける為のものですから」

クロノとタキザワがロバートに答えていた

「君達がクリムゾンと接触したのはネルガルに対抗するためかね」

「……それもあります。木連とクリムゾンの事も関係があります。

 木連もまたボソンジャンプの独占による支配を企てているからです」

クロノの声にロバートは考え

「………確かに君の言う通り、木連は危険だがクリムゾンも君達の技術協力がなければ木連についただろう。

 全てはボソンジャンプの独占か、ネルガルも木連もそこに辿り着く訳だな」

「その通りです、ロバート会長。

 木連は正義の為という理由で人体実験を始め、いずれ人工のB級ジャンパーを生み出すでしょう。

 その意味を理解せずに、彼等は犠牲者の事など考えないでしょう」

「そうだな、彼等は草壁に踊らされているだろう。あの男が木連を支配している人物で、

 ……まさに独裁者だな。このままだと犠牲は増えるばかりで、どうなる事になるやら」

タキザワの後に続いたロバートの声にクロノが

「今の木連との交渉は全て偽りの物になるでしょう。まずは地球からの独立を優先します。

 地球にとって木連は知られてはいけない過去の負債、それを秘密にする事で貸しを作り、

 そしてネルガルの暴挙で交渉を有利に進めます」

「なるほどな、確かに木連は地球のアキレス腱だな。ネルガルもこんな事になるとは思わんだろうな」

「地球も考えが浅はかです。過去を消す事など不可能な事に気付いていません」

「いずれ木連が有人兵器で戦場に現れた時、前線の兵士達にどう説明する心算なのか、

 隠せると思っているんでしょうか」

タキザワとクロノの意見に

「真実を知られた時、市民の反応が怖いな。最悪、殲滅戦を仕掛けた木連を許す事は無いし、

 政府に対しても過剰な反応をするだろう。…………泥沼だな」

答えるロバートにクロノが

「木連はこの危険を理解していません。草壁は支配者になる事だけを考えているみたいです。

 おそらく巨大な軍事力を手にし、更なる力として火星が欲しいのでしょう。

 勝つ事が出来ると思っているから、ここまでの暴挙が出来るのでしょう」

「……そうだな、クロノ君の言う通りだろう。彼は狭く異常な世界で生きてきた。

 その為、自分こそが絶対の正義でそれ以外は認めないだろう。正義と悪、この二つしかないのだろう。

 これは危険だぞ、彼はいかなる暴挙も正当化するだろう。そして彼に踊らされる木連も危険だ」

二人の意見にタキザワが

「この戦争を終わらせるには木連の市民、軍人の意識改革も必要ですね。

 草壁が和平を唱えても信じる事が出来ませんし、

 草壁の失脚を待つまでどれだけの犠牲が出るか、………怖いですね」

「変えるには木連の敗北が必要ですね。

 負ける事で草壁のカリスマを壊し、木連の犠牲者が出ればいいかも知れませんが…………」

「そうだな、クロノ君。それは賭けだぞ、最悪……更なる暴挙があるかも知れんな」

「そうです、ロバートさん。問題はそこにあります、木連に攻撃しても草壁が責任を取らず、

 木連内部にいる敵対勢力に責任を押し付けて抹殺を謀る事も考えられます」

「クロノ、そこまで……するかもしれんな。

 邪魔な火星住民を皆殺ししようと計画する人物だからな、まさに独裁者だな」

「そうだな。……クロノ君、火星の戦略を話せる範囲でいいから聞かせてもらおう。

 まずはそれからだな、木連の事はどうにもならんが火星の事は出来るだろう」

「はい、ロバートさん。これから火星が独立する際に起こる、

 地球の政府の考えと行動について、貴方の意見が聞きたいのです。

 これは連合政府とのパイプがあるクリムゾン会長としての経験が必要ですから」

こうしてロバートの意見を交えて火星のこれからの行動の指針が出来ていった

この会議により火星の方針が定まり、クリムゾンの援助による独立への道が生まれようとしていた



―――ナデシコブリッジ―――


「ではアオイさん、副長としてナデシコに乗艦しますか」

プロスの声にジュンが

「はっはい、皆さんよろしくお願いします」

ブリッジのメンバーに答えていた

「うん!やっぱりジュンくんは一番の友達だね。よろしくね♪」

ユリカの声に

「よっよろしく、ユリカ」

真っ赤な顔で返事をするジュンを見て

(副長も報われないなー、艦長気付いてないよ)

全員が心を一つにして思っていた

「取り合えず副長、公私の区別はキチンとして下さい。

 くれぐれも艦長の仕事を肩代わりするような事はしないで下さい。

 社会人なので甘やかす事のないようにして下さい」

アクアがキッチリと釘をさした

「そんなことしませんよ〜。自分の仕事はちゃんとしますので大丈夫です」

「生憎、口ばかりなので信用出来ないんです。

 二人ともいい加減な事ばかりされるので何を信じればいいのか、疑問ですね」

ユリカの反論にアクアが瞬時に答え、ブリッジも

「まぁねぇ、アクアちゃんが一番迷惑を被ってるしね〜」

「そうですよね。アクアさんが被害者ですし、今まで一番活躍してますし」

「そうだな。遅刻はともかく、クルーの安全の放棄、作戦ミスのフォロー、

 ルージュメイアンが全部カバーしているな」

「艦長、いい加減です。真面目に仕事して下さい」

「そうですな。アクアさんにボーナスを出す必要がありますな」

とフクベ提督以外からキツイ言葉をもらっていた

「ええ〜真面目に仕事してますよ。皆さんひどいよ〜」

とユリカが言うが誰も信じていなかった

「プロスさん、テンカワさんの方はどうなりましたか」

「先程、確認し、パイロットとコックの兼任でやりたいそうです」

「……そうですか。ではこの訓練スケジュールでいいですか」

アクアが示したスケジュールを見たプロスが

「そうですね、予備のパイロットですからこれで良いと思います。

 では訓練はおまかせします、アクアさん」

二人の会話を聞いていたユリカが

「あの……テンカワさんって誰ですか、予備のパイロットって何ですか」

と聞き、それにアクアが苛立つように

「艦長、乗員名簿を見てないんですか。普通は乗員名簿に目を通すのは艦長の義務です。

 そんな不真面目な事ばかりするから信用出来ないんです」

「ユッユリカ、テンカワくんはナデシコの生活班の一員でIFSを所持する人だよ」

慌ててフォローするジュンに対し

「……副長。先程、私が言った事聞いてませんでしたね。

 艦長を甘やかすなと言ったばかりでこれですか、自分の仕事をしない人と甘やかす馬鹿ですか、

 このまま行くと本当にダメな人間になりますよ、二人とも」

とアクアが冷ややかに告げると

「すっすいません、アクアさん。つい……」

「副長が本来注意する立場なんです。甘やかすだけがその人の為にはなりません。

 大事な人であるなら、考えてください」

アクアの言葉にジュンが沈黙した

「艦長、まもなくサツキミドリです。指示はありますか」

ルリがユリカに聞いたが

「……特にありません。このままサツキミドリまで進んでください。

 メグミちゃん、サツキミドリに連絡を」

「メグミさん、通信の際に警戒態勢を一段階上げるよう要請してください。

 理由はナデシコの相転移エンジンに木星蜥蜴が反応する可能性があると」

「アクアさん、襲撃の危険があると」

「万一の為です、プロスさん。停泊中に攻撃を受けるとサツキミドリが危険ですから、

 ナデシコだけ無事なんていうのは嫌ですから、それでいいですか、艦長」

「…………ええ、いいですよ。アクアさんの好きにしてください」

憮然とした表情で告げるユリカを気にせずメグミが

「ではその通りに通信します」

「それではサツキミドリに入港します。

 クルーは整備班、生活班を除いて交代制で休憩を取ってもらいます。

 ブリッジはまずホシノさん、ハルカさん、ゴートさんの三人から休憩に入って下さい。

 次にレイナードさん、アクアさん、フクベ提督の順に休憩してもらいます。

 私と艦長はサツキミドリへ挨拶に行き、補給の確認と書類の整理を行います」

「ええープロスさん私の休憩はないんですか〜、いじわるです〜」

「……艦長は溜めておられる書類を片付けてください。書類の決裁が出来ないので困るんです」

プロスの額に青筋が浮かんでいるのを見たユリカは

「わっ分かりました、プロスさん。必ず終わらせますから」

と慌てて答えた

「ルリちゃん、書類整理というのはね。上になればなるほど、増えていくの。

 もし将来、責任ある立場になったらキチンと処理してね。

 でないとプロスさんの様に上がいい加減だったら下の人が休めなくなるから、

 他人に迷惑を掛けるのはいけない事だから気をつけてね」

とにこやかに話すアクアにメグミが

「……アクアさん、結構イジワルですね」

「そうかもしれませんね。でもいい加減な事をしていたら、生き残れない状況ばかりだったんです。

 だからいい加減な上司を見るとついきつくなるんです」

「アクアお姉さん、そんなに酷かったんですか。お姉さんが居た場所は」

「…………生き残ったのは私とクロノの二人だけ、他の子供達はみんな実験で殺されたわ。

 生き残っても戸籍もないし保護してくれた人がいなかったら、多分死んでいたわ」

アクアの告白にミナトが

「それって違法なんでしょ、どうして告発しなかったの。子供が殺されたなら警察だって動くわ。」

「ええ相手が権力を持っていなければそうしました。口封じで平気で人を殺す人達ですから、

 力の無い私ではどうにもなりません。逃げ続けるしかなかったんです。

 ……でもクロノは諦めなかった。

 戦う為に自分を鍛え、大事なものを守る為に立ち上がり走り出した。

 そんなクロノがいるから私も強くなろうと思ったんです」

「そうなんだ。……クロノさんだっけ、アクアちゃんの恋人なの」

ミナトが楽しそうにアクアに尋ねると

「はい、私の大事な人ですよ。あとラピスにセレス、クオーツも大事な家族です。

 ミナトさん、ルリちゃん、火星に着いて時間があったら紹介しますね。……えっとこの子達です」

アクアが二人に映像を見せて

「きゃー可愛い子ね、アクアちゃん。洋服のチョイスがいいわ〜、アクアちゃんのシュミ」

「やっぱりそう思います、ミナトさん。ルリちゃんにも着せてみたいですね。

 良く似合うと思うんですが、こっちはどうですか」

「これもいいわねぇ。素材がいいと着させるの楽しいでしょう」

「そうなんですよ、可愛い女の子の洋服選びがとっても楽しいんですよ。

 でもクオーツは着せると怒るんですよ、男の子は気難しいから大変です」

「そうなんだ〜、でもクオーツくんもいいわね。将来が楽しみね」

ミナトの声にアクアが急に落ち込み始めた、それを見たミナトが

「どっどうしたの、アクアちゃん。なにかマズイ事言ったかしら」

「…………いえ、クオーツの将来に不安がありまして」

「何か問題があるの、クオーツくんって」

「……周囲の人達が言うんです。クオーツは天然が入った朴念仁の女たらしになるかもと言われるんです。

 どうも自覚が無く女の子を口説く才能があるんです。

 このままいくと修羅場が待っていると、言われてしまって」

「そっそうなの、でっでも大丈夫よ。そんな人いないから多分冗談なのよ。心配しなくても大丈夫よ」

ミナトが慌ててアクアを慰めるように答えたが

「……いえ、クロノがそうなんです。実際クロノを見るまではそんな事信じませんでした。

 でもクロノの行動パターンがその通りなんです。

 もしクオーツがそうなったら……………ミッミナトさんどうしましょう」

パニックを起こしミナトに詰め寄るアクアにブリッジの人達は

(アクアさんも大変ですね)

とノンキに考える中、ルリが

「サツキミドリに木星蜥蜴が近づいて来ています。艦長、どうします」

「ルリちゃん、規模はどれくらいナデシコは間に合うかしら」

「戦艦はないですが無人機が……約3000です。ナデシコの方が先にサツキミドリに着きます」

「そうか、ユリカ。……どうする」

「…………第一級戦闘配備、ナデシコはサツキミドリに向かいます。

 アクアさん、出撃してもらえますか」

「申し訳ありません、艦長。出撃はできません。その事は艦長もご存知でしょう」

アクアの声にブリッジのメンバーは耳を疑ったが

「何故ですか、アクアさん!人命救助の命令も拒否しますか、私の命令は嫌だと」

ユリカが怒りながら言うが、プロスが

「この艦には0G戦フレームがありません。

 サツキミドリで補給する予定ですが、……スケジュールを見てないんですね、艦長」

呆れるように答えた

「………そうなんですか。初めて聞いたんですが、どうしてアクアさんが知っているんですか」

「格納庫でウリバタケさんから聞きました。プロスさん、艦長に予定表を渡しましたよね」

「ええ、出航前に渡しておきましたが見ておられないようです。

 少し……、いえかなり不安になってきました。胃が痛くなりそうです」

プロスが苦しそうに説明する中、ブリッジの全員が白い眼でユリカを見ていた

「メグミさんサツキミドリに通信を。

 向こうに組み上がった0G戦フレームがあれば、借りて使います。

 なければ向こうにいるパイロットの方々にまかせます。確認してください」

「はっはい、アクアさん。こちらナデシコ、サツキミドリ聞こえますか」

『こちらサツキミドリ、木星蜥蜴を確認した。

 こちらからエステバリスを3機出しますので重力波ビームをリンクして下さい』

「了解しました。ルリちゃん、お願い」

「はい、艦長。重力波ビーム、リンクしました。通信入ります」

『おっリンクを確認した、ナデシコ聞こえるか。指示を出してくれ、どうするんだ』

「はい、グラビティーブラストで無人機を一掃しますので、

 それまでの時間稼ぎとナデシコの周囲の護衛をおまかせします」

『わかった、いきなりだがよろしくな』

『ホントだよね〜〜、よろしくね〜〜』

『今はノンキに喋らない。サツキミドリに0G戦があるから、悪いけど手を貸して』

「了解しました。アクアさん、艦載機でサツキミドリまで行って下さい」

「……一つ言っておきますが、私はオペレーターです。

 ですからパイロットが揃い次第出撃しませんから、これ以降はあてにしないで下さいね、艦長」

「大丈夫です。パイロットが来ましたから、次からは大船に乗った心算でいてください」

ブリッジから出て行くアクアを見ながらブリッジは

(泥船の間違いじゃなければいいが)

と不安に思っていたが、ユリカが明るく

「それでは皆さん、頑張りましょう。ルリちゃん、グラビティーブラストのチャージを始めて、

 それとパイロットにナデシコの射程範囲に誘導するように座標を出してあげて」

「了解、艦長。ナデシコから艦載機が出ますのでフィールドを一時解除します」

「わかりました。離脱後すぐに戻してね、ルリちゃん」

こうしてサツキミドリの攻防戦は始まった

結果はナデシコの勝利で終わったが、艦長のいい加減さがよく出た場面だった


………ルリは考える

アクアお姉さんみたいな何でも出来る大人になりたいと

艦長みたいないい加減な大人は嫌だと

ミナトさんみたいに優しい大人になりたいと

そしてセレス達に会ってみたいと思う自分に驚きながら

意外と人間らしい感情がある事が楽しく感じられた











―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです

アクアさんのナデシコでの生活は外伝で書こうと考えています。
なんかお目付け役みたいですね、ちょっと変かも(汗)




押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.