緩やかに時は流れる 次の戦いに向かって

どれだけの犠牲が出るかは判らない

せめてこの手で家族を守り抜く

その事を胸に刻み込み 今を生きる

見えない明日を掴む為に




僕たちの独立戦争  第十五話
著 EFF



「艦長、準備は完了しました。いつでも発進出来ます」

オペレーターの弾んだ声にアルベルトは指示を出した

「全クルーに告げる二ヶ月の訓練を終えて我々は木星蜥蜴に反撃を始める。

 そろそろ殴り返すぞ、ブレードストライカー発進せよ」

アルベルトの命令で空母からブレードストライカーが発進していく、それを見てアルベルトは

(この戦争の真実か………知りたくはなかったが俺は全力で市民を守るぞ。

 そして軍を立て直す、時間は掛かるが本当の正義を守ってみせる)

あの後、ロバートに聞かされたこの戦争の真実を知りアルベルトは絶望しかけたが、

ロバートの願いを聞いて腐敗した軍を変える為に力を貸す事にした

その顔には迷いはなく、前をまっすぐに見ていた

「艦長!まもなく敵と接触します」

「作戦通り前衛部隊は無人機と乱戦に持ち込み、後衛は上空からチューリップに攻撃せよ。

 チューリップがなければ増援もないぞ、無人機などブレードの敵ではない勝って市民を守るぞ」

アルベルトの宣言にブリッジは状況をパイロットに伝えていく

モニターにはブレードが無人機を一方的に破壊していく姿が映り、

その数分後には対艦装備のブレードに撃沈されたチューリップが映りブリッジに歓声が起こった

「本部に連絡を『我らオセアニア機動部隊がチューリップの撃沈に成功した、反撃の時は来た』以上だ」

「はい、直ちに連絡します」

「部隊の被害はどうだ、敵の戦艦はどうなった」

「部隊に被害はありません、全機無事帰艦します。戦艦は全艦撃沈に成功しました」

状況を確認した副長の報告にアルベルトは頷き、全員に告げる

「これからが本番だ、まずはオセアニアから木星蜥蜴を駆逐する。

 それから地球全域から駆逐し、火星と合流し木星に反撃するぞ」

アルベルトのセリフに全員が来るべき作戦を思い、未来を考え始めた

地球の反撃が今始まった


―――火星 アクエリアコロニー ―――


「ねぇパパ、今頃ママはどの辺りかな。火星にはいつ来るの」

「そうだな。……地球を出てコロニーサツキミドリに着いた頃かな」

「そうなんだ。早く帰ってきて欲しいな、ママ」

クロノの膝に座るラピスはそう呟いた

「やっぱり寂しいかい、ラピス」

「…………うん。ママがいて欲しいな、パパ」

「いつも側にいてくれたからな、帰ってきたらいっぱい言う事があるかな」

「うん♪たくさんあるんだよ。あとナデシコの事も聞きたいな、ルリお姉ちゃんに会いたいな」

「そうか、お父さんも聞きたいな。みんなの事、元気でやっているかな」

楽しそうに話すラピスにクロノは考える

(良かったなラピスの笑顔が見る事ができて、少しはよき未来になったんだろうか)

「あ―――ラピス!ずるいよーパパと一緒にいるなんて」

「えへへ、いいでしょう〜セレス♪」

クロノの膝に座るラピスはご機嫌だったが、セレスが睨んでいた

「む―――、いいもん代わりに今日の夕飯はわたしの好きなのでいいでしょう、パパ」

「ああいいよ。セレスの好きなのを作ってやるか」

「うん。約束だよ、パパ♪」

「いいな〜じゃあ、次はわたしね」

「クオーツはどうしたんだ、セレス。マリーさんの所かな」

「うん、サラちゃんと一緒にいたよ。クオーツもたいへんだね」

「どうしてだい、セレス。ケンカでもしてたのかい」

「ちがうよー、サラちゃんの手作りクッキーを食べさせられたんだよ。アレはちょっと……」

「……クオーツ大丈夫かな。アレはキツイよね」

「…………そうなのか、これから上手になっていくよ。初めはみんなうまくできないさ」

「パパもそうだったの、いつもおいしいよ。パパの御飯は」

「そうだよ、最初はみんな上手くできないさ。何度も練習して上手になるのさ。

 セレスもラピスもいきなりは無理だからそのうち練習しような」

「「うん、一緒にね、パパ♪ ママが帰ってきたら驚かそうね」」

「そうだな、それもいいな」

クロノは二人を抱きかかえ、マリー達の元に向かった

火星はつかの間の平和を迎えてた

次の戦いはより過酷なものになるがクロノは子供達の為、アクアとの未来のために、

守り抜く決意を固めていた



―――ナデシコ格納庫―――


「こっこれが0G戦フレームか! 新型だよ、お肌もツヤツヤいいね〜〜♪」

ウリバタケが0G戦にはりついて、頬擦りするのを横目にパイロット達が挨拶していた

「スバル・リョーコだ。よろしくな」

「アマノ・ヒカルだよ。よろしくね〜〜」

「……マキ・イズミ。イズミでいいわ」

「アクア・ルージュメイアン、サブオペレーターです。よろしくお願いします、皆さん」

アクアの自己紹介にリョーコが

「ちょっと待て、パイロットじゃねえのか。じゃあパイロットはどこにいやがんだ」

「パイロットのダイゴウジさんは医務室です。出航前に怪我をされたので臨時のパイロットです」

「そうなんだ〜でも上手だね。私達より練習したの地球で」

「いえ、火星で機動兵器の開発と操縦してました。多分、訓練時間の量が違うからでしょう」

「そう、火星ではどのくらい訓練していたの、プロトタイプのエステバリスはどんな感じかしら」

「イズミさん、エステバリスじゃないですよ。火星のオリジナルの機体です」

「おう、俺もそれが聞きたかったんだよ。……ブレードだったよな名前は」

いつの間にかウリバタケが会話に参加してきた

「そうですね、正式名称はブレードストライカー。火星守備隊の量産型の機体です。

 このエステバリスと同じようにディストーションフィールドを持つ機体で、

 格闘戦形態の人型と高機動形態の二つに変形する機体です」

「ちょっと待て、俺はそんなの知らないぞ。エステより性能は良いのか」

「そうですね、リョーコさん。大きさはエステの倍ぐらいでフレームの換装がないですね。

 性能はエステバリスとは比較になりません。違いはハッキリしてますし」

「つまりエステの方が上なんだな。火星にそんな物はできねえしな」

リョーコが安心するように話すがアクアは

「いえ、エステより上です。エステはナデシコの重力波ビームを必要としますが、

 ブレードは動力を内蔵し武装もエステの砲戦フレームのレールガンを装備していますし、

 単機では難しいですが複数の機体と対艦装備があればチューリップの撃沈も可能です」

「マッマジかよ、これが新型だからネルガルに来たのに……ウソだろ」

リョーコが驚くなか、ウリバタケが

「なぁアクアちゃん、シミュレーターにブレードストライカーのデーターをいれてくれねえか。

 エステとの比較したいんだけど、ダメかな」

「…………いいですよ、クリムゾンがライセンス契約しましたから、

 いずれ分かりますがIFSとEOSの二つの機体の内のIFS形式でいいですね」

「おう、充分だよ。しかし火星にそんな機体があるとは思わなかったぜ。

 こいつが最新の機体だと思ったんだがな」

エステを見上げて話すウリバタケに

「いえ今頃は、新型のエクスストライカーが配備されてるかもしれません」

「えぇ――――、さらに新型があるのーアクアちゃん」

ヒカルが驚いている中、イズミが

「信じられないわね、異常よ火星は。どこにそれだけの技術を持っていたの」

「……ある理由から極秘で開発していたんです。ある人物の遺言を守って」

「…………そう、これ以上は聞かないわ。聞いても言えないだろうから」

「………………ごめんなさい、イズミさん」

「じゃっじゃあさ、エステとの差を教えてくれないか、アクア。他は言えなくてもこれはいいだろ」

「そうですね、いいですよ。リョーコさん」

「よーし、対戦しようぜ。オメェの腕を見てみたいし、時間ができたら対戦だ」

「そうですね、ダイゴウジさん、テンカワさんも合わせて時間ができ次第、対戦しますか」

「えっとテンカワさんって誰ですか。パイロットですか」

「違いますよ、ヒカルさん。火星育ちのIFS所持者でサブパイロットになる人です。

 これから訓練する予定の方です」

「ふーん、ついでに俺達が鍛えてやるか。面白そうだな」

「リョーコはダメよ。テンカワさんを壊しかねないから」

「なっ何だとイズミ、どういう意味だ。そんな事しねえよ」

「熱くなって無茶しないかしら、素人相手に本気はダメよ、リョーコ」

「たしかにマズイですね、コックさんを壊されると困りますね」

「コックさん、……生活班なんだ〜。ここの料理は美味しいのアクアちゃん」

「ええ、腕は一流の方です。食事に関しては文句は出ませんね」

「そっか〜楽しみだね。リョーコ」

「おうよ。飯が美味いのは良い事だな、じゃあブリッジまで案内してくれないか」

「そうね。ブリッジのメンバーには挨拶しないと、マズイわね」

そうして4人はブリッジに向かった

ウリバタケ率いる整備班は補充されたパイロットが全員女性である事に狂喜乱舞していたが、

4人はその光景を見ない事にしていた



―――ネルガル会長室―――


アカツキは目の前の報告書に渋い顔になっていた

「困ったね、エリナ君。……想像以上にいい機体だね。まさかチューリップに勝てるなんて」

「…………そうね。でもIFSを使ってだから、EOSだと性能を全て引き出せないわね」

「まだテスト段階だけど空母を使った実験部隊がどの程度活躍するか、心配だね」

「クリムゾンも大盤振舞いね。テストとはいえ30機を無償で貸すなんてやってくれるわ」

「こちらが喧嘩するのを待っていたように思えるんだけど、ナデシコの情報が漏れているのかな」

「それは無いわね。だって軍と喧嘩するなんて想像できる、未来が見える訳ないし」

「それもそうだね。この戦艦も気になるね、クリムゾンは何処からこの技術を手に入れたんだろうね」

「やっぱり火星かしら、もしかしたら他にも遺失船――ロストシップ――があったんじゃないかしら。

 それを独自で分析して開発した…………不味いわ、火星に行っても逆に追い返されるかも知れないわ」

「それはないよ。火星全域を調べたけど船は一つだけ残っていただけだ」

「そうね、ちょっと調子に乗りすぎたわ。甘く見すぎたわね」

「どうも火星とクリムゾンに嵌められたみたいだね。

 後は……ナデシコが火星で上手くやってくれるしかないね」

「それこそ無理よ。あの艦長に期待できないわよ、プロスの報告を聞いたでしょ」

「………………ホントに主席なのかいこの人物は、精神面は子供だよ。

 まさかミスマル家の人間だから贔屓されたんじゃないかな、でもそれはないか」

「ありえるわ。ミスマル提督にゴマスリしたとか、……実力じゃ無いのかもしれないわね」

「………アクア・ルージュメイアン、彼女の方が艦長に相応しいね。

 状況を把握し、的確に判断し無駄が一切なく行動している。

 彼女なら大船に乗った気になるけど、今の艦長は泥船で今にも沈みそうなんだけど」

「とりあえず、軍と和解するのを早めるわ。このままじゃどうにもならないしね」

「二番艦コスモスの製作の準備を急がせよう。ナデシコから情報は出ているしね」

「そうね。もう少し時間が欲しいけど、このままじゃクリムゾンが戦艦を出してくるわね」

「それなんだけど、これ見てくれるかい」

アカツキは手元の資料をエリナに渡した、それを見たエリナが

「なっ何よ、これがクリムゾンの戦艦なの!ナデシコより良いじゃない。

 連装式グラビティーブラストなんてウチが開発中のモノだし、出力も違うわ」

「実はプロス君の報告に彼女から言われたみたいなんだ。

 試験艦で死ぬ気かとコレを見たらそう言われても仕方ないかな」

「………そうね。イネス博士のプロットで大丈夫と判断した、私達のミスね」

「ナデシコとこの戦艦では比較にならないよ。機動性、武装、出力全てにおいて負けてるし、

 こちらが先に造ったけど、シェアを奪えるか、問題だね」

「確かにね。完成はまだ先だけど、問題はそこじゃないの。

 この技術は火星から与えられたものか、………それが気になるわ」

「………………分かるのはナデシコが火星に着いた時になるね。

 火星がナデシコをどう扱うかで全てが分かるような気がするんだ、黒幕もね」

アカツキの意見にエリナは疑問を出したが

「クリムゾンじゃないの。………そうね、クリムゾンは火星の事をよく判ってないか」

「そう言うこと、火星にいるはずだよ。………………もしかしたらボソンジャンプも含めてね」

アカツキの発言にエリナは

「向こうがボソンジャンプを実用化したとでも言うの。私達でも出来てないのに」

「可能性はあるよ。テンカワ博士が何か遺したかもね」

「それこそ大問題よ。ネルガルの事を許すかしら、……今回の事も知られたらどうなるか」

エリナの声にアカツキは何も言えなかった

………………その答えはもうすぐ分かる


―――ナデシコ ブリッジ―――


「俺がパイロットのダイゴウジ・ガイだ。よろしくな」

「テンカワ・アキトっす、コック見習い兼サブパイロットです」

「操舵士のハルカ・ミナトよ、よろしくね〜〜」

「通信士のメグミ・レイナードです。よろしくお願いします」

「オペレーターのホシノ・ルリです。よろしく」

「おう、スバル・リョーコだ。よろしくな!」

「アマノ・ヒカルで〜〜す。よろしくね〜〜」

「マキ・イズミよ。ところで艦長はどこかしら」

「艦長はプロスペクターさんとサツキミドリに挨拶に行っています。もうすぐ帰ってこられますよ。

 僕は副長のアオイ・ジュンです。……テンカワくんはどうして此処に」

「えっとアクアさんに訓練について聞きたかったんです。

 それと一応他のパイロットの皆さんに挨拶しようと思ったんです」

「そうですか。アクアさん、訓練予定はどうなっていますか」

アクアはスケジュールをウィンドウに出し説明した

「テンカワさんは主に夜間の訓練になりますね。食堂の閉店後に行います。

 ハッキリ言いますが覚悟して下さい。かなりキツイものになります。

 パイロットの方に何かあった時がテンカワさんの出番です。危険だらけですよ。

 ましてやコックとパイロットの両立という事ですので負担は大きいですよ。

 …………それでもやりますか、テンカワさん」

「やります、……もうあんな場面を見たくはないですから」

火星での事を思い出してアキトはアクアにはっきりと答えた

「……そうですか、では遠慮なく出来ますね。覚悟して下さい」

ニッコリと微笑むアクアにブリッジのクルーはアキトに同情した

「たっだいま〜〜、どうしたの暗いよ〜もっと明るく行こうよ〜。

 え〜とこちらが補充パイロットの皆さんですか〜。私が艦長のミスマル・ユリカです、V(ブイッ)」

ユリカが状況も読めずに脳天気に挨拶していた

「……一応聞きますが補充人員の名簿は見ましたよね、艦長」

「いえ、楽しみは後に取っときたかったので見てませんよ、アクアさん」

「ホントに大丈夫なのか、この艦は」

リョーコの呆れた声にブリッジの全員が頷いた

「あ〜〜ヒドイですよ。これでも士官学校は主席で卒業したんですよ、だから安心して下さい。

 …………えっと何処かであった事ないですか」

「えっいや覚えがないな、食堂にいるからその時見たんじゃないかな」

「ユリカ、この人はテンカワ・アキトくん。サブパイロットの人だよ」

「そうなんだ〜。テンカワ・アキト………………アキト…………」

「プロスさん、補給は順調ですか。

 もし出来るならサツキミドリの人達は地球に避難させたほうが良いかも知れません。

 ナデシコが離れれば大丈夫だとは思いますが、また狙われる可能性があるかもしれません」

「そうですな、本社と連絡をとって判断を仰ぎましょうか」

「ア――――――――!アキトだ!!アキトだよね、久しぶりだね。

 ユリカに会いに来てくれたんだ〜、やっぱりアキトはユリカの王子様だよね」

いきなり大声でアキトに話すユリカにクルーは吃驚していた

「なっなんだよ、いきなり…………まさかユリカか。俺はお前の王子様じゃないぞ!」

「照れなくてもいいじゃない、アキトはユリカが好きなんだから」

「ちっちがうぞそんな訳あるか、お前とは唯の幼馴染だ!

 大体お前のせいでどれだけ俺が迷惑したか知っているだろう。人の話を聞けよ!」

「だからアキトは私が好きなんでしょ」

「つまり何年かぶりに再開した友人ですね」

状況を見て冷静に話すアクアにアキトが合わせるように答える

「そうなんです、アクアさん!火星ではコイツに振り回されて迷惑したんです」

「そうですか、つまり艦長が勝手な事を仰っているんですね」

「ちがいます!アキトは私の恋人です、アクアさん」

「……だそうですが、ホントなんですかテンカワさん」

「ちがいます、コイツとは火星で別れて約十年ぶりなんです。その間、連絡もありませんでした」

「ダメですよ、艦長。勝手に恋人になったら………キチンと交際してから言うべき事ですよ」

「たしかにね〜、これは遠距離恋愛じゃないし〜。相手に迷惑掛けるのはダメよ、艦長」

「ミナトさんの言う通りですよ。テンカワさんが困っていますから」

ミナトとメグミからも注意されたが、ユリカは

「とにかくアキトは私が好きなんです!!」

叫ぶユリカを見ながらアクアは

(都合のいい事ばかり言いますね、本当に子供なんですね。親に甘やかされて自己中心的になっていますね)

冷めた目でユリカを見ていた、そんな状況にプロスは諦めた様子で

「艦長、それより書類の決裁を急いで下さい。皆さんも仕事に戻って下さい」

「そうだな、アクア。ブレードのデーターはいつ出来る。早く動かしたいんだけど」

「3日はかかりますよ、リョーコさん。仕事がありますし、コクピットも一部変更しますし」

「そっか、リョーコでいいよ。さん付けは無しだぜ」

「アクアさん、どういう事でしょうか」

二人の会話に気付いてプロスがアクアに質問した

「ウリバタケさんに頼まれたんです。エステとブレードの比較がしたいそうです。

 ……やっぱり問題がありますか、プロスさん」

「…………いえ、それでしたら最優先でお願いします。今はそれ程忙しくないので」

「でもルリちゃんに負担がかかりませんか。それは避けたいんですが」

「大丈夫ですよ、アクアお姉さん。オモイカネがいますから」

『まかして〜、大丈夫』

「そうね、ルリちゃんなら大丈夫ね。じゃあお願いね」

二人を見ながらプロスは

(これで火星の情報が少し分かりますな、何とかなりますか)

と考えていたがこれが甘かったと後で後悔する事になるとは思わなかった



―――クリムゾン ボソン通信施設―――


「何か御用ですか、草壁中将。用がないのに呼ぶのは困りますな」

『ナデシコの行動について聞きたい、何処に行くつもりだ』

「困りますな。何度も同じ事を言わせないで欲しいな、クリムゾンは窓口であって協力者ではない。

 二度も失敗してよくそんな口が聞けますな、いい加減にして欲しいな」

呆れるように話すロバートに草壁の側に控えた軍人が

『ふざけるなよ、我々が見逃してやった恩をわすれたのか。貴様等は黙って言う事を聞けばいいんだ』

「戦艦一隻を沈める事も出来ないのに、そこまで言うかね。

 別に手を退いてもいいんだが、

 その場合、泥沼の戦争になるな勝てればいいが負けたら皆殺しになるかもしれんよ。

 それだけの事をしたんだから覚悟は出来てると思うがいいかね」

冷ややかに話すロバートに軍人達は黙り込んだが、草壁は

『我々の正義は負けんよ、勝つのは木連だ。その事を忘れないでもらおうか』

「正義ですか、私も昔の資料を調べましたがアナタ方の先祖も悪いですぞ。

 核とマスドライバーによる地球への脅迫による独立など政府が認めませんよ」

『それは君達の先祖が残した記録であって、真実ではない。

 そんな嘘を信じるとは驚きだな、ロバート・クリムゾン会長』

「…………まあどうでもいいが、木連の立場は非常に悪いな。

 無差別攻撃を仕掛けた以上、同じ事をされても文句は言えんぞ。

 まあその頃には君達のほとんどが死んでると思うが、残された市民は地獄を見るな。

 君達を信じてきたが裏切られる事になるのだからいい迷惑だな。

 そうそうナデシコは火星に向かうよ、君達と違って人命救助に向かうそうだ。

 彼等の方が正義かもしれないな、人殺ししかできない木連よりマシだな」

『ご老人、あまり失礼な事ばかり言うと痛い目に遭いますぞ。気を付けたまえ』

通信が切れるとタキザワが苦笑しながら部屋に入ってきた

「いいんですか、ロバート会長。あそこまで仰っては無人機に攻撃されますよ」

「それはないな、そこまで馬鹿じゃないだろう。たまにはこれくらい言わないと図にのるからな」

「無理ですよ、この程度じゃ堪えませんよ。

 ……馬鹿ですから草壁に踊らされているのに気付いてませんから、これからが大変ですよ。

 草壁はその馬鹿達を率いて戦うのですから、いよいよ地球の反撃が始まりますからね」

「そうですな、クリムゾンの戦艦はどうでした。自慢じゃありませんがいい出来だと思うんだが」

「ええいい艦でした。ナデシコでしたか、ネルガルのは戦艦とはいい難いですな。

 クリムゾンのは戦艦と言わせてもらいますよ。そのうち火星でも買う事になるかもしれませんね」

「アレと比べるのは問題ですな、火星にお渡しした巡航艦を見てみたいものですな。

 どういう改装されたか、知りたいですな」

「では一度火星にお越し下さい、今なら火星まで5分もかかりませんよ。

 大統領もご挨拶したいと言ってますから」

「久しぶりにエドワードにも会いたいが、少し厳しいかな。

 ……もう一人の孫娘を鍛えなければならんのでな、我が侭な娘になって困っているのだよ。

 このままでは誰かの傀儡になるかもしれんしな、ワンマンのツケがきたようだ」

「では火星に来させませんか、火星は実力主義です。

 クリムゾンの後ろ盾がない状態で鍛えるのも一つの荒療治です」

「ふむ、…………いいですな。考えておきましょうか、

 そういえば火星の独立が承認されそうです。

 ネルガルが馬鹿な事をしたせいで連合議会に話を通し易くなりました。

 もしネルガルが火星で暴挙を起こしたら、それに対する謝罪という形で行うそうです」

「なるほどネルガルに何らかの制裁を加えるのに都合が良いからですか、

 それと火星に対する恩を売った心算ですかな、…………馬鹿ですね、彼等も」

「だが火星には好都合だろう。これでネルガルの独占を阻止して有効に使えるだろう」

「そうですね、その際にはクリムゾンの支社を火星にお創り下さい。

 立場上、独立制になりますが二人のお孫さんのどちらかがトップになられるのが良いのですが」

「悪くないですな、ですが他の企業も入るようにしないと問題ですな」

「難しい問題が山積みで頭が痛いですよ。ネルガルのせいで火星は苦労するんですから」

「…………希望のないパンドラの箱ですか、知ってしまうと考えますな。

 ボソンジャンプの危険性を、そして最悪の事態を………………」

「ええ、その気になれば世界が終りますな。火星が狂気に走ればどうなるか、怖いですね」

「木連の監視は進んでますか、地球の方はもう万全でしょう」

「三年後なら木連は完全に殲滅できますね。今はキツイですが、かなりの損害を出せますね。

 地球に関してはクリムゾンの本拠を除いて調査を完了しています。

 もし地球が再びネメシスを火星に造り発動すれば、報復するつもりです」

「………しかし地球もネメシスなどよく造ったものだな。

 知られた時はどう説明するつもりなのかな、短絡的だな戦争の火種ばかり作るのが好きなのか」

「所詮人間は臆病な者程、上に集まって行くのかもしれませんね。

 他人を信じる事が出来ないから平気で人が死ぬような事をするのかもしれません」

「そうだな、…………この話は止めないかな。未来に希望が持てなくなりそうだ」

「どうも男は悪い方へ考えるみたいですな、女性は強いですよ。

 火星の女性はタフな者ばかりで参りますよ、娘も強くなりすぎて嫁にいけるかどうか心配で」

「大丈夫だろう、アクアでさえ見つけたんだ。その内連れてくるかもしれんよ」

「それはそれで嫌なんですよ。娘がどこの馬の骨を好きになるかと思うと……」

「確かにそれも嫌だな、そういえばアクアの恋人は誰なんだ。聞いてなかったな今度聞く事にせねばな」

「えっ知らなかったんですか、クロノですよ。アクアさんの恋人は」

「何、あの若造か。…………ふむ一度彼に聞きたい事があるな、婿養子になるかどうかを」

「……反対はしないんですか、祖父として文句の一つもあるかと思ったんですが」

「アクアを見れば文句はないですよ。あの娘はクリムゾンから逃げていたが、

 彼のおかげでクリムゾンと向き合う事が出来るようになった。

 昔のように心から笑えるようになってくれた。それで満足ですよ」

とても楽しそうに笑うロバートを見て、タキザワが

「クロノもロバートさんの事をこう言ってましたよ、

 『厳しい方だけどあの人がアクアを守ってきたんだよ』とアクアさんに笑いながら」

「………………そうですか、アクアはいい人に出逢えたんですな」

「彼は誰よりも優しく痛みを知っているんでしょう、強い男ですよ」

「見れば判るな、修羅場を潜り抜けた者が持つ強さがあり、覚悟も出来ているのだろう。

 任せておけばこちらの期待以上の結果を出すかもしれないと感じさせる力があるな」

「パイロットとしては火星最強で艦長としては超一流ですし、

 ジャンパーとしても戦艦規模のジャンプができる超一流の人材です」

「アクアも優良物件を手に入れたものだな。いっその事クリムゾンをまかせるかな」

「そっそれは困りますよ、火星には必要な人材なんです。この先火星の未来を担ってもらわないと」

「ホントにアクアはいい男をものにしたな、面白いな。

 アクアにあったら聞いてみようか、彼の事をそれと家族の事もな」

とても愉快に話すロバートを見て、タキザワはこの人は信頼できると感じていた

立場の違いはあるが頼れる人になれると思った

また一つ未来に希望が持てる事が嬉しかった









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです

今回はユリカ、アキトに出会うでした。
ユリカさんは苦手なんですよ、強引にマイウェイな方ですから扱いが酷いのは許して下さいね(汗)

では次回に期待して下さい



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.