ナデシコは進む 火星に向かって

平和な日常を繰り返しながら

ただ静かに流れていく 生活のなかに

それぞれの夢を見せながら



僕たちの独立戦争  第十六話
著 EFF



現在ナデシコは火星に向けて航行中ですね

特に問題が無いので艦内は暇で皆さんだらけてますね

「う〜ん、暇だね。ルリちゃん何かないかな〜」

「艦長、暇だったら書類の整理をして下さい。プロスさんに迷惑を掛けてはいけませんよ」

ルリの告げる事にユリカは焦りながら

「うっ、でもね〜つまんないのよ〜書類整理は退屈だから嫌なの〜、

 アキトに会いに行っても邪魔って言われるしヒドイよね〜」

「そうでもないですよ。食堂は暇な艦長と違って忙しいですから、

 暇なら艦内を見回りに行ってはどうですか、暇なんでしょう艦長」

「メッメグミちゃんがいじめるよ〜〜、イジワル〜〜」

ブリッジから逃げ出すユリカを無視したルリはメグミに

「メグミさん、イジワルですね」

「………そうかな」

「そうですよ」

「そうかなぁ」

「そうですよ」

「そうかもね」

「メグミちゃん、何か艦長に言いたい事でもあるの。代わりに聞いてあげるわよ〜」

ミナトさんが苦笑しながら聞いてきました

「アクアさんの言う通りになってきましたので、どうも艦長が好きになれなくて。

 あそこまでいい加減だと思わなくて、自分の仕事も碌に出来ない人は嫌いなんです」

「う〜ん、一度プロスさんに相談して注意した方が良いかもね。アオイくんの意見はどうかな」

「えっいたんですか、アオイさん。……気が付かなかった」

「そうですね。私も気が付きませんでした」

「……ゴメンね、影が薄くて。確かに注意するべきだね、このまま戦闘になったらマズイよ。

 クルーの心がバラバラだと支障がでるからね」

「フ〜ン、少し見直したわ。艦長を庇うかと思ったんだけどね〜」

「以前アクアさんに言われてから考えたんです。

 このままだとユリカはダメになるんじゃないかと、我が侭な人間になるのはマズイと思うんです。

 アクアさんみたいに時には叱る人が必要じゃないかと」

「そうね〜いいとこのお嬢さんみたいだし、自己中心のところがあるから直さないと大変よ〜。

 敵を作るのは上手だけど味方がいないのは問題だしね〜」

「…………そうですね、ミナトさんの言う通りですね。

 軍であんな言動をしていたら敵だらけになりますよ、ミスマルのおじさんでも庇えません」

「違うわよ〜社会でもそれは言えるわね。

 その点アクアちゃんは大丈夫ね、しっかりしてるし周囲にも気を配っているし安心できるわ」

「…………ミナトさん、私もアクアお姉さんみたいになれますか」

ルリの言葉にミナトは微笑みながら

「大丈夫よ、女の子はね、理想が大きければ大きいほどいい女になれるのよ。

 ルリちゃんの場合はアクアちゃんを追い越して正面に向かい合って互いに笑いあえるのがいいわね。

 アクアちゃんは喜んでくれるわよ。

 その為に色々教えるだけじゃなく、考えさせるの。

 自分で考えて行動できる一人の女性になって欲しいのよ。

 だからたくさん聞いて、教えてもらい、考えなさい、それが一番嬉しい事よアクアちゃんは♪」

「……はい、そうします。そしてアクアさんを超えてみせます」

「いい話ですな、ところで艦長は何処に行かれましたか。

 書類の決裁が出来ないんですが……職場放棄ですか困りましたな」

ブリッジに現れたプロスがユリカを探したが

「オモイカネ、艦長を見せて」

『判りました、ルリ。艦長はこちらです』

映し出された光景にプロスのこめかみに青筋が浮き上がった

『アキト〜、聞いてよ〜メグミちゃんがイジワルするんだよ〜』

『だぁ―――!仕事の邪魔をするなー。あっち行けよ、ユリカ!』

仕事中のアキトに抱きつき厨房の仕事の邪魔をしているユリカに

「艦長、いい度胸ですな。仕事もせずに他の方の仕事の邪魔ですか、早くブリッジに来て下さい。

 書類の決裁が溜まっているので片付けて下さい」

『はっはい、プロスさんすぐに戻りますから、ごっごめんなさ〜い』

慌てて駆け出すユリカを見ながら

「ホウメイさん、テンカワさん申し訳ありません。

 仕事の邪魔をしまして今後こういう事が無いように厳重に注意しますのでお許し下さい」

『まっいいさ、テンカワがキチンと注意すればいい事だしね』

『ホウメイさん、俺は注意してますよ。アイツが聞かないんです』

『お前さんのは注意じゃないよ、アクアに言われたろ優柔不断だと、優しいだけじゃダメなのさ。

 嫌いとハッキリ言う事も必要さ、でないといつまでもこのままだね。

 お前さんが艦長が好きならいいが、艦長はお前が好きなのか疑問だけどね』

『ホウメイさん、どういう意味ですか』

『これもアクアの意見だけどね。

 艦長はお前さんを見てないよ、理想の王子様にお前を重ねて見ているだけだってさ。

 言われてみるとそう思えるフシがあるからね、よく見ているよ、アクアは。

 ……あまりいい環境で育ってないね、そんな事が判るなんてさ。

 何かに怯えながら生きてきたんだろうね、常に周囲に気を配るなんてあの年頃では難しいさ』

ホウメイの意見に誰も言えなかった

『まあ、プロスさん。艦長の件はまかせるよ、アクアの事は内緒にしといてくれ。

 みんなに聞かせるもんじゃないしね』

「そうですね、艦長の件は了解しました、皆さんも内緒ですよ」

プロスの声に全員が頷いた

「でもアクアさんの考えが正しかったら怖いですね。テンカワさんがかわいそうですよ」

メグミの発言にミナトが

「ウ〜ン、当たっているかもね。

 艦長に聞いたんだけど、どうもアキトくんを美化してるな〜と思ったんだけど、そうかもね。

 副長は地球での幼馴染だけど火星のアキトくんの事聞いた事あるかしら」

ミナトの質問にジュンは昔の事を思い出しながら答えた

「…………いえ、ナデシコで初めて聞きました。この10年一度も聞いてないですね」

「そう、とりあえずこの件は内緒ね。いずれ判ると思うし確証も無いからね」

ミナトのセリフが終わると同時にユリカがブリッジに戻ってきた

「プップロスさん、すぐに仕事を終わらせますから任せてください」

「では艦長、急いで片付けて下さい。

 溜めなければすぐに終わる物なんですが、キチンと仕事をして下さい」

プロスがユリカにお説教をするのを見ながらメグミはアクアがいない事に気付いて

「そういえばルリちゃん、アクアさんは何処に行ったんですか。

 ブリッジにいませんけど、………まさか艦長のせいで体調を崩されたんですか」

その言葉にユリカは反応して勝手な意見を述べる

「メグミちゃん、どういう意味ですか。

 アクアさんが居ないのは私のせいじゃありません。きっとサボリですね」

「アクアお姉さんは艦長と違いますよ。今日はシミュレータールームに行かれていますよ」

ルリがユリカの言葉にムッとしてアクアの事を話した

「そうなんだ、ルリちゃん。艦長の尻拭いで倒れたのかと思ったんだけど、違うんだ」

「ええ、それもありえますが例の調整を兼ねてパイロットの皆さんと訓練をして貰っています」

メグミの意見にプロスが答えるとユリカが

「だ〜か〜ら〜どうして私のせいになるんですか。ヒドイです」

「自覚が無いのも問題ですね、艦長。出航から今まで何度問題を起こしましたか、

 その大半を彼女が解決しているんですよ、ある意味彼女が艦長と錯覚しているクルーもいるんですよ。

 もう少し艦長の自覚を持って行動して下さい」

「プロスさん、私は真面目に仕事してますよ。失礼ですね」

「ではこの書類の山は何ですか、遊んでないで仕事して下さい。では行きますよ」

プロスに引き摺られてブリッジを出て行くユリカを無視してメグミが

「ルリちゃん、シミュレータールームを見せて欲しいけどダメかな」

「……………いいですよ。オモイカネ、受信オンリーで見せてください」

『…………後で怒られても知らないよ、怒ると怖いよアクアは』

オモイカネの意見にルリは考え込んで

「……そうですね。その時はメグミさんのせいにしておきましょう、いいですねミナトさん」

「そうね、メグミちゃんが言い出したから問題なしね」

苦笑するミナトを見てメグミが慌てて

「スッストップ、アクアさんって怒ると怖いんですか。でしたらやめましょう、危険は避けるべきです」

「そんなに怖いんですか、でもどうして知っているんですか二人とも」

ジュンがそれとなく聞いてくるのに対して二人が

「この前、整備班のウリバタケさんがお風呂に覗き穴を作ってね。

 それでアクアちゃんが整備班のメンバーの半分を叩きのめしたの、素手でね」

「スッスゴイですね、格闘戦も出来るんですか。でも残りのメンバーはどうしたんですか」

ジュンが更に聞こうとしてミナトを見ると口を押さえて笑いを堪えながら

「胸にね『僕等は風呂場を覗いた馬鹿たれです』のプラカードをぶら下げて、

 食堂の掃除をやらされたのよ〜、見た人みんな笑っていたわよ〜」

「ええ〜〜私それ見てないです、……見たかったな、そのシーン」

メグミが残念そうに言うとルリが

「これですか、メグミさん」

ウィンドウに映し出したその光景を見てジュンが青ざめた顔で

「むっむごいですね、ここまでしますか」

「当然ですよ、覗きは犯罪です。これ位は当たり前ですよ」

とメグミは言い切りジュン以外の女性クルーは頷いた

ジュンは思った

(逆らうな、危険が待っているぞ。会話を変えて逃げろ、逃げるんだ)

今日もブリッジは平穏な一日であった


―――シミュレーター ルーム―――


「こっこれがブレードストライカーか、実物があれば分解して改造するのに何故だ―――!」

ウリバタケの魂の叫びが響いていたが、アクアはそれを無視して

「……とりあえず、班長はおいといて2機分のシミュレーターが使えるようになっています」

「よーし、まずは俺からいくぜ。エステより上の性能を試させてもらうぜ」

「俺もやるぜ、変形なんてカッコいいじゃねえか。男のロマンがあるぜ」

「実は開発途中で変形合体式の機体もあったんですが、問題があり中止になったんです。

 ダイゴウジさんなら喜んで乗ったでしょうね」

アクアの言葉に動揺しながら、ガイがアクアに尋ねる

「まっまさか真のゲキガンガーがあったんですか。どんな機体なんですか、教えて下さいアクアさん!」

「おう、整備班として男としても聞きてえな。改造屋の血が騒ぐぜ」

「これなんですけど、どうですか」

アクアがウィンドウに映した機体に全員が注目した

「3機の戦闘機が合体して陸戦が獣型、空戦が鳥型、汎用型の人型の3タイプに変わる機体なんですけど、

 コストと時間の問題でダメになりました」

「なっ何故だ―――!!これこそゲキガンガーじゃないか、俺は乗りたいぞ―――!!

 博士なら判るだろう、男のロマンが!!」

ガイの魂の叫びに全員が呆れていたがウリバタケが

「アクアちゃんよぉ、これは冗談だよな。性能は良いがここまでしなくてもいいと思うんだが」

「でも私はいいと思うな〜〜、まさにヒーロー機と言えるじゃないかな〜〜」

「ヒカルの意見はいいとして武装はどうなんだ、この機体は」

「そうね、それが気になるわね。それ次第では使えるかもね」

「どの形体でもディストーションフィールドアタックは使えますし、グラビティーブラストも使えますよ。

 各形体ごとに独自の戦い方がありますし、戦闘機としても十分戦えたんですけど、

 開発の時には出力に問題があって中止になったんです」

「コイツのエンジンは相転移エンジンだな、………小型化が出来なかったんだな」

「そうです、小型化が出来ていれば試作機ができてたんですが時間がなかったんです。

 2年………戦争が遅れていたらダイゴウジさんの夢も叶ったでしょうね」

「ゆっ許さんぞ、キョアック星人め!!俺の夢を打ち砕いた恨みは忘れんぞ―――!!」

「あっでも今なら火星で試作機が出来るかも知れませんね。火星が無事ならですが」

「まっ待ってろよ、火星!!俺が火星を救ってコイツに乗るぜ!!」

一人熱くなるダイゴウジを気にせずアクアは

「ブレードはエステと違い操縦が複雑になっています。

 戦闘機の操縦方法とエステの操縦方法と混ざり混乱しないように気をつけて下さい。

 慣れたら対戦にしましょう、リョーコもそれでいいですか」

「おう、これでも戦闘機の知識は一通りあるからすぐに使いこなしてみせるぜ」

「俺は元戦闘機乗りだからまかせてくれ、アクアさん」

二人はそう言ってシミュレーターに入ったがアクアは

「ご愁傷様です、お二人の犠牲は無駄にはしません」

と非情な言葉を口にしていた

「アッアクアちゃん、この機体ってそんなに操縦し難いの」

「いえ、Gがすこ〜しキツイんです。エステと同じと思うと………」

『『ギャ―――――、何なんだ―――――』』

「とこうなりますから、気をつけて下さいね」

二人の悲鳴をバックに微笑むアクアに3人は

(怖い人だよ、怒らせるのはやめとこう)

と思っていたなかで二人がシミュレーターから出てきた

「エステと同じじゃないと言ったでしょう。……大丈夫ですか、二人とも」

「おっおう、つい調子に乗っちまったエステと感覚が違うから混乱したぜ」

「まったくだな。じゃじゃ馬だなコイツは」

二人はアクアの注意に反省していた

「極端な言い方ですが、エステは素人でもIFSがあれば操縦できる初心者向きの機体ですが、

 ブレードは完全なプロ用の機体です。

 これが火星で稼動している機体で火星のパイロットのレベルが判りますね」

「そうだな、火星の標準機がコイツか。コレを使いこなせば俺の腕も上がるかな」

「ええ、もちろんですよ。コレを使いこなした後でエステに乗ればもの足りなくなるかも知れませんよ」

「アクアさん、この先にゲキガンガーがあるんだな。待ってろよ、使いこなしてみせるぜ」

「とりあえず次はヒカルちゃんとイズミさんが試して下さい。

 まず人型で起動させてそれから次に移行して下さい、でないとこの二人みたいになりますよ」

「そうだぞ、戦闘機に乗った事無いのなら気をつけろよ。元戦闘機乗りからの忠告だ」

「オッケ〜〜気をつけるね〜〜」

「そうね、死ぬには早いかもね」

二人がシミュレーターに入るなかアクアがウリバタケにディスクを渡した

「フィールドランサーです。一時的にディストーションフィールドを中和する武器です。

 これならエステでも数機がかりで戦艦に対抗出来ると思います。

 この先必要になると思うので作っておいて下さい」

「分かった、確かに預かったぜ。改造屋のプライドに懸けて作っておくぜ」

「お願いします、正直ナデシコを見た時から不安なんです。

 技術者としてこの艦は戦艦とは言えません。明らかに試作艦と言う物ですから」

「そうなのか、十分戦艦だと思うんだが違うのかい」

「ええ、武装が貧弱すぎるんです。何処に主砲が一門しかない戦艦がありますか。

 副砲もなく、ミサイルしか無い艦を戦艦と言いますか、ウリバタケさんは」

アクアの意見にウリバタケは考えると

「…………そうだよな、よく考えたらそうなるな。

 主砲の威力に惑わされて他の武装に目が向かなかったぜ、俺も気をつけるぜ」

「それに木星蜥蜴の正体も気になるんです。

 知ってますか、バッタとジョロなんですが工具で分解出来るんですよ」

「そんなの当たり前じゃねえか、工具で…………何で規格が合うんだ。

 おかしいじゃねえか、木星蜥蜴と地球が同じ規格を使う訳ないし変だぜ!こりゃ」

「これはウリバタケさんの胸にしまって置いて下さいね。他のクルーには言えませんし」

「……………そうだな。

 プロスの旦那やゴートの大将やホウメイさんは大丈夫だが他のやつらは耐えられんかもな」

「ええ、皆さん人殺しなんて出来ないでしょう。

 まだそんな覚悟は無いですし、ルリちゃんには言えませんよ。人間相手の戦争なんて」

「艦長にも言えんな、ルリちゃんより子供だからな。あの子の方が大人に見えるよ」

「いずれ彼女の本当の両親に会わせたいですね。

 結果がどうあれ自分の親に会う事は大事な事ですから、今は無理ですが」

「まあ、火星に向かうからな。地球に戻ってからになるしな」

「そうじゃありませんよ。感情に問題のある今の状態では意味がないんです。

 会わせても拒絶か、理解出来ないからです。

 ネルガルがきちんと情操教育をしていないから困っているんです。

 都合のいい道具扱いか、人としての扱いを受けなかったんでしょうね。

 どこか諦めているような感じなんです。11才の子供が持つ感情じゃないですよ。

 公式の存在でなければそこに居た科学者達を殺して救い出しましたよ、………悔しいですね。

 力があっても無力なんてやりきれませんよ。あの3人にしてもそうです。

 もう少し早ければ救える子供がいたんです。僅かな時間の差が生死を分けたんです」

アクアの独白にウリバタケは

「まあ、世の中やりきれない事だらけさ。それでも生きてくしかねえんだよ」

「…………そうですね。すいません、愚痴をこぼしてしまいました」

「でも3人は助ける事が出来たんだろ、だったらそいつらは幸せにしてやんな。

 それが他のやつらの供養になるさ」

「そうですよね。…………勿論幸せにしてみせますよ」

吹っ切れた様に笑うアクアを見ながらウリバタケは

(このお嬢ちゃんは大丈夫だろうが、艦長もしっかりしてくれねえとな。

 クルーの命がかかっているんだからな)

と苦笑しながら考えていた所に

「よーしコツは掴んだぜ。アクア、対戦するぞ」

「いいですけど、大丈夫ですか。休憩を入れてからにしませんか、リョーコ」

「そうだよ〜、フラフラじゃ勝てないよ〜。一休み、一休み」

「そうね、アクアも久しぶりに動かすから練習も必要でしょう」

「確かにイズミさんの言う通りだな。真っ向勝負ならそうした方がいいぜ。

 ハンデがいるならすぐでもいいがな」

「ハンデなんかいらねえよ。アクアが練習してからにするぜ」

「そうですね。皆さんの動きを見て私の動きを見てないのはハンデになりますね。

 では練習させてもらうのでそれからにしましょうか」

アクアがシミュレーターに入るのを見て全員がモニターの前に集まった

「見せてもらうぜ。アクアの実力をな」

「話にならんと思うがな、あの人は俺達とは別次元だな。比べるまでもないし」

「ガイくんは出航時から見てるんだよね。そんなに違うの」

「ああ、エステが華麗な舞を見せたんだよ。

 実戦の中でまるで舞台で決められた様にバッタもジョロも動かされたんだよ。

 俺には出来ないし、地球離脱の時はデルフィニウム5機を相手に戦闘不能の状態に出来るんだぜ。

 撃墜だけなら俺にも出来るけど、相手のパイロットの安全を考慮して、

 ピンポイントの狙撃と近接の格闘戦で戦闘不能に留めるなんて、お前らに出来るか」

「無理ね、私達にはそこまでの技術はないわね」

イズミの声と同時にシミュレーターが動き出し、全員の目が集まった

まずアクアは近くのバッタの頭を掴み、自爆モードにさせると集中しているポイントに投げた

爆発をジャミング代わりにして確実に格闘戦で周囲を攻撃し

数機が重なるとレールガンでまとめて撃ち抜いた

そして空中で高機動形態でフィールドアタックを決め空中の敵を一掃ながら

空中の無人機を掴んでは手榴弾のように地上の無人機にぶつけて爆発させていった

地上の敵もしとめると戦艦に攻撃を開始した

まず最大スピードで上昇し一番上空にいた戦艦に攻撃を仕掛け

ディストーションフィールドをぶつけて干渉させ防御を弱めた所に

レールガンとミサイルで機関部に一撃を与え落下する戦艦を盾に攻撃した

落下する巨大な質量の戦艦が周りの戦艦のフィールドを弱めた所にアクアの機体が次々と攻撃する

上から落ちてくる戦艦を避ける事も出来ずアクアの攻撃に反撃出来ずに戦闘が終了した

無人機500機と戦艦6隻がわずか20分で終了した

モニターを見ていたリョーコ達は声も出なかった

シミュレーターから降りてアクアは

「久しぶりだから、腕が鈍りましたね。いつもなら15分もかからないのに苦戦しました」

全員が信じられない言葉を耳にして呆然としていると

「すいません。見苦しい戦いを見せてしまいましたね」

その言葉にリョーコが

「冗談じゃねえ!見事な戦いだぜ、必ず追いついてみせるぜアクア!」

と興奮するように叫ぶが

「そうですか。でも私より上が一人いますよ、クロノが太陽系最強のパイロットでしょう」

「マッマジかよ、これより上がいるのかよ。く〜楽しみだな火星に着いたら相手をして欲しいぜ」

一人喜ぶリョーコに対して他の3人は呆然としていたが

「一つ聞いていいアクアちゃん。この差は訓練時間の問題かな」

「そうですね、それもありますが覚悟の違いも関係してると思いますよ、ヒカルちゃん」

「覚悟ね、相当な修羅場を潜ってきたみたいね。人を殺した事があるのね」

「ええ、ありますよイズミさん。しなければ誰も救えないし、生き残る事も出来ませんから」

「…………そう強いわね。私には無理ね」

「そうでしょうか、諦めなければ大丈夫だと思いますよ」

「……そうかもね」

「なあアクアちゃん、バッタって頭を掴むと自爆するのかよく知っていたな」

「木星蜥蜴の無人機はAIの処理のせいで動きを止められると自爆するみたいなんです。

 だから格闘戦で爆弾代わりに使う事も出来るんですよ」

「そうか、研究してたんだな。コイツは必ず作っておくぜ、まかしてくれ」

「博士、それはもしかして新兵器か教えてくれ!」

「おうよ、アクアちゃんがお前等の為にくれたフィールドランサーだ。

 シミュレーターにデーターを入れとくから使い方を覚えといてくれ」

「ウリバタケさん、もう入れてありますから確認だけしてください。

 プロスさんにも連絡済みですので資材も回してくれるはずです」

「すまねえな、準備をしてもらった以上はプロとして完璧な物を作らせてもらうぜ」

「では始めますか、私はエステを使いますので皆さんは好きな方を使って訓練をしましょうか。

 場所は宇宙に限定します。

 おそらく火星に近づいた時に戦闘になるので、まずはそこで生き残る事に全力を尽くしましょう」

「何かアクアちゃんさ〜艦長みたいだね〜〜」

「そうね。あの艦長は問題だらけね、このままだと死ぬかもね」

「戦闘はいいけど他はダメだな。アキトも迷惑してるしな」

「アクアちゃんが艦長しねえか、整備班は賛成するぜ」

「私は契約上火星で降りるんです。ですから艦長は無理ですね」

アクアの発言に全員が驚いていた

「アッアクアそれ本当なのか、もし火星が全滅してたらどうするんだ」

「その時は火星で死ぬつもりですよ。地球に戻る気はないですし、火星は全滅はしませんよ」

暢気に話すアクアを見て

「でも危ないよ〜地球にいた方がいいと思うんだけど」

「無理なんです。私はプロトタイプのマシンチャイルドで地球だと実験体として狙われるんです。

 火星なら比較的安全に暮らせるのです」

「そう、生きる為にその技術が必要だったのね。哀しい事ね」

「ネルガルに保護を依頼するのはダメなのか、ネルガルなら大丈夫だろう。

 ルリちゃんもいるしな」

「ウリバタケさん、私はネルガルを憎んでます。

 今回は火星に行く為に協力してますが、いずれネルガルと敵対する事になると思います。

 ネルガルはマシンチャイルドの子供達を何人も科学の為と言う大義をかざして殺してきました。

 ネルガルという企業を信じられないのです」

アクアの怒りを滲ませた声にウリバタケは驚いていたがどこかで納得もしていた

どうもネルガルを嫌っている部分が見えていたがこの事だと確信した

(ルリちゃんを気にするのは当然か、犠牲になった子供達を見たから守ろうとしたんだな)

「……で、どうするんだ火星に着いたらルリちゃん連れてナデシコから逃げるのか」

「………………そんな事できませんよ。

 おそらく火星はこの戦争の最大の激戦区になりますから巻き込めませんよ」

「でもルリちゃんはおめえに懐いているぞ。このまま別れるつもりか」

「大丈夫です。約束しますよ、必ず生きてルリちゃんに会いに行きますよ」

「分かった。ブリッジにはミナトさんもいるし、それとなく気をつけておくよ」

「おう、俺達も面倒見てやるぜ。アクアの妹なんだろ、守ってやるぜ」

「そうそう、安心してね」

「まあ自分が生き残る事に全力を使いなさい。生きて会うためにね」

「アクアさん、ヒーローは仲間を守る為にいるから安心してくれ」

「お願いします、今のルリちゃんは人付き合いも出来ない子ですから、

 挨拶から初めて少しづつ友人として近づいて下さい。

 いきなり親しく付き合おうとしても拒絶されると思いますから」

頭を下げてウリバタケ達に頼んでいるアクアを見て

アクアがルリを大事にしている事が感じられた

「よ〜しじゃあ、訓練始めようぜ。俺はブレードを使いこなしてみせるぜ」

「私もブレードで練習するかな〜その方が上達するみたいだし〜」

「そうね、火星に行くにはその方がいいわね」

「コイツを乗りこなしてヒーローへの一歩を踏み出すぜ」

ナデシコは暖かい場所だとアクアは思う

だからクロノはこの時代に帰ってきたんだろう

守りたいとアクアは思う

ルリの為にそしてこの場所にいる事ができた自分の為に

ナデシコは火星に向かって行く

それぞれの思いを乗せて










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EFFです

今回のお題は
ウリバタケ、ブレードを改造できず悔しがると
ガイ、火星のゲキガンガーを知るでした(爆)

感想

随分とアクアの意思が表面化してきましたね。

しかし、アクアもアキトの記憶を持っているからか、アキトと考えが似ていますね。

ユリカ嬢は完全にへこまされて再起不能ですね〜、この上おこもりなんてしたら船をおろされそうな勢い(汗)

今回もアクアさん大活躍ですね。私はまたもオマケですか…(汗)

まあ、仕方ないんじゃないかな…ナデシコクルーはオマケ的な要素もあるし。

でも、本当にその他大勢に埋没してしまうとは…正直思って無かったです。

というか、作品の性質上かも知れませんがユリカさんの吊るし上げシーンが圧倒的に多いです。(汗)

そんなシーンに出番を奪われるなんて私…その程度だったんでしょうか…

いや、たんにメインはアクアだっていうだけの事だと思うけどね。

君の憧れの人って言う事になるのかな?

平行世界の行動心理の把握は少し分りかねますが…

まあ、そんな感じみたいですね。

うん、むしろガイの方が目立ちそうな感じだね。

えーっと、ああ! ヤマダさんの事ですか、誰かと思いましたよ。

まっまあ、ヤマダさんでもあっているけど…個人的にガイと呼んであげたいね。

はぁ、まったく古い人は熱血とか好きですからね〜

ひっ否定はしないけどさ…

否定も何もまんまじゃないですか。

はははは…(滝汗)


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