あれから数日何事もなく過ぎて行った。

セブンスターズ全員が敗北した事で校長先生は一安心したらしく、カギは校長室に戻される事となった。

実際問題、黒幕がいる事は知らないのだから仕方ないが。

俺はしかし知っている、うろ覚えながらアニメにおいて影丸は確かこう言っていた。

デュエルをする事によって生まれるエナジーが幻覚魔を目覚めさせる云々と。

ニュアンスが違っていた可能性もあるが、結局はカギの近くでデュエルをしていてば何れ目覚めると言う事だろう。

だが、そのままなら少し時間があったかもしれない。

まあ、それに神の如き力を持つカードといってもルールに縛られている事は事実だしな。


デッキ調整のほうは……ヒーローデッキじゃないが貫通効果がうれしいヒートハートを入れるか。

それから、今回は少しアレンジして魔法効果の矢を入れておこう、理事長のチートフィールド魔法はさっさと破壊したい。



「さて、デッキも整った事だしそろそろ見物に行くか」



実は前回大徳寺先生とのデュエル時、俺は全く気がつかなかったが、既にサンダーと明日香は囚われていたらしい。

つまりはそう、ジョイン先生指導のもとサンダー対明日香のラブ(サンダーのみ)デュエルが始まっているようだ。


経緯はつまり、囚われている間、マクロコスモスの宇宙空間のような場所にいたサンダーは、

同じように囚われて眠っている彼女が宇宙を漂っている姿を見て美しいと思ったらしい。

このままずっとこのまま居られればいいとすら思っていたそうだ。

サンダー……飯はどうするつもりだったんだろう……。

いやまーどうでもいいんだが。


それで、告白しようとしたが上手くいかず悶々としているサンダーに明日香の兄であるジョイン先生が声をかけた訳だ。

恋愛事は僕に任せておけばオールOKさ! と。

その時、歯がキラリンと光った事は言うまでもない。

そしてその後は、サンダーは言われるままに七星門のカギを校長室から奪って無理やり明日香とデュエルしている。

ここで、サンダーが勝てばサンダーと明日香がつきあう事になる。

サンダーが負けると、7つのカギを持つデュエリストが負けるので三幻魔が目覚める。


……あれ?

サンダーが勝った方が俺達の被害少なくね?

明日香には申し訳ないが、そもそも付き合うって言っても一生付き合えと言っている訳でもない。

気に入らなければ3日でごめんなさいでもいいわけだ。

その事に今頃気づいた俺は大急ぎでサンダー達がデュエルしている場所へと向かう。



「……バカ」



横で実体化しているアウスにバカにされつつデュエルを見に行った俺は既に明日香が逆転の儀式召喚を行っているのを見た。

思わずがくりとうなだれる。

それから数分、古代の儀式場っぽい石柱群のあたりに光が立ちのぼり始めた。

結局、幻魔は目覚めるらしい……。



「さて、悪いが出番はやらないぜ十代」



気持ちを切り替えた俺は、急いで石柱のある所に向かう事にした。

今回のデュエル、十代に任せる事は出来ない。

なぜならば、十代は大徳寺先生から賢者の石のカードをもらっていないからだ。

アニメにおける賢者の石サバティエルのカードは、1ターンに回づつ

3回手札に残りデッキ内にあるマジックカードとして使用する事が出来る。

そして3回使い終わった後、ヒーローの攻撃力を1500アップする装備カードとなる。

影丸戦のキーカードだ。

それがないという事はつまり、あの終盤の無茶苦茶なデュエル展開が出来ないという事。

つまり、勝率が著しく低下しているという事になる。

だからこそ、俺が影丸と闘う必要が出てくる。



「おっ、ヨシカツ、お前も来たのか?」

「ああ。三幻魔のカード、当然ながら狙ってくる奴がいるからな」

「じゃああそこにあるのは三幻魔のカードか、そりゃすっげー」

「しかし、一体何故、僕達は守り切ったんじゃなかったのか?」



三沢が疑問を差し挟んでくる。

セブンスターズとのデュエルでは確かに勝ったからな。

本当はそれ自体が罠なんだが、流石にそれを言うと俺のことを知られてしまいかねない。

そんなことを考えているうちに、カイザーや鮫島校長もやってきた。

そして、十代が三沢の疑問に応える。



「7つのカギを持つサンダーが明日香に負けたからだろ」

「ちょっ、あれは明日香君との恋のためにだな!」

「そうだよ! 恋はラブアタック! 攻めていかないとね!」

「兄さんのせいよ!!」

「なっ、明日香が僕を……その怒った顔も可愛いよ明日香!」

「知らない!!」



既に関係ない事で大混乱になっているが、光に向かって輸送用の大型ヘリが飛んでくるのを見て皆静かになる。

ヘリが細心の注意を払っているようにゆっくりと止まると、そのまま着陸。

そして、お付きの黒服達が出てくる中、異様なものが出現した。

巨大な医療機器の培養層の中にじいさんが一人浮かんでいる。

俺は正体を知っているので聞くまでもないが、つまりは彼こそが影丸理事長だ。

俺は、彼らが出てくる段階で幻魔のカードのある位置まで滑り込む。

カードを奪われたくないなら、俺がという考えだ。

しかし、黒服共が俺の前に立ちふさがる。



「ちっ……」

『少し遅かったな若造、ヘリが来るまでに掴んでおけばお前の物になったかもしれんが……。

 このカードは私のものだ!!』



医療機器のアームが伸びてカードを掴み、医療機器の所に据え付けになっているらしいデュエルディスクに収納される。

まるで自動デュエル機といったところか。

やはり、やるしかないな……。



『クーッククク、感じる、感じるぞ三幻魔のパワーを!!

 だが足りぬ、まだ完全に覚醒するにはデュエリストの闘志の力が足りぬ!!』

「お前は何者だ!?」

「その声はもしや……」

『流石に気がついたかね、鮫島校長』

「貴方なのですか、影丸理事長」

『その通りだ、感謝しているぞ鮫島校長。

 お前が必死に鍵を守ろうとしてデュエリスト達を戦わせてくれた御陰でこうして三幻魔は復活するのだ』

「なっ!?」

「俺のせいじゃなかったんだな!」

「今問題なのはそこじゃないだろサンダー」

「結構重要なんだ!」



ボケが挟まったせいで多少グダグダだが、

影丸理事長は医療用のポッドとでも言えばいいのか、機械の中に埋もれたガリガリの今にも死にそうな老人だ。

だが、その声はようやく野望が叶うことに興奮しているのだろう、偉く張りがいい。



「一体どういうことなのですか! 三幻魔は貴方が封印し、鍵を私にあずけた筈だ!!」

『簡単なことだよ。あのままでは三幻魔が復活するには力が足りなかった。

 デュエリストの闘志という名の力がな。

 デュエルアカデミアもセブンスターズも三幻魔を復活させるための生贄に過ぎぬ』

「ッ!!」

「いいだろう、生贄というならその生贄がただ食べられるだけではないということを教えよう。

 このオベリスクブルーのカイザー、丸藤亮がな!」

「待て! このデュエルは1! 10! 100! 1000! 万城目サンダーが!」

「いや、ここは……そう、フブキングこと天上院 吹雪が!」

「待て、ここはロリコンデュエリスト三沢大地が!……ごめんorz」

「「「「「……」」」」」



三沢……出たかったのはいいが自分で名乗るな、泣けてくる……。

まあ、ある意味印象は強いが。

しかし、どっちにしろ相手をさせるわけにはいかない。

こいつの相手は俺と決めている。



『ダメだ! お前たちでは。精霊の力を最も強く引き出す遊城十代でなければ』

「へぇ、俺か」

「待ってもらおう!」

『小僧か……』

「精霊の力なら俺も負けていない。アウス!」

「……わかったわ」



俺の言葉を聞き、一瞬迷うもののアウスが実態化する。

彼女も何かを感じ取ったのだろう、俺の緊張感も手伝っているのかもしれない。



『ほほう……確かにな、今までデュエルディスクを使わず精霊を実態化させた例は数例しか存在せぬ。

 まさか、小僧お前もその使い手だったとはな』

「小僧じゃない、俺の名は天谷佳克(あまやよしかつ)だ!!」

『よかろう、ヨシカツ。貴様を最初の生贄としようぞ!!』

「やってみろ!!」


「「デュエル!!」」


佳克:LP4000  影丸:LP4000



『先攻はもらうぞ、私のターン、ドロー!』



声は拡声器なのか、機械音声なのかは分からないが元気のある喋り方をしている。

だが、肉体は培養層に浮いており、いくつものコードが埋め込まれている。

そんな爺さん相手に戦うのも少し気が引けるが、デュエル自体は機械によるものなのでまあいいとするしかない。

そんなことを考えていると、



『私はトラップを3枚伏せる』

「伏せカードを宣言してるぞ、素人丸出しじゃねーか」

「万城目、そんな事言ってやるなよ」

『フン、幻魔の召喚にはこの宣言が必要なのだよ。

 私はトラップ3枚を生贄に、いでよ第一の幻魔、神炎皇ウリア!』

神炎皇ウリア:効果モンスター/星10/炎属性/炎族/攻 0/守 0



火山のように炎を吹き上げ龍っぽい赤い巨大モンスターが現れる。

オシリスとどこか似ているな。

しかし、大きさは確かにボスクラスだ。




「攻撃力0だと!?」

『ウリアは自分の墓地にある罠カードの枚数×1000だけ攻撃力を上げる。

 墓地にある罠の枚数は3つまりウリアの攻撃力は3000となる』

神炎皇ウリア:攻撃0→攻撃3000



いやー、皆いいリアクションしてくれるな。

俺は実際はアウスと一緒にぼーっと見ているだけだ。

奴の一番のキーカードが何かは既に知っているからな。

悪いが、それを潰す予定だ。

もっとも、引き次第ってところなのでアウスが本気になってくれないことには苦しいんだが。

因みに、三幻魔は全てアニメ効果のほうが微妙に強い。

例えば今の説明を見ればわかるが、ウリアは永続罠でなくとも召喚でき攻撃力をあげる。

そして、罠の効果を受けず、1ターンに一枚罠カードを破壊できる。

更に墓地からの特殊召喚効果もあるので正直OCG化でかなり弱体化したといっていい。

つまりは本物は強いぞということだな。



『カードを一枚伏せてターンエンドだ』

「俺のターン、ドロー!」



俺の手札には……。

巨大ネズミ:効果モンスター/星4/地属性/獣族/攻1400/守1450

ギガンテス:効果モンスター/星4/地属性/岩石族/攻1900/守1300

地帝グランマーグ:効果モンスター/星6/地属性/岩石族/攻2400/守1000

後は、マジックはエネコンと我が身を盾に、トラップは和睦が来ている。

この状況では、切り崩しは難しそうだな……。



「俺は巨大ネズミを守備表示で召喚!」

巨大ネズミ:効果モンスター/星4/地属性/獣族/攻1400/守1450


「カードを1枚伏せてターンエンド!」

『ふっ、ふっ、ふ……手も足も出ないようだな』

「それはどうかな?」

『一瞬で決着をつけてくれよう! 私のターンドロー!』



しかし、まだ若返っていないのに元気な爺さんだ。

やっぱり、デュエルを普通に楽しみたかったのも事実なのかね。

ただ、これが成功したらデュエルモンスターズ自体がこの世界からなくなるわけだが。



『私が引いたカードは強欲な壺、そのまま使って2枚ドロー!』



今一瞬目がキラリと光った、ハモンでも引いたか。

だが、どちらにしろ今の手札では召喚できないはず……。



『神炎皇ウリアで巨大ネズミに攻撃! ハイパーブレイズ!!』

「ぐっ!?」



巨大ネズミがウリアの炎のブレスで消し炭になるまで燃やしつくされる。

ノーダメージだが、プレッシャーがかかる事を考えると闇のデュエルというのは複雑だ。

だが、戦闘破壊では巨大ネズミには役に立たない。



「戦闘破壊され墓地に行った巨大ネズミの効果発動!

 デッキから攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚できる!

 俺が特殊召喚するのは、激昂のムカムカ!」

激昂のムカムカ:効果モンスター/星5/地属性/岩石族/攻1200/守 600


『そんなザコモンスターを呼んだ所で』

「激昂のムカムカの効果発動! 手札枚数×400攻撃力を上げる!

 俺の手札は4枚、よって1600攻撃力を上げる!」

激昂のムカムカ:攻撃1200→攻撃2800


『それでも、ウリアには届かぬ!』

「さあな?」

『ふん、ではやってみる事だ。ターンエンド』

「俺のターン、ドロー!」



さっきのターン、伏せカード破壊に来なかったのは助かった。

罠を破壊し、効果も受けないとはいえ、効果が使えない訳ではないから使いどころを誤らなければなんとかなる。

破壊されると結構辛かったが、よほどウリアに自信があるということだろう。



「手札が増えた事により、激昂のムカムカの攻撃力が400アップ!」

激昂のムカムカ:攻撃2800→攻撃3200


『ウリアの攻撃力を超えただと!?』


驚くほどのことでもないんだが、影丸理事長はデュエル相手にはあまり恵まれていないようだし、仕方ないな。

どうせ、ダークネスやセブンスターズとやってたんだろう。



「更に、先ほど引いた強欲な壺を発動! デッキから2枚ドロー!

 そして手札が増えたことにより攻撃力が400アップ!」

激昂のムカムカ:攻撃3200→攻撃3600



『ぬっ……ぬぅ……』



これで俺の手札は6枚、攻撃力は手札×400なので2400アップしている計算だ。

大したダメージというわけでもないが、先ずはファーストアタックを食らってもらわないとな!



「激昂のムカムカで神炎皇ウリアを攻撃! アンガー・シザース!!」

『ゴァァァ!??!』

影丸:LP4000→LP3400



「更に俺は、墓地の巨大ネズミを除外してギガンテスを特殊召喚!」

ギガンテス:効果モンスター/星4/地属性/岩石族/攻1900/守1300


「そしてモンスターを伏せ、トラップマジックゾーンに2枚伏せる」

『当然激昂のムカムカの攻撃力が下がる』

「ああ、手札が4枚減った事により攻撃力は1600下がる」

激昂のムカムカ:攻撃3600→攻撃2000


「ターンエンドだ」

『何をしたのか知らんが無駄な事だ、それをこのターンに教えてやろう

 私のターン、ドロー!』



これでご老人の手札は3枚、伏せカードが一枚。

どういう使い方もできることになるな、



『私は、神炎皇ウリアの効果を発動!

 トラップカードを一枚墓地に捨てる事で、ウリアは墓地から復活する!』

神炎皇ウリア:効果モンスター/星10/炎属性/炎族/攻 0/守 0


『更に、トラップが墓地に行ったことで墓地のトラップは4枚。つまり神炎皇ウリアの攻撃力は4000となる!』

神炎皇ウリア:攻撃0→攻撃4000


『神炎皇ウリアの攻撃!』

「トラップ発動!」

『トラップは効かぬ!! 喰らえトラップディストラクション!! 今発動したトラップを破壊する!』

「いや、このカードは別だ。効果が及ぶのは俺のフィールド!

 つまりウリアを含まない! だからこのカードは破壊されても効果は発動する!

 トラップ発動! 和睦の使者!」

『ぬぅ……まさかそんな手で来るとはな……』

「基本だよ基本」

『だが、二度同じ手が通用すると思うな! フィールド魔法発動! 失楽園!』

「……」



ついに来たか……規格外すぎるフィールド魔法。

だが、ただでいけるようにしてやる義理はない。

早めに破壊してみせる。



『失楽園の効果発動!

 自分フィールドにウリアかハモンかラビエルがいる場合、1ターンに1度だけカードを2枚ドローできる!

 ウリアがフィールドにいるためデッキから2枚ドローこれで私の手札は4枚!』



準備は整ったということか。

ここからが、本番だな……。



『3枚のマジックカードを伏せる、そしてその3枚のマジックカードを生贄に。

 いでよ降雷皇ハモン!!』

降雷皇ハモン:効果モンスター/星10/光属性/雷族/攻4000/守4000



「なんだ!? カード内のモンスターがやせ細っている……」

「俺のもだ」

「おい! フェザーマン! バーストレディ!?」

「ピケル!? クラン!!」



やはりハモンの召喚辺りが限界なのか次々カード内のモンスターが衰弱していく。

幻魔の真の力はカード内のモンスター達からエネルギーを得て現実に影響を及ぼす力を得ること。

つまり……。



『既に幻魔が召喚されてよりずっと闇のデュエルをしているヨシカツを除いて全てのカードの力を奪っている。

 だが、今の状態ではあくまでこの結界の中でしか幻魔を操ることはできぬ!

 そう、お前のように精霊を操る力が必要なのだ。その力も我がデュエルに勝利すれば奪う事ができる!』

「なるほどな……、力……ね……」

「私は操られた覚えはない」

「だろうな……」



勘違いしているかもしれないが、精霊を見る力ならともかく、操る力を持ち合わせているかは甚だ疑問だ。

ある意味復活を不完全にしてやれて面白くもあるが。

ともあれ、俺は負けてやるつもりなどさらさらないが。



『そして、三幻魔は私に永遠の命を与え、私はこの世の神となることが出来る!!

 オオォォォォ!!! 漲る!! 漲るぞ、力が!!』



影丸は見るも無残な100歳前後のミイラから30代くらいのムキムキマッチョ角刈りあんちゃんへと進化していた。

実際どれくらい若返ったのかはわからないが、そのことが幻魔の力が確かに彼に影響しているこ事を教えている。

そして、培養層に据え付けられていたデュエルディスクをひっつかみ、フンドシ一丁にて地面に降り立つ。

なんというか……ごつい人でも老人になるとガリガリになるというビフォーアフターを見ている気がした。



「クククッ、こんなものはもういらん!!」



そう言って投げたのはは自分が入っていた培養層。

はっきり言って人間にできる事じゃないどうみても1トンクラスの大物なのに。

まあ、3幻魔の力なのかもしれないが、デュエルには関係ない力だね。



「ついに取り戻したぞ若さを!! 来い! ヨシカツ! 貴様の魂ごと俺の肉体に吸い取ってやる!!」

「なら早いことエンドフェイズ宣言をしろ」

「……もうちょっと驚かないのか貴様は」

「俺が勝てば同じことだ」

「この状況でまだ言うとはな、いいだろう、やってみせろ! ターンエンド!」



勘違いをしているようだが、ウリアとハモンを召喚したことはすごいものの、別段俺は追い込まれていない。

現状ではさほど困るものではないからだ。

何より、ライフでは俺の方が勝っている。

とはいえ、向こうは切り札を切ってきた、長引けばやられるだろう。

こちらもかなり運任せになるのは致し方ない。



「俺のターン、ドロー!」



今回引いたカードは……なるほど。

俺はアウスを見る、一気にいけというような目をしていた。

確かに、長引かせるよりはいい。

だが、防ぎきられれば反撃も大きいだろう。

伏せたメタモルポットをあえて使わないのも手か。

……そうだな、そのほうがいい。



「俺は速攻魔法エネミーコントローラーを発動する!」

「な!?」

「俺が使うのは第二の効果!

 伏せたメタモルポッドを生贄に、降雷皇ハモンを俺のフィールドに特殊召喚する!」

降雷皇ハモン:効果モンスター/星10/光属性/雷族/攻4000/守4000


「くっ! だが幻魔へのマジック、効果モンスターの効果は1ターンのみしか効果がない」

「それで十分!

 さて先ずはフィールド魔法失楽園の効果を使わせてもらおう」

「なっ!?」

「俺のフィールドにはハモンがいる、よって1ターンに1度デッキから2枚ドロー」

「くぅぅ!!」



おお、悔しがってるな。

フィールド魔法の効果は本来両方に有益になるものだ。

一方的なフィールド魔法なんて宝玉獣だけで十分ってね。



「更に俺はハモンを生贄に、偉大魔獣ガーゼットを召喚する!」

偉大魔獣ガーゼット:効果モンスター/星6/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0



「なっなにぃ!?」

「ガーゼットの攻撃力は、生贄にしたモンスターの攻撃力の倍となる!」

偉大魔獣ガーゼット:攻撃0→攻撃8000



元々、相手が幻魔のような高攻撃力のモンスターだと分かっていたから入れておいたのだ。

ガーゼットはこと攻撃力の基本数値が高いモンスターに対してはメタになりえるからな。

本来は相打ちをさせるつもりだったが、こうなってしまえば一撃必殺を狙える。



「偉大魔獣ガーゼットで神炎皇ウリアに攻撃! グレート・ライトニング・クラッシャー!!」



ハモンを生贄にしたことで雷をまとったガーゼットの拳がウリアに向かう。

これが当たれば4000ダメージでいきなりデュエル終了だ。

だが、気になるのは相手の伏せカード。

何を伏せている?



「トラップカード攻撃の無力化を発動! 攻撃を一度だけ無効にし、バトルフェイズを終了する!」

「止めはさせなかったか」

「貴様……一体何者だ……」

「ただのデュエリストさ。

 ムカムカとギガンテスを守備表示にしカードを一枚伏せてターンエンド」

激昂のムカムカ:攻撃力2400→守備力600

ギガンテス:攻撃力1900→守備力1300



流石に影丸は少し俺のことを怪しんだか。

俺は彼らのデッキがどんなものか、おおよそではあるが知っている。

状況によってはこうやって圧倒するデュエルを行うことすらできる。

その事を訝しく思うものが現れるのは仕方のない事かもしれない。

だが……、態々自分で公言してやるほど俺も甘くはないつもりだ。



「俺のターン、ドロー!

 そしてフィールド魔法失楽園の効果によりデッキから2枚ドロー!

 クククッ、さっきは冷やりとしたがな、そのモンスターにはご退場願おう!

 偉大魔獣ガーゼットに巨大化を装備!

 普通ならば攻撃力が8000アップするが、そのモンスターの元々の攻撃力は0!

 よって攻撃力は0となる!」

「……」

「バトル! 神炎皇ウリアで偉大魔獣ガーゼットに攻撃! ハイパーブレイズ!!」

「速攻魔法発動! 月の書! モンスター一体を裏守備表示にする! 俺が指定するのは神炎皇ウリア!」

「なっ、なんだとぉ!!?」

「1ターンしか効かないという効果はこの場合次の自分のターンまで使えない意味で同じ。

 さて、どうする?」

「……カードを2枚伏せてターンエンドだ」



流石に影丸も汗をかき始めたな。

この手のデュエルは心理戦の意味合いも強い。

実際の所俺のほうが有利という訳でもないが、流れ的にそう見える。

それを使わない手はないからな。



「では、俺のターン! ドロー!」



心理戦で押していることで、精神的に余裕ができている。

影丸のデッキは本来強力なものだ、その上実際のところは五分五分程度の状態に過ぎない。

影丸が精神的ダメージから脱した時はかなりまずい。

三幻魔にこだわらなければ1ターン3枚ドローのデッキは恐ろしいものだからだ。

ドローしたカードは、異次元からの帰還。

しかし、トラップマジックを破壊できるカードが引けないのは幻魔の力か?

俺がアウスに視線を送ると、アウスは冷や汗をかいていた。

なるほど、影丸はともかく、幻魔の力は本物らしい。



「偉大魔獣ガーゼットを生贄に、地帝グランマーグを召喚!!」

地帝グランマーグ:効果モンスター/星6/地属性/岩石族/攻2400/守1000 



「生贄召喚に成功した事により、グランマーグの効果発動!

 フィールド上の伏せカードを一枚破壊する! 俺は左の伏せカードを破壊! 地殻激震!!」



やはりな、トラップカードは2枚目の攻撃の無力化。

このまま終われば、次のターンで恐らく3体の幻魔が揃う。

しかし、もう一枚の伏せカードはなんだ?



「ウリアを破壊しなかったのか?」

「いいカードを引いたからな、マジックカードヒートハート!

 1ターンのみだが攻撃力を500アップし貫通効果をつける!」

地帝グランマーグ:攻撃2400→攻撃2900


「貫通効果だと!?」

「そのとおりだ! そして、ギガンテスとムカムカを攻撃表示に!」

ギガンテス:守備1300→攻撃1900

激昂のムカムカ:守備600→攻撃2000


「バトル! グランマーグで裏守備モンスターに攻撃! グランド・ブレイク!」

「がぁぁぁ!?」 

影丸:LP3400→LP500



「続けて激昂のムカムカでダイレクトアタック!」

「そうはさせん!! トラップ発動!! リビングデッドの呼び声!! 墓地のハモンを復活する!!」

降雷皇ハモン:効果モンスター/星10/光属性/雷族/攻4000/守4000


「何!?」



忘れていた、OCGでは召喚条件が決まっている幻魔だが、アニメにおいては復活可能なんだった。

実際、アニメで影丸はマジックカードによる復活を行なっていた。

つまり、墓地召喚のできる分更に使い勝手がいいということになる。

アニメで三幻魔が恐れられるわけだ。


俺はアウスを見る、どうするべきかと。

アウスは待てというように首を振った。

仕方ないな……少し待ってみるか。



「……カードを2枚伏せてターンエンド」

「手札を全て伏せたか、もう打つ手がないようだな」

「どうだろうな」

「どこまでも胡乱な奴め! だが、このターンで終わりにしてやる!

 俺のターン、ドロー! そして、ハモンがいる事により失楽園の効果で2枚ドロー!

 更に、マジックカード天使の施しを発動! デッキから3枚ドローし2枚墓地に捨てる!」



なるほど、今回全ての幻覚魔を出す気か、しかし手札はちょうど3枚、生贄を3体用意していたらラビエルは出せない。

既に強欲な壺は発動済み、どうするつもりだ?



「ククッククク!! 行くぞ!

 手札のトラップカードを一枚墓地に送ってウリアの効果を発動! 墓地のウリアを復活する!」

神炎皇ウリア:効果モンスター/星10/炎属性/炎族/攻 0/守 0


「墓地に送ったトラップの枚数は7枚! よってウリアの攻撃力は7000となる!」

「ッ!」

神炎皇ウリア:攻撃0→攻撃7000



墓地のトラップ枚数が増えすぎてかなりまずいことになっているようだ。

攻撃力7000に対処するのはちときついな。

とはいえ……まあどうでもいいとも言えるが。



「そして、俺は幻銃士を召喚!」

幻銃士:効果モンスター/星4/闇属性/悪魔族/攻1100/守 800



あれは、確かヨハン(ユベル)が使っていた……。

しかし、確かに影丸のデッキに入っていないほうがおかしいようなカードではある。

なにせ、幻魔の召喚サポートそのものなのだから。



「幻銃士は召喚されたとき、幻覚銃士を除きフィールドに存在するモンスターの数だけ銃士トークンを特殊召喚できる!

 現在幻銃士以外のフィールドにいるモンスターの数は、ウリア、ハモンの2体。

 よって2体の銃士トークンを特殊召喚する!」

銃士トークン:通常モンスター・トークン/悪魔族・闇・星4・攻/守500

銃士トークン:通常モンスター・トークン/悪魔族・闇・星4・攻/守500


「更に、幻銃士の効果発動!

 自分フィールド上に存在する銃士と名のつくモンスターの数×300ポイントのダメージを与える!」

「ガァァァッ!?」

佳克:LP4000→LP3100



やはり幻銃士もアニメ効果か、OCGならスタンバイフェイズにしかこの効果は出せないはずなんだが。

もっとも、召喚効果のほうはアニメのほうが弱体化していたりするんだが。

本当にどうでもいい知識ではあるが……。



「さあ、幻銃士と銃士トークン2体を生贄に、いでよ幻魔皇ラビエル!!」

幻魔皇ラビエル:効果モンスター/星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000


「これで、三体の幻魔が我がフィールドに揃った!

 もう、俺を脅かすことなど出来はせぬ! さあ、これで終わりだ!

 バトル! 幻魔皇ラビエルでギガンテスを攻撃!」

「馬鹿ね」

「精霊?」

「貴方は前のターンにもう終わっていたのよ。可哀想だから3幻魔を出させてあげただけ」

「なんだと……」

「でも、結局つまらない落ちにしかならなかったわね……いいわヨシカツ、終わらせて」

「何を言っている!! 俺は、俺は!!」



影丸が混乱するのもわかる。

俺だってこんな引きになるとは思わなかった。

真剣になったアウスがこんなに引きに貢献してくれるとは。

正直恐ろしいと言ってもいい。



「速攻魔法発動、魔法効果の矢!

 相手フィールド上表側表示のマジックカードを全て破壊する。俺が破壊するのは、フィールド魔法失楽園!」

「くっ、ドローを封じる気か!? しかし今更!!」

「魔法効果の矢の効果発動!

 破壊したマジックカードの枚数×500のダメージを相手に与える。

 破壊したマジックカードの数は1枚、よって500のダメージを与える!」

「なっ、なにぃ!!!?」

影丸:LP500→LP0


「済まないな、今回は少しばかり引きが良すぎたようだ」

「こんな、こんなことが……ガァァァァァ!??!?!」



しかしまあ、いれた目的は全然違ったのだが……。

まさか、魔法効果の矢が決め手になってしまうとは……。

っていうか、我が身を盾には手札で腐ってしまったな……失敗だ。


そんなことを考えているうちにも、影丸は筋肉ムキムキ状態から気が抜けるようにしぼんで行き……。

下のヨボヨボ老人に逆戻りした。

老人が寂しさから起こした騒動にしてははた迷惑がすぎる話になっていたが、十代がなにやら慰めているようだ。

まあそっちは任せておこう、しかし、今回の事で闇のデュエリストになっているタイタンが少しばかり心配だ。

落ち着いたら元に戻してやるよう進言しておこう。

しかし、この一年……デュエルばっかりやってたな。

幻魔を倒せたってことはそれなりに強くなったと考えていいのかね?



「おーい!」

「三沢?」

「ああ、そう言えばそろそろ進級時の入れ替え試験の時期だぞ。

 幻魔の事も終わったし、次はイエロー領への入れ替えデュエルだな!」

「そうなるな……」



まだ俺の一年は終わっていないようだった。






あとがき

一年目の最終話です。

彼のデッキはそこそこ強かったと思いますが、無茶なのは手札補給くらいですw

実際、召喚が大変だし、手札消費が激しいですからね(汗



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