IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫

第四十六話
「日本の力、姉妹の衝突」



 打鉄・弐式の開発にキラとラクスが協力する様になってから半月、キラとラクスと簪は第三アリーナに来ていた。
 既にオルタナティヴを起動しているラクスとは違い、キラと簪はISスーツを着たままだ。

「じゃあ、先ずは僕から・・・ストライクフリーダム、起動!」

 束の手で修復されたストライクフリーダムを起動する。外見は前のまま、特に問題は無いのだが、調べてみれば一目瞭然、以前と比べて性能が27%ほど落ちていた。

「やっぱり、性能が落ちるか・・・」
「でも、想定より3%ほど性能を高く再現出来たのは流石と言うべきですわ」

 次は簪の番だ。指輪型の待機形態になった自身の専用機を呼び出す。

「おいで……打鉄・弐式」

 白と黒の装甲が特徴的な機体、打鉄・弐式が展開された。
 早速だが各所のチェックを済ませると、キラと簪による完成した打鉄・弐式と修理が終わったストライクフリーダムの機能チェックも含めた模擬戦が始まる。

「じゃあ、先ずは荷電粒子砲から撃ってみて」
「はい! 春雷、起動・・・照準、OK!」

 先ずは試しという事でターゲットロックも全てゆっくりと行った。
 ターゲットになっているストライクフリーダムはビームシールドを展開して、荷電粒子砲を受ける用意を整えている。

「発射!」

 放たれた荷電粒子砲、一直線にストライクフリーダムへ向かい、ビームシールドに中る。出力は申し分無い、後は連射性と、連射した時の砲身なのだが・・・。

「まだ!」

 次々と荷電粒子砲が連射される。連射速度は想定より少し速いといった所だろう、連射が終われば今度は砲身のチェックが行われたのだが、砲身は熱融解している所も、罅割れている所も見受けられない。

「如何?」
「はい、春雷は完璧です」
「そっか、なら次」

 春雷に問題が無いのなら次は夢現だ。ストライクフリーダムがビームサーベルを抜いて、打鉄・弐式は超振動薙刀、夢現を展開して構える。

「いきます!」

 ストライクフリーダムのビームサーベルはやはり出力が下がっていた。もうこれではキラお得意のビームをビームサーベルで切るという離れ業は発揮できないだろう。
 夢現の方は思っていた以上の振動数を出してしまい、そこから想定される切れ味は、背筋が凍るの一言だった。

「じゃあ、最後・・・ラクス」
「はい」

 最後は山嵐のチェックだ。
 ラクスが全身から発射したミサイル48発、簪は目の前に展開されたマルチロックオンシステムで全ミサイルをロックすると、フルバーストの勢いで山嵐・・・独立稼動型誘導ミサイル全48発を発射、ラクスが放ったミサイル全てを撃墜する。

「すごい・・・これが、マルチロックオンシステム」

 元々、打鉄・弐式には日本のマルチロックオン・システムというシステムを搭載する予定だったのだが、マルチロックオン・システムは完成せず、ほぼ諦めかけていた所にこのストライクフリーダムに搭載されているマルチロックオンシステムの導入だ。
 元々のマルチロックオン・システムよりも高性能なそれに、簪は知らず知らずの内に口元に笑みが浮かんでしまった。

「如何かな? マルチロックオンシステムの方は」
「凄く、良いです…これなら山嵐の性能をフルに発揮出来ますから」
「そう、それじゃあ後は完成した打鉄・弐式を完璧に使いこなせる様にならないとだね」
「・・・がんばります!」

 この後は、簪が打鉄・弐式を使いこなせる様になるまで徹底的に模擬戦を行う事に。勿論、簪の為というのもあるのだが、キラが機能低下したストライクフリーダムに慣れる為の訓練でもあった。


 ストライクフリーダムの修理が終わったという知らせを受けた一夏たちは直ぐにでもキラとラクスがいる第三アリーナに行きたかったのだが、第一アリーナで行っていた模擬戦の途中で乱入してきて鍛えてあげると言い出した楯無に今は訓練に集中しなさいと言われてしまい、誰一人として行く事が出来ずにいた。

「ねぇ会長、僕は行っても良いと思うんですけど・・・確かお兄ちゃんと約束してましたよね? 僕にも干渉しない様にって」
「あら? 約束っていうのはね、破る為にあるのよ。それに、貴女だって鍛えないと今のままじゃ全然駄目、ヤマト君を落とした敵になんて勝てないわ」
「っ、でも・・・会長だって勝てなかったのに、その会長に鍛えられても意味が無いと思うんですけど」
「・・・言ってくれるわね」

 あの時、クルーゼに手も足も出なかった事を、楯無は未だに引き摺っていた。ロシア代表としてのプライドがあの瞬間、ズタズタに引き裂かれたのは言うまでも無い。

「まぁ、向こうへ行かなくても良いです」
「あら、随分と素直ね」
「だって、もう呼んでますから」
「・・・え?」

 その時、楯無の霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)がロックオンされた事を知らせるアラートが鳴る。
 慌てて蛇腹剣(ラスティーネイル)を振ると、一発のミサイルを切り裂いた。

「い、今のミサイルは・・・」

 セシリアのブルーティアーズではない、シャルロットは目の前にいる、他のメンバーでミサイルを搭載している者はいない。
 なら、誰が放ったのかとミサイルが放たれた場所を見ると、ストライクフリーダムに乗ったキラとオルタナティヴに乗ったラクスの姿と、そして・・・打鉄・弐式に乗った愛する妹の姿があった。

「か、簪ちゃん・・・」
「お姉ちゃん、最低……約束を破る人間だったなんて、思わなかった。私が憧れて、嫉妬していたお姉ちゃんが、実は人との約束をどんな理由があったとしても平気で破る様な最低な人だったなんて・・・」
「ち、違う・・・違うの簪ちゃん! こ、これには・・・わ、訳が・・・!」
「聞きたくない・・・お姉ちゃん、もう私、お姉ちゃんの妹、辞めるね」
「え・・・?」

 今、何を言われたのか理解出来なかった楯無だったが、だんだんと意味を理解して一気に青褪めた。

「ちょっと簪ちゃん! 何を言ってるのよ!?」
「私、キラさんとラクスさんの妹になる。シャルロットさんの姉妹だよ」
「・・・あれ? 僕の知らない所で何があったの?」

 シャルロットが首を傾げていると、何事だと一夏たちが集まってきて、シャルロットに尋ねてくるが、正直こっちが聞きたい。

「簪ちゃんのお姉ちゃんは私! 私だよ!?」
「人との約束を破るようなお姉ちゃんはいらない。私は、打鉄・弐式を完成させるのを手伝ってくれた優しいキラさんとラクスさんの方が、お姉ちゃんより好きだから」
「っ!!!」

 楯無が殺意の篭った目でキラとラクスを睨みつけてきた。

「あなたがやってきたこと、全部彼女に話しておきましたから」
「自業自得、因果応報、後悔先に立たず、良い言葉ですわね」
「・・・許さない、簪ちゃんに手を出すなんて」
「先に一夏たちに手を出してきたのは貴女です。目には目を、歯には歯を。ハンムラビ法典には良い言葉がありますね」

 それを聞いて歯軋りした楯無はここでキラに模擬戦を挑もうかと思ったが、以前負けている事を思い出した。
 なら如何したら良いのかと考えていたら、簪が夢現を出して楯無に向けて構えるのが見えた。

「お姉ちゃん、私の考えを改めさせたいのなら、私と・・・戦って」
「簪ちゃん!?」
「私が負けたら、さっきの言葉は撤回する。でも、もし私が勝ったら、お姉ちゃんには二度と裏表問わずキラさんとラクスさんの事を調べるのを止めてもらうのと、お姉ちゃんの妹を・・・本気で辞めるから」
「・・・本気で、勝てると思ってるの? お姉ちゃんに」
「もう、私はお姉ちゃんの影で周囲の目に怯えてる私じゃない・・・だから、負けないよ」
「・・・わかった。なら、これから始めましょうか」

 楯無も蛇腹剣(ラスティーネイル)を構え、距離を取った。
 突然、模擬戦が始まる事になったので、一夏たちは急いでキラ達の所・・・アリーナ入り口まで移動すると、模擬戦は始まる。

「なあキラ、何が起きたんだ?」
「ごめん、後で説明するよ・・・今は、見ててあげて。天才の姉を超えようとする妹の努力の形を」

 その言葉に、箒が息を呑んだ。そして、簪が自分と似た境遇にあるのだと感じて、自然と簪の姿が目に焼きつくのを自覚する。

「凡人でも、天才に追いつける・・・追い越せるんだって、簪さんは証明しようとしているんだ」

 その力強く、そして美しい姿を、見てくれ。キラは、言葉に出さないが、間違いなくそう言っている。ならば見よう。天才を凡人が超えようとする、その姿を。




あとがき
忙しいです。本当に…。



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