狼姫<ROKI>
紫電


それは、特別な家に生まれ、特別な運命を二度に渡って背負った女の話。

女が生まれ育ったのは、表向きには一千年間も続く名家なれど、その裏で魔物退治を生業とする家系だった。

女は物心ついた頃から剣を握っていた。
それは家柄状、当然とも言えることであり、幼いころの女はそれを疑問に思わなかった。
そんな幼い日の彼女の稽古相手は専ら木偶であった。

丸太に帽子を被せたような体に、木刀を持った細長い両腕を強引にくっつけ、根元には360度は回転する棒切れがある。
稽古相手の人間の動きに合わせて最適な打ち返しをするこの自動人形、まだ剣の初歩を学ぶ子供には打って付けの固定標的だった。
ただ、くどい様だがこの全自動木偶、その場を一歩も動かないだけで意外と隙がなく、力も割と強い。
例え木偶の二刀を渾身の力で封じたつもりでも、うっかり足払いを受けるということもあった。

しかし、女はその稽古の日々が楽しいものであると感じていた。
一日、二日、三日と経つごとに女は人形の動きを少しずつ見極め、打ち合う内に力は徐々に強くなる。
それを一体何日繰り返したか、数えるのも面倒になった頃、人形は動かなくなった。

人形は既にボロボロだった。
小さな剣士との剣戟の日々を過ごす内に、成長した女の打ち込んだ一撃一撃が重なった結果であった。
最早、女の剣の腕は人形では釣り合わないものと判断され、何時の日か女の稽古―――修行相手は人間に変わった。

通常、魔を戒める剣士の子として生まれた者は、幼い頃、同じ境遇にある者達と共に寝食を共にしながら修行に励む時期がある。
ただし、修行を受けた者すべてが剣士として大成するわけではない。故に彼らは素性を隠し合い、互いを色で呼び合った。
しかし、本来なら男しかなれないソレの修行に女が一人だけ混じれば、どの家柄の子供であるかなど一目瞭然である。

その為、女が対人戦を学ぶ時、教えを授けるのは決まって成人した剣士であった。
当然ながら、彼らとて何時でも家庭教師が出来る程暇を持て余してはいない。なので、複数人の剣士を代わる代わる呼んでいた。

時には導師と呼ばれる高名な人物が、時には無名の剣士が、時には荒々しい悪名高い剣士がやってきたこともある。
女は生まれ持った才覚で彼らが身を以て授ける剣技の全てを吸収した。一度覚えた技は決して忘れず、時には応用を利かした。

本来、魔戒騎士の師匠は親だと相場が決まっているが、女の母親は生まれつき病弱で形だけの当主であった。
父に至っては本来、平穏な暮らしをしている筈の市井の人間である為、他家の助力が必要とされていた。

そのような大勢の力を借り受けた本格的な修行の日々を送る中、女は妹の事を考えた。

自分より7年遅れて生まれてきた妹。
妹もまた、物心ついたときには新しい人形相手に剣を振るっていた。
同じ資質を持つ者として、妹にも剣を学ばせるべきだという周囲の意見であった。
女も妹もその意見に反対する理由もなく、二人そろって修行に明け暮れた。

尤も、妹は剣だけでなく術も学んでいた。割合的には半々というところだろうか。
無論、一族が久遠の時を掛けて培ってきた知識は既に女の背中へと刻まれていたが、女は妹ほど術について教わらなかった。
これは二人の未来を見据えてのもの、というのは遠巻きに見てもはっきり理解できた。

女は一直線に剣士の道へと。
妹は剣士と術士の両面へと。

もし女に”もしも”が起こっても問題ないように。
起こらなかったら起こらなかったで有能な術士として―――妹を予備として扱っているとも言えた。
背が大きくなるにつれて、姉妹はそれに勘付いていった。
だが、彼女らはそれに対して異議申し立てをするつもりは毛頭なかった。

どのような形であれ、人を守ることができる。
そこにきっと、間違いはないと信じていたからだ。

でも……現実はどちらかと言えば、嫌な予感の方が当たることが多い。

一族に伝わる剣と鎧を受け継いでから幾何かの時が過ぎた頃、女は死んだ。戦って死んだ。守って死んだ。
一族は女の骸より剣と鎧と腹心を取り払い、妹に受け継がせた。そのことに女は一切不満は無い。寧ろ当然だと思っている。

そう……蘇ったが故に、そう思えた。

闇から目覚めた時、女は人ではなくなっていた。
魔性から血と魂を啜り貪る吸血鬼として第二の生を授かった。
人でなくなるという悲劇を我が身に受けて尚、女の心から誇りは消えなかった。
女は己を人の身から外した男に請い、新たなる剣と鎧を手にすることが出来た。

しかし、女はその躰だけでなく、その鎧さえも闇色に染めてしまった。

人知れず戦う女の前に現れた強大な魔獣たち。
それを極短時間で倒すことはできなかった。いや、一体だけなら間に合ったかもしれない。
ただ単純に、二体目を相手にする時間が無かっただけなのだ。

バギ、ボギ、という悍ましい音が戦場を支配し、女が纏う鎧は腕も胴体も足も兜も、何もかもが巨大なケダモノへと変貌を遂げていく。

心滅獣身―――その名の通り、騎士の騎士たる心を殺す魔獣の姿。

それからの闘いは闘いと呼ぶことすら憚れた。
ただ只管に魔獣が吠え、魔物の肉身をその爪で引き裂き、その尻尾で貫き、その咢で噛み砕いた。
ただ、それっぽっちの話である。

女は思った。
ここで終わりたくないと。
獣のままは嫌だと、せめて姿だけでも人でいたいと。

魂が喰われていく中、女はそう願った。
当然だが、祈りの強さを数値化などできはしない。
でも……もし本当に数値化できるとすれば、点を着けるというレベルでは済まない結果となっていただろう。

だがしかし、これは闇に堕ちた者を知る者ならば、理解できることだった。
心滅を越えることは決して不可能ではないのだから。それは闇の歴史が証明していた。

かつて、より強大なる力を求めた魔戒騎士はホラーの始祖、メシアと契約を結んだ。
千体のホラーの陰我を喰らった暁に彼女と融合し、最強にして無敵、不老不死とも言える存在に成り上がろうとした。
その為には鎧に己が魂を喰わせ、獣と化した鎧を自力で解除することから始まる。

そうして誕生してきた者たちに与えられた称号こそが―――暗黒騎士―――!

結果として女は彼らと同じく、闇を従えた。
闇の騎士、ギロとなって……。

でも……それでも……黒き闇に堕ちた女の心には残っていた。

守りし者の誇りと共に燦然と輝く、内なる光が。





*****

舞台は夕闇。
陽が沈み、月が昇るまでの光と影が交差する時間。
それが雷火、ライダー、雁夜、ウェイバーの対戦するフィールドであった。

「嗚呼……眩しい……」

フードを深く被りながら、雷火が小さく呟いた。
理由についてはごく簡単、というか言葉のとおりである。
雷火たちの頭上には煌々と黄金に輝く灯りが存在していた。
いや、これも比喩であるが、灯りといっても彼女たちを照らす為にあるわけではない。

「ふっ、眩くて当然だ。今更何を言っている」

対戦相手の後光として浮かぶ光の波紋たち。
その先には幾多もの伝説の原典が顔を覗かせ、刃をこちらに向けている。
さながら、大人数の弓兵が矢を番えているようにさえ見えた。

「全ての財宝は我が蔵を起源とする。故、(オレ)が使って何の不義がある」
「ふん、流石はバビロニアの英雄王。だがな、殺し合いを始めるには、ちと早くはないか?」

が、そこへライダーがアーチャーに問いかけた。

「確か貴様の酒瓶、まだ中身が残っておったよな」
「ほお、流石は簒奪の王よ。他人の持ち物には目敏いな」

ライダーの魂胆が見えた所為か、アーチャーは宝剣宝槍を仕舞い、代わりに黄金の酒瓶と酒器二つを取り出した。
それを見てライダーは遠慮のない様子でアーチャーに歩み寄り、美酒が注がれた酒器を手に執り、アーチャーもまた酒器を美酒で満たした。

カチン、と互いの酒器を打ち鳴らすと、二人の王は一気に神代の酒を飲み干した。

「バビロニアの王よ、最後に一つ、宴の締めの問答だ」
「許す。述べるが良い」

二人の王は嵐の前の静けさと言わんばかりに問答を始める。

「例えばな、余の『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』を、貴様の『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』で武装させれば、間違いなく最強の兵団が出来上がる。西国のプレジデントとかいう奴も屁じゃあるまい」
「ふむ、それで?」
「改めて、余の盟友とならんか?我ら二人が結べば、きっと星々の果てまで征服できるぞ」

スカウト、というよりは同盟。
その常軌を逸する発想にギルガメッシュが笑い出す。

「つくづく愉快な奴よな。道化でもない奴の戯言でここまで笑ったのは久方ぶりだ」

冷笑を浮かべつつも、英雄王のプライドを礎にした冷酷な声音を吐き出す。

「生憎だがな。(オレ)は二人目の友など要らぬ。我が朋友は後にも先にもただ一人のみ。―――そして、王たる者もまた二人は必要ない」
「孤高なる王道か。その揺るがぬ在りように、余は敬服をもって挑むとしよう」
「良い。存分に己を示せよ征服王。お前は(オレ)が審判するに値する賊だ」

とてもこれから殺し合いをするとは思えない雰囲気の中で二人は言葉を交わし、そしてそれを一度切り上げて後退する。

「随分お話が弾んでいましたね」
「まあ、今から殺し合うとあってはな。何せ余が生涯最期に視線を交わす相手になるやもしれんのだ。邪険にはできまい」
『まったく、自分がまるで逝っちまうような言い草だなオイ』

戻ってきた征服王に対し、吸血鬼と魔導具が話しかけた。
それは軽口のようにも聞こえたが、真意は”弱気なことを言うな”ということを皆は薄々理解していた。
その中で一人の少年―――ウェイバー・ベルベットがある一つの英断を下そうとしていた。

彼は龍洞に入り、フォーカスから戦力外通告を受け、完全にお情けで此処に同伴させられている。
だがしかし、そんな半熟の彼でもたった一つだけ譲れないモノがあった。

「我がサーヴァント・ライダー。ウェイバー・ベルベットが令呪をもって命ずる」

その手に刻まれた三画の聖痕。
彼はそれをこの場で発動させようとしている。

「ライダーよ、必ずや、この戦いに勝て!」

言い放たれた命令は魔力となってライダーへと向けられた。
それと同時にこれまで一度として使われなかった令呪が初めて欠けた。

「重ねて令呪をもって命ずる。ライダーよ、必ずやオマエが聖杯を掴め」

我ながらメチャクチャな物言いだと思った。
聖杯は汚染されている。それを知りながら自分がこのような事をのたまわっている。
二画目の令呪の消失と共に、それでも彼の望みの一端が叶う事を心の隅で願った。

「さらに重ねて、令呪で命ずる」

これが最後の命令。三画目の令呪だ。
この先の言葉を紡げば、自分は資格を失う。
聖杯を得る資格も、ライダーのマスターである資格も。

「ライダーよ、必ずや世界を掴め。失敗なんて許さない」

だが、後悔はしないと決めた。故にやるのみ。
三つの聖痕は形を失い、魔力の波となってライダーへと押し寄せた。
ウェイバーはそれを無言で眺め、自分の思い切った行為に不可思議な爽快感を味わっていた。

(ほう……あの王気(オーラ)……全力以上に全力というわけか)

余すところなく解放された令呪の魔力を感じ取り、ギルガメッシュもまたライダーが―――そしてそのマスターもこの勝負に全てをかけていることを察する。
だが、それで良い、と思った。
彼奴は己の手で裁くと決めた賊だ。自分に向かってくる以上、何もかもを叩き売る覚悟で来て貰わねば困る。

「さあ、行けよ。オマエの好きなようにすればいい」
「うむ。あれだけ口喧しく命令されたのだ。貴様も見届ける覚悟であろう?全ての命令が遂げられるまで」

ウェイバーは悔恨など微塵もなくライダーを送り出そうとした。
だが、当のライダーはただの魔術師となった少年を未だに引っ張りまわそうとしている。

『征服王。そのチビはもうマスターじゃねぇ、令呪もねぇ。それでも、関係ないんだな?』
「もちろん、言われるまでもない。マスターでないにしろ、余の朋友であることに変わりはないからな」

魔導具が鋭い口調で問い、征服王は胸を張って言い切った。

「……ボ――ボクなんか、で……本当に、いいのか……オマエなんかの隣で、ボクが……」
「あれだけ余と共に戦場に臨んでおきながら、今更何を言うのだ。馬鹿者。貴様は今日まで、余と同じ敵に立ち向かってきた男ではないか。ならば、朋友だ。胸を張って堂々と余に比肩せよ」

その偽り無き言葉にウェイバーの心は打ち震えた。
自分如きが―――否、このように自分を卑下する考えさえも吹き飛ばす王の一喝に。
雷火も、雁夜も、バジルも彼らの会話を耳にして思わず息を漏らした。

「ふふ……。征服王よ、いざ……!」
「うむ!」

雷火が首飾りを外し口づけを落として魔力を込め、横にいる王者へと呼びかける。
かの王はそれに応え、剣を抜いて時空の彼方へと向かって叫んだ。

「集えよ、我が同胞!今宵、我らは最強の伝説に勇姿を印す!」

勇ましい号令。
それによって呼ばれる魂と、彼らに相応しい世界が夕闇を塗りつぶした。

澄み渡る様な青空と広大な砂漠。
イスカンダルの後方に控えし数千の英雄の大軍団。
ここに再び『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』が顕現した。

イスカンダルはアサシンの群れを蹂躙した時と同様、英霊馬ブケファラスに跨る。

「さぁ坊主、戦車の御者台よりはちょいと荒れる乗り心地だが、まぁそこは腹を括って耐えることだ。ほれ、乗るがいい」
「あぁ……」

もはや憂いは無い。
自分と彼は主従などではない。友なのだから。
一度でも友であることを認めた相手に遠慮など不要、イスカンダルは間違いなくそう言い放つ男だから。

ウェイバーは要領こそ悪く手間取りはしたが乗った。
伝説の駿馬の背に、偉大なる王の背を前にして。

「雁夜さん、私たちも」
『気後れするなよ、デスメン』
「あぁ、そうだな……」

雷火の頭上で首飾りが回転し、魔力の光が異界の門を開いた。
頭上から降り注ぐ光の中で彼女は暗黒の鎧を瞬時に纏い、次の瞬間には漆黒の魔導馬が召喚された。
暗黒騎士ギロが顎を動かして指図すると、雁夜は躊躇なく叢雲の背中に跳び移った。

彼女は煉獄剣を構え、雁夜が魔導筆を構え、こちらの準備は全て整った。



「敵は万夫不当の英雄王――相手にとって不足無し!いざ益荒男たちよ、原初の英霊に我らが覇道を示そうぞ!」
『おおおおおおおおおおッ!!!!』



「来るがいい、覇軍の主よ。今こそお前は真の王者の姿を知るのだ……」



『AAAALaLaLaLaLaie!!』



雄叫びが木霊する。
山脈などではない平坦な砂漠でありながら、益荒男たちの咆哮は仮初の世界の全てに轟いている。
無論、その中において駿馬ブケファラスに騎乗するイスカンダルとウェイバー、魔導馬・叢雲に騎乗するギロと雁夜の二騎を先頭として。

しかし、その強烈な光景を前にしても、それと対峙してもギルガメッシュは揺るがない。
此の世の全てを手にした英雄王はただその紅い瞳を愉悦に秘め、己の考えの正しさを改めて知る。
やはり、あの男は全力を以て争覇するべき敵対者である、ということを。

「夢を束ねて覇道を志す……その意気込みは褒めてやる。だが(つわもの)どもよ、弁えていたか?夢とは、やがえ須らく醒めて消えるが道理だと」

自らの孤高な王道とは全く逆の絆の王道。
ギルガメッシュは賛辞を口にし、異空間から一つの宝具を手にする。
それは一見、短剣のように見えたが実際は違う。よく目を凝らしてみると、その手に握られているのは複雑怪奇な形状をした黄金の鍵。
英雄王がその鍵の剣――王律剣バヴ=イルを構えると、刀身からは赤く輝く電子回路のようなものが宙に向かって縦横無尽に這い回った。
一見奇妙な光景だが、彼の手にある物の役割を考えればすぐにわかることだ―――鍵とは、開けるための道具なのだから。

封を解かれ、その御姿を露わにしたのは一振りの剣。いや、それが剣という分類に入るかさえ疑わしい。
長剣程度の刀身が、三段階に重なった円柱と、その切っ先に螺旋状に捻じくれた鈍い刃。それらは碾き臼のように交互に回転を続けている。

「さぁ、見果てぬ夢の結末を知るがいい。この(オレ)が手ずから理を示そう」

英雄王が握りしめし秘宝・乖離剣。
その偉容を目にしてライダーが叫ぶ。

「来るぞッ!」

距離的に先手は間違いなくアーチャーだ。
しかし、負けるつもりはない。いかに強力な、そう、騎士王の聖剣級の一撃であろうと、全軍を滅ぼせるとは限らない。
ならば、一撃が終わった後、必ずできる隙を残った軍勢が一気に蹂躙するだろう。

故に思った。如何なる宝具であるのか、と。
対人など論外。ならば自分の戦車と同じ対軍か。それとも彼女の秘剣と同じ対城か。

「さあ目覚めろ『エア』よ。お前に相応しい舞台が整った!」

エア――メソポタミア神話において『天』『中』と別たれた大地と水の神。
その名で呼ばれる原初の神造たる兵器は、始まりの刃としての役を担いし存在。
即ち、天と地を切り分け、無形であった世界に確たる姿を与えた事に他ならない。

円柱じみた刀身の凄まじい回転によって烈風が巻き起こり、彼の剣からは暴虐とも言える魔力が吹き荒れる。

「いざ仰げ――『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』を!」

振り下ろされる刀身。
それと同時に始まる光景に四人は、否、全員が驚愕を禁じ得なかった。

目にしたモノは正しく世界の崩壊であった。
空が裂け、空気が狂い乱れ、地が割れていく。
どれもこれもがこの異空間を構成するモノを壊していく。
特に厄介なのは砂漠を断裂させられていくことにあった。

理由は極めて簡単。人は空を飛べやしない。
文明を帯びた鉄で武装せねば、重力に囚われて落ちていくだけ。

「雁夜さん、ウェイバーくん!しっかり掴まってください!」
「跳ぶぞぉ!」

眼前で地割れを起こされ、奈落に堕ちていく砂。
ギロとライダーは愛馬に手綱を用いて命を下し、彼と彼女は蹄を地に叩きつけて跳躍する。
超常の領域にある駿馬の一駆けは容易く地割れを越えて向こう岸へと辿り着く飛距離を稼いだ。
と、その時になってウェイバーと雁夜は後続の兵士達の姿をふと振り向いた。

「「――――ッ」」

視界に映ったものは、何も出来ずに奈落の底へと無残に飲み込まれていく彼らの姿。
共に落ちていく砂も相まって、まるで蟻地獄の罠に掛かった憐れな小虫のように見えてしまう光景だ。

(あれは……森羅万象、全てを崩壊させる対界宝具なのか……!?)

ウェイバーは固有結界という一つの異界を砕こうとしている剣を見て一つの結論を出した。
あれは只の一振りで世界に変革を齎す神代の奇蹟なのだということを。

結果、英雄王ギルガメッシュはその場から一歩たりとも動くことなく、『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』を完膚なきまでに打ち破ったのだ。
巨大な軍も、雄大な心象も、皆等しく消え去った。残されたのは自分たち四人と元の夕闇だけだ。

「…………」

ギロはその有様を目にし、沈黙を保ったまま鎧と魔導馬を魔界に変換し、雁夜ともども地に足をつけた。

「成程。流石にこれは相性が悪いですね」

雷火はこれといって取り乱す様子もなく、至極冷静に英雄王と征服王の宝具の特性を理解し、そしてそれらがぶつかった際の結果を素直に受け入れていた。
結論からして、征服王の軍勢で、人類最古の神話には敵わないと。

「流石は英雄の王様ですね」
「当然だ。(オレ)の威光を漸く理解したか、吸血鬼」
「貴方が凄い、というのは認めます。でも、貴方だけの力で成し遂げたことではないでしょう」
「…………」

ギルガメッシュの表情は能面のような無表情と化す。
雷火の指摘通り、ギルガメッシュが単独でこなした偉業はウルクを創り、世界の全ての財宝を収めた、というのが有名だ。
しかし、叙事詩に描かれている魔物や神との戦いにおいて、彼を支えた唯一無二の友がいる。

名をエルキドゥ。
元を糾せば、暴君であったギルガメッシュを戒めるべく誕生した神造生命だったが、ギルガメッシュの計略によって野人としての力を失い、代わりに人としての知恵を得た。
二人は出会うべくして出会い、戦うべくして戦った。互いの体と財が尽き果てるまで。
青臭いと言えばそれまでだが、とにもかくにも、彼らは親友となったのだ。

そして、人間以上に人間らしい女神の呪いを受け、彼は塵へと還った。

そのような過去が脳裏をよぎったのか、ギルガメッシュは僅かに声を低くして喋る。

「確かに我が朋友と過ごした時は、宝物庫に眠る全ての宝と比してなお輝かしい」
「でしたら、貴方とて分かっているはずです。一人より二人の方が何倍も素晴らしいことを」
「……ふ、達者な口だ」

雷火との問答にギルガメッシュは口元を吊り上げると、手元に黄金の波紋を出現させ、そこから何かを射出して雷火の足元に突き立てた。

「これは……デュークの……」

地面に突き立てられた弓状の武器は紛れもなく、紫電騎士の双弩狼銃剣。

「奴は我が友の鎖で縛られるまで足を止めなかった。命が尽きるまで諦めなかった。その有様に対する称賛としてそれを宝と認めてやったのだ」

故に宝物庫に所蔵していた。
しかし、全ての物を己のものと主張する彼が何故その宝を手放すような真似をするのか。

「一丁前に友の価値を語ったのだ。ならば貴様も示してみよ、あの男の価値をな」

故に手に執れ、その剣を。
そして、語るべきは言葉にあらず。

ギルガメッシの遠回しな物言いに、雷火は思わず口元を緩めてしまった。
だが、それでも決して眼前の英雄への敬意は忘れなかった。

「伊達にAUOを名乗ってはいないというわけですか」
「ふん、当たり前……ちょっと待て。今、イントネーションが可笑しくなかったか」
「気のせいですよ。男が小さいこと気にするもんじゃないですよ」

若干、からかったが。
目の前で見聞きしている雁夜は己の主人のいじめっ子気質にほとほと呆れていたりもした。

雷火は左手の指先で柄をそっと撫で、そしてガシりと掴み、間髪入れることなく魂の刃を抜き掲げた。

「……お見せしましょう」

その一言だけでいい。
くどいようだが、求められているものは言葉ではないのだから。

右手には煉獄剣を、左手には双弩狼銃剣を。
左右それぞれの腕を横へ伸ばし、そして二つ切っ先が円を形作った。

瞬間、



―――ビガッッ……!!―――



余りにも眩しすぎる光が、二つの鎧のパーツと共に溢れ出した。

そして、光が鎧諸共に収束し、集いし時―――

「――受け継がれる、騎士の想いを」

暗黒と紫電が、一つに重なった。

現れた者の色は黒と紫の交じり合った、正しく闇そのものだった。
だが、肩部の稲妻を模した装甲と、腰から垂れ下がる漆黒の魔法衣、両の肘と膝の突起も紫色に染まっている。
それらは黒と引き立たせるうえで紅にも劣らぬ美しい金属的光沢を放っていた。
何より特筆すべきは、吸血鬼を語るうえで欠かせない牙―――それが露出していない筈の口元が大きく裂け、猛々しい歯牙が剥き出しになっていることだ。

背より生やした両翼にて優雅に宙に立ち、友から受け継ぎし剣を携えたその騎士の名は―――



―――電光雷身(デンコウライシン)鬼狼(ギロ)―――ッ!!



「英雄王!これが私たちの歩んで往く道だ!」
「……良い。存分に示せ」

次の瞬間、黒と金が同時に天を翔ける。
湯水のように垂れ流され、打ち出される宝具たちの原典。
その降り注ぐ豪雨の中を暗紫色の騎士が優雅に舞い、掻い潜る。

「行きますよ、デューク―――!」

翼の羽搏きと共に縦横無尽に夕闇を駆け抜ける姿にその場にいる者全てが感嘆の息を漏らした。
亜空間より溢れ出す宝剣宝槍の中には不死殺しの概念を宿す逸品さえ存在する。
それを一度でも食らえばどれほどの命と魂を消費するか、想像するだけで本人の背筋は凍る筈だ。
しかし、そのような常に間一髪の状況下にあろうとも、ギロは決して憶することはなかった。

――ガギンッ……!――

「うぅぅ……おおおぉぉぉぉぉ!!」

何故なら、どれほど巨大な宝具が迫ろうとも、その口を開き牙を露わにする程の咆哮をあげてでも、譲れぬ想いを引き継いだのだから。

――斬ッ!――

ギロは放たれた巨大な刀身を逆に双剣にて切り裂き、更に英雄王へと向かって飛翔する。

「ふん」

無論、ギルガメッシュとてそれを素通しするほど愚かではない。
宝物庫より射出される武具の数は雨霰のように増加していく。

「ぐッ……!」

急激に増していく猛威を前に、ギロは二振りの剣を交差させる形で防御をとるも、踏みしめる地面のない空中では鬩ぎ合いの度に後退を余儀なくされる。

『ヴァンプ、このままでは後がないぞ!』
「――――――ッ」

言われずとも分かっている。
だがしかし、突破口を開こうにも単独でこの状況を覆す術はない。
そう。彼女一人なら―――の話だが。

「―――紫電!!」

名を呼ばれ、姿を見せるは機械仕掛けらしき駿馬であった。

『ヒヒィィィィィン!!』

出現した光のゲートより駆け出した魔導馬はまるで天馬のように宙を蹴って新たなる主の許へ馳せ参じる。
ギロは己の得物を背中から生やしたホラーの腕で掴み、自らの腕は紫電の鞍に手を置いた。

「派手に―――」

すると、ギロの手から大量の魔力が紫電へと流れていき、それに応じてメカニカルなボディに如実な変化が表れた。
それは最早筆舌に尽くしがたい光景であった。見るもの全てが、目の前で起きた出来事の過程を言葉で表現できなかった。

それもその筈だ。
一体どのようにすれば、馬が巨大なガトリング砲になることを予想するだろうか。
ギロはグリップらしきものとなった後ろ足の蹄に手をかけ、もう一つのグリップとなった前足をしっかり握りつつ、引き金を思い切り引いた。
それと同時に巨大化し、変形によって圧縮された馬体に代わって本体らしき状態となった頭部のガトリング砲は―――

「―――ぶちまけろぉ!!」



――ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!――



夕闇の静寂を火花と銃声で掻き乱した。
砲身から絶え間なく打ち出される魔導火の弾丸は、まるで嵐の中で降り注ぐ豪雨そのものだ。
火炎の豪雨と宝具の豪雨は互いにぶつかり合い、掻き消え、撃ち落とされていく。

「中々興じさせるではないか」

その恐るべき弾幕の真っただ中で、英雄王はさも愉快そうに笑っていた。

「それは、どうもッ!」

吸血鬼としての常識離れした五感がその言葉を拾い上げ、ギロは半ば怒鳴るような口調で返した。
それに呼応して紫電から放たれる弾丸は勢いを増しており、弾幕は一層激しくなっていく。
ギロが放つ火炎弾は、次第に紫電自身が生み出す橙色の魔導火だけでなく、ギロ自身の銀の魔導火も加わり、砲身の回転も青天井と言わんばかりに加速していく。

しかしながら、このまま撃ち合っていても決着はつかない。
何時までもイタチごっこをしているつもりもない。

故に―――

「一撃、ぶち込む!」

これまでの小出しの弾などとは比べることすらバカげている程に強大なモノを。
そう、火柱とでもいうべき決定的な砲撃を加えるのだ。

無論、それを撃つためには今行っている連射を止め、炎をチャージしなくてはならない。
それがどれほど致命的な隙となるかは彼女自身十全に理解している。
だが、これしかないと思い、賭けに出た。

「ふむ、手法を変えてきたか。だが、撃たぬからと言って(オレ)まで付き合う気はないぞ」

変わらず射出されていく宝具。
その暴虐的な物量を前に、ギロと紫電という二つの点が押しつぶされようとしたその瞬間、



遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)!!」



神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』の疾走が雷鳴と共に轟いた。

「征服王……」
「卑怯だなんて言わないでくださいよ、英雄王。貴方は友の価値を示せと仰った。ならば、この戦いで友の力を借りることもまた然り」

ギルガメッシュの威圧感を前にしてもギロは威風堂々とした物言いで返した。

「図太い女だ」
「ははは!女とは貞淑なだけでなく、剛毅さを兼ねてこそ丁度良いというものだ!」

イスカンダルもギロの言い分を聞き、ギルガメッシュの言葉を笑い飛ばす。

「俺としては、今よりソフトになって欲しいんだがな……」

――バンッ!バンッ!――

と、二発の銃声が一人の男のセリフの直後に飛び出た。
無論、それはライダーの宝具に乗り込んだ雁夜が悪魔銃レライハの引き金に指をかけて放ったものだ。

”魔弾の射手”と称された上位ホラーの弾丸はギルガメッシュめがけて直進するかと思えば、彼が宝具を放って弾を粉砕しようとした瞬間に曲がりくねった。
軌跡はまるで未確認飛行体のような航空学を、空気学を、ありとあらゆる法則と常識を捻じ曲げて幾度も幾度も方向をジグザグジグザグと変えていく。

結果、

――キィン……!――

二発の弾丸は宝剣の群れを掻い潜り、英雄王が纏いし金色の甲冑を掠めて消えていった。
甲高い金属音を耳にし、黄金の覇者は何が起きたかを瞬時に悟る。

「……蟲の分際で粋がるとは……」

声は静かに、彼の怒りは狭い世界を覆うかのようだ。
例えば征服王という自らが討つべき賊と認めた者の一撃ならばこうはならなかった。
しかし、今の攻撃は眼中にすら入れていなかった使い魔風情のもの。

この戦いの中で、雁夜の一撃は英雄王の興を削ぐ無粋な行為として認識された。

だが、その厭味ったらしく小賢しい一手は、



「燃え尽きろォォォ!!」



――ドヴァァァァァアアアァァァァァン!!――



極大の炎獄を解き放つには十分過ぎる時間稼ぎとなった。

「チ―――ッ!」

虫ケラへの僅かな怒りで失念したが、完全に電光の騎士のことを忘れたわけではない。
宝物庫に繋がる黄金の波紋から盾という盾、壁という壁、防御という防御。
兎にも角にも、敵の攻撃を遮るものばかりが英雄王の眼前にパズルでも組み立てるかのように展開された。

「牙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアアアアア!!!!」

だがそれで諦める彼女ではない。
咆哮と共に抉じ開けられた口から猛々しい牙が思う存分開帳され、今までの優美さを擲つ姿がそこにあった。

魂の絶叫に呼応してか、魔導火の火柱は更に勢いを増大させていき、遂には宝具の盾らを焦げ付かせていく。

「くっ―――」

ギルガメッシュの口元が驚愕によって歪められていく。
しかしそんな些末な事柄は撃ち手のギロには見えず、彼女自身はただ只管にこの友から借り受けた力に全身全霊を注いでいる。

やがて、


――……ビシ……ッ――


絶対なる防御にヒビが―――


――バリンッ!――


――いいや。打ち破られ、煉獄の業火が雪崩れこんだ。


それから凡そ十秒間、炎は放射され続け、ギロが漸く引き金を放してそれが収まると、後には何も残っていなかった。
焼け崩れた地面と、崩れた宝具の残骸らしきものだけ。
ギルガメッシュ自身は痕跡すらない。そう、粒子さえも。


つまり、


「我が身に醜悪な火傷を……。よほど躾けられたいようだな、女ァァァァァ!!」


最古の王は、未だに健在であった。
一体いかなる宝具によって助かったのかは謎だが、それは気にするべきことではない。
問題は顔に僅かとはいえ火傷を負わされたという圧倒的な屈辱的事実。
それが彼の青天井ともいえるプライドをズタズタに引き裂き、沸点を超越して冷静さという水を蒸発させたのだ。

「紫電よ、我が身を雷光に変えろ」

煉獄剣と強く擦り合わされ刃と刃の接触部位からバチバチと紫電が迸る。
そのわずかな紫電は刀身から柄へ、そして持ち手に伝導していき、全身を電気が覆い尽くさんとする。

「おのれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「―――いざ……ッ」

怒号を伴って発射される底なしの宝具。
一つ一つに尊き伝説が刻まれたソレらを慢心の王は湯水の如く撃ち続ける。
その総数は最早10や20では利かない。燃え盛る怒りが決して嘘偽りではないことを如実に示している。

全宝具がほぼ同時にギロを捉え、一直線に飛び、そして―――


―――ギロの半身が吹き飛んだ。



――…………ビリッ――



直後、一筋の稲光が英雄王へと疾走する。

「―――っ」

それを奇跡的に目視できたギルガメッシュは、既に己が追い詰められていることを自覚し、黄金の波紋から乖離剣を現出させる。
―――が、彼の誇りが零コンマ数秒の待ったをかけた。光よりかは遅いがそれが脳裏を過り、柄を執らんとする右手がぎこちない動きをする。

この一瞬が、王たる者としてのプライドが介入したこの一瞬が、英雄王の運命を分けた。



――斬ッ!!――



文字通り、砕けた筈のギロが己が身を雷とし、電光の速さで最古の王の右腕を斬り飛ばした。

「…………認めよう」

血飛沫が舞う中、右腕の喪失感と激痛さえも捻じ伏せて、一人の王者が口を開く。

「その男の、価値を……!」

ギロの手に握られし双弩狼銃剣を睨み付けながら、彼の王は遂にその一言を述べ上げる。



そして、



「覚悟ォォォォォォオオオオ!!!!」



友の刃が、黄金を切り裂いた。





*****

『はは……ハハハハハ』

底知れぬ闇の中で、邪悪な意思が嗤う。
ギルガメッシュの敗北により、彼らがまた一歩自分に近づいたというのに。

否、彼奴にとっては些事でしかない。
全ては己の腹を満たすため、そして退屈を紛らわすための余興にすぎないのだから。

おぞましき欲望の具現する怪物は舌をなめずる。
黄金に輝く魂が、舌先に乗るのを楽しみにしながら。






*****

「私たちの、勝ちです」

霊核――心臓に突き刺さる双弩狼銃剣をしっかりと握りしめながら、ギロ……聖雷火が勝利を宣言する。
ギルガメッシュは己の金色の鎧をも貫通して我が身に届いた刃を一瞥し、口元から血を吐きながら言葉を紡いだ。

「電光雷身―――吸血鬼が雷を纏いて、光となるか。それが、彼奴の遺した力か」

鎧が解除され、露わとなる白い肌に、王の手がそっと添えられる。

「……憎らしい女だ。我が決定を覆すとはな。だが、許そう」

人の領分を越えた悲願に手を伸ばす愚か者。その破滅を愛してやれるのは天上天下にただ一人。
故に貴き光の担い手を我が腕の中に……。
しかし、その思惑がかなうことは永劫なくなったのだ。

「手に入らぬからこそ美しいモノもある」

高嶺の花、などと大仰にのたまうつもりはない。
けれども、かの聖君も今の有様だからこそ貴く、目の前の吸血鬼も今の惨状だからこそ麗しいのだ。
この世の全ての財宝とそれに宿る価値を手中に収めた暴君は、最期の最期に王として清々しい表情を浮かべた。

「征服王」

と、ここで手ずから殺す、と断言した相手に声をかける。

「時空の果てまでも、この世界は余すところなく(オレ)の庭だ。故に(オレ)が保証する。この世界は決して、そなたを飽きさせることはない」
「そりゃあ、いいなぁ」

友ありきとはいえ、彼は自分に勝った。
だから贈った、偽らざる称賛の言葉を。望みを叶えてみせろという念を込めて。

そして英雄王は再び雷火と目と目を合わせ、たった一言だけ。

「ではな吸血鬼―――いや、中々に愉しかったぞ」

王の威厳に満ちた潔い散り際の一言を遺し、黄金の英霊は現世から消え去った。



アーチャーのサーヴァント。真名・ギルガメッシュ。

―――敗退―――




次回予告

ヴァルン
『人の絆とは儚いものだ。故に誰もが強い絆を夢想する。
 だが、その理想さえも壊れたなら、陰我は胸に去来する。
 次回”主従”―――君たちはその時、如何するのかな……?』



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