Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■215 / 2階層)  赤と白の前奏曲Act2
□投稿者/ ルーン -(2005/06/05(Sun) 12:37:44)
     〜注意〜
     この話は、『捜し、求めるもの』のユナの学生編です。
     又、この話の時空列は滅茶苦茶です。



     今日の学園都市は活気に溢れていた。
     その主な理由は、今日から数日間に渡って『武道祭』が開催されるからであろう。
     魔法使いの学園都市なのに、何故『武道祭』と呼ばれるのか謎だが、初めて『武道祭』を開いた学園長が、『魔法祭』よりも何となく『武道祭』と言う呼び名の方がかっこ良いから決めた。などと言ったふざけた理由と言う説が、最有力候補として実しやかに囁かれている。
     だが『武道祭』などと銘打っているが、その実態はかなり混沌としたモノになっている。
     確かに魔法使いとしての技量を競う試合もあるにはあるが、学園の規模と生徒の人数が半端ではなく多いので、必然的に各クラスの代表選手のみが参加する形式になってしまう。
     しかしそうなると、手の空いた生徒が大勢発生してしまうので、その他の生徒たちもクラスや仲間内で好き勝手に出し物を出して、お祭り騒ぎに拍車をかけている。
     まあ早い話が、学園都市と言う閉鎖空間に閉じ込められて溜まったストレスを、お祭り騒ぎをして発散しようと言うのが主な目的なのだ。



     そして現在ユナとレンは、学年無差別級タッグ戦の会場を後にした。
     数ヶ月前に学園長を始め、複数の教師に焼き入れをし、学園内の風通しをスッキリさせた為に、ユナとレンは特にストレスを感じていなかったので、大会に出場する気はさらさら無かった。
     無かったのだが、担任の教師が泣いて縋って頼むものだから、渋々ながらも出場する事を引き受る事にした。
     担任の教師としても、自分の受け持つクラスの代表が優勝すれば、高評価を貰えるので、恥じも醜聞をかなぐり捨てて二人に頼み込んだのだ。
     その結果二人は渋々ながらも大会の出場を引き受けたのだが、その二人が大会に出るのを渋った理由は、ストレスが溜まっていなかった事と、大会が白ける事請け合いだったからだ。
     そして予想道理と言うか何と言うか、学年無差別級タッグ戦はユナとレンが優勝で幕を閉じた。
     これで学年無差別級タッグ戦は、三年連続で優勝と言う栄冠を手にした事になるのだが、ユナとレンは特に嬉しそうでもなかった。
     そして不思議な事に、ユナとレンの格好は大会出場時から着替えてもいないのに、汚れ一つ無い奇麗なままだった。
     それもその筈で、ユナとレンは一回戦から優勝するまで、一回も戦っていない。その全てが不戦勝で優勝を果したのだ。
     その所為で、ユナたちの試合は酷く盛り上がりに欠けた。
     密かにトトカルチョもされているのだが、当然ユナたちが出場すると判明した時点で、一位予想ではなく、二位三位の予想で賭けはされると言う異常な事態だった。
     そして何よりも、二人が全試合不戦勝で優勝した原因も二人には分かっている。
     直接的な原因は、去年の武道大開が原因だろう。
     入学してから始めての武道大会出場は、二人を快く思わない当時の担任の教師が、無理矢理出場させた。
     結果、かなりの苦戦を強いられながらも、ぎりぎりで優勝を手にした。
     二年目の武道大会は、前回二人に敗北を喫した先輩達からの要請で、またしても半ば強制的に出場させられた。
     先輩達からしてみれば、前回の敗北は屈辱以外の何者でもなく、この一年間特訓に特訓を重ねて強くなったつもりだった。
     だが、忘れてはいけない。その敗北を与えた二人は、その当時は入学してから半年にも満たない子供だったのだ。
     その殆どが、才能だけで勝ち進んで優勝を手にしたと言ってもいい。
     その才能だけで優勝をてにした二人が、一年間みっちりと魔法の勉強に励んだのだ。
     その結果―――
     「本気で向かって来る相手に手加減をするのは失礼だ。こちらも本気で行くぞ、ユナ!」
     「OK、レン。派手に暴れるわよ♪」
     などと言った、非常に心温まる会話が二人の間でされ、対戦相手の全てが血祭りに挙げられた。
     そしてその容赦の無い悲惨さに恐れをなした対戦相手が、今回不戦敗を選んだのだろう。
     そして現在二人は一途の空しさを覚えながら、自由気ままにお祭りを楽しむ為に、出店などが在る場所へと歩いていた。



     この武道際には、外部からの行商人も大勢訪れる。
     必然的にいろいろな珍しい物も見かけるし、手に入る。
     そんな屋台の一角をユナとレンは歩いていた。
     「むぅ……」
     レンは突然立ち止まって唸った。
     「どうしたの? レン」
     「ん? ああ、これなんだが、独特な雰囲気が気に入ってな。買うか買うまいか迷っているのだが……決めた。買う事にする」
     レンは手を伸ばし、屋台で売られていた一枚の絵を購入した。
     気になってその絵を覗き込んだユナは、その何とも言えない不思議な画風に眉を潜めた。
     「この絵……東方の物?」
     「ああ、確か浮世絵とか言ったと思うが……。おい、他に浮世絵は無いのか? あるんだったら、買いたいのだが」
     「すまんな、それだけしか無いんだ。そもそもその一枚も、俺の知り合いの行商人から買った物なんでな」
     「そうか、それは残念だが仕方があるまい」
     残念そうな顔をしながら、レンは他の絵にも視線を向けるが、他に気を引くような絵は無かったのか、その屋台を後にした。



     「レンって、東方の絵に興味があったの?」
     暫く歩いて屋台から離れた頃を見計らって、ユナはレンに尋ねてみた。
     「……いや、興味が有ると言うよりは、たまたまこの絵が気に入ったんだ。気に入った物が在れば大抵は買うしな」
     肩を竦めるレンに、
     「ふ〜ん。そう言う所が、レンはお父さん似なのかもね」
     その言葉を聞いたレンは頬を引き攣らせ、
     「ユナ、頼むからそれだけは言わないでくれ。私も多少自覚はしているだ。だが、親父殿のような好事家ではないぞ?! 断じて違う!!」
     父親に似ていると言われたのがショックなのか、それとも別の何かか、レンは強い口調で否定した。
     「まあ、レンが好事家だろうとなかろうと、私は別にどうでもいいんだけどね。けど、確かにその……浮世絵だっけ? それを見ていると、心が落ち着くというか何と言うか……不思議な気分になるのは確かよね……」
     「むぅ……いまいち納得がいかない答えだが、確かにこの浮世絵には不思議な何かを感じるな。もっとも、それをはっきりとこれだと言えないのがもどかしいがな」
     ジロリとユナを睨みつけながらも、ユナの言いたい事は分かるのか、レンも頷いて見せた。
     「そうなのよね〜。心が洗われると言うか、こっちの絵とはまた別の何かを感じさせてくれるのよね〜」
     「そうだな……こちらの絵とは画風も絵具も違うのにな。いや、違うからこそか? 兎に角不思議なモノだな……」
     そう言って二人は暫くの間、浮世絵について語り合った。



     「ぶぎゃっ!!」
     「熱いぃぃぃ!!」
     顔面を回し蹴りで、しかも踵で鼻を潰された男は、鼻血で顔中を真っ赤に染めながら仰向けに倒れた。
     もう一人の男は、こんがりと程よく炎で焼かれて、地面を転げ回っている。
     それを冷たい目で見下すのは、ユナとレン。
     愚かというか、命知らずにもこの二人の男、よりにもよってこの二人をナンパしたのだ。
     最初の内は外来からの客ともあり、二人とも控えめに断っていたのだが、あまりにもしつこかった為に、遂に実力行使に打って出たのだ。
     周りの学園関係者は、よりにもよってあの二人にと頭を抱え、二人の怒りが頂点に向う頃には既に避難を終えて、外来から来ていた他の一般客を避難させていた。
     迅速な行動である。この二人に対して、いったいどのような認識が広まっているかが窺い知れた。
     「全く、人が下手に出てれば、いい気になるんじゃないわよ。あんたなんて片手でちょいなんだからね」
     「全くだな。このような下種な輩は、直接素手では触れたくも無い」
     ユナに同意するように、何度も頷く。
     「そうよね。他人の迷惑も考えなさいよ。第一、貴方達なんかお呼びじゃないのよ」
     「全くその通りだ。他人の迷惑を考えろ。そして、もう少し頭を使え」
     その言葉を遠巻きに見ていた学園関係者の一部は、「その台詞をどの口が言うか?!」と思いっきり心の中で二人に対して突っ込んだ。
     勿論声には出さない。出したら最後、どの様な目に合わされるかは、日を見るよりも明らかだからだ。
     「全く、反省してるの?」
     「おい、ちゃんと聞いてるのか?」
     ゲシゲシゲシ、二人は既にピクピクと痙攣している男二人に、容赦の無い蹴りを見舞う。
     暫く蹴り続けて、漸く気が治まったのか、二人は何事も無かったようにその場を後にした。
     二つの災害が過ぎ去り、大分時間が過ぎた後に、瀕死の男二人は我に帰った一般客の手によって医務室に運び込まれた。
     対して学園関係者にとっては、ある意味あの二人が巻き起こす災害は、日常と言っても良いので、何事も無かったかのように二人の男を無視して祭りに戻っている辺り、神経の図太さが窺い知れる。



     「あ、レン、このフライドポテト結構いけるわよ。レンも食べる?」
     「ふむ、では貰おうか。代わりと言っては何だが、このフライドチキンを食べるか?」
     「うん。貰う貰う」
     フライドポテトを手渡したユナは、代わりにレンから受け取ったフライドチキンをぱくついた。
     現在二人は小腹が空いた為に、飲食関係が多く出張っている一角に食べ歩きに来ていた。
     「結構脂っこい物を食べたわね……」
     「……そうだな。次は何かサッパリした物を食べたいな」
     「う〜ん、サッパリした物も良いけど、何か甘い物と紅茶なんてどう?」
     「ああ、それも良いな。そうすると……あっちに紅茶とケーキを出している処が在るな。其処に行くか?」
     パンフレットで店舗を確認するレン。
     それにユナが頷いたのを確認して、レンは店の在る方へと歩き出した。



     「むむ、このパイかなり手が込んでるな……。文句無しに美味い」
     「こっちのチーズケーキも美味しいわよ。それに紅茶も美味しいし、このまま本当にお店が開ける味だわ」
     「ああ。それなのに何故これほどまでのモノが作れて、この学園に入学したのだろな……。いや、それは本人の自由か……」
     文句無しに美味しいケーキと紅茶のセットに、満足な二人。
     まさか学園祭の手作りケーキが、ここまでの味を出せるとは思ってもいなかったので、良い意味で裏切られた二人は、満足気な顔で店を後にした。
     もっとも、もし不興だったらいったいどうしようかと、舞台裏でケーキ担当と紅茶担当の生徒は、ガタガタブルブルと震えながら、神に祈っていたりした。
     結果満足して店を出て行った二人の後姿を見て、ほっと胸を撫で下ろしていた。



     その後も『武道祭』を楽しんだ二人は、大小様々な問題を起こしつつも、満足して寮の自室へと帰った。



     〜後日談〜

     初日に瀕死の重症を負わせた二人の男が、『武道祭』最終日に仲間を大勢連れて学園に再び乗り込んで来て、ユナとレンに復讐を果そうとしたが―――
     ―――結果は言わぬが花であろう。
     唯一つ言える事は、乗り込んで来た男たち全員が、女性恐怖症になった事でけは記して置く。
     特に赤い髪と白い髪の少女を見たとたんに、泣き叫びながら逃げ出すのだが、原因は不明とされている。
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