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■228 / 親階層)  愛の手を【レイヴァン・アレイヤ編】
□投稿者/ ルーン -(2005/10/18(Tue) 22:48:56)
     『愛の手を』は登場していない、もしくは余り出てきていないキャラを主役にしようという企画です。
     ですので、一編ごとに主役が違います。(タブン
     今回は、ある程度性格を掴んでいる『レイヴァン・アレイヤ』が主役です。(オソラク
     まあ、ユナも出てきますが。
     ちなみに、続くかは全くの不明。
     企画の意味あるのか? とかいう疑問は置いとくださいね。
     では、どうぞ。


     


     「では、本年度の我がクラスの学園祭の出し物は―――に決まりました。皆さん、きちんと恥ずかしがらずに準備しましょう。では、本日はこれまでです。また明日、お会いしましょう」
     ニッコリと微笑み、教師は教壇を後にする。
     教師が退出した後の教室には、出し物に頭を悩ます者、喜ぶ者などさまざまである。
     中には、今にも泣き崩れそうな者までいる。
     そして、レイヴァン・アレイヤの場合は―――
     「母さんとユナの、どっちのを借りよう……」
     結構前向きだった。



     「う〜ん、どちらを選ぶべきか……」
     腕を組み、首を可愛げにちょこんと傾げて、レイヴァン・アレイヤは悩んでいた。
     レイヴァンの視線の先には、ベットに広げられた二着の服が広げられており、その間を行ったり来たりしている。
     「う〜ん、本命はこっちかな〜? でも、意外性を狙うならこっちだよな〜」
     真剣な目つきで二つの衣装を見比べるレイヴァンだったが、いかんせん、下着の姿ではどこか間抜けである。
     しかしレイヴァンはそんなことを気にした様子もなく、目の前の服選びに没頭している。
     「よし、こっちの服にしよう!」
     散々悩んで決心が着いたのか、片方の服を手にとると、慣れない手つきでもたつきながら、その場で着替える。
     鏡の前でポーズをとり、クルリと回って違和感がないかをチェックする。
     「ふむ、さすが俺。我ながらよく似合っている」
     予想以上のできに、レイヴァンは満足気に頷いた。
     とその時、扉の開く音と共に、義妹のユナが部屋に入ってきた。
     「……お義兄ちゃん? いったい何してるの……?」
     ユナの表情は困惑し、少し声も震えていたが、その事にレイヴァンは気付かなかった。
     「ユナ、部屋に入るときにはノックをしないとダメだろう?」
     レイヴァンに注意されたユナはむっとなり、可愛らしく頬を膨らませる。
     「何言ってるのよ、義兄ちゃん! この部屋は私の部屋でしょう! 何で自分の部屋に入るときにノックをしなくちゃいけないのよ! って、そうじゃなくって、私は何でお義兄ちゃんが私の部屋にいて、あまつさえ私の服を着てるのって聞いてるの?!」
     ユナは自分の服を着られている事に対する羞恥心からか、それとも自分の服を着ているレイヴァン対する怒りからか、顔を真っ赤にしながら怒鳴る。
     「ユナ、何をそんなに怒ってるんだ? ……もしかして、似合ってないか?」
     ユナが何故怒っているか分からずに、レイヴァンは不安そうに眉根を寄せて、鏡に映る自分の姿を見つめる。
     レイヴァンの来ている服は、深紅のドレスに、白いフワフワしたレースが幾つもついている、所謂ゴスロリの服だった。
     「似合ってるとか似合っていないとかじゃなくって、あ゛あ゛もうっ! 私は・何で・私の服を・お義兄ちゃんが着てるのかって聞いてるのッ!!」
     ユナは地団駄を踏み鳴らし、一言一句を区切り、レイヴァンを睨み付ける。
     「ふむ、何故かだと? ……それは着てみたかったからだーーー!!」
     「アホかぁぁぁっ!?」
     胸をそらして偉そうに言ったレイヴァンに、ユナは叫び声と共にボディブローを放つ。
     ユナの拳は見事にレイヴァンの脇腹を捕らえ、レイヴァンは堪らず膝をついて呻き声を漏らす。
     「う゛ぅ゛、ちょっとしたお茶目だったのに……ユナ、酷いや」
     「お義兄ちゃん、お願いだから真面目に答えてね?」
     ズキズキと痛む眉間を抑え、レイヴァンに詰め寄る。
     流石に身の危険を感じたのか、レイヴァンはコクコクと何度も頷く。
     「ユナも知っていると思うけど、今度うちの学校で学園祭があるだろう?」
     確かに、とユナはレイヴァンが通う高等科の学園祭に誘われていたのを思い出した。
     しかしユナは首を捻り、ごくまともな疑問を口にする。
     「でも、それと私の服を着るのとどういう関係があるの?」
     「ああ、それはな、俺のクラスの出し物に関係があるんだ。今日クラスで何を出すかを話し合ってな。そこで一人の男子がふざけて、男装喫茶が良いって言ったんだ。そうしたら、次々に他の男子が盛り上がってな。男装喫茶で決まりそうになったんだが……何と言うか、当然と言うか、女子からは猛反発があってな。女子は意趣返しのつもりで、『なら女装喫茶でも良いんじゃない?』とか言い出したんだ。それからはまあ、話は当然平行線を辿る訳だ。っで、何時までも話が平行線を辿るから、俺も好い加減飽きてきてな。『なら男装女装喫茶にすれば良いだろ』と、言ったんだ。そうしたら、男女共に大喝采をあげてさ。満場一致でクラスの出し物が、男装女装喫茶になったんだ。っで、着る服を借りようと、ユナの服を試着させてもらっていたんだ」
     「なるほどね。そういう事情なら仕方が無いけど、でも、私に一言断ってからでも良いんじゃない? けどお義兄ちゃん、よく私の服着れたね。まあ、流石にサイズが小さいのか、ロングがミニになってるけど」
     ついっと、視線を脚に向ける。
     自分が着ている時は足首まである裾が、レイヴァンの場合は膝までしかない。
     「うん、母さんのじゃ大きすぎてさ。それでユナのを借りたんだ。ほら、俺って同年代の男と比べて小柄だしね」
     ドレスのリボンを弄りながら、苦笑する。
     「それで、そのドレスで良いの?」
     「ん? ああ、このドレスで良いよ。そっちの花柄のワンピースとどっちにしようか迷ったんだけど、こっちの方が受けそうだしね」
     満面の笑みを浮かべ、ちょこんと裾を持ち上げ、令嬢のように挨拶をする。
     その姿にユナは一瞬ドキンとし、続いて自分よりもさまになっている様子に、女としてのプライドが傷ついた。
     だから、ほんの悪戯心のつもりで言った。
     「ふ〜ん、ドレスまで着るなら、どうせなら下着も女の着れば? 良かったら私の貸すよ?」
     口元に小悪魔のような笑みを浮かべる。
     しかし、レイヴァンの言葉によって、その笑みも凍りつく事となった。
     「本当か!? いや〜、良かった。実はさ、もう借りてるんだ。どう言い出したものかと悩んでたから助かったよ」
     「―――…………は?」
     時間が凍りついたような間の後、ユナはやっとそんな間の抜けた声を出した。
     「いや、だからもう借りてるって言ったんだ。ほら」
     言って裾をめくる。
     そこには確かに見慣れた下着があった。
     見間違うはずもなく、ユナの下着だった。
     それも、アレはユナのお気に入りの一枚だった。
     「………………」
     長い、長い沈黙。
     レイヴァンは部屋の中にいるというのに、何故だか極寒の中にいるように感じられた。
     「……ユナ?」
     体が細かに震えているユナを見やり、今すぐこの部屋から逃げ出したい衝動を必死で抑え、レイヴァンは声をかける。
     「……ゃ…………ぃ」
     「何だって、ユナ?」
     ポツリと漏らした声に、耳を傾けようと、ユナに一歩近づく。
     「お義兄ちゃんの、変態ぃぃぃっ!!」
     レイヴァンの目に映ったのは、真っ赤に燃えるユナの小さな拳だった。
     それが吸い込まれように胸を捉える。
     さきほどのボディブローを遥かに超えた衝撃がレイヴァンを襲った。
     レイヴァンの体は衝撃で吹き飛ばされ、窓を突き破り、二階から地面へと叩きつけられる。
     あまりの衝撃に息が出来ないレイヴァン。
     そんな彼が意識を失う前に思ったことは、
     「ユナ、どうして怒ったんだ? 下着貸してくれるって言ったじゃないか。これだから女心は良く分からん」
     などといった、全く女心を理解していない考えだった。



     一方我に返ったユナは、慌てて窓から庭へと落ちたレイヴァンを見つけると、
     「お義母さ〜ん、大変!! お義兄ちゃんが窓から落ちた〜〜〜!!」
     義兄を助ける為に、義母に助けを求めに走った。



     予断だが、これがユナ・アレイヤが無意識だが、初めて炎の魔法を使った瞬間でもある。
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