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■231 / 1階層)  愛の手を【ユーリィ・マカロフ編】
□投稿者/ ルーン -(2005/11/18(Fri) 20:30:33)
     『愛の手を』は登場していない、もしくは余り出てきていないキャラを主役にしようという企画です。
     ですので、一編ごとに主役が違います。(タブン



     モキュウって感じです。
     ええ、それはもう。
     設定考えて、ストーリーもある程度考えて、いざ書くか! って時に……悪夢は訪れました。
     念の為に、設定を再確認したところ―――アレレ? 以前と設定違ってる?
     ってなことがありましたw
     どうやら、設定を変更しなくてはならない事態があったようですね〜。←他人事のように
     こんな事なら、初めからチェックしとけば良かったと後悔。
     初めからチェックしろよ、私。
     というか、最後に確認したの何時だよ……
     てなことで、使うキャラそのままに、ストーリーなどは急遽全変更w
     ではでは、そんな裏話がありますが、今回の主演は死神少女こと、『ユーリィ・マカロフ』です。
     では、どうぞ。



     「ねぇ〜、デクスター、暇だね〜」
     燦々と輝く太陽の下、少女はだら〜んと体を大の字にして、心底暇そうに声に出した。
     長い白銀の髪は地面に無造作に広がり、赤い目は雲一つ無い蒼穹を見つめている。
     少女がいるのは小高い丘の上なのか、少し離れたところに生えている木々が、小さく見える。
     「ユーリィ様、我々が暇なのは良いことです。それだけ、あちらからも、そして此方からも客人が来ぬ証なのですから」
     重厚で厳かな声は、ユーリィと呼ばれた少女の直ぐ下、つまりは少女が背にしている丘と思われたものから発せられた。
     「とはいってもねぇ、暇なんだからしょうがないでしょう。客もこの所来ないし」
     ぷぅっと頬を可愛らしく膨らませ、そっぽを向いた。
     「やれやれ、ユーリィ様にも困ったものだ。『暇』と仰ったのは、今月だけで実に19716回目ですよ。ちなみに客人が最後に来たのは、1313286時間54分47秒前ですな。おぅ、実に約152年間二人っきりと言う分けですな」
     クツクツとデクスターが笑う声と共に、ユーリィが背にしていた丘も揺れている。
     小高い丘と思っていたのは、デクスターの背中だったのだ。
     「むぅ、そんな事を一々数えているデクスターも暇なんじゃないか!」
     笑われたことが不服なのか、ユーリィは右手の拳を握ると、デクスターの背に振り下ろす。
     「っ! 痛いですよ、ユーリィ様」
     大きな体を震わせ、背の主に向かって文句を言う。
     デクスターは人の顔に獅子の体を持つ、スフィンクスと呼ばれる種族だ。
     何故そんな彼が、ただ一人ユーリィの側にいるかは誰も知らない。
     デクスター本人と、ユーリィを除けば、だが。
     「ふ〜んだ! あたしは悪くないも〜ん。ぜ〜んぶ、一々細かいデクスターが悪いんだも〜ん」
     ゴロリと身を転がして、まるまるユーリィ。
     そんなユーリィに、デクスターは苦笑して、蒼穹を見つめる。
     否、彼が、いや彼らが見つめるのはただ一点。
     蒼穹にただ一点、墨汁を流したように黒くなっている場所。
     まるで空が裂けているような、ポッカリと黒いその場所だけが異常だった。
     その裂け目こそが、彼らの守るべきもの。
     この世界『リリース・ゼロ』と、異界『ギヌンガプヌ』を繋ぐ門なのだ。
     そして二人は、異界からの侵入者や、異界を目指す者を排除するためにいる―――
     「そう。私たちこそは、ゲ〜ト、ゲ〜ト、ゲ〜ト〜、ゲ〜ト〜キ〜―――」
     「お止め下さい」
     ノリノリで歌うユーリィに、デクスターは待ったをかけた。
     「ぶぅ〜、なんでよ〜。人が折角ノリノリで歌ってたっていうのにさ〜」
     「それは危険なネタです。ご了承ください」
     不満全開なユーリィに、デクスターを真面目くさった顔と声で言った。
     「ちぇ、分かったわよ」
     表情は不満ですと言っているままだが、ユーリィは大人しくデクスターの言葉に従った。
     「そう言えばさ、此処に門が出来てどのくらいだっけ?」
     「またいきなりですな。まあ、暇だ暇だと騒がれるよりはマシですが」
     急に話を変えるユーリィに、デクスターは呆れたように混ぜっ返す。
     「いいから答える!」
     そんなデクスターの態度が癇に障ったのか、ユーリィはバシバシとデクスターの背を叩き、答えをせかす。
     「はいはい……確かユーリィ様が裂け目が出来る波動を感知したのは、1752311時間23分39秒前。つまりは約二百年ほど前だったと記憶しております」
     それがなにか? と目で尋ねるデクスターに、ユーリィは一瞬考え込む素振りを見せたが、
     「いや、今までの経験から言えばさ、そろそろ此処の門も閉じて、別の場所に門が開く時期だと思ってね」
     「……確かにそうですな。門が開いてから閉じる時間……まあ、世界からの修正による寿命とも言えますが、それは平均150〜250年ですからな。平均的に見れば、此処の門が閉じても不思議ではない時期ではありま―――」
     答えるデクスターは、ふとありえない出来事に遭遇し、あまりの驚愕に言葉を失った。
     あまり考えたくもないが、異界を結ぶ門の番人という大事な使命を、主人は『暇』の一言で門をほったらかしにして、どっかに遊びに行くような人物なのだ。
     その主人が門の寿命を気にするとは―――
     デクスターは胸にジ〜ンと、何かが熱く込み上げてくる感じがせずにはいられなかった。
     苦節千年以上。やっと、やっと自分の思いが通じたのだと天に感謝したくなった。
     初めて出会ったあの頃の主人。自分が強く惹かれ、万人が完璧だと認めた主人。
     あの頃の主人に戻ってくれるのか!? との期待がどんどんと膨れていった。
     だが、冷静な部分がそれを否定する。
     あの主人だぞ? 昔の主人ではなく、今の主人だぞ? そんなに簡単に昔の真面目な主人に戻るなんて、そんなに都合の良い話がありえるのか? 
     いや、ありえない。だとすると……考えられる可能性は一つだった。
     それを確かめるために、デクスターは震える声でユーリィに真意を問うことにした。
     「時に主よ、何故そんなことを聞かれるのですかな?」
     「いやだって、此処の門が消えてから、次に門が現れるまで約数十年かかるでしょう? その間は好きなところに遊びにいけるじゃない」
     その言葉を聞いて、デクスターはガックリと肩を下ろした。
     予想のうちの一つとて、当って欲しくなかった予想なのだ。
     デクスターは胸中でさめざめと泣いた。
     「どうせ主のことです。次に門が出現する場所が、大都市の近くなら良いなどと思ってらっしゃるのでしょうな」
     言葉裏に嫌味をたっぷりと乗せて、デクスターはやけくそ気味に言う。
     だがその言葉に、ユーリィは意外な返答を返す。
     「もう、何でそう決め付けるかなぁ〜? そりゃあ、あたしの普段の行いが悪いのは認めるけどさぁ〜。でも、決め付けるのはあんまりじゃない? あたしだってなるべくなら、大都市や都市付近には出現して欲しくないと思っているのに」
     怒ったような口調で言うユーリィは、ジロリとデクスターを睨み付ける。
     デクスターは内心、「そう思ってらっしゃるのなら、直してください!」と怒鳴りたいのをグッと堪え、
     「ほほーう、珍しい。……で、真意はいずこに?」
     「ふ〜んだ! デクスターの意地悪! 良いも〜ん。此処の門が消えたら、遊び倒してやるも〜んっだ!」
     睨み付ける二人の視線が、バチバチと二人の間に火花を散らす。
     だが、あまりの無意味さに嫌気が差したのか、それとも大人気ないと思ったのか。
     ユーリィはついっと視線を逸らすと、
     「だってほら、ちょっと前と言っても数百年も前の話だけど、大都市付近に門が出現したときにさ、面倒くさい連中に絡まれたじゃない」
     ユーリィは顔を顰めて、思い出したくも無いといった口調だった。
     ユーリィのその言葉にデクスターの思考は過去を遡り、ある事件を思い起こさせた。
     「そう言えば、そんな事もありましたな。教会と協会の連中が門を調べに来て、我々を一方的に犯人と決め付けたのでしたな。此方の言葉は聞かないので、おかげで何度不必要な戦闘を繰り返したことか……。おまけに最後の戦闘中には異界の者まで出現して……あれは本当に大変でしたな。門が閉じた後も、教会と協会の連中にしつこく追いまわされもしましたな」
     やれやれと首を振り、続いて溜息が出た。
     「あんな面倒な連中とは、二度と付き合いたくないと当時は思ったものですが……」
     「そう上手くいかないのが人生よね〜」
     その後も何度か対峙する事もあり、その度に大なり小なりの戦闘が起きた。
     時には国家の軍隊と戦闘になったこともある。
     そんな戦いの繰り返しでも、二人に恩賞や得があるわけではない。
     特に自分たちの利になる事も無い、無償で門番の仕事を二人がするのは―――
     「まあ、でもこの仕事は続けなきゃねぇ〜」
     「そのとおりですな」
     ユーリィの言葉に相槌を打つデクスター。
     「だってほら、異界からの連中にこの世界を好きにさせたくないし」
     「この世界のためですからな」
     ユーリィとデクスターは空を見やり、声を揃えて言った。
     『でもまあ、何よりこの世界が好きだから』



     ピシ、ピシピシ……
     何かが罅割れる音が聞こえる。
     ギギャアアアアアア……
     何かの悲鳴のような音が聞こえる。
     それは、世界が罅割れる音。
     それは、世界があげる悲鳴。
     罅割れた空から、この世界と異界を繋ぐ門から、侵入者が来訪する音。
     その音を耳にして、ユーリィとデクスターは立ち上がり戦闘態勢に移る。
     ユーリィは何処からとも無く鎌をとりだし、背には魔力による漆黒の羽を出現させる。
     一方デクスターは、その巨大な四肢に力を込め、何時でも襲いかかれるよう身構える。
     ズルリ……
     門から来訪する何か。
     それを目にし、ユーリィとデクスターは互いに頷きあう。
     「いくよ、デクスター! 久しぶりの客だからって、遠慮はいらないよ!」
     「承知! 主こそ、ゆめゆめ油断なされるな!」
     二人は久方ぶりの戦闘に高揚し、知らず口元を緩め、侵入者へと襲い掛かった。



     こんな感じでどうでしょうか?
     本当なら、異界の生物の描写も書きたかったのですが……
     どんな姿かたちなのか書いてなかったので、そこは省略しました。
     って、決まって無かったですよね? ←自信なし
     ちなみに、私が勝手に決め付けて書こうとした格好は、映画「エイリアン」に出てくる奴みたいなのだったりしますw
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