Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■535 / 1階層)  交錯 0.5話
□投稿者/ ジョニー -(2006/11/23(Thu) 22:20:35)
    2006/11/23(Thu) 23:48:31 編集(投稿者)

     そこでの生活は酷く貧しかった。
     名ばかりの孤児院。居るのは私腹を肥やす大人と奴隷の如く働かせられている子供。
     朝から晩まで働かされて、ご飯は不味く少なかった。
     虐待こそはなかったが厳しい仕事と環境故に死んでしまった子供もいた。
     それでも大人は子供を酷使し続けた。そこの大人にとって子供など金を得る為の道具でしかなかったのだから。

     だから、ボクは……あの時出会ったヒトに付いて行った。
     あの場所を飛び出して、ボクの知るなによりも強く、ボクの知る誰よりも凛としたそのヒトに憧れて付いて行った。

     ボクはあそこから逃げ出したんだ………いや、違う。
     だって、ボクはあの時…確かにあの子と約束した。
     既に町を離れたあのヒトに追いつけるかは小さな子供だったボクにとって賭けだった。
     丁度風邪を引いていたあの子を連れて行くのは無理だったから、だから―――


     必ず     って、約束したから――――――――
















    「……夢?」

     それは酷く懐かしい夢だった。
     果たせなかった約束、今でももしやと思い続ける約束。
     夢にまで見るとは未練だな。と、彼は苦笑しつつベッドから身体を起こす。

    (待て、ベッド……?)

     確かにベッドだ。しかも、柔らかく暖かい……正直自分には縁がないだろう高級品だということが手触りでもわかる。
     パッと目に入る部屋にも見覚えはない。オマケにやはり何処か高級感が漂っている。

    「………起きた?」

     不意に声がかけられ、勢いよくそちらを振り向き……固まった。
     そこに居たのは少女だった。ドアの前に佇むその少女は何処か人形めいた印象を受けが、この際それはいい…問題はその少女の外見だった。
     雪のように白く流れる髪に青空のように澄んだガラス球のような瞳。表面に紋様の刻まれた金属製の首輪、本格的で観賞用ではなくまさに実用の為のものとわかるメイド服。
     そう、首輪にメイド服だ……そんな格好をした可憐な14歳程の少女。正直、一瞬アッチ系の想像が頭に過ぎったがすぐさま打ち消す。

    「え、ぁ………」

     彼がなんと答えたらいいのか迷っている間に少女…メアは返事こそないが彼が起きたと確認して一つ頷きドアを開けて部屋を出て行く。
     バタンというドアが閉まる音に我に返るが、時既に遅し……何の説明もないままに置き去りにされたと気づく。

    「い、一体何なんだ……え、えぇ〜と」

     一人取り残された彼は状況把握の為に必死に記憶を探り出した。






       交錯
          プロローグU





     今日は、そう……ちょっとした野党退治の依頼を受けたのが始まりだ。
     規模は極めて小さく、依頼の報酬も結構よかったので喜び勇んで野党の襲撃場所に向かった……まではよかった。


     ところがその場所についた途端に奇襲を受けた。
     念の為に剣こそは抜いていたが、付いたばかりで張り込みでもするかと考えていたところに襲撃である。
     おそらく自分達を退治する依頼があることを知っていたのだろう。そして返り討ちにするべく待ち伏せしたと、そんなところだろう。
     そして完全に不意を付いた奇襲が成立する。本来ならば、それで彼の生死は既に決定されていたはずだが………

    ≪魔法感知。複数同時襲撃、消去キャンセル不能。抵抗レジスト開始≫

     頭に聞きなれた音声が響く、同時に僅かな頭痛と共にエーテルが相当量消費される。

    「いきなり、かぁ!」

     正面から無数の氷の矢が迫る。咄嗟に両手に握りこんだ…刀身に文字のようなものが刻み込まれたバスタードソードを振るい数本の矢を切り払う。
     が、すべての矢を切り払える訳がなく。幾つかの矢が男の身体を襲う。
     しかし、その内の2本は彼が纏うブレストアーマーに弾かれる。そして残りの矢も彼に幾つのかの掠り傷を負わせるに留まる。
     本来ならば突き刺さるはずの矢もあったが、僅かに喰い込むだけですぐに抜け落ちて力なく地面に落ちる。

     すぐさま、氷の矢が飛んできた方向を見る。
     そこにいるのは5人の男達。今魔法を放ったと思われる奴が3人にブロードソードを持った奴と木こりなどが使うような伐採用の斧を持つ奴が1人ずつ。
     人数は聞いた話と同じだが、明らかに実戦レベルの魔法を使う奴が3人もいるなど聞いていない。
     そんな奴が3人もいるなら、あの報酬では少々安すぎる。
     敵に向かって走りながら騙されたかと思い、小さく舌打ちする。

    「イクシード、接続アクセス!」

    接続アクセス確認。術式検索――≫

     魔法使い3人が下がり、前衛2人が迎え撃つ陣形になったのを認識した瞬間に叫ぶ。
     刀身に刻まれた文字が淡く輝くと同時に頭痛が走る。脳内に幾つもの情報が飛び交うがそれを一つ一つ認識する事は出来ない。ただ、漠然と自分の脳内を探られているという今でも慣れぬ違和感だけが感じられる。

    ≪――術式選択。構成開始≫

     脳が探られる違和感が消えると次は脳内に在る情報の一つが引き出されると共にエーテルが大量に持っていかれる。
     剣が謡うように詠うように唄うようにキィィーンと音を放つ。それは確かに謳っているのだ、剣が呪文を詠唱しているのだ。

     魔法使い達が呪文を詠唱しているが遅い。
     既に此方の術は完成して、剣がイカズチを纏い解き放たれるのを今か今かと待っている。

    (……イカズチ?)

     ふと疑問に思って剣を見る。強力だろう事が見てわかる程、剣がバチバチいっている。

    「げぇっ!?」

     不意に悲鳴染みた声を上げる。持って行かれたエーテル量からかなり強力な術が選択・構成されたのはなんとなくわかっていた。
     しかし、思っていたよりも極悪な術がそこにあることに驚いた。

     これを解き放つかどうか一瞬迷う。
     だが、迷う暇はなくなった。無数の炎の塊が自分目掛けて飛んできたのが見えたからだ。

    「えぇい! 死ぬなよ!」

     炎に向かって剣を大きく一閃する。
     瞬間、


    ドゴォォォォォォォン


     雷音が鳴り響く。
     剣から解き放たれたイカズチは無数の炎の塊をいとも容易く消し飛ばし、直線上にいた5人の男を襲った。

     土ぼこりが収まった後、目の前には感電して倒れている5人が居た。
     どうやら炎を目標にしたのが幸いしたらしく、直撃はしなかったようだ。
     それでも身体が麻痺する程には影響を受けたらしい。

    「んぁー………結果オーライ、か?」

     ロープ確か持ってきてたよな? とか片隅で考えつつピクピクと痙攣している男達を眺めて現実逃避気味に呟いた。




     その後、男達を引き渡して報酬を受け取って街をぶらついていた。
     正直、強力な魔法行使でエーテルを大量に消費したのでさっさと適当に宿を取って休みたい気分だったはず。
     それが何の因果かガラの悪い男達に絡まれた。
     多分、精神的な疲れから肩がぶつかったりしたのだろう。

     それで何故か大事になって、何とか説得しようと思っていたところに。

    ≪魔法感知。消去キャンセル――エーテル不足≫

    (んげぇ!?)

     その音声に、声にならない悲鳴を上げて咄嗟に魔法を感知した方向を振り向く。
     そして、そこにいた白い髪のメイド服の少女と目が合った。

    抵抗レジスト開始≫

    (開……じゃ…ね………よ)

     頭上に現れた大量の水に気づく暇もなく、更にエーテルを搾り取られて気が遠くなるのを感じたのが……記憶にある最後だった。












    「……あぁ」

     そこまで思い出してポンと手を叩く。
     さっきの奇怪な服装の少女はあの時の少女に間違いない。
     つまり、ぶっ倒れた自分をわざわざ運んで来て介抱してくれたということだろう。
     自分の剣―イクシードもすぐ傍に立て掛けてある事からまず間違いないだろう。

    「後で礼言わなきゃな、いや…アレはあの子の所為だから別にいいのか?」

     そんな事で悩んでいるうちに再びドアが開いた。












      ◆あとがき?

     思ったよりは早く投稿できました。
     せ、戦闘シーン難しい…ので、戦闘シーンになってない戦闘シーンになりました。
     話進んでないし……男の名前出しそびれたし。
     ま、まぁそこら辺は次回に回しましょう……
     という訳で、あとがきというか言い訳でした。
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