Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■547 / 3階層)  交錯 第2話
□投稿者/ ジョニー -(2006/12/03(Sun) 21:09:10)
    2006/12/04(Mon) 20:37:05 編集(投稿者)

     方や魔法を刻む剣を持つ者。
     方や魔法を身に刻まれた者。

     魔剣と呼ばれる剣を持つ者と兵器として作り変えられた者。
     力を自ら手に取った者と力を押し付けられた者。

     それらは似て非なるもの。
     しかし、それは惹かれあうようにして出会った。

     互いがそうと知らぬままに………

















    「さて……あの子、メアについての説明は以上です」

     メアの元雇い主である貴族の男の言葉をリオンは信じがたい思いで聞いていた。
     この男は部屋に戻ってくるなりリオンと二人で話がしたいとメアに退室を促した。
     リオンも言いたい事などがあったのでそれを受け入れたが、男の語りだした事はリオンの想像を超えていた。


     メアは、とある貴族が秘匿していた実験施設の生き残りであるという。
     その施設でどのような事がなされていたかは男も詳しくは知らないらしい、ただかなりの非人道的な実験や訓練が施されていて王国の部隊がその施設に踏み入った時には100名近い実験体のうち生き残りはメアを含めて僅か4名だったいう事からその非道さが窺える。
     その生き残りであるメアは増幅された強力な魔法を行使する強化魔法兵、人間兵器としての実験台にさせられていたらしくメアの身体にはその為の魔方陣が刻まれているという。
     そして保護された4名はそれぞれ信用できる者達に引き取られたらしい。そのような施設の存在そのものが問題であるし、なによりその施設を運営していた貴族が王宮とも繋がりが深い人物だった為にその事を世間に知られぬ為に施設の事を含めて隠蔽されたという事のようだ。
     もちろん、メアも当初はこの男ではなく違い人物…王宮の信頼も厚い人物に預けられたらしいが4人の中でも飛び抜けてメアが常識などに疎かった為にその人物の手に負えずに他の者に預けられた。
     それが何度か続いてこの男の下にメアが預けられて、やはり手に負えずにレオンに預ける事となったと……そういうことだそうだ。
     尚、メアのズレた言動の原因は多感な時期をそのような施設で過ごした為らしい。


    「それは、本当の……事なんですか?」

     知らず知らずのうちに乾いたリオンの口からそんな言葉が零れた。
     
    「はい、我が家名と我らの王に誓って」

     王への忠誠を後ろに持っていくな、と危うく突っ込みかけたのを踏みとどまる。
     別に王都に住んでいるわけでもなく王宮と繋がりが深いわけでもなく、主に忠誠を誓う騎士でもないんでもない貴族なら家名優先の方が多いだろうと思い直したからだ、この辺長旅の経験でもある。
     それにこの男は王国の貴族であるが何故かこの学園都市に屋敷を構えているし。

    「ともあれ、彼女の重要性についてはわかって頂けたと思います」

    「えぇ……」

     そこは素直に頷く。
     下手をすれば反乱の火種になりかねない問題の生き証人。それは確かに王宮にとっては手元に置いておくには不都合があるし、さりとて手放すわけにもいかない存在だろう。
     メア達が秘密裏に消されなかったのは運がいい。もちろん、隠蔽したといえ問題が問題だった故にそういうルートには知られていた為に下手に消すわけにもいかなかったのかもしれないが。

    「結構です……では、くれぐれもお願い致します」

     








       交錯
          第2話「モトメルは(前編)」








     所変わって、現在リオンとメアは現在学園都市の中心である学園…の待合室にいた。



     事の起こりはリオンがメアの事を調べようとした事だが、何せ王宮に隠蔽された問題であるから簡単に調べられるとも思えない。
     よって、単刀直入に聞いたのだが……その殆どが――

    「……知らない」

    「……分から、ない」

     との答えしか返ってこなかった。
     まぁ嘘ではなさそうだった為に諦めて、せめてと思い施設の場所を聞いたがそれも知らないという。

     よって、自力で調べるしかなくなった訳だが……当てが無い。
     王都デルトファーネルに行けば何らかの情報は得られるだろう。しかし、レイオスを名乗る者としてリオンは王都には入れない。
     今のレイオスにとって王都は鬼門であり入る事が出来ない。仮に入れても家に多大な迷惑をかけることが目に見えている為にその選択肢は除外せざる得ない。

     次点で魔法関係の実験施設だったのだから、この学園の上層部なら何かしら知っているのではと……思ったのだがコネがない。
     しかし、そこでリオンは学園にいるはずのある人物を思い出してその人物を頼る為に来たのだ。
     相変わらず首輪にメイド服のメアを引き連れて歩くリオンへの周りの人達の視線は酷く痛かったが………必死に気にしないようにした。

     ともあれ受付でその人物と会いたいという旨を伝えて、身分提示を求められたがレイオスの名と鎧の紋章で納得してもらい、本当に会えるという保障はないが一応その事は伝えるという事になった。
     ちなみにその間は待合室で待たされる事になったが、かれこれもう三十分以上待たされている。



    「なんだレイオスって、貴方の事だったの」

     もうどれ位経っただろうか、今日のところは出直すかとリオンが考えていたら不意にそのような声がかけられた。
     その何処となく落胆の色の混じった声のした方を向くと……そこには赤い髪と赤い瞳が印象的な少女が居た。

    「久しぶりに会って、なんだは無いだろう……ユナちゃん」

    「ちゃん付けで呼ばないで」

     苦笑気味に言うリオンにキッパリと告げる少女。
     ユナ・アレイヤ……15歳にして炎系統の魔法を全て習得した天才少女。

     リオンとユナの言葉から二人は面識があるようだが、普通この二人が知り合いだとは思わないだろう。
     なにせ単なる冒険者…ハンターと天才少女である。普通二人を結びつける事の方が難しい。
     だが、実はレイオス家とアレイヤ家は交流があった為に二人は互いを知っていた。

    「……まぁ、ともかく久しぶり…あの時以来……かな」

    「………そうね」

     僅かに言葉を濁らせるリオンにユナ。
     実の所、レイオスとアレイヤの交流は途絶えて久しい…そうユナの両親が事故でなくなって以来、両家の交流は殆ど行われなくなっていた。
     リオンとユナもその葬儀以降、今まで会うことは無かった。

    「それで、いきなりなんなの? それに会わない間に随分趣味も悪くなったようで」

     ユナの視線の先には……メアがいた。
     当然、此処でも首輪にメイド服だ。

    「アレは俺の趣味じゃない! いや、そうじゃなくて……今日会いに来たのは彼女についてだ」

     慌てて弁解して、変な方向に話が行く前に本題に入る。
     決してリオンは逃げたわけではない……多分。

    「彼女の……?」

     少々怪訝な顔でさっきから一言も喋っていないメアを見つめるユナ。
     その言葉にリオンは頷き、重々しく口を開く。

    「この子はメア・シブリュートというんだが………実は―――」

     そこからリオンはつい先ほど、あの貴族に聞いた話をユナに語りだした。




    「――なの?」


    「多分―――」


    「―――ということは――」


    「――でも――――」



     何時の間にやら途中から少々話が変わって二人して施設の事についてあれこれ意見交換などを始め出していた。
     それぞれ施設について思う点があったのだろう。それが本当かどうか、そして何故というところまでに話は及んだ。
     まぁ、情報不足過ぎるので推測に推測を重ねているが………


    「……くぁ」

     ちなみにそんな話している二人を尻目に興味無しとばかりにメアは小さく欠伸をしていた。
     局地的に平和な光景だった。



























    <オマケ>


    「推測ばかり語っていてもキリが無いわね」

    「いや、そんな今更……」

     ちなみにアレからかれこれ三十分以上話し合っていた。確かに今更である。

    「ともかく、手っ取り早く証明するには……貴女、脱ぎなさい」

    ブッ!?

    「……?」

     突然のユナの爆弾発言に噴出すリオン、意味が分からず小首をかしげるメア。

    「本当に身体に魔方陣が刻まれているかどうか、確認がてらに検査してあげる」

    「……わかった」

     とりあえず魔方陣を見せればいいと納得したメアが頷き、そのメイド服に手をかけて唐突に脱ぎだした。

    「ま、まてぇーー!?」

     リオンが驚愕と制止の叫びを上げ、二人がリオンの方を向いた…その時――


    バタン!! 


     ――ドアが閉まる音が部屋に響き渡る。
     相当な早業である。ユナがぽかんとしている事からその相当さが理解できる…かも?
     叫んでから椅子から立ち上がり扉を開け放ち部屋を飛び出して扉を閉める。以上の一連の動作は僅か数秒の間に行われた。

    「………とりあえず、脱いでくれる?」

    「……………」

     僅かな空白の後に何もなかったユナの言葉に、こくりとメアは頷いたのであった。














     ◆あとがき?

     こ、今回は難産でした。
     詰まるは詰まる……とりあえず遅くなって申し訳ありませんでした。
     オマケにやっぱり短い、今からこの調子でちょっと不安なジョニーです。
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