Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■537 / 2階層)  交錯 第1話
□投稿者/ ジョニー -(2006/11/25(Sat) 21:26:46)
    2006/11/25(Sat) 23:10:04 編集(投稿者)
    2006/11/25(Sat) 22:18:31 編集(投稿者)

     此処に出会いは成った。
     それが意味にするものは何か、それはまだ誰にも分からない。

     過去を悔いる者と過去を失った者。
     未来あすに希望を望む者と未来あすに何の希望も抱かぬ者。
     両者の差は大きく、されど両者にどれだけの差があろうか。
     かくして二人は出会う、それは運命か必然か…はたまた唯の偶然か。

     それは世界にとって小さな出来事、歴史にも語られる事はない、小さな出会い。 
     ただ、その出会いが彼と彼女にとって大きな意味を持つという事は確かだった………
















     「おや、起きましたか」

     扉が開き、報告受けたから来ただろうに少々白々しい言葉と共に入ってきたのは金髪に眼鏡が特徴的な男性だった。
     知的で如何にも貴族です、という服装をしている。恐らくはこの家の主だと思い至り、姿勢を正す。

    「あぁ、そのままでいいですよ」

     彼が姿勢を正すのを見て、男性は気にしないでいいですとばかりにそういった。
     とはいえ、そうもいかないので失礼でない程度に姿勢を正す。

    「この度はうちのメイドがとんだご無礼を……」

     あぁ、やはり彼女は此処の者かと思う。
     同時にこいつがあんな格好をさせているのか? と別種の警戒を強める。

    「あぁ、キミと共にいた者達は余罪が出てきたので憲兵隊に引渡したよ」

     その警戒を勘違いしたのか、男は安心しなさいとばかりにそういった。
     勘違いしているのは、まぁ都合がいいのでそのまま勘違いさせておく。

    (貴方の性癖を疑いましたとは口が裂けても言えんし)

    「正直、キミも憲兵隊に突き出してもよかったのですが」

     バレると危険な事を考えていると、正直ちょっと洒落にならないことを言われてた。
     別に法を犯したわけではないので問題がないといえばないのだが、それでもわざわざ捕まるのは勘弁したい。

    「キミが身に着けていた紋章に覚えがあったのでね、失礼ながら名前を聞いていいかな?」

     そういって男性はベッドの傍に置かれたブレストアーマーを見ながらいう。
     より正確にいうならば鎧に刻まれた狼とつるぎを象った紋章を見ながら。

     そこで彼は、あぁ…と一つ納得する。
     確かに貴族なら知っていても別におかしくはない。逆に知らなくてもおかしくはないが、たまたま前者だったということだろう。

    「私の名前はリオン、リオン・レイオス……おそらくはご想像の通り、レイオス家の者です」






       交錯
          第1話「ハジマリは」






    「あぁ、やはりあの没落騎士の………」

    「え、えぇ…そのレイオスです……」

     名乗った途端の第一声がそれか……
     というか没落とかハッキリ言うな、そのレイオス家の者の前で………

    (それに没落はしてないぞ…没落は、ただ単に王都から辺境に飛ばされただけで……ん? それって没落に入るのか?)


     レイオス家。
     数多くの優秀な騎士を輩出した名家であり、代々王都の護りを任されて時には近衛になった者さえいる代々の王の信頼も厚い由緒正しい家であった。
     そう、あった……過去形である。なんでも祖父の代に当時の王の不評を買ったらしく辺境に飛ばされて久しい。むしろ、一家纏めて辺境行きなので王都追放といえるかもしれない。
     それでも今でも位は剥奪されていないし騎士も出している。それに過去の王に直々に授けられたという家紋も返還を求められていない。
     その辺は不幸中の幸いのというべきかなんというか。
     ついでにいうと紋章の狼は番犬で剣は騎士で王国を王都を王を護る為の騎士という意味から来ているらしい。辺境に飛ばされた今となっては少々皮肉な意味合いである。


    「いや、あの名家も今となっては落ちたものですな。跡取りがこのようなところで」

     まことに遺憾です。と、ワザとなのか素なのか少々判別に困る仕草で首を振る男。

    「い、いえ…自分は跡取りではありませんゆえ」

    (そうだ、俺は跡取りじゃない……その権利もないしな)

     リオンの内心のその言葉に気付くはずもなく、男は一人で納得したように頷く。

    「まぁ、レイオス家なら問題ないでしょう……入りなさい」

    「……?」

     そこで何故レイオスの名が出るのかよく分からずに疑問に思っていると、あの子が入ってきた。

    「今日からこの子の事を頼みます」

    ハァ!?

     唐突に、脈絡もなくそんな事をいわれて驚きの声を上げる。
     失礼といえば失礼だが、この場合多分誰も責めはしないだろう。

    「実はこの子は皿を割るのを初めて色々と問題は起こすわ……正直頭を痛めていたのですよ。そして今日のあの騒ぎ、幾ら温厚な私でもいい加減…我慢の限界でして」

     眉間を指で抑えて青筋が浮かんでいる。
     それは我慢の限界だろうが、話が繋がっていない。

    「それでもあの子は色々問題がありまして………ただ追い出すというわけにいかないのですよ。それに引き取り手も見つかりませんでしたし」

    (あ、なんか嫌な予感が……)

    「しかし、没落したといえ…あの名家であったレイオス家の者なら問題ないでしょう。ですから、彼女の事を頼みます」

    「え、いや……俺は確かにレイオス家だけど引き取るって! そんな権限――」

     既に敬語を使う余裕もなくして素で喋るリオン。

    「それでは上には私の方から伝えておきますので」

     そんなリオンを無視して、にっこりと微笑み男が部屋から出て行く。

    「ちょっ!?」

     慌てて追おうとリオンがベッドから飛び出る。
     が、ドアの前にはあの子が立っている。

    「あ、ちょっと…退いてくれるかな?」

     引きつり気味でお願いをするが、それを聞いていないように少女はリオンを見上げて…言った。

    「クビになった……」

    「い、いや……それは俺の所為じゃないし」

     むしろ、自業自得だろう。という言葉はすんでで飲み込む。

    「クビになった……」

    「いや、だから………」

    「クビになった…クビになった…クビに――」

    「わ、わかった! わかったから!」

     エンドレスに続きそうな予感がしたので慌てて遮る。

    「よろしく、ご主人様……」

    「ご、ご主人様はやめて貰えるかな……リオンでいい」

     嵌められたと内心叫びながら、引きつり気味にいう。

    「わかった、リオン」

    (こ、今度は呼び捨てか……)

     なんとなく、この子の問題の一つがわかったような気がして冷や汗を流す。
     そこでふと少女の顔をじっくりと見て気付いた事があった。

    (似てる……けど、そんな訳ないか…髪の色も年齢も違うし)

    「………?」

     じっくりと観察されて小首を傾げる。

    「あ、いや……そういえば名前は?」

     誤魔化すように聞いて、実際名前を聞いてなかった事にも気付く。
     そして、それぐらい紹介していけよ、おっさん。と内心毒づく。

    「メア…メア・シブリュート」

    (やっぱり違うか……)

     その名を聞いて、分かっていたはずなのに落胆を覚えている自分に気付いて苦笑する。

    「メアか……俺はリオン・レイオスだ。まぁ、よろしく頼む」

    「……よろしく」

     握手の為にリオンが差し出した手をスルーして、メアが頭を下げる。
     リオンが引きつったが、此処に出会いは成ったのであった。



























    オマケ


    「ところで…その首輪は外してくれないか」

     さすがにさっきまで自分があの男に思ってた事を自分が思われるのは嫌なのでリオンがいう。
     が、しかし……

    「……外せない」

    「はっ?」

     メアの一言に間の抜けた声を出してしまう。

    「鍵がないから、外せない」

    「い、いや…鍵ぐらい作れば」

    「魔科学の品で、複製は困難」

     技術の無駄使いだろう! と、声高に叫びたくなったが必死に抑える。

    「じゃ、じゃあ…せめてメイド服を」

    「これと同じ服しか、持ってない」

    (な、なんなんだよ…それは)

     なら、買えば……と思ったがすぐに思い直す。
     金がない。いや、あるにはあるが一人旅が二人旅になるのだ。必要経費は単純計算で二倍だ。
     そうなったら無駄遣いはできない。これは無駄遣いではない気もするが出費は出来るだけ抑えたい。

     そんなこんなでリオンは男が今までのメアの給料(手切れ金?)を持ってくるまでずっと頭を抱えて悩んでいたとか。














     ◆あとがき?

     早めに上げようと頑張りました、実際頑張った。
     が、しかし……こ、今回は今までより更に短いような………
     内容も薄いし、反省……
     次回はもうちょっとマシになるよう頑張ります。
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