Release 0シルフェニアRiverside Hole

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

■210 / 4階層)  双剣伝〜第四章〜『日常』
□投稿者/ 黒い鳩 -(2005/05/03(Tue) 13:04:52)
    2005/05/03(Tue) 13:06:18 編集(管理者)

    「お兄ちゃん! 起きて! お兄ちゃん!」
    「んっ…」
    「んふふっぅ〜起きないなら、脇の下くすぐっちゃうぞ〜!!」
    「ん!!」

    俺は一瞬背筋が寒くなるような気配に、目を覚ます。
    転瞬、剣をつかむ為腕が跳ね上がる…
    しかし、俺がつかんだのは剣ではなかった…
    何と言うか、すべすべした感触…

    「ほっぺたか?」
    「んなわけ無いでしょ! お兄ちゃんのバカー!!」

    俺に向かって何かが放たれる、
    これは、魔術か!
    俺はベッドから転がり落ちると体勢を整え立ち上がった。
    そこに更に衝撃波が幾つも飛来する。
    俺はそれを回避しつつ相手に話しかける。
    相手はどうやら赤毛の少女…ユナだったか…

    「悪かった、どこを触ったのか知らんが謝るから。魔術を止めてくれ!」
    「分らないの? 分らないんだ…」

    今度はユナは酷く落ち込んでいる…
    俺が触った所を判別できなかったくらいで何故それほど落ち込む? 

    「私も結構育ってきたと思うんだけどな…」
    「育って…ああ、胸か」
    「分るの遅すぎ!!」
    「そうはいってもな…」
    「何か言った?」
    「いや…」

    どうやらユナは胸の事を気にしているらしい、
    だが育ち始めているとは言っても12の少女、それほど大きくないのはむしろ当然。
    その年で巨乳だった日には逆に異常だろう…

    「じろじろ見ないでよ! お兄ちゃんのバカー!!」

    今度は俺の枕を投げつけてきた、まあ難しい年頃なんだろうな。
    正直、俺にはどうでもいいことだったので、別の質問に切り替えてみる。

    「所で、そのお兄ちゃんというのは一体なんだ?」
    「え? ああ、これから家族になるんだもん、昨日みたいにお兄さんや、レイヴァンさんじゃ変だから、お兄ちゃんって呼ぶ事にしたの」
    「いや、レイヴァンでいいんだが…」
    「駄目?」
    「いや、駄目というわけじゃ無いが…何故だ?」
    「私一人っ子だったから、お兄ちゃん欲しかったんだ。お兄さん結構格好良いし、特別にお兄ちゃんにしてあげる!」
    「はぁ、それは光栄だな」
    「ぶぅ! 何よその言い回し! 私のお兄ちゃんになるのが嫌なの!?」

    ユナは俺のベッドの上に座り込み、不満そうな目を向けてくる…
    戦場で暮らし続けてきた俺…それを当たり前だと感じていたのだが…
    目の前の少女にとってそういった事は想定外なのだろう、彼女は平和の象徴とでも言えばいいのか、
    何もかもが彼女にとっては普通の事なのだろう、だから知らない男の部屋に来てお兄ちゃん等とのたまえるのだ…
    彼女が魔術の才能を持っていようと、警戒心はまた別の問題だ、彼女はまだ警戒する必要のある世界に居ないと言う事なのだろう。

    「で、一体い何のようなんだ?」
    「あっ、うん朝食出来たから迎えに来たんだけど…」
    「分った、支度をするから先に行っていてくれ」
    「じゃあ先に行ってるねお兄ちゃん!」
    「…」

    俺はどうしていいのか分からず、渋い顔になっていただろう…
    ユナが扉を閉めるとき、寂しげな表情をしていた事に気付かなかった。

    俺は直ぐに支度を済ませ、朝食をとる。
    アレイヤ家の面々は相変わらず賑やかだ…
    ユナは飛び級で院生まで上り詰めてしまったので、半年の休暇を申請したらしい。
    冬まではここにいるとの事だった。
    よって、基本的にこの騒がしさから逃れる為には、さっさと依頼を実行するしかない訳だ。
    そのためにも。シルヴィスとの訓練を早く終わらせなければな…

    俺はいつもの森に向かいシルヴィスと訓練をする、
    爵位の魔族による被害はそれぞれ町ひとつの中でとどまってくれているので、今の内に最後までやってしまうとシルヴィスは言っていた。
    俺としても、急いで基本的な動きをマスターしたかったので丁度良かったとも言える。
    最近は、シルヴィスの動きにかなりついていけるようになっている、まだ戦えば十本に一本取れるかどうかといった所ではあるが…

    「流石青の双剣士、私の動きについて来れるようになった人は初めてだよ。でも、まだまだ甘い!」
    「クッ!」

    ガキィと言う音と共に俺が手に持っていた剣がはじかれる、こと剣による戦闘においてはほぼ勝ち目が無い。
    だが、俺に取っても好都合、剣をはじきあげられたその勢いで後方に向け回転(バク宙)しながら足を繰り出す。
    俺の脚がシルヴィスを掠める。互いに体勢を立て直す暇が出来た…

    「そう来るか…見切りはもう、ほぼ完璧だね…なら、私も本気でいくよ」
    「本気?」
    「肉体を強化する方法は色々ある、魔術による強化、機械的なサポート、属性効果の付与、補助によるスピードの加速、そして気による身体能力の向上…
     中でも魔術による強化は副作用は大きいものの、一時的に魔族と変わらない肉体になることも出来る。
     でも、反動が大きいしそればかり利用していると本来の戦い方が出来なくなる、頼り切ってしまうからね。
     それでは、魔族と変わらなくなる、意味が無い。それに剣士は基本的に魔術は得意じゃない。
     だから、気による戦闘力の向上を行う訳なんだ」
    「なるほどな、ではどれくらいの能力上昇が見られるのか見せてもらおう」
    「後悔しないことだ」
    「何を今更」
    「では、行く」

    シルヴィスは言った瞬間視界から消えた…
    そして、ゾクリとした感覚が俺を襲う、次の瞬間には腹部に拳がめり込んでいた…
    俺は何とか体勢を立て直そうと距離をとるが、シルヴィスは消えたと思うと既に背後に出現しており首筋に一撃お見舞いしてくれた。
    俺はそのまま倒れた、意識は何とか繋ぎとめている物のもう動けそうに無い。

    「反応が出来ただけでも凄いとは思うけどね、まあ秘伝とでも言うかな、実際これについて来れた人間はいないんだ…」
    「…」
    「君がこれをマスターすれば、訓練は終了。実戦に入る…て?」

    シルヴィスは言い終わった直後飛びずさる。
    直前までシルヴィスが居た場所を高速で火球が通り抜けた。
    シルヴィスはそれに対し舞うように離れていくが、その後をまるで追尾するように火球が追いかけてくる…
    シルヴィスは、一定の距離が開くと何かを引き抜く仕草をする、するとそこに無かった筈の剣がセイブ・ザ・クイーンが現れる。
    そして、火球とすれすれで交錯しすり抜ける。
    シルヴィスを通り抜けた火球は真っ二つになり、爆発四散した。

    「つけられたね?」
    「…?」
    「出てきなさい」

    シルヴィスが剣を突きつけた先の茂みから赤い髪の少女が顔を出す。
    まさか…

    「どうやって…」
    「お兄ちゃんゴメン…悪いとは思ったけど、魔術でマーキングさせてもらってたの…でも、その人は私が倒すからね!」
    「どういうことだ?」
    「ははは…勘違いされてるみたいだね私は…」
    「?」
    「そのの人! 私のお兄ちゃんをよくもいたぶってくれたわね! 敵は私が取る!」

    ユナはビシッという音が聞こえてきそうなくらい、シルヴィスに指を突きつける。
    シルヴィスも苦笑いしている、もっとも、笑っていられる状況でもないと思うのだが…
    なぜなら、ユナは仮にも学園都市魔術科の院生、それも炎系を得意としている。
    上級魔道でも連発された日にはこんな森直ぐに焼け野原になってしまうだろう…

    「別にそんな必要は無い」
    「でも、お兄ちゃん…まさか…脅されてるの!?」
    「なんだか、想像力の豊かな子だね…にしても…」
    「何だ?」
    「お兄ちゃん? 凄いね君は…いつの間に彼女を引っ掛けたんだい?」

    シルヴィスの心の琴線に触れるものが合ったらしい彼女は俺を見て眉間をヒクヒクさせている。
    不可思議なオーラも立ち込めているように感じるだが…

    「何を言っている、アレイヤ家を紹介したのはお前だろう?」
    「お兄ちゃん、今その人のことお前って呼んだ?」

    いつの間にか、ユナも俺に近づいてきている…こちらは、背後が赤く染まっている…魔力が漏れ出しているらしい。
    何か不穏な雰囲気になりつつあるな…

    「…一体どうしたんだ」
    「ふふふ…」
    「えへへへ…」

    二人の放つ巨大なプレッシャーの前に俺はようやく動くようになった身体を後じさりさせる。
    彼女等はジリジリと近づいてくる。

    「まさか…お前等…」
    「ねえ、お兄ちゃんこれからは危ないから私が護衛してあげる…」
    「こんど訓練を全力でやってみないか?」
    「…知るか!!」

    そう言って俺はヤツラに背を向け全力で逃げ出した…
    思えば、これも平和の一場面なのかも知れない…
    死に掛けたけど(汗
記事引用 削除キー/

前の記事(元になった記事) 次の記事(この記事の返信)
←双剣伝〜第三章〜『少女』 /黒い鳩 →双剣伝〜第五章〜『平穏の終わり』 /黒い鳩
 
上記関連ツリー

Nomal 双剣伝〜序章〜 / 黒い鳩 (05/01/26(Wed) 11:21) #136
Nomal 双剣伝〜第一章〜『剣の公爵』 / 黒い鳩 (05/03/30(Wed) 12:01) #169
  └Nomal 双剣伝〜第二章〜『家』 / 黒い鳩 (05/04/12(Tue) 11:44) #183
    └Nomal 双剣伝〜第三章〜『少女』 / 黒い鳩 (05/04/19(Tue) 23:56) #187
      └Nomal 双剣伝〜第四章〜『日常』 / 黒い鳩 (05/05/03(Tue) 13:04) #210 ←Now
        └Nomal 双剣伝〜第五章〜『平穏の終わり』 / 黒い鳩 (06/06/13(Tue) 11:51) #287
          └Nomal 双剣伝〜第六章〜『初戦』 / 黒い鳩 (06/06/16(Fri) 11:08) #289

All 上記ツリーを一括表示 / 上記ツリーをトピック表示
 
上記の記事へ返信

Pass/

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

- Child Tree -