Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■324 / 3階層)  鉄都史論 04、生存というための手段
□投稿者/ カムナビ -(2006/07/29(Sat) 12:36:46)
    2006/07/29(Sat) 15:53:18 編集(投稿者)

    注)もうすでに注を入れる必要もないと思いますが、似非小説第4弾。3話と微妙にリンク中!!

    第四の視点:会場支配人&裁定官直属部隊のある執事

    さて、これからが本番だ。
    そう思うと、さすがに緊張するものだ。たとえ、それが何度も繰り返されていることでも。

    「会場にお集まりの皆様、そろそろ皆様のお楽しみのオークションの時間でございます」

    アナウンスが響き、ホールで人がざわめくような音がする。まもなくだろう。
    改めて目の前にいる数人の男たちに向かい合う。
    「準備はできているか?」
    「ヤー、万端であります。」
    「分析のほうは頼んだ・・・これに、我々の同胞数万の命がかかっているのだ。宜しく頼むぞ」
    「もちろんです・・・では、閣下も」
    「了解だ」

    覚悟は決まった。さぁ、この街のために、下衆となりにゆこう。



    ナイフ同士がぶつかり合い、鈍い金属音が響く。
    ホールの外部、人の入ってこない暗闇に包まれた通路。
    人が居ないはずのその場所で、2人の男が対峙している。
    一人は、バトラー。何故執事が?と思われるが、その手にはつや消しの塗られたナイフが握られている。
    もう一人もナイフ使いなのは変わらない。だが、全身黒尽くめ。
    性別も、よくわからない。だが・・・明らかに侵入者はこちらだろう。

    「いい加減、諦めません?」
    執事が提案する。返答は投げナイフ。
    彼はナイフを一閃させ、そのナイフをはじく。
    その間に黒尽くめが一気に接近、こちらとの勝負をきめようと距離をつめてくる。
    だが、その動きが突如鈍り、ナイフはナイフで受け止められてしまい、そのままはじかれる。

    「!?」
    何故という驚きだろう、しきりに周りを見る。すると、そこには幾つかの線のようなものが、虚空に浮かんでいる・・・これは、糸?
    「驚きましたか?ですが、ここは敵の領地ですよ?この程度は予想してくれませんと・・・とりあえず、顔を見せていただきます」
    やめろとでも言いたいのだろうか、暴れるが、彼は、気にせずその黒尽くめの面を剥ぎ取る。すると・・・

    「おや、これは予想外・・・でもない野郎ですな」
    顔自体もさほど、特徴の無い普通の男だ。
    さて、どうしたものか?
    「あら、終わった?」
    この声は・・・裁定官殿か。
    「何用ですか・・・裁定官殿」
    振り向くと・・・メイド?
    「あ、この服?たまにはこうゆうのもいいでしょいいでしょ?」
    うっふんと色々ポーズをとってみせる。ツッコミどころは色々あるが。
    「何の御用で?」
    もう一度、強調して、たずねる。
    「むー、乗り悪いなぁ・・・指揮官先頭は慣習・・・冗談よ、手助けしようかとおもって来たんだけど・・・無駄だったみたいね。はーい、侵入者さん?何か言うことあるかしら」
    すると、今までずっと沈黙を保っていた男が吐き出すように言い放つ。
    「くたばれ!!死の商人どもに媚び売る、売女め!!」
    おいおい・・・なんて陳腐な・・・ってまずい・・・!!
    強力な魔力の励起を感じて、顔を上げる。
    夜叉がいた。

    「うふふふ・・・言ってくれるわね。ちょっとお姉さん、キれちゃった。楽に死ねるとお・も・う・な・よ♪」
    口調こそ、明るいがはっきり言って少なくとも怒っているのは間違いない。
    その証拠に、強力な魔術の発動を示す多層分割式魔術式が彼女の腕に展開されている。
    男の方は気絶している。避けてくれるのを期待するのは無理か。さすがに、このままではまずい。
    意を決して、裁定官殿に言い放つ。

    「裁定官殿・・・命じられたのは、処置です」
    「なら、処理の格上げするわ。命令者は私なんだから、構わないでしょ?」
    やはり、そうくるか。だが、ここで折れては元も子もない。
    「指揮系統に混乱をもたらす命令を享受するわけにはいきません」
    「あなたを、抗命罪よ?それ・・・撤回する気は?」
    「ありません、上司の過ちを正すのは部下の役目で」
    しばし、じっと見つめられる。いつもはすっと吸い込まれるような黒い瞳だが、それが今はまるでこちらを飲み込もうとしようとしているように感じる。

    「あーあ、わかったわよ、私の負け。処置でいいわ。」
    ふっとその視線の圧力が消える。どうやらうまくいったようだ。
    「了解。では処置します」
    すでに先ほどから気絶している圧力で手早く男の腕を露出させると、そこに処置用のアンプルの入った注射器を注射する。これでとりあえずは、何とかなるだろう。あちらも余計な波は立てたくないだろう。

    処置を終えて、ふと見上げると、いまだにメイド服姿の裁定官殿が、「私不満です。」という感じでこちらを見ている。気まずい。何か話題は・・・。
    「しかし、よく我慢なさいましたな。」
    「単なる打算。あそこで、拒否したら、今はよくても後であんたたちがついてこなくなりそうだったからよ。」
    容赦なくそれだけいって切り捨てる。どうやら、よほど鬱憤は溜まっているようだ。このままだと、いつまた爆発するかわからない。やれやれ、仕方ない。こっちも処理しておくか。

    「裁定官殿・・・血いります?」
    ぴくんと耳が動く。よし脈有り。
    「ふ、ふん・・・そんなもので釣られるわけじゃないけど、どうしてもっていうなら吸ってあげるわ」
    はいはい、解りましたよ。我らが親愛なる上司、裁定官殿。

    その次の日、彼は増血剤点滴に半日ほどを費やしたという。



    宴もまもなく終わるだろう。
    彼は心の中で嘆息する。連絡では何度か侵入者がいつものようにいたようだが、どうやらうまく対処はできたようだな。

    「では、6万!!それより上の・・・6万5千。6万5千が出ました!!これより上のお客様はおりませんか!?]

    内心で思っていることなどおくびにも出さず、声を張り上げる。
    だが、何か考えずにはいられない。

    「では、6万5千で出品No.12魔法王国軍純正魔術兵装30セットは落札されました」

    そう、このオークションは美術品なんてものは対称にしていない。
    対象は人を傷つけ、殺すための兵器。
    この武器で幾人の人間が殺されるのか、それを考えるとこの思考をやめることなんてできない。

    「では、本日最後にして、本日の目玉出品No.13戦略級魔術兵器<崩落のギャラルホルン>、その制御基盤です!!」

    だが、これも我々の同胞を食わせていくために必要なことだ。
    そう、それは納得していかなければならない。

    「それでは、15万から始めましょう!!」

    ああ、だが、そのために殺しの手助けをしてもよいというのか?
    いや、違う。違うはずだ、私自身それを毛嫌いしていたというのに・・・。

    「17万、20万、おっと一気に30万がでました!!さぁ、それ以上の方はおりませんか!!」

    なれていく自分を感じる。少しずつおかしくなっていく自分を。
    結論のでない思考が続く。

    「おっと、35万、40万・・・55万が出ました!!では、55万で落札です!!」

    考えるのはやめよう。早く、この狂った世界から抜け出そう。
    いつもどおりの問題を先送りにした結論に至ると、心がすこし軽くなった。

    「では、本日のオークションはこれで終了です!!商品については、準備の後お渡しいたします!!では、また次回お会いしましょう!!」

    もう、二度と関わりたくない。
    心の中で相反する感情を抱きつつ、宴は終わる。
    あとは、部下の分析班が、このオークションでの分析結果を用いて、各勢力の現状を上層部に知らせることになるだろう。

    どんなに高潔な思想を語って、平和を語ろうと、飢えている者は、そんなものより、今日の食料を求めて争う。それが今の現状である。この街もその例外にはなりえない。食料を生産するためには、肥料や種が必要で、それを得るためには資金が必要だ。その資金を得る手段の一つがこれなのだろう。後世においてこれがどう判断されるのかはわからない。だが、ここではこれが必要だったのだ。


    あとがき
    どうも、執筆BGMは紅の牙、もうちょっと強く、砂塵の彼方への三曲でお送りしますカムナビです(ぇ ちなみに全部何のOPかわかった人はまじで尊敬します(何
    はい、見ての通りです。中盤が裁定官殿、○○疑惑です。終盤については読めばわかります。とりあえず感想のほうで質問されれば、説明もいたしますので。今日はここまで。次は歴史はある程度くだります。では、次回をお待ち下さい。
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