Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■536 / 3階層)  作者自身が暴走した三話
□投稿者/ ロボットもファンタジーも愛する者 -(2006/11/24(Fri) 16:22:56)
    ハンターのお仕事
    第三話「必然の偶然・3 〜漆黒の翼〜」



    「サンダーソード!」

    「アイシクルボルト!」


    ファリルが掲げた白銀の杖『クラウストルム』の周囲に無数の光の剣が生み出される。
    同様にエルリスの手に浮かぶ魔方陣からは氷の矢が生成され、放たれるのを待っていた。
    ファリルが白銀の杖を振るい、エルリスが手を押し出した瞬間、力を持った言葉で作られ
    たそれ等は前方で暴れているアースイーターへと迫り、光の剣と氷の矢は突き刺さる。
    光の剣は突き刺さった瞬間に紫電を放ちながら爆裂、氷の矢は燐光を放って砕け散った。
    防御力が高いアースイーターはクレイルが述べたとおり、魔法攻撃に弱い。
    そしてそんな者が魔法で攻撃されると――たまったモンでは無い。
    アースイーターは咆哮をあげ、魔法を放った二人を抹殺せんと脚を踏み出した瞬間――。


    「まぁ、そう慌てなさんなって、お客さん。」

    「茶も菓子も無いが――打撃と斬撃をくれてやる。」


    瞬時に勇とクレイルが迫り、二人で容赦の無い斬撃と拳による一撃をぶち込んだ。
    魔法攻撃に加えて破壊力満天の拳に剣の打撃を喰らったアースイーターはよろめいた。
    勝機見出したり、と感じた二人――クレイルは一呼吸して剣を構え、勇は右腕を引く。
    アースイーターは体勢を立て直すと同時に二人に向かって右腕を凪いだ。


    「……トドメ決めて、ファリル嬢に格好良い所、見せてやれよ?」

    「!、お前!」


    勇はそのままアースイーターの振るわれた右腕に全力の拳を撃ち、吹き飛ばす。
    だが、アースイーターの強烈な腕力を迎撃した勇もまた、衝撃によって倒れてしまう。
    ――クレイルは勇に目線を送り、勇は上を向いた親指を突き出し『行け』と合図する。
    大剣の柄を両手で握りこみ、裂帛の気合全開の咆哮を上げ、クレイルは走った。
    対するアースイーターは自分を抹殺せんと向かってくる敵を倒すために左腕を薙ぐ。
    薙ぎ払う様、叩き付ける様に振るわれた左腕を体を捻る事で回避し、そして回転する
    様に両手で持っている大剣を振るい、アースイーターを――『両断した』
    胴体を横一文字に切り裂かれ、二分割された敵は断末魔の悲鳴を上げ、鮮血を――
    『一滴も出さず、その姿形も、影も消えた』のだった。


    「なっ!?」

    「……ジーザス。化け物が綺麗さっぱり消えちまったよ。」


    よっこらせ、と言った感じで立ち上がり、スーツについた埃をハタき落としながら勇
    は呟き、クレイルは大剣を手にしたまま『信じられない』と言う表情で硬直する。
    ――魔物・アースイーターを倒したのは良い、だがその死に方が余りにも『不自然』
    しかも街中にこんな中級レベルの魔物が突然現れる事自体が既に不自然であり、本来
    ならば門番達が食い止めたり、町中に避難勧告なりを出したりする筈なのに……。
    このアースイーター、そして先程の魔物の集団は突如として町に現れた。
    クレイルは頭を振るい、気分を落ち着かせた所でそれらの事を考えた結果、一つの答
    えに辿り着き、再び剣を構え、何時でも戦闘に移れるようにした。


    「どーしたよ?敵は―――」

    「召喚師(サモナー)だ。」

    「は?」

    「近くに召喚師が潜んでいる。……アースイーターを呼び寄せた敵だ。」

    「………」


    クレイルの一言を聞いた勇も拳を握り、背広のボタンを外し、ネクタイも緩める。
    こんな馬鹿な事を仕出かした奴が他に居るならば引きずり出してボコる。殴る。
    そう言う意思を込めた表情で敵を発見次第、素敵パワーで夜空に星に変えるべく
    構えを取っていた。


    「に、兄さん……さっきの敵は……兄さんが消し去ったの……?」

    「違う。残念だが魔物を綺麗さっぱり消し去れる力は持っていない。
     …アースイーターは倒したが、この付近にアースイーターを呼び出した敵。
     高等レベルの召喚師が潜んでいる筈だ。」

    「え……それじゃ!」

    「ああ、まだ戦いは終わってな―――エルリス!頭を下げろ!!」

    「へ―――きゃああッッ!?」


    エルリスに叫び、おっかなびっくり頭を押さえてしゃがみ込んだ瞬間にクレイルは
    素早く引き抜いたオブシダンを発砲し、視線の先にある建物の影に銃弾を撃ち込む。
    兄の様子を見て固まるファリル、涙目になりながら銃撃が終わるのを待つエルリス。
    オブシダンのマガジンカートリッジに収められた計12発の弾丸を撃ちつくす。
    そして、12発目の空薬莢が地面に落ちた時、『敵』の姿が現れた。

    白い外套に身を包み、両手の指全てに指輪をはめた貴族風の男。

    だが、放つ雰囲気は『人』では無く、限りなく魔に近い。

    その様な得体の知れない魔術師風の男が建物の影から現れ、クレイル達に拍手を。
    『良く気がついた』と言わんばかりに拍手を送り、それを見た全員は身構える。
    クレイルは剣を、勇は拳を、ファリルは杖を、エルリスは魔方陣を展開した。
    ……目の前の男が何かした瞬間に即座に攻撃に移れる様に、と。


    「いや、素晴らしい。気配を絶つ魔法を使用したのに気づくとは。」

    「……何者だ?何故、この街に魔物を放った?」

    「申し訳無いが仕事の守秘義務に引っかかるので答える事は出来ない。
     ……ただ、そうだな。気配を消した私に気づいた褒美に一つだけ。
     一つだけキーワードを喋ろう。メモするなり何なりすると良い。」


    そう言って男は一言呟いた。


    「『天使』―――かつて、魔科学の粋を集めて作られた人造兵器がここに居る。
     そんな事を言われたので調査の為、炙り出しの意味を込めて魔物を放った。
     ……おや、いかんいかん。どうも私は喋り出すと余計な事まで喋ってしまうな。」

    「天使――だと?」

    「そう、白き翼を携え、暴力的な魔力を以って如何なる物を排除する破壊の権化。
     古より伝えられる最強の人造兵器、コードネーム『セラフィム』」

    「馬鹿馬鹿しい……そんな夢物語が実在してたまるか。」

    「――――ところが、存在しているんだよ。君の『目の前に』」


    クレイルはその一言を聞いて目を見開くと―ニコニコした白装束の召喚師が居る。
    ……確かに、アースイーターや魔物達を突然、前触れも無く街中に召喚出来る程の
    魔力を持っているのも、目の前の男が言う『天使』であるならば理解できる。
    だが、目の前の男は伝承で伝えられる天使の様に白い翼は持っていない。
    なにより―――


    「アホかぁぁぁ!!!お前が天使等認めん!!天使って言うのは可愛い女の子
     じゃないと名乗る事を許されん!!野郎の天使等要らん!邪魔!不要!!
     天使を名乗って良いのはこう言う子の事を言うんだ!!覚えとけ!!」


    ……見事に話の腰、そして張り詰めた空気を勇が台無しに、そしてぶっ壊した。


    「……いきなり話の腰を折って、私の存在を否定しないで欲しいが?」

    「うっさいわ!お前は何も解ってない!天使ってのはここに居るエルリス嬢。
     そしてファリル嬢が名乗って初めて納得されるし、この二人こそ白い翼は
     良く似合う!!アンタは美形だが、野郎って時点で論外だ!」

    「……ファリル、エルリス、頼むからあの馬鹿を止めてくれ。」

    「ご、ごめんなさい。多分、無理……。」

    「うん……兄さん、私も止めれそうに無―――」


    論点がずれまくった低次元、低レベルの会話(?)を行っている最中、ファリルは
    自らを『天使』と名乗った男を見た瞬間、体は至って正常の筈――なのに、急に
    体が『ドクンッ』と脈打った様に全身が反応し、そして息苦しくなるのを感じた。
    全身から湧き出る冷や汗、急に力が抜けかけている脚、倒れかける体を杖で支えて
    必死にその場に立っているファリル、そんなファリルを見たエルリスは慌てて彼女
    の下へと向かい、体を支えた。


    「……おやおや、無駄足かと思ったら収穫があったか。
     中々どうして運が良い。」

    「――であるからしてお前は認めって、人の話を聞いて――うおぉぁおあッッ!?」


    冷や汗を流しているファリルを見た男は目の前で訳の解らん事をホザいている勇を
    魔法か何かでふっ飛ばした後、彼には眼もくれずにエルリスに体を支えてもらって
    いるファリルの所に向かおうと一歩、脚を踏み出した瞬間に――銀光が閃いた。
    男は咄嗟に身を引き、両手に防御用魔方陣を展開し、迫り来る斬撃―――。
    クレイルの攻撃を捌き、避け、受け止め、何とか無効化にしているが、その表情に
    余裕は無く、徐々に苛立っているかのような表情に変化していった。


    「……お前、ファリルに何をした?」


    クレイルは一言だけ男に聞こえる声で問い、そして大剣を高速で振るう。


    「別に。……私に反応したのは彼女の方で、私には非は無いが?」


    魔方陣で巧みに斬撃を受け止め、受け流しながら立ち回る男。

    クレイルの真っ向からの唐竹割り、一刀両断の一撃を耐え切った後、体勢を立て直す
    べく後方に下がり、今までのお返しに、と言わんばかりに両手に魔力を集中し始めた。
    魔法に疎い者でも『洒落にならない威力』の魔法が組み立てられているのだろう、彼の
    両手の中には膨大な、そして暴力的な魔力が収束され、紫電を撒き散らしている。


    「っ!……エルリス、ファリルを連れて離れられるか?」

    「え……で、でも!勇さんとクレイルさんを置いては―――」

    「良い!早く行け!!こいつは――ヤバイ!!勝てるかどうか解らん!!」


    大威力の魔法を撃たせまい、と男に向かって急速接近、そのまま大剣を振り下ろす。
    クレイルの強烈な一撃は並みのモンスターであれば一撃で両断する威力を秘める。
    しかし、その一撃は男の前に展開された――防御障壁によって阻まれ、攻撃は通ら
    ない。
    徐々に魔法が組み上げられ、濃密な魔力の塊となっていく中、クレイルは焦燥感を
    感じつつ、咆哮を上げながら男の身を守る防御障壁を破壊しようとしていた。
    そして――クレイルがもう一度、防御障壁に大剣を叩きつけようとした瞬間!


    「―――おんどりゃあああああああああああああ!!!!!」


    大爆音を撒き散らしながら吹っ飛んでいた勇が戦線復帰し、障壁に拳を叩き込んだ。
    すると――勇の鉄拳を受けた障壁にヒビが入り、入ったヒビは葉脈の如く広がる。
    ヒビの入った障壁を見たクレイルはすかさず大剣を叩きつけ、障壁をブチ壊した。


    「ッ!!ば、馬鹿な!!」


    驚愕する男の下に向かう二つの影、絶対的な殺意が込められた大剣を振るわんとする
    クレイルが、『ぶちのめす!』と言わんばかりに青筋をこめかみに貼り付けている勇
    が鉄拳を構え、そして二人同時にそれぞれの必殺の一撃を叩き込んだ。
    勇の一撃が収束された魔力ごと男を貫き、クレイルが放った斬撃は手痛いダメージを
    負わせ、空に男の血液が飛び散る。


    「ぐぅぅぅぅッッ!!!貴様等、調子に――」

    「乗ってんのは!」

    「お前の方だ!!」


    直後、勇とクレイルの二人による乱撃の暴風雨が降り注いだ。
    クレイルの大剣が上下左右斜めから襲い掛かり、真正面からは勇の拳が撃ちこまれる。
    二人の容赦ない攻撃が浴びせられている男は次々に手傷を負わされ、防御をする事すら
    許されない状況であり、その体からは徐々に鮮血が流れ出てきていた。


    「……駄目」

    「……ファリルちゃん!」

    「兄さん……勇さん……殺されてしまう……。」

    「え……ど、どう言う事?
     遠目でも解るけど……二人の方が有利じゃない?」


    遠くから二人を見守っていたエルリスはファリルの言っている事が理解できなかった。
    確かに敵も一流の力を持っているのだろう、しかし今攻め手に回っているのは二人。
    敵に傷を負わせているにも関わらず、ファリルは二人が『殺される』と言った。
    ……何故なのだろう、と思うよりも早くファリルがエルリスの手から離れ、よろめき
    ながら二人の下へと歩いて行こうとするのを見て、止めようと思ったが――


    (……えっ!?)


    一瞬、ファリルの背中に三対、計六枚の『漆黒の翼』が眼に見えた。
    もう一度眼をこすり、眼を凝らしてファリルの背中を見てみるが――翼は見えない。
    そして、エルリスは――ただ、呆然と杖に体を預けて歩くファリルを見ていた……。




    「……クレイル、あいつ……何で倒れねぇんだよ……ええい、畜生が……」

    「無駄口叩く暇があるなら……攻撃の手を緩めるな……魔法、使われるぞ…!」


    直後、二人を衝撃と熱風、爆風が襲い、吹き飛ばされた。
    クレイルは受身を取り、素早く立ち上がって大剣を構えなおす。
    勇は受身を取れずに地面へと叩きつけられたが、直ぐに起き上がった。
    ……だが、二人の状態は結構、というよりもかなり酷い状態である。
    ダメージ自体は大した事は無さそうだが、連戦、そして激しい動きを続けた事に
    よる疲労の蓄積が凄まじく、既に二人は肩で息をしている状況だった。
    対する男の方はと言うと――そんな彼らを嘲笑うかのように、傷ついた自分に
    回復魔法を瞬時に唱え、今まで負った傷を『全て』癒し、万全の状態へと戻る。


    「……ま、マジかよ……やっこさん、回復しやがったぞ……!」

    「ち……どうする?」

    「逃がしてくれそうにも無さそうだからな……命乞いしてみ―――」


    二人で相談していた所、勇が再び吹き飛ばされ、更に追撃として放ったのだろう。
    禍々しい黒く輝く魔力の刃が幾重にも倒れている勇に向けて放たれた。
    咄嗟にクレイルは銃撃で魔力の刃を撃ち落そうとするが、それよりも早く男がかざ
    した掌から魔力の塊が発射され、反応する事も出来ずに直撃してしまい、勇と同じ
    く吹っ飛び、地面に突っ伏してしまった。


    「遊びはここまでにしておこう。私も殴られ、斬られて怒っているのでね。
     ……しかし、生身の人間でここまで戦った事に敬意を評し、苦しまずに逝く
     事を許そう。」


    最早立ち上がる気力すらない二人に向けて魔法を放ち、その存在を抹消せんとする
    男は二人を一瞬で屠れるだけの威力を持った魔力を収束し、全身血まみれの二人に
    向かってその手に携えた完全な破壊、圧倒的な暴力を開放しようとしていた。
    ――そして男がクレイルと勇を始末しようとしている所をファリルは発見する。
    声にならない叫びを上げ、杖を放り、必死で走るファリル。
    そのファリルの叫びに耳を傾ける事も無く、眼をくれる事も無く、男は暴力を解放
    し、閃光が二人に迫った。



    ―――自分では二人を助ける事は出来ないのか?

    ―――自分は無力なのか?

    ―――助けたい

    ―――優しくて知り合って間もない人間の為に自分を省みずに助けに行った勇を

    ―――冷たい場所で一人ぼっちだった私を助けてくれた大好きな兄さんを



    『想い』が体中を支配した瞬間、光が周囲に溢れた―――



    「……?……なっ!!?」


    自分と勇を消し去れるだけの破壊の暴力が押し寄せてこない事にクレイルは疑問を
    感じ、眼を開くと――其処には三対の漆黒の翼を携えた……ファリルの姿があった。
    片手で圧倒的な魔力を易々と受け止めれるだけの防御魔法陣を展開し、もう片手に
    癒しの魔力を収束していた。
    ……何が起こっているんだ、と頭の中で思うが思考が付いていかない。
    それだけ、目の前で起こっている事が常識の範疇外であり、しかも何故妹が――。
    ファリルがあの様な翼を背に、そして強烈な攻撃魔法を受け止め切れているのか。


    「……く、くくく……『セラフィム』じゃなく、『ルシファー』だったとは!!
     ひゃははははッ!!!傑作だ!!!最強の人造兵器がこんな小娘だったなんて!!」

    「――――」

    「こうなれば、力ずくでもお前を連れて帰る!!そうすれば私も『あの方』に
     認められ、爵位を与えられるかもしれない!!」

    「――――」


    男は嬉々として、狂気に塗れた笑顔を浮かべながらファリル――『ルシファー』と
    呼んだ存在に次々と様々な攻撃魔法を放ち、投げかけ、死なない程度に痛めつけよ
    うとしていたのだが、その全てはルシファーが展開した魔方陣に阻まれる。


    「―――クラウストルム、モード・EXcaliburで起動。
     我が手元に帰還せよ……!」


    ファリルは左手に収束した癒しの魔力を広域に放射し、気絶している勇とクレイル
    を癒した後、その手に――ファリルが放った白銀の杖『クラウストルム』が飛来し
    て来て、左手に収まると……事もあろうに杖は変形を始めたのだ。
    淡く輝く蒼銀の輝きと共に槍の様な先端が展開し、展開した場所から短いブレード
    状の物が出てきたかと思えば、直後に蒼銀色の透明な刀身が生成された!


    「なっ!?何だよ……何だよソレはぁぁぁぁぁッッッ!!!」

    「―――我が唯一にして絶対の兵装……吾ら天使と同じく、魔科学の粋を集めて
     産み落とされたこの世ならざる武器『魔道兵器』の最終ナンバー。
     それが我が手にある『聖魔の十字架(クラウストルム)』だ。」


    優雅にふわり、と漆黒の翼をなびかせ、両手で蒼銀の刀身を展開しているクラウス
    トルムを構えたルシファーは先程とは一転して恐怖の形相を浮かべながら魔法を闇
    雲に乱射している男の元へと飛翔し、クレイルを軽く超える速度で大剣を振るう。
    蒼銀色の剣閃が閃き、漆黒の翼が舞い、黒き羽が散る中でルシファーは男を斬り続
    ける。……まるで、大切な人を傷つけられたのを激昂している様に。


    「―――大切な者達を傷つけた事、後悔しろ!」


    斬ッ!!と男を上空に向かって切り上げた後、ルシファーは叫ぶ!


    「魔道砲回路接続、ガイドレール展開、エネルギー収束バレルオープン。
     マナ充填率120%、各機関異常無し、周囲への影響――無し!」


    大剣の様な形状を取っていたクラウストルムは大砲へと姿を代え、その砲口に
    魔力が、男が放った圧倒的暴力を『軽く凌駕する程の』魔力が集中し始めた。
    周囲に風が巻き起こり、砲口から凄まじいスパークが荒れ狂い、周囲のブロック
    を破壊して行く。


    「―――バニシングレイ、発射!!!」


    直後、大爆音と共に大地が激しく振動した。
    クラウストルムから放たれた閃光は男を苦も無く消し飛ばし、強烈な破壊の閃光は
    そのまま大気へと霧散し、何事も無かったかのように――消えうせた。
    敵が消えた事を認識したルシファーはクラウストルムを通常の杖の形態に戻した。
    そしてそのまま地面に突っ伏しているクレイルの元へと向かうと……。


    「……ファリル……なのか?」

    「――ファリル、と言うのか。この体の持ち主の名前は。」

    「!」

    「警戒しなくても良い。……この子の大切な人達を傷つけよう何て思わない。」


    ルシファーは優しく微笑み、クレイルを抱き起こし、ついでに大剣も彼に手渡した。


    「……ファリルは?」

    「今は意識共々眠っている。だから――我が出てきた。
     ……純粋で心地よい想いだったな、この体――いや、ファリルの想いは。」

    「?」


    訝しげな表情を浮かべるクレイルに向かって子悪魔っぽい、可愛らしい笑顔を浮かべ
    るとそのまま思いっきり抱きつき、思いっきりうろたえるクレイルの顔を引っつかみ
    引き寄せると……。


    「んぐぅっ!?」


    そのまま――12歳(?)な女の子にキスされました。まる。


    「……ぷぁ……って、な、なななな………!!!?」

    「……これから先、この子に色々な災厄が訪れるだろう。
     だから――この子を守ってやって欲しい。」

    「そ、それはどう言う事だよ……。」

    「……我の口からは言えない。悟れ、にぶちん。」


    ぼかちん、とクレイルの頭を殴った後、再び抱きつくルシファー。
    そのまま頭を胸に押し付け、眼を閉じると――背中の黒い翼が透け始めてきた。
    クレイルは透け始めた翼を見て、ルシファーに何か起きたのではないか、と思って
    眼を向けると―――。


    「疲れたから眠るぞ。……では、またな。幸せ者。」

    「こ、こら!勝手に寝るな!!おい、ファリルはどうなるんだよ!?」

    「……すぅ……すぅ……。」

    「だぁッ!!くそ……今日は散々な日だな、畜生が。」


    兄の胸の中で心地よさそうに寝息を立てているファリルを見たクレイルは苦笑し
    ながら、彼女の金色の髪を梳くようにして撫でてやりながら――抱きしめた。













    <何だこのグダグダっぷりは!?等と思いつつ後書き>
     ファリル天使化は前々から使おうと思ってましたが、出す時を思いっきり
    間違えた様な気がしますし、何か文章に纏まりが無い様な気もします。
    さて、今回新たに増えた――と言うか、目覚めた『ルシファー』様について
    は後々に語って行こうと思っています。ここで言うとネタばれですので。
    尚、彼女の性格は――ファリルが控えめとするならば、ルシファー様はイケ
    イケな感じであり、押しが強く、でも甲斐甲斐しく尽くすタイプです。(マテ

    さて、次回ですが……事後処理と、出せなかった五人目に出て貰います。
    それでは、次回の後書きで―――




    <おまけ>

    「―――大切な者達を傷つけた事、後悔しろ!」


    斬ッ!!と男を上空に向かって切り上げた後、ルシファーは叫ぶ!


    「ディス・レヴ、オーバードライブ!!」


    大剣の様な形状を取っていたクラウストルムは大砲へと姿を代え、その砲口に
    魔力が、男が放った圧倒的暴力を『軽く凌駕する程の』魔力が集中し始めた。
    周囲に風が巻き起こり、砲口から凄まじいスパークが荒れ狂い、周囲のブロック
    を破壊して行く。


    「―――回れ、インフィニティ・シリンダー!!」


    砲口にチャージされたエネルギーの周囲に魔方陣が展開され、そして――。
    ルシファーに重なる様に青い長髪の男、不敵な笑みを浮かべた男の姿が重なる。


    「テトラクテュス・グラマトン―――!」


    魔方陣が一際強く輝き、砲口のエネルギーが解放の時を今か、今かと待っていた。
    男の魂と融合し、長い金髪は蒼に変わり、その瞳に虚空を宿したルシファーは
    トリガーを引いた!!


    「アイン・ソフ・オウル!デッド・エンド・シュート!!!!」



    ……すみません、こんな頭の悪いネタが浮かんだので(何
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Nomal 傭兵の / ロボットもファンタジーも愛する者 (06/11/19(Sun) 15:56) #525
Nomal ハンターのお仕事 <追記> / ロボットもファンタジーも愛する者 (06/11/19(Sun) 16:00) #526
Nomal ハンターのお仕事第一話 / ロボットもファンタジーも愛する者 (06/11/21(Tue) 08:32) #532
  └Nomal ハンターのお仕事第二話 / ロボットもファンタジーも愛する者 (06/11/22(Wed) 12:12) #534
    └Nomal 作者自身が暴走した三話 / ロボットもファンタジーも愛する者 (06/11/24(Fri) 16:22) #536 ←Now
      └Nomal 第四話です。 / ロボットもファンタジーも愛する者 (06/11/27(Mon) 17:34) #543
        └Nomal 少々暴走している5話 / ロボットもファンタジーも愛する者 (06/12/02(Sat) 20:15) #545
          └Nomal 大暴走六話 / ロボットもファンタジーも愛する者 (06/12/05(Tue) 11:47) #548

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