Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■548 / 6階層)  大暴走六話
□投稿者/ ロボットもファンタジーも愛する者 -(2006/12/05(Tue) 11:47:22)
    手に白銀の輝きを放つ細身の戦斧を握るのはファリル。
    その前には十字架を模した槍の如し杖を構えたセリス。
    二人は一切動かず、そして僅かな隙を探そうと精神を
    集中させて――先にファリルが行動を起し、跳躍。
    セリスに迫ると手にした白銀の戦斧、クラウストルム
    が変化したソレを袈裟斬りの形で振りぬいた。
    銀の閃光、切断の力を十二分秘めたその一撃をセリス
    はエターナ・クロイツで打ち払い、カウンターで石突
    を突き出すが――ファリルは身を捻って回避する。


    「……お宅の妹さん、本当に12歳?」

    「学校では一番強いと通知表にはあったな。」


    セリスの突きを避けたファリルは捻った身体を戻しな
    がら遠心力を利用し、殴りつける様な形で戦斧の刃を
    叩きつけ、怯ませるなり吹き飛ばそうとする。
    横一閃に振るわれたクラウストルムの刃に対し、エタ
    ーナ・クロイツの刃を突き出して止めると、下に払う。
    『きゃっ!』と言う悲鳴と共に体勢を崩したファリル
    に対し、発動時間の短い魔法を放とうとするが――
    出来ない、ファリルが無理な体勢だがクラウストルム
    を咄嗟に突き出して詠唱を妨害、互いに体勢を整える
    ために一旦距離を取る。


    「何で俺の周りには人外魔境が揃うかねぇ。」

    「そのトップを突っ走るお前が何を言う。」

    「馬鹿言え。俺は人外魔境じゃない。超越者だ。」

    「脳の醗酵具合がな。」


    ファリルは左手を振るい、自身の周囲に四本の魔力剣。
    サンダーソードと言う魔法を展開し、セリス目掛けて
    発射した。……一斉にではなく、時間を置いて。
    一本目――エターナ・クロイツで弾かれる。
    二本目――セリスが回避行動を行って無効化。
    三本目――何とか回避できたが、体勢を崩した。
    四本目――迫ってきた最後の一本に魔法を当てて相殺。


    「いやー、凄い動きだわな。」

    「魔導師に全然見えん。」


    体勢を立て直したセリスは――攻撃に出た。
    上下左右からエターナ・クロイツの刃を突き出す。
    だがファリルはそれに応戦して戦斧で迎え撃つ。
    白銀の閃光と金色の閃光がぶつあり合い、火花が散った。


    「ところで俺等は何してるんだ?」

    「気にするな。俺は気にしない。」


    目の前で得物をガンガンぶつけて戦う魔法戦士二人を見て
    勇とクレイルは湯飲みに注がれた温い緑茶を飲んだ。





    ハンターのお仕事
    第六話「散財は人間に備わる必要悪です」





    ―――数分後


    「ん〜……細身の戦斧になったのは良いけど、ファリルちゃん
     の今の腕力だと、その――変化したっぽいクラウストルムに
     振られちゃうんだよね。」

    「……理解――してます。」

    「うん。でも、太刀筋自体は鋭いし、ポールウェポンの戦い方
     の基本も出来てるから、後は得物に振られない筋力をつけれ
     ば振られずに、クラウストルムを振り切れるね。」


    模擬戦――と呼ぶには激しすぎる戦いが終わった後、セリスは
    今現在のファリルの問題点を指摘し、得物に振られない腕力を
    身に付けることを言い渡した。
    ファリルの方もセリスの助言、苦言を真摯に受け止めて心に刻
    み込み、今後の対応を頭の中で組み立て、自己鍛錬方法を作り
    上げる。


    「後はそうだね。ファリルちゃん、高速の近接攻撃型だから…。
     勇、街の防具屋に行ってファリルちゃんの装備、見繕って!」

    「あいきた。」

    「ただし、変な装備とか買ってきたらシバくからね。」

    「うわ、俺って信用無ぇなぁ。あーあ、俺のガラス細工の――」

    「勇はそんな繊細な心を持ってないから安心して。」


    セリスの問答無用の集中砲火を食らった勇は腹いせに近くに落ち
    ていた棒切れを拾ってセリスに投げつけ、そして棒切れが直撃し
    たセリスはブチ切れてエターナ・クロイツを振り回し、魔法をド
    カドカ撃ちながら勇を追い回す。
    逃げ回る勇、キレて追い回すセリス、オロオロするファリル。
    三者三様の対応を見たクレイルはお茶を飲みながら一言。


    「平和な連中だ。」


    ズズズ、とお茶を飲み干した瞬間に勇がセリスの魔法で吹っ飛んだ。


    *・*・*


    ドタバタの騒動が収まった後、一向は防具屋へと出向き――
    何と言うか、ファリルにとっかえひっかえ防具やら服を着せ替える。
    この作業には何故かエルリスも同行し、セリスと一緒にアレコレ言い
    ながら服を着せて――防具を選ぶ、と言う名目で遊んでいた。


    「姉さん、こっちの服もファリルちゃんに似合うと思わない?」

    「えー……私、こっちだと思うな。フリルとかレースがついてるし。」

    「あー……確かに。クレイル、こう言う服好きそうだもんね。
     ほら、メイド服とか――いたぁっ!?く、クレイル!?
     マネキン投げつけるなんてどう言う了見なんだよっ!!」

    「気にするな。俺は気にしない。」

    「ボクが気にするのッ!!」


    ……そんな喧騒の中、ファリルはセリスの言葉を反芻して…防具屋な
    のに何故か飾られ、しかもガラス張りのショーケースに封印されてい
    るメイド服をじ〜っと見つめ、脳内で極彩色の妄想を膨らませ、顔を
    真っ赤にする。
    きっと彼女の頭の中では大好きな兄に『あーんな事』『こーんな事』
    をされつつも、優しく扱ってくれる事を想像しているのだろう。


    「――高機動近接格闘型魔法戦士のコンセプトで行くなればやはり
     防御力を少々落とす事になるが機動性と運動性を重視して動き易
     くそれでいて最低限度の防御力を両立させた装備になるから基本
     的には金属性防具の多様を避けて皮革や布で作られた防具で纏め
     るしかないしファリル嬢の体力腕力等も考慮して―――」


    三者三様で騒いでいる中、勇はトランスしつつファリルに似合う。
    それでいて機能性と防御力を両立出来る様な防具を選んでいく。
    どうせ資金はクレイル持ちだと言う事もあり、遠慮なく高額だが
    性能や防御力の高い物を『徹底的に』買い物籠に放り込む。
    ……一通りの防具を籠に放り込んだ後、トランス状態の勇は妄想
    モード全開中のファリルに歩み寄り、肩に手を置く。


    「わひゃっ!?」

    「ぬぉっ!?」


    いきなり『ビクッ!』と体をこわばらせ、素っ頓狂な声を上げた
    ファリルに勇も驚き、トランスモードは強制解除、通常モードに
    移行すると――咳払いして、彼女に買い物籠を手渡した。


    「あ……あの、これは……?」

    「ファリル嬢に似合う様な、それでいて防御力と機動性を考えて
     防具を選んでみた。一度着てみて――何か問題、不具合がある
     なら言ってくれ。選び直すから。」

    「え――でも、折角選んでくれたのに――」

    「気にするでない。俺も十分楽しんでるし……
     あっちで騒ぐ水色姉妹、妹そっちのけで防具見ている兄が
     何もしないから俺位は真面目にお仕事をしよう思うてね。」

    「あ――ありがとうございます。」


    微笑みながら試着室に入っていくファリルを見た勇はマジマジと
    ロングコートを眺めているクレイルに蹴りを一発叩き込み、不機
    嫌モードまっしぐらで振り向いたクレイルの目先に指を突き出す。
    何か勇が放つ雰囲気に呑まれたクレイルは訝しげな表情を浮かべ
    て、困惑しながら言葉を発した。


    「な、なんだよ……」

    「このお馬鹿!こう言う時ぐらい、お前がファリル嬢の物を
     選ばなくてどーするよ!?ファリル嬢もお前に選んで欲しい
     ってオーラを出してたの解――る訳無いよなぁ。」

    「???」

    「スマン、俺が悪かった。様はお前がファリル嬢の防具を
     選んでやるべきだって訳?OK?どぅーゆーあんだーすたん?」


    『ゴゴゴゴゴゴゴゴ』やら『ドドドドドドドド』と言う謎の効果音
    を背後に浮かべる勇の雰囲気に圧倒されたクレイルは頷き、ファリ
    ルに似合う防具を選び始め――そして『良し』と呟き、頑丈そうな
    鎧に手をかけた瞬間、後ろで監督していた勇のハリセンが閃く。


    「……お前……」

    「アホか己は!!ファリル嬢がプレートメイルなぞ着れるかぁ!」

    「いや、しかし防御力を補うという観点では――」

    「鎧の重さでファリル嬢が潰れるわ!」

    「――む。」


    言われてみればそうか、等とホザいたクレイルの脳天に素敵パワー
    を宿らせたハリセンを振り下ろし、素晴らしい音が店内に響いた。


    ―――数十分後


    セリスとエルリスの籠の中にはファリルの防具ではなく――服。
    それも極大量に放り込まれており、クレイルは二人に反論するも
    女性二人のマシンガントークの前に屈してしまい、渋々ながら極
    大量の服を買う羽目になってしまった。……しかも、値段が高い。
    勇に珍しく助けを求めようとしたが、彼は既にいない。
    代わりにクレイルの近くにメッセージカードが刺さっていた。

    『まだ見ぬ何処かへ旅立ってくる by夢追い人』

    等と描かれたそれを問答無用で握りつぶし、ゴミ箱に投げ捨てる。
    肝心なときに役に立たない奴だ、等と思っていた所で――
    開かずの間と化していた試着室のカーテンが開き、防具を身に付け
    たファリルが出てきた。

    ――両手にはミスリル銀のグローブ

    ――所々鎧の様なパーツがつけられたジャケットにスカートを身に付け

    ――最後に柔らかくたなびくマントをつけた少女。

    例えるならば戦乙女、とでも言おうか?
    顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしながらファリルは出てきた。


    「―――ふふふ、やはり俺の選定眼に狂いなし。
     『俺様のインサイトに見抜けない物は無い!』ってか?」


    何時の間に帰って来やがった、夢追い人。


    「……ど、どうかな……兄さん?」


    もじもじしながら上目遣いで兄に、クレイルに感想を聞くファリル。
    ……この手の感想が一番困る、と思い周囲に助けを求めるが……。

    『俺より強い奴に会いに行く by勇』

    『本当の自分を探しに行く  byセリス』

    『夕飯の支度の為に戻る   byエルリス』

    そんなカードが刺さっており、本人達は既にトンズラかましている。
    ……あいつら今度会ったら殴ってやる。しこたま殴ってやる。
    クレイルは心の中で決定し、不安げに見上げるファリルの頭に手を
    置くと――柄でもないが、と思いながら感想を口にした。


    「――似合っているし、可愛いぞ」

    「――!!、兄さんッッ!!」

    「うおぁあぁぁッッ!?」


    満面の笑顔を浮かべたファリルに抱きつかれ、思い切り後ろに倒れか
    けるが何とか踏み止まり、ファリルを抱きとめるクレイル。
    店内に居た客や店員が彼ら二人に笑顔を向けると共に『何故か』拍手
    を送られ、クレイルは困惑し、ファリルは構わずに甘えている。

    ――そんな状況を遠眼で見つめる三つの視線……。


    「うんうん、これで一歩前進かな?」

    「でも、セリス……おせっかいも焼きすぎると逆効果だよ?」

    「解ってる解ってる♪ボクはそんな愚を冒すと思う?」

    「間違いなくやりそ――嘘ですごめんなさい。」


    幸せそうに兄の胸で甘えているファリルを見て満足したのか、水色と黒
    は笑顔で帰宅した―――。






    <早くも給料を使い切りそうでヒヤヒヤしている後書き>
     今回のテーマはファリルとクレイルですが、仲が一向に進展しないので
    強制的に一歩進んだ関係にしてみました。……ネタが暴走しているのは
    スルーの方向でお願いします。
    さて、ファリルのクラウストルムが進化した理由は次回で語ろうと思います。
    ……そこ、バル○ィッシュ・ア○ルトとか言うな、フェイ○とか言うな(ぁ
    そんなこんなでもう六話、SSを投稿し始め、皆様からご感想を頂いて
    充実しています。
    作者が暴走したSSですが、これからもよろしくお願いします。



    <おまけ>
    友人『……バルディッシュ?』

    私『言うな。』

    友人『ハマったんだな?』

    私『………』

    友人『まぁね、フェ○トは『守ってあげたいオーラ』出してるし
       大人しいし、おっとりだし、少し気弱だし、でも高機動格闘系。
       得物は巨大な剣に変形するし、振り回す。
       ……完全にお前のツボを突きまくってるよな?』

    私『あ、あんたって人はぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!』


    ―――力が無いのが悔しかった……(謎
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