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■170 / 親階層)  蒼天の始まり第十話
□投稿者/ マーク -(2005/03/31(Thu) 19:00:05)
    『赤き竜』


    王国の東に位置する都市、フォルス。
    かの王国の英雄の1人が滞在している街。
    「ここにいるんだよね。ユナ・アレイヤが」
    「そのはずよ。ただ、正確な場所が分からないのはイタイわね」
    それじゃ意味ないじゃない。
    これで、入れ違いにでもなったら本気でやってられない。
    「まあ、向こうも私が来てるのを分かってるはずだし、数日も立てば接触してくるわ」
    「じゃあ、おとなしくしてた方が良さそうね」
    「そういうこと。だから、さっさと宿を取りましょ。
    また倒れられたら厄介だわ」
    「当分は大丈夫よ。というかあの時倒れたのってミコトの修行の所為じゃない?」
    「あっ!!それはあるかも!!」
    「・・・さっさと休むわよ」
    「あっ、逃げた!!」





    深夜、虫の知らせというやつか、何かが起きる予感を感じとっていた。
    外はかなり寝静まっている。嵐の前の静けさというやつか。
    普段の動きやすい服に着替えて窓際に立つと、クロアがやってきた。
    「やっぱり気付いてたわね」
    「ああ、こりゃなんか起きるな」
    「エルたちは?」
    「ぐっすり寝てる」
    「じゃあ」

    ―グゥォォォーーーーーーーーー!!

    遠くから聞こえてきた咆哮。慌てて窓を開け、外を見る。
    かなり距離はあるが、目を強化すれば見える範囲だ。
    見えたのは少し離れたところに立つ一軒の燃える屋敷と、
    そこからこちらへと向かう黒い影。
    そして、金の獣に乗ってそれから逃げるように飛ぶ赤い髪の少女。
    ああ、やっぱり騒動に巻き込まれたか。
    ただ、これはまた厄介な相手だ。
    この世界最高の種族と一戦交じ合わせなければならないなんて。










    私の中にいる精霊が警鐘を鳴らし、私は飛び起きた。
    一体何が?
    ミコトがいつもの服装でクロアと共に窓の外を眺めている。
    つられて、私も窓を見ると遠くにうっすらと光が見える。
    良く見えないが、おそらく火事だ。
    「・・・ニール」
    「やっぱり、ユナか」
    「フィーアも一緒よ。エルリスはセリスと一緒に待ってて!!」
    そういって、獣の姿に戻ったクロアと共に窓から飛び降りる。
    「ちょっと、ミコト!?」
    わけも分からず、とにかく何が起きてるのかだけでも知りたいが、
    ミコトは私の制止など気にせず、屋根を伝って真っ直ぐ火事の起きた家のほうへと向かう。
    追いかけようかと一瞬思ったが、まだ同じ部屋で寝ている妹のことを思い出す。
    こんなときばかりはセリスの寝覚めの悪さに少々、怒りたくなった。





    後ろから迫る黒い巨体は大きな体をものともせず、こちらにぴったりついてくる。
    今のこれは破壊衝動の塊だ。
    おそらく、私よりも街そのもの方が関心が強いだろう。
    今は2つの狙いがそろっているから素直に追って来てるが
    下手に街から離れると、こいつの関心は完全に街へと移ってしまうかもしれない。
    こいつは昔から言うことを聞かせるのが一苦労だった。
    「フィーア、もっと高く飛んで!!」
    「けど、空はアイツの方が有利よ?」
    「・・・わかってる。けど、せめて人気のいない方に」
    「努力するわ」
    黄金の毛に包まれ、白き翼を持った獣に乗りながら
    後ろから迫る巨体に体をむけ、銃の引き金を絞る。
    ハッキリ言って、こんなのが効く筈がない。
    この世界の最高の種族『竜』
    それを相手にこんなものは子供だましだ。
    だが、大きな術を放てば周りの家に被害が出てしまう。
    ちょっと前に希代の結界士と共闘した時は結界のおかげで被害は出なかったが、
    まともに放ったら間違いなくこの周囲の家は全焼する。
    火と言うのは意外と厄介なものなのだ。
    「ユナ!!こうなったら、私が動きを止めるから切り札でやっちゃいなさい!!」
    切り札・・・多分あれのことだろう。けど
    「無理。弾が無い」
    「なっ!!ちょっと嘘でしょ!?」
    「本当。ミコトにも頼んでるけど、見つかってないみたい」
    「信じられない!!」
    でも、事実だ。
    ―グォォォーーーーーーーー!!
    黒竜が吼える。不味い!!
    「フィーア!!上に!!」
    「クッ!!」
    黒竜の口にかなりの熱量の炎が収束する。
    私の魔術と同じレベルの炎だ。
    アレを街に撃たせるわけにはいかない。
    上空へと上がり、飛んでくる炎の塊を避ける。
    だが、真下にいる黒竜の口には再び炎が集まっている。
    このままではいずれ避けられなくなる。
    どうする!?
    「ハア!!」
    下から私たちを狙う黒竜に何者かが飛び掛る。
    振るわれた刃は最高の種族たる竜の表皮を切り裂き、
    怒り狂う黒竜は炎の収束を止める。
    竜がその爪を振り回し、斬りかかってきた者を切り裂かんとする。
    「クッ、まだよ!!奥義『光牙』」
    が、それを後ろへと下がり軽々と避け、目にも止まらぬ速さで剣が抜かれた。
    抜かれた刃は届くはずないの竜の体を切り裂く。
    が、先ほどと同じく、傷口は一瞬のうちに埋まった。
    普通の竜ならこうはならないだろうが、これは特別だ。
    こいつの体は実際の肉体ではなく、実体化したエーテル。
    使い魔のようなものだ。
    だから、一瞬で再生できないほどのダメージを与えるか、
    再生する魔力がつきるまで、攻撃するしかない。
    「厄介な体ね、サラ!!」
    その声と共に、何よりも信用する仲間が銃弾の入った袋を渡してくる。
    その意図を察し、シリウスとクロア、フィーアが黒竜の動きを止めている間に
    素早く両手の銃にセイクリッドを装填。
    銃口を竜へと向け、狙いを絞る。
    三人もこちらの準備が終わったのを知り、私と竜の間から離れる。
    「いけ!!白竜憑依『バーストフレア』!!」
    圧倒的な魔力を宿し、銃弾は白き光となって黒竜を蹂躙する。
    だが、まだ!!
    「落ちろ!!次弾憑依『バーストフレア』」
    同じようにもう一方の銃から放たれた2発目の銃弾が黒竜を襲い、
    その身を完全に吹き飛ばした。
    そして、自分の元に返ってくるのを確認し一息つく。
    さすがに2発連続はこの状態ではかなりキツイ。
    しかも、2回とも片手で撃ったから、数日はうまく使えないだろう。
    まあ、こっちについては動く必要も無いだろうからあまり気にしない。
    「ちょっと!!自分の使い魔くらい管理しなさいよ!!」
    「ゴメン、ちょっともう、駄目・・・」
    「あっ、こら、サラ!?」
    そうして、私は意識を手放した。





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