Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■174 / 3階層)  蒼天の始まり第十二話A
□投稿者/ マーク -(2005/04/01(Fri) 21:40:20)
    『銀の月』


    「なんで、竜が・・・」
    「とりあえず、様子を見るしか」
    と動揺している間に街の方角から来た竜がユナの使い魔に襲い掛かる。
    竜の口から炎が溢れ、灼熱の炎弾が使い魔に降りかかる。
    二ールと呼ばれた黒き竜の使い魔は巨大な翼で炎を防ぐが
    翼は見るも無残な姿になった。
    だが、すぐさまユナの魔力によって翼は再構成され、元に戻る。
    しかし、これでハッキリした。あの竜は敵である。
    竜が使い魔たちを押さえてる間に騎士団が谷へと向かってくる。
    「クロア、エルリス!!」
    「やっと、出番か!!」
    「任せて!!」
    「二人とも頑張って!!」
    ここから先は通させるもんか!!
    剣を強く握り、魔力を練り上げこちらに向かってくる騎士に向けて、
    真横に剣を振るう。
    練り上げた魔力は巨大な幾つもの氷となり騎士たちに直撃した。
    その隙に、クロアは騎士たちの元に飛び込み1人ずつ殴り飛ばす。
    あの竜が王国の切り札なのだろう。
    アレが何かは知らない。が、谷へ向かわせるわけにはいかない。




    かなりの数の騎士が谷に向かって進んで来る。
    それらを前に、エルリスは剣を両手に持ち迎え撃つ。
    囲まれぬよう気をつけながら、周囲に気を配り騎士たちを倒していく。
    全部は無理でも、できる限り減らしてユナたちの苦労を減らさなくては。
    騎士団の力は高く、数も多い。
    けれど、ミコトの特訓のおかげでエルリスもまた複数の敵を一度に相手に
    出来るようにまで成長していた。
    アノ特訓に比べればこの程度どうってことなく、そうそうへばったりもしない。

    「ハアアァ!!」
    周りにいた騎士の内、最後の1人が倒れたのを確認し呼吸を整える。
    騎士のほとんどは戦場を縦横無尽に駆け回りながら1人ずつ行動不能に
    追い込むクロアに対応している。
    既に何人かの者たちは抜かれたしまったがそちらはユナたちが既に倒した。
    そして、悩みの種である上空で戦うそれらを見る。
    使い魔は今だ健在だが、ユナの魔力がどれほど残っているかは分からない。
    対する竜は1匹も減っていない。
    ―ああ、また。
    竜の炎が今度は白き竜の使い魔アルに放たれる。
    ユナたちを守るためであろう。アルその巨大な翼を広げ、炎を正面から受け止める。
    竜の炎を受け止めたアルの体は瞬時に修復され、
    竜にその丸太の様な太い腕を振るう。
    だが、その腕も爪も竜には効かなかった。
    距離を開き、次は炎を吐く、が竜はその炎を意に介さず、
    炎の中を進んでいき鋭利な爪を振るう。
    先ほどからこの調子だ。
    使い魔の攻撃は一切効かず、一方的な戦いだった。
    だが、竜がアルの爪を受けたとき何かが落ちてきた。
    慌てて落ちてきたナニカを拾う。
    「これ・・・金属?」
    何で竜の体からこんなものがしかもこれって・・・
    「おね〜ちゃ〜ん、どうしたの〜?」
    この金属のことを報告したほうがいいと思うけど、
    クロア1人で大丈夫だろうか?
    ・・・まあ、クロアなら大丈夫だろう。



    「ちょっと、何でこっちに来るの?」
    「ちょっと、気になるものを発見したんだけど」
    「なになに?」
    「これ」
    そういって、先ほど拾った金属を取り出す。
    「これってミスリル!?
    こんなものどこで?」
    「竜から落ちてきた」
    なぜ、竜の体にこんなものがあるかは知らないが、
    なにか攻略の糸口になるかもしれない。
    「コイツはまさか〜」
    「知ってるの、マオ?」
    「う〜ん、この竜ってテクノスなんじゃないか〜」
    「テクノス?」
    「テクノス。
    生物に機械を埋め込み、その体の一部の代行させたりして動かされる
    機械仕掛け生き物のことよ」
    「まさか・・・」
    「謎は解けた。炎はオリハルコンによって遮られ、爪はミスリルの体に
    止められてたってことね。
    なるほどこれなら確かに竜には効果的かもしれないし、
    これ以上いい人形はない。
    けど竜に対するこれ以上の冒涜もまたないわ」
    つまり、あの時あったゴーレムと同じ感じか。
    もっとも、竜の体を使ってるからその力は比べ物にならないが。
    「どうするの?」
    「これがテクノスなら生体部分が有るはずだからそこを狙う。
    けど、私の魔術ではそんな細かいのは狙えないからクロアの出番。
    使い魔でテクノスを地上まで追い込むからクロアの『爆弾』で落とす。
    エルリスはクロアにそう伝えて」
    「わっ、分かった」








    「ウオラァッ!!」
    「ただいま」
    「おそいぞ、どこ行ってたんだ!!」
    クロアが相手をしていた騎士たちもだいぶ数が減っているし、
    戦いは最初よりもずっと楽になった。
    けど、騎士団を全て倒しても、あのテクノスの竜をどうにかしなければ
    こちらの負けである。
    「それより、あの竜の正体が分かったわ。
    テクノスって言う機械の竜らしいの。
    で、ユナが竜を地上まで誘導するからクロアは『爆弾』を竜に仕掛けてって」
    「了解。それじゃあ、それまでこいつらの相手でもしておくか」
    「って、そんな余裕はないみたい」
    「げっ!?」
    そうこう言っている間に竜と使い魔が直ぐ近くまで来ていた。
    アルが機械竜に向け、腕を振り上げ竜を叩き落す。
    「エルここは頼む!!」
    クロアが崖を蹴って大きく飛び上がり、落ちてくる竜へと向かう。
    しかし、地上へと落ちてくる竜はその翼をはためかせ高度を維持する。
    ―届け!!
    無常にも、竜の減速が速かったのかクロアは届かず、再び地面に引っ張られる。
    だが―
    「肩を借りるぞ」
    「はっ!?」
    真横の崖から飛ぶ降りて地面へと落ちていくクロアの頭を踏み台にし
    何者かが竜に飛びかかる。
    「ハアァァッ!!」
    振るわれた剣は竜の首を斬りおとし、首を失った竜は力なく地面へと落ちていく。
    そして、たった今首を絶ち斬った竜の体をクッションにして減速、着地する。
    その人物は少女だった。
    銀の髪、白い外套、幼さの残る顔立ちと小柄な体。
    そして手に握られた、その身長に不釣合いなずっしりとした剣。
    「イッツ〜!!」
    「すまないなクロア。大丈夫か?」
    「いてて。いや、これぐらいどうってことないさ。
    久しぶりだな、アルテ」
    「なっ!?」
    この少女が銀の月アルテ!?
    どう見ても私より年下にしか見えない。
    「なぜだ!!何故、貴様がここにいる!?
    王国第三騎士隊隊長シルヴィス・エアハート!!」
    と、今まで全く口を開かなかった騎士のリーダー格と思わしきものが
    怒りと焦りを露にし、叫ぶ。
    「なに?」
    「シルヴィス?しかも騎士隊長だって?」
    「・・・そうか、あのときの男か。
    王が犯罪者を私兵として雇っていると言うのは本当だったみたいだね」
    「ああ、くそ!!どうなってやがる!?」
    「説明は後だ。サラは?」
    「向こうで結界を張ってる」
    「そうか。ではコレを渡してきてくれ」
    そういって、アーカイバから大きなケースを取り出し、
    クロアに渡す。
    「なんだコレ?」
    「サラへは預かり物さ。
    この竜はテクノスみたいだが、ちょうど良い。
    さあ、行くよ!!」
    「ちょっと、待ちやがれ!!」
    ああ、もう!!どうなってるのよ。
    とりあえず、今は目の前のことに集中するしかない。





    「あれってアルテじゃない!!」
    「アルテって銀の月の?」
    「うん。この事件の原因が私だってことには気付いてたみたい。
    ・・・どうせならバルムンクの方が都合は良かったけど
    この際、贅沢は言ってられないか」
    「お〜い、ユナ〜〜」
    「今度はアイツ?」
    そういって、巨大なケースを抱えながらクロアがユナたちの元に行く。
    「なに?これ」
    「預かり物だってさ」
    「預かり物?」





    「渡してきたぞ。
    で、アルテ。こいつらのこと知ってるのか」
    戻ってきたクロアはアルテと共に残り少なくなった騎士団の攻撃をいなしながら、
    話しあっていた。無論エルリスにはそんな話を聞いてる余裕はない。
    「ああ。私は騎士団に所属しているのだが、お前たちと会ったときとある事情で
    騎士団から出奔していた。
    魔王との戦いが終わった後は騎士団に復帰したのだが、
    こいつらは私が復帰して初めて受け持った仕事で捕まえた者たちだった筈。
    確か、当時のアイゼンブルグの最新技術の成果と保管されていたあるものを
    奪っていった武装集団、ウルカヌス。
    そしてそのリーダー、アストラス・バーニッヒだったかな」
    「なるほどな。テクノスもこいつらの差し金か?」
    「まだ、分からないけどね。っとさすがに手馴れているな。
    もう、準備は出来たのか」
    そういって、空を見上げると一匹の竜が地に向かって落ちてきた。
    見れば竜の体には三つほどの風穴が開いている。
    「形勢逆転だな」




    「すご〜い!!」
    隣からかけられる声を無視し、ユナは弾を装填する。
    両手でやっと支えられる巨大な鉄塊。
    昔、ユナが壊してしまった愛用の銃の1つ。
    電磁銃、サンダーボルトである。
    銃身に雷のE・Cを組み込み、銃弾を電磁力で加速させ、発射する。
    銃弾も特別製の弾丸で使用者の力によっては凄まじい力を誇り、
    製作者によれば、威力だけなら幻想種すらも打倒しうると言う。
    うたい文句は『竜をも落とす』である。
    「次!!」
    引き金が引かれ、銃弾は真っ直ぐ機械竜へと向かい大きな風穴を開けて貫通した。
    同じように、2度、3度引き金が引かれ竜の体に風穴が空き、力なく落ちていく。
    銃弾はミスリルだろうと、オリハルコンだろうと関係なく貫き、
    機械仕掛けの竜を葬った。
    これで形勢は完全に逆転した。




    「竜はサラが始末するだろう。あとはこやつらだ」
    そういって対峙する騎士の数は既に最初の1,2割ほどにまで減っていた。
    逃がしても、竜族はもう安全だろうが後顧の憂いは取り除いておくべきである。
    それに、残っているのは今までの者より一味違う。
    今までと同じと油断をすれば痛い目にあうだろう。
    「そこの少女、名は?」
    「エッ、エルリスです」
    突然、エルリスが声をかけられ緊張しながらも答えを返す。
    「そうか、エルリス。残りの者は今までと一味違うだろう。
    油断しない方がいい」
    「分かりました」
    「では、行こう」


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