Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■178 / 7階層)  蒼天の始まり第十三話A
□投稿者/ マーク -(2005/04/04(Mon) 05:10:01)
    『青の代行者』




    「何でよ!!何であんたが」
    ―こんなところにいるのよ!?
    代行者の青年。クライス・クラインと対峙するミコトは叫ぶ。
    だが、そんなことは気にせずクライスはミコトに剣を振るう。
    ミコトは振るわれる剣を防ぐが再びあの急激な脱力感に襲われる。
    なんとか気を強く持ち、繰り出される剣戟を払う。
    「お前は」
    と、斬りあいながらクライスが口を開く。
    「お前は俺を知るものか?」
    「なっ!?」






    目標であるオーパーツの上空を翼を羽ばたかせ旋回する。
    目標の周りを囲むように配置された代行者の大群を突っ切って行くのは
    流石に不可能。自殺行為である。
    「まっ、手はあるけど」
    代行者も飛べる相手に対する装備も十分に整えていたが、
    この高さまで攻撃してこない。
    理由はこちらが獣人だから、魔術を使えないと判断しているからである。
    それは間違っていない。フィーアは魔術は使えない。
    だが、彼女もまたクロアと同じく異種族の血が混ざりしもの。
    それゆえ魔術ではない魔力行使の術を持っていた。
    魔術と違って詠唱などはいらない。
    威力も魔術とは違い、詠唱を長くするなんて面倒な真似をする必要は無く、
    魔力を多く使用するだけで簡単に高められる。
    欠点は一つのことしかできないこと。
    フィーアは目標のちょうど真上にそれを創り出す。
    真下にあるオーパーツとほぼ同じ大きさのまるで墓碑のような岩。
    これがフィーアの力。
    魔力で岩石を創り出し、射出する。
    魔力で出来た岩はほんのわずかな時間しかその姿を保っていない。
    だが、そのほんのわずかな時間だけは現実の物として存在する。
    そして、遥か上空から巨大な墓碑が落下する。
    ―ガッ!!
    だが、目標に激突する直前に見えない壁に弾かれた。
    砦の屋上を覆う半球状の壁。
    どうやら、協団の者が張った結界らしい。
    「・・・・どうしよう」
    先ほど創り出した巨大な岩はフィーアの魔力を三分の一近くを使ったものである。
    もう一度やっても結界は破れないだろうし、残りの魔力をすべて使っても
    結界を壊せるかどうか。とても、その下の兵器までは壊せないだろう。
    かといって、一瞬、砦ごと潰そうかとも考えたがどう考えても魔力が足らない。
    仮に潰せても魔力のない状態では魔法文明時のオーパーツを素手で破壊しなければ
    ならないということになるが、そのようなことは不可能だ。
    ユナなら結界ごと吹き飛ばして破壊できるだろうが、彼女はいない。
    ミコトなら結界を斬れるかもしれないが、この山を上れない。
    さらに、近づけば矢と銃弾の集中砲火に浴びせられる。
    戦況は硬直状態に陥っていた。







    「どういう意味よ!!」
    ミコトが怒りながら叫ぶ。そんな声にクライスは眉を吊り上げ
    「俺は数年前から記憶がない。だから、昔の俺を知る者なのかと聞いたのだ」
    「なっ!?」
    ―記憶喪失!?
    その言葉に驚きながらもミコトは剣をかわす。
    ミコトは対峙するクライスの剣を出来る限り受けぬようにしていた。
    急激な脱力感の正体はクライスの持つ剣、クロスガードに使われる、
    教会の保有する希少金属、オリハルコンの特性だった。
    最高の対魔素材と言われるその対魔力特性により、魔族など実体を持たぬ
    魔力で実体化する存在にとってはこの上ない毒となる。
    そして、さらに恐ろしいことは純粋な肉体を持つ存在に対しても、
    触れるだけで触れた者の体内の魔力を霧散させる力を持ち、
    対魔術、対魔術士用の武器でもある。
    この場合、ミコトは触れていないが、ミコトの持つ宝刀を常に取り巻く魔力が
    オリハルコンによって霧散し、宝刀自身の魔力とその魔力を利用している
    ミコトにまで影響を及ぼしたのだ。
    「あんたは―」
    言葉に詰まった。何か違う。
    言ってはいけない気がする。そう、コイツはアイツではない。
    今までも信じてきた己の直感。
    普通に考えればそんな筈はない。
    だが、それでも―
    「あんたは違う!!」
    繰り出す神速の突き。
    かわす事の叶わない必殺の一撃。
    だが、それも―
    ガギン!!
    「クッ」
    ギリギリのところでクライスの剣の中央で止められた。
    だが、何故か今まで剣に触れるたびに襲ってきた脱力感がない。
    そのことに一瞬、気を取られ、
    「ウォォー!!」
    もの凄い力で押し切られた。
    ミコトは刀こそ放さなかったものの、弾かれた衝撃で尻餅をつく。
    そして―
    「終わりだ」
    今まさに振り下ろされようとする剣を見てミコトは悔しさに唇をかみ締める。
    ―二度と油断などしないと己の心にきつく言い聞かせた筈なのに。
    悔しさに眼を瞑り、静かに振り下ろされる剣を待つ。
    ・・・
    ・・・
    ・・・
    だが、自らの命を絶つはずの剣は一向に振り下ろされない。
    ―いや。
    なにか、奇妙な浮遊感を感じる。
    慌てて眼を開け、見下ろすと真下に先ほどの男が小さく見える。
    「おい、シリウス」
    背中から声が掛けられる。
    そこでようやく何者かに抱かかえられている事に気付く。
    「アイツは一体なんだ?」
    「あんたのパチモンよ」
    ―全く。在り得ないタイミングで登場してくれちゃって。
    笑いながら、懐かしき仲間に声をかける。
    「バルムンク」





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