Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■177 / 6階層)  蒼天の始まり第十三話@
□投稿者/ マーク -(2005/04/04(Mon) 05:09:02)
    『オーパーツ』





    「どう?」
    「全然駄目」
    金の体毛に覆われ、真っ白な翼を持った虎のような動物と
    それに乗る少女が会話する。
    場所は魔術都市の外周部。
    フォルスから一直線に飛び続け、といっても途中で休憩と仮眠も取り、
    夜が明ける前には着いたわけだが
    「あんまり見えないし、やっぱり夜が明けるの待ったほうがいいか」
    「そうね」
    辺りを見回し、魔術都市の外側の方向に浮かぶ月を見る。
    「あれ?今日って満月だったっけ?」
    ―もしそうならば、今頃エルリスたちは大変だろうが。
    「何言ってるの?ほら」
    そういって、そのほぼ反対方向の空を首で示す。
    つられて見てみればもう直ぐ沈むであろう三日月が見える。
    「じゃあ、アレは?」
    そういって、空に浮かぶ満月を見る。
    良く見ればあきらかに大きさが違うし、近過ぎる。
    「怪しいわね」
    「でも、一体なん―」
    そういい終わるより先に、奇妙な月に向け、巨大な光が向かう。
    その光は月に当たると反射するようにして、空を向けられた光が
    地上へと方向を変えはるか彼方に向かって進む。
    そして、一瞬遥か先で大きな光が見えた。
    距離を考えればその光はとてつもない規模だ。
    方向はやって来た竜の谷ではない。
    方角的には王国と連邦の間の辺り。
    そこで思い当たるものは1つ。
    純粋に真祖の血を受けし、ただ1人の真祖の眷属が、
    そして、そこにさえいれば吸血衝動を抑えることが出来るということで
    数多くの吸血鬼が住まう吸血都市、バロニス。
    ミコトは代行者が動いた理由が分かった。
    なんのことはない、教会の怨敵である吸血鬼の住まう街を
    焼き払うのに教会が手を貸さないはずがないのだ。
    そして、協団にしてみればこれはテストだろう。
    実際に使用しなければその力など分かる筈がない。
    だが、このようなものを使う丁度いい目標も機会もない。
    そして、このようなものを表に出せば狙われかねない。
    だから、目標を異端の住まう場所にすることによって
    お互いの利害が一致したからこそ協団は教会と王国という
    護衛と協力者を手に入れ、教会と王国は最高の武器を手に入れたのだ。
    「ぶっ壊すわよ。フィーア!!」
    「当然」
    ミコトとフィーアは全速で光の照射されたところへと向かった。



    目標の置かれていた場所は比較的わかりやすいものだった。
    まるで祭壇の様に築かれた山の頂上に置かれていたが、
    山と言っても傾斜がほとんどなく、歩いて上れるような場所でもなかった。
    当然のことながら、目的地にはかなりの数の代行者が集まっている。
    が、ミコトが予想していたほどではなかった。
    おそらく、他の者はバロニスへ吸血鬼を殲滅しにでも行ったのだろう
    一つ確かなのは、狙うなら今をおいて他にない。
    周りの代行者は目標から魔術都市の外に向かって散っている。
    裏から回っていればもう少し楽に行くだろうが、
    生憎、既に補足されてしまっている。
    人以外の存在の襲撃も想定していたのだろう。
    代行者の装備も弓、重火器と空への武器も揃えられていた。
    地上から放たれる矢、銃弾、魔術のオンパレード。
    フィーアはそれらをかわしながら、上空に逃げる。
    上から接近すればそれこそ狙い撃ちである。
    ミコトは一瞬の思考を終え
    「私が下のやつを始末するわ」
    フィーアから飛び降りた。
    かなりの高さから飛び降りたミコトは代行者から見れば振り落とされたか、
    そうでなければ自殺と見えただろう。
    結果、飛び降りたミコトは無傷のまま着地し、同時に『天狼』を抜く。
    抜かれた刃は周りにいた三人を一瞬で切り伏せる。
    その様子に慌てた代行者たちはミコトへ向け銃を向けるが銃弾は軽くかわされ、
    後ろにいた味方に当たる。
    そして、それを見て今度は同士討ちを避けるため、銃や弓をしまって
    剣を抜き立ちふさがる。
    突如現れた敵に向かって代行者は続々と集まってくる。
    もっともいくつかはそのまま、待機しフィーアを狙っている。
    ―まだだ。
    多対一にはある程度慣れているとはいえ決して楽なものではない。
    ミコトは敵が完全に集まるまでただ黙々と近づく敵をなぎ払う。
    そして、ほとんどの代行者が集まったところで
    「開放、俊!!」
    宝刀の力を解放させ、限界までスピードを高める。
    まるで、自分以外のものの時間が止まったかのような感覚の元、
    まだ夜は明けてなく、周りの者全てが敵のミコトとこの暗がりで影でしか
    ミコトを捉えられぬ代行者たちの差は大きく、戦場を駆け回るミコトに
    何人もの者がすれ違いざまに切り倒されていく。
    ―ガギンッ!!
    「!?」
    3割といったところで1人だけこちらの剣を防いだものがいた。
    だが、問題はそれではない。
    防がれた際に急激な脱力感と共に体にかけた強化が解けた。
    「クッ!!開放、俊」
    動きが止まったミコトを狙い、振り下ろされる剣。
    再び強化してその剣を避け、残りの敵を切り倒していく。
    そして、またも同じ者に刀が当たる寸前に剣に阻まれるが
    今度は当たる直前に剣を引き、後回しにして通り過ぎる。
    ある程度を倒したところで強化を解く。
    最初は密度が高かったからうまくいったがこの数ではむしろ、損をするだけだ。
    残った者の中には唯一、ミコトの剣を防いだものもいた。
    「おい、お前ら。こいつは俺1人でやる。
    お前らは上の混血の相手をしろ」
    「ですが・・・」
    「お前らでは足手まといにしならない。
    とっとと行け」
    どうやら、男は他のやつより上位の人物らしい。
    男に命令され、残ったものたちはフィーアのほうへと向かう。
    ―強い。
    あのスピードで迫る剣を防いだ技量はかなり高い。
    油断できない相手だ。
    むこうもそれは同じなのだろう。
    邪魔そうに男は顔にかぶった兜を取る。
    「なっ!?」
    ―何であんたが!?
    「さて、始めるか」
    氷のような雰囲気まとい、剣を片手で持ってミコトへ向け突きつける。
    ―クライス・クラインという名の男が。




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