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■222 / 12階層)  空の青『王都編』そのA
□投稿者/ 黒い鳩 -(2005/08/11(Thu) 12:02:03)
    2005/08/11(Thu) 12:02:44 編集(管理者)

    宿を取った翌日、乗車券の再発行をお願いしに駅へと向かった。
    本来昨日の内に済ませておいた方がいいと思うんだけど、疲れていたから…
    まあ、仕方ない事よね。

    朝のうちは再発行の手続きでつぶれてしまった。
    昨日のうちに済ましておかなかったので、乗車券は明後日の分しか残ってなかった(汗)
    一般乗車券とは別扱いで、食事なんかは無料の結構いい券だったのが救いね。
    まあ、お詫びの意味もあるんだろうけど…

    駅の近くの喫茶店で軽く昼食を済ませ、街中を見て回る…
    命は乗車券を貰った後別行動を取った、セリスがごねてたけど、まぁいつもの事ね。
    王都の南部は雑多な繁華街が続いている、駅がある所為だとおもうけど、結構いろんな物を商売しているみたい。
    考えてみれば私達はおのぼりさんなワケで…
    ちょっとした事で、思わぬ結果になる事もある…

    「あれ? セリス!? どこいたの!?」

    そう、私がちょっと目を放した隙にセリスはいなくなっていた…
    あれほど、私から離れないでって言っていたのに!!

    「どうしよう…」

    落ち着け、落ち着きなさい私…
    セリスも子供じゃないんだから自分で宿まで帰れるはずよ!
    うん、そうね、そうに決まった!

    「ほっとこう、うん」

    私は心理状態を元に戻して、ウィンドウショッピングを始めようとする…
    先ほど目をつけていたアクセサリショップに立ち寄ろうとしていると、

    「きょえー!?」

    セリスの悲鳴!?
    にしては、何だか変な言い回しだし緊張感に欠けるけど…
    私は声が聞こえた方に向かう事にした、

    大通りを抜け、悲鳴が聞こえた路地に向かう。
    誰もいない…実質的には建物と建物の間に存在している路地のようで、入り口となる扉などが無い…
    これは、誘拐かしら?
    セリスがお金を持ってそうには見えないと思うけど…

    いえ、最悪の事態も想定しなければ…
    最悪の事態と呼べるのは、三つ。
    快楽殺人者に連れ去られた場合。
    犯されて売られる場合。
    最後が魔法力の事がばれて神殿教会や魔道士教団に見つかった場合。
    前者なら火あぶり、後者なら実験材料にされる危険がある。

    「とはいっても、最悪の事態でもそうでなくても、私のとれる手段は多くないっか…」

    結局は、同じ事先ず探し出さなければ意味は無い。
    私は周囲を見回して、何か無いか探ってみた…
    聞き込みをして周囲を探るべきだという気もしたけど、まだ何か違和感があったから…
    そうしてみると、二つの家の間のこの道家の壁で行き止まりになっているけど、
    マンホールのふたが少しずれている事が見受けられた。

    「ここ…確立は高いとはいえないけど…聞き込みを始める前にちょっと回ってみるか」

    そう言って私はマンホールのふたを開け、下水道に入ってみた。
    でも、下にあったのは下水道と言う感じではなかった…
    何だか判らないけど、下水の水にしてはにおいを感じないし。
    それに何より、いきなり扉が私の前に鎮座していた。(汗)
    確かに下水は通っているみたいなんだけど…

    私はおそるおそるその扉を開ける。
    ノックしろとも書いてないし扉は元から開いていた。
    それに、誘拐犯かもしれないのにのこのこ出て行く愚は犯せない。

    中に入ってみると、どうやら何かの研究室らしかった、
    中央には大型の機材が据え付けられており、
    魔科学に使うだろう物品が所狭しと並んでいる。
    そして、何かをしていると思しき白衣の男。
    据え付けられた機材に何かが入っているらしく、しきりに数値を書き込んでいる。
    でも、ここ一体何の研究所!?
    いえ、そんな事より、セリスが…

    私は、音を立てないように近づき…
    白衣の男の腕を取って捻りあげた。

    「ぐわ! イタ! イタタタタ!!」

    簡単に白衣を捉えることができた。
    拍子抜けね…まあ、楽なら楽に越した事はないけど。

    「おじさん、ちょっといいかしら?」
    「イタ! 君は! 一体…なん…だね!?」
    「質問しているのは私、いい?」

    そういいながら、私は男の腕を捻りあげる力を少し上げた。

    「イタタ! 痛い! 何者でもいいから、これをやめてくれ!」
    「残念だけど、質問に答えてからよ、いい?」
    「イタ! 痛い!! 判った! 質問に答える! 何でも答えるから、さっさと言え!」

    私はさらに腕に力をこめながら言った。

    「さっさと言え?」
    「いえ、言ってください! 何でもお答えします!」
    「よろしい」

    今のやり取りは一見私の我侭のように見えるけど実は違う、
    下手をすると私が何をするかわからないと思わせるための心理戦だ。
    そうしておかないと、後で何をされるかわかったものではないし…

    「聞きたいことは一つよ。
     私と同じ水色の髪をした少女を見なかった?」
    「…」
    「見なかった?」
    「痛い! イタ! 痛いって!! 判った! その少女なら確かにここにいる!」
    「どこ?」
    「その機材の中だ!」

    白衣の男のやけくそ気味な告白に、
    私は一瞬目の前が真っ暗になるかと思った。
    私は一瞬だけ男を殺す気で睨みつけると、機材に取り付こうとした。

    「待て! それを壊すと彼女が危険にさらされる事になるぞ!」

    私は、男に向き直り、剣を抜き放った。

    「貴方死にたいんですか? もしセリスの身に何かあったら確実に殺しますよ」
    「ひぃひぃぃ!! だっ大丈夫だ…これは命に別状があるようなものじゃない!」
    「本当ですか?」
    「そうだ、彼女の中にある魔力が異常だったから、ちょっと調べてみようと思ってね…
     話しかけたら、悲鳴上げるほど喜んでくれて…」
    「はぁ…」

    何? あれは喜びの悲鳴?
    はぁ…何考えてるんだろ…我が妹ながら末恐ろしいわ…

    「それで? セリスは大丈夫なの?」
    「ああ、もう直ぐ出てくるとだろう。魔力のサンプルも取れたし」
    「サンプルって?」
    「彼女の魔力は強いだけじゃない、どうにも普通の人と違うみたいだからね」
    「そう…」

    まあ、この男のいう事を信用してもいいのかどうかはわからないけど、
    それは私も考えていた。
    彼女の魔力は無限に近いという診断を昔父の知り合いの研究者から貰った事があった。
    そのときは信じてなかった、なぜかって言うと、
    そんな巨大な魔力が体内に存在していれば人間として生きていく事はできない。
    息をしただけで山が吹き飛ぶ、歩けば空を飛びはるかかなたまで行ってしまう。
    もし拳を振り下ろせば国ごと吹き飛ぶ。
    そんな魔力を人間の体内に宿し続けられるわけが無い。
    そうは思っていたけど…特殊な魔力、もしセリスの体内に存在し続けられる形に魔力が変換されていたなら…
    また話は違ってくるだろう。
    だけど…

    そうしているうちに中央の機材のふたがゆっくりと開いて行き、そこからセリスが出てきた。

    「ねぇねぇ、それでどうだった? 魔力の事何かわかった? って…」
    「…セリス」
    「あう…姉様…(汗)」

    私は、腕を組んで精一杯しかめっ面を作った。
    セリスは冷や汗をダラダラながしている、
    男は知らん顔でセリスの魔力サンプルとやらを取り出しに行っているようだけど…
    まあ、今は関係ない。

    「私言ったわよね…私から離れないようにって」
    「うっ…うん…」
    「なんで、こんな所にいるのかな?」
    「さぁ…なんででしょう?(汗)」
    「一言、言ってくれても良かったんじゃないかな?」
    「あぁ…る…るぅ…姉様の意地悪…私だって、自分で魔力のこと知りたいと思ったんだよ…」
    「でもね。心配かけないように配慮するくらいの事はして欲しかったな…」
    「…るぅ…」

    セリスも流石に聞いたのか、肩を落として神妙にしている。
    そうね、もう少し注意をしたら、終わりにしてあよう。
    そう思って、私が口を開きかけた時、

    「まーまー、ここは俺っチの顔に免じて、このくらいにしてやってくんねーか?」
    「へ?」
    「え?」

    足元から、声が聞こえる…
    感じからすると子供? でも…
    よく見ればそこには、水色の毛並みと金色の目をした子猫がいる…
    まさか…

    「おお! 紹介してなかったなー、俺っチは…うん? 俺っチは…そうだ! まだ名前が無い!」
    「「どぉぉお!」」

    私とセリスは同時にこけた…こんなところが似ててもしょうがないけど…
    結構、こういうのって重なるよね、って…
    このしゃべる猫何?

    「えっと、そこの…」
    「マハシフさん、だよ」
    「じゃあマハシフさん! これ一体何!?」
    「私も知らん! お嬢さんの魔力が突然形を取って動き出したんだ!」
    「「ええぇぇ!!?」」

    また、私とセリスが驚きをハモらせる…
    別にわざとやっているわけじゃないんだけど(汗)

    「なんだい、みんな俺っチをみつめちゃってー、惚れても駄目だぜ?」
    「はぁ…」
    「姉様…」
    「じゃあ、仕方ないわね…」
    「え?」
    「名前。付けてあげなさい」
    「ええー!!?」

    私は降参した、どうせ、最後はセリスに強引に押し切られて飼う事になるのだ。
    だったら、先に白旗を掲げても問題ないよね(泣)

    「じゃあ…魔力で出来た弟っていう事でマリョクとオトウト…う〜ん、マオ!」
    「あー悪いんだが、俺っチ女だぞ」
    「へ?」
    「しゃべり方でそうおもったんだろうなーでも、まあ名前はマオでいい、確か東方のほうで猫をさす言葉だったよなー」
    「駄目駄目! 女の子だったらまた考えないと!」
    「本人が気に入っているんだからいいじゃない、それにマオっていうなら、どっちでも取れるしね」
    「でもでも!」
    「じゃあ俺っチはマオっていう事でーよろしくー♪」
    「…るぅ…」

    結局、押し切られるか足してマオの名前は決まった。
    この先どうなるか不安だけど、とりあえずこれから先の指針になるかな?
    マハシフさんって言ったっけ、彼の腕次第だけど…
    でも、今日は疲れたので宿に戻る事にした。
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