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■337 / 19階層)  空の青『学園都市編』そのE
□投稿者/ 黒い鳩 -(2006/08/22(Tue) 20:26:05)
    2006/08/22(Tue) 21:00:12 編集(管理者)

    私達は追い詰められていた……って、いきなり言っても分からないわよね。
    何ていうか、二回戦に突入してしまったんだけど、その相手は……
    あのユナ・アレイヤとかいう少女だった。

    元々私達は無関係だし、
    一回戦で義理は果たしたんだから封印図書館を探すために、とりあえず禁書図書館を訪ねたかった所だけど。
    どうにも、面倒な事に2試合目から試合放棄は出来ないみたい。
    さっさと負けて立ち去りたい所なんだけど、あのユナという少女は手加減してくれそうにない。
    正直、病院送りにされたら封印図書館探しどころではないわね(汗)
    そんな訳で必死で逃げ回っているわけだけど、例のアサルトボムとかいう魔法、連発出切るみたいで……。
    一発で会場にダメージを与えるほどの威力をまともに食らうわけにも行かず、
    私とセリスで二重に結界を張って何とかしのいでいる現状なの。

    とはいえ、セリスはヨーヨーで結界の魔術を形成しているから魔力さえ流し続ければいいんだけど、
    私は氷縛結界を周囲に展開しているので、吹き飛ばされるたびに再構成しないといけない。
    正直息が上がってきているのが分かる。
    隣でのびているルスランにちらっと目をやってみたけど、あれはもう駄目ね。
    穏便に負ける方法って無いのかしら?

    「姉様! どうしよう、結界につかってるヨーヨーの糸が溶け始めてるよ!」
    「ええ!?」

    本格的にマズイみたいね……。
    せりスの持っているヨーヨーの糸は魔科学兵器なので、魔力伝達物質で出来ている。
    つまり、細いミスリルで出来たものをより合わせて作られたミスリルワイヤーのはず。
    ミスリルの融点は鉄なんかと同じで三千度にもなる。
    私の氷縛結界は分厚い氷に敵を包んで動きを取れなくするものだけど、その氷を壁代わりに作り出して熱を防いでいるにもかかわらず、
    瞬間的に三千度を超える熱を氷の壁のこちら側まで届けているらしい。
    正直、こんなのくらったら生き残れない。

    因みに、私達には出場前に結界発生装置を渡されている、致命的な攻撃にさらされた場合に発動し、
    攻撃を防いでくれる事になっている(発動時点で敗北確定)んだけど、ユナの攻撃はそれを貫通しかねない。
    ユナと一回戦を戦った人たちは病院送りになっているんだから正直役に立っているのか疑わしい。
    いえ、それでも死なないだけマシなのかも?

    「あなた達には何か感じたのだけど、使いこなせていないの? まあいいわ。
     茶番を長々と続ける気もないし、そろそろ終わらせてあげる」

    まずい……あの目は本気ね!?
    ユナの周りに赤い陽炎が立つ……
    魔力があふれ返っているの?
    私達は総毛立ちながらその姿を見守る。
    このままじゃ、殺される?

    「舞おう、さあ、足をあげ、さあ、舞おう、大地を巡るものよ。
     舞は全てを平らげ、全てを蹂躙する。
     さあ、激しく、強く、舞い踊れ! インティグレート!」

    呪文が終わると同時に舞台が割れて、地面からマグマが吹き上げる。
    正直度肝を抜かれて声も出ない。
    だって、活火山の上でもないのに、マグマを呼び寄せるなんて無茶苦茶もいい所よ(汗)
    彼女の魔法には限度がないの!?
    周辺温度が一気に上がる……。
    炎によって私の氷縛結界は跡形もなく消えうせ、再度呼び出そうにも私の魔力は限界……。

    「姉様……私」
    「駄目よ」
    「でも……」
    「これで死ぬことはないけど、あれを使ったらどうなるか分からないわよ」

    セリスは自分が魔法を使ったらどうか?
    と聞いているみたいだけど……セリスの魔力量は予測が出来ない。
    発火の呪文で山を全焼させる位の魔力量があるといっていい。
    その代わり、セリスが使う魔法は不安定で、調節も出来ない。
    暴発すれば全てを巻き込んでしまう。
    使用出来るようになるには、並大抵の努力では無理な事はほぼ間違いない。

    でも、だったらどうすれば……。
    そう考えているうちにも、セリスの結界がたわんで来ている。
    結界が破られる!?
    セリスの魔法が破られるなんて……。
    そう考えた次の瞬間、パンッという情けない破裂音とともに1000度内外の温度を持つ溶岩が結界を破って進入してきた。
    結界魔法が起動する……でも、その魔法すらすぐに焼き切れて、とうとう炎に直接さらされそうに……。

    「キャア!?」

    セリスが悲鳴を上げる、私より一瞬早く結界が燃え尽きたよう。
    私は必死に手を伸ばす。
    だけど、手は届かなくて……。

    「セリス!?」
    「おねぇちゃ……」

    炎に飲まれていくセリスを見ている事しか出来ないなんて……。
    そんな……そんな……。
    私はその時、自分の中で何かが切れる音を聞いた……。

    転瞬、視界が切り替わる。
    何が変わったのか自分でも分からない、でもその力は己の中に存在する事が分かる。
    同じはずで違う自分、私の中の私、それは自覚できているのか自分でも自信がない……。
    でも、セリスの周辺は既に凍りつき、炎は完全に鎮火されている。

    我(わらわ)は一息ついて、正面にいる小娘を見る。

    「今のはなかなか面白かったぞ、お主よもや炎をそこまで使うとはな」
    「ふん、本性というわけ? いえ、違うわね。のっとられたのか、憑き物のようね」
    「なかなか鋭いのう、だが、我はのっとっている訳ではない」
    「似たようなものじゃない。でも、これで少しは本気になれるかしら?」

    小娘は赤い髪を掻き揚げて挑発しつつ、新たな呪文を唱え始めている。
    しかし、完成までには数秒かかるのは間違いない。

    「それにしても、暑いな。少しすずしくしようか?」
    「え?」

    我はため息をつくように息を吐いた。
    炎が燃え盛り、溶岩が噴出していた舞台やその周辺に霜が降りる。
    霜は、それらを凍結し、綺麗に白く染め上げてくれた。

    「なっ……1000度を超える溶岩流が一瞬で凍りつくなんて……」
    「何を驚く?」
    「ふふっそうね、かなり本気じゃないと貴方を仕留められないことが分かってうれしいわ」
    「それは楽しみじゃ、中途半端な攻撃で失望させないようにな」
    「きっと気に入るわよ、それはもう、燃え上がるほどにね」

    その言葉とともに、火球を十発単位で投げつけてくる。
    時間稼ぎのようだの、その間に間合いを取った小娘は、特殊な呪文を唱え始める。

    「我、今くびきを開放し、呼び出さん。先に唱える者よ、後を唱える者よ、続けて唱える者よ、我が呼びかけに答えよ」

    小娘は自らの周りに小妖精を呼び出す。
    妖精は、己の自我があるのかないのか、召喚された途端に何かの呪文を口にし始める。
    なるほど、あれらは外部の口というわけじゃな。
    複雑な呪文を唱える場合、一つの口では足りないので、変わりに唱える者を使う場合がある。
    それは、あらかじめ決めておいた呪文を復唱する事しか出来ないが、それでも、複雑な形式の呪文を唱える場合は有効な手段じゃな。

    しばらくして、舞台を覆い隠すように巨大な積層型の魔方陣が作り出されていく。
    本来はこのような呪文を使うのは馬鹿のする事だ。
    時間がかかりすぎる、集中力を乱されただけで失敗するような精密作業を続けねばならない。
    しかし、4つの口で唱える呪文は早々に完成されていくように見えた。
    多分、通常の4倍というだけでなく、ディレイによって更に短縮効果をあげているのだろう。
    だが、それでもまだ余裕はあった。
    流石に1分かからず唱えられる呪文ではないようだからな。
    しかし、我は待つ事にした。
    興味があたからだ。

    その間に、会場にあるものは、全て外に出しておく程度のサービスをしておいてやったが、
    頭に血が上っているように見える小娘に分かったかどうか。

    「さあ、この呪文。とめられる物なら止めてみなさい!」
    「ふん、生意気じゃな。かかって来るがよい」
    「現れい出よ、天空の聖剣!」

    小娘は、我の言葉を聞く間もなく、呪文を開放した。
    それは、天空から飛来する焦点温度二百万度に達するレーザーの光。
    下手な核攻撃100発分にも等しい大熱量だった。
    学園全体が真っ白に光る。
    焦点が絞られているため、熱量は拡散していないようだが、それでも発動時の暴風で会場は吹き飛んでしまったようだ。
    我は積層魔方陣の結界にとらわれている為、逃げる事も、防御魔法の展開も出来ないようになっている。
    絶体絶命のようじゃな。
    光が魔方陣の中に満ちる。二百万度のレーザー光は、内部で衝突を繰り返し、更に温度を上げて魔方陣を満たす。
    そのエネルギーによって、更に焦点温度を上げつつ、魔方陣の内部のエネルギーごと異次元へと飛ばした。
    これによって、強大なエネルギーを余すところなく使い外部に漏らさないという形をとっているようだ。

    「どう? 消し炭も残らなかったでしょうから、答えようもないでしょうけど」
    「ふむ、なかなかの攻撃じゃ、だが小娘、まだまだ甘いな」
    「何!?」

    我は小娘の背後に立っていた。
    氷による光の幻術を複合してユナをだましたのだ。
    もちろん、魔力は大部分その場に残し、自らは魔力を遮蔽する呪文をまとってもいる。
    上位の術者のようだからかなり用心をしたが、今回は上手くいった様じゃ。
    二度使える自信はないがな。

    「あんな長い呪文を唱えさせておく馬鹿はおらぬよ。火球で作れる隙は数秒、唱えるものどもを呼び出したころには終わりじゃ」
    「……でも、魔方陣の内部にいる限り脱出は……」
    「そうじゃ、あれの強力なところはそこにある。火球で作った隙に第一の結界を作ってしまえばじゃがな」
    「ふん、そんなタイムラグをつけるのはあんたくらいよ。1〜2秒じゃない」
    「まあな」

    我はニヤリと笑う。
    小娘も少し口元をゆがめたようだ。
    しかし、どうやら時間じゃな。意識が暗くなってきた。
    そろそろ、体を返さねば……。
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