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■54 / 親階層)  空の青『旅立ち』
□投稿者/ 黒い鳩 -(2004/11/18(Thu) 22:50:02)
    ガヤガヤとした周囲の喧騒の中で気付く…

    私は少し寝ていたらしい…

    日が傾きかけている…放課後の様だ…


    「ねえ! エルリス、この後テュロットに寄ってかない?」


    友人の声が私の耳朶を打つ…

    その声で少しボーっとしていた私は完全に目が覚め、言葉を返す。


    「ううん、今日は用事があるから…」

    「むぅ、最近何時もそれだね、そんなんじゃ彼氏の一人も出来ないよ?」

    「うっ…(汗)」


    友人は私の事を心配してくれている。

    でも、私は………

    その時、ふと幼い頃遊んだ少年の顔がよぎった気がした…

    私は思わず首を振り、友人に言葉を返す。


    「いいの! 私は一生独身で通すから!」

    「はぁ…なに勿体無い事言ってんのよ、学校の中でもより取り見取りの癖に!」

    「もう、その話はやめてよ…」


    この学校は時代遅れなことにミスコンをやっている、しかも強制参加の(汗)

    あの時、命怒ってたな…1票差だったし…

    そもそも、田舎の学校だから、人数が少ない、ミスコンとか言っても、強制なのに参加者20人を超えなかった…

    だって高校の女子が18人だから(汗)


    「いや、確かに参加者は少なかったけどさ、実際アンタと命は他の子達と全然レベルが違うよ、都会に行っても通用するんじゃない?」

    「まさか、あんまり夢みたいな事言ってたら駄目だよ」

    「う〜ん、まっいいけど…それじゃ」

    「うん、じゃね」


    鞄に筆記用具や本等を詰め、家路に着く、校門の前ですれ違った命の目が痛かった…

    まだ怒っているらしい…、命とは仲はいい方だと思う、でも何か勝負事になるとむきになる癖があった…

    実家の道場を継ぐという目標があるんだから、私と張り合う事ないのに…

    そんな事を考えながら歩く…


    町外れの一軒家…何代か前はこの町の領主を輩出した事がある館に私は住んでいる…

    もっとも、今や没落し、住んでいるのは私と妹の二人だけ…

    妹、セリスは外に出る事を極端に嫌うようになった…

    10年前の事件以来時折自分の魔力が高まるのを感じるらしく、人に近付けば傷付けてしまうのではないかと怯えるようになった…

    私は精一杯励ましているんだけど…まだ、外に出るのは怖いみたい…

    元々は私なんかよりずっと明るい子だっただけに何とかしたいと思う…だから、今日は話してみるつもりだった…

    館の扉を開け、中に入ると玄関先にセリスが来ていた…

    別に体が悪い訳ではないのだから当然だけど、異界の力を象徴するオッドアイが、悲しそうに揺れている…


    「ただいま、セリス」

    「うん、お帰り姉様」

    「どうかしたの?」


    何か、もじもじとして言い難そう…多分、今日の朝出て行くときにきちんと挨拶しなかったからね…

    そう察して私が謝りの言葉をかけようとした時…


    「ううん、姉様を待ってただけ」

    「え? ……あっ……ふふっ♪」


    セリスは子供みたいな所がある、私と同い年とは思えないくらい…

    その事が可笑しくて、つい声に出てしまった…

    見ると、セリスは頬を膨らましている…


    「ごめん、ごめん悪かったわ、お詫びに今日は晩御飯私が作るから」

    「駄目! もう作ってあるもん!」

    「え? もう?」

    「うん! 姉様に美味しい物食べさせてあげようと思って…」

    「???」


    不思議に思いつつも、私は促されるまま食堂に向かい、10人がけテーブルの一角に座る…

    そこには、私が見る中では初めての料理が並んでいた…


    「これ…どうやったの?」

    「うん、料理の本見て作った♪」


    セリスの料理の腕は一流といってもいいと思う、元々集中できる事が好きだから、覚えるのも早い…

    ヨーヨーなんかはその最たる物かも…

    でも、材料は?


    「食べてみて♪」

    「うっ、うん」


    そうして、セリスの料理を口に運ぶ…

    芳醇な味わい…テュロットのチェーン店の料理なんか目じゃないくらいに…


    「美味しい…」


    でも、だからこそ、不思議…どうやって材料を手に入れたのかしら?

    私の顔が疑問を表しているのが見て取れたのだろう、セリスはぽつりぽつりと話し始める…


    「今日ね…」

    「え?」

    「今日、私買い物に行ったの…」

    「!!」

    「大丈夫だった…別に何とも無かった…」


    セリスの顔が歪んでいる…怖かったのだろう…涙をためて…

    でも…


    「じゃあ…」

    「うん…ボク…行くよ、旅に…それで、本当に心配要らなくなったらここに帰って来るんだ♪」

    「セリス!」


    私はセリスに抱きつき、髪を撫でる…セリスは私のされるがままにしつつ、微笑んだ…


    翌日、私達は旅立ちの準備を整え、情報の集まる大都市リディスタに向け旅立った…
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