Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■42 / 3階層)  捜し、求めるもの 第二幕 後編
□投稿者/ ルーン -(2004/11/11(Thu) 23:58:05)
    2004/11/13(Sat) 15:38:45 編集(投稿者)

     「ば、馬鹿な! 何故本物の『ユナ・アレイヤ』が此処に居る!?」
     混乱する女にユナは絶対零度の眼差しを向けて一言、
     「何故ですって!? お前の所為でしょうが!!」
     「ど、どういう……」
     女が言い切る前に、ユナは怒りを多大に含ませた声を上げた。
     「お前が私の名前を語って大それた事をするから、近衛騎士団が動いたんでしょうが! 三流なら兎も角、下手に一流だから手におえない。少しは私の事情も考えてよね!? 宿で気持ちよく寝ていた所を、いきなり来たレオンに叩き起こされるわ。国王命令だとか言って、強制的に私にお前の討伐を手伝えって言うし。おまけに何で私の居場所が分かったのかって聞けば、国王がくれた二丁の魔装銃には、元々盗難防止の為の発信機が付いてるって言うし。なにより最も許せないのが、お前程度の所為で、お義兄ちゃんを探す旅に支障が出たのが一番許せないわ!」
     明らかに蔑む言葉に、女が反射的に言い返した。
     「なによ小娘が! 例え本物の『ユナ・アレイヤ』だろうが、女の色気も無い小娘に其処まで言われるのは頭に来るね!」
     確かに女としての色気だったら、ユナよりも女の方が年が上だけあり、ユナでは勝てそうも無かった。
     女の言葉に怒りで身を震わせて、女の体を睨み付けていたユナは、ある一点で視線が止まった。
     その次の瞬間には、ユナの体からは怒りが消え去り、変わりに目が哀れみの目になっていた。
     「な、なんだい……?」
     そんなユナを不審に思い聞いてみれば、ユナは一言、
     「ぺチャパイ」
     ピキ……
     そんな音と共に、女の動きが止まった。
     そして顔の色が真っ青になり、続いて真っ赤になったかと思えば、怒声を上げた。
     「な、なんですって! この色気の欠片も無い小娘がぁぁぁーーー!!」
     そんな怒声にもユナの目からは哀れみの色は消えずに、また一言、
     「女としての色気は年を重ねれば増すもの。けど、あなたの胸が大きくなる可能性はもう絶望的ね。私の胸はまだ大きくなるだろうけどね」
     女はそのユナの言葉を聞くと、ガクリと膝を落とし、石畳に座り込んだ。
     確かにユナの言うとおり、ユナには将来があるが、女には最早絶望的な未来しかないであろう。
     そして、それが女にとって最大のコンプレックスだった。女の唯一と言っていい欠点……それが胸が小さい事だった。
     スレンダーと言えば聞こえはいいが、その胸はまるっきり成長していないんじゃない? と言いたくなるほど、どんなに凝視しても膨らみが確認できなかった。
     そんな女として打ち負かされた女に、ユナは容赦なく攻撃を仕掛けた。
     ユナは手に火球を生み出したかと思うと、女に向けて投げつけた。

     ドォォォ……ン……

     腹の底に響くような爆音が響き、勝負は付いたかと普通なら思うところだが、ユナは一寸も油断はしていなかった。
     火球が女に届く前に、壁のような物に当たって炸裂したのを見たからだ。
     そして、そんな事が起こる原因をユナには心当たりがあった。
     事実、煙が覆っている向こう側から笑い声が聞こえた。
     「おーほっほほほほ、流石はユナ・アレイヤと言ったところかしら? あんな短い間で、これほどの炎系魔法を繰り出すなんてね。でも、少し私を甘く見すぎね。……これでも喰らいなさい!」
     台詞が終わると共にユナへと襲い掛かって来たのは、先程ユナが投げた火球と同じ魔法だった。
     ユナはそれを横に跳躍する事で交わした。
     火球は先程までユナが居た地点を直撃し、また爆音を轟かせた。

     「どうしたのですか? 無防備な敵を貴方が一撃で決め損なうなんて……」
     すぅっとユナの横に移動して来たレオンが、不思議そうな顔で尋ねた。
     それにユナは少し緊張した面持ちで答えた。
     「少しアイツを甘く見ていたみたい。アイツ、確りと魔法陣を描いていたみたいね。しかもかなり強力な奴をね」
     そう言うユナの視線の先には、薄っすらと石畳が光り輝いていた。
     「破れますか?」
     レオンは現状を正確に把握する為に、冷静にユナに意見を求めた。
     ユナは室内に目を走らせ、続いて女が張った魔法陣を注意深く観察した。
     「現状では少しきついわね。魔法であったら、この砦を壊すぐらいの威力じゃないと無理だわ。かと言って、物理的な力だともっと無理ね。あの女、意外にマメなのか姑息なのか、魔法と物理両方にかなりの耐性を持っている魔方陣を描いてるわ。多分、かなり前から描いていたわね。アレだけの魔方陣だと、一時間やそこらだと描けないもの」
     「では、いつあの魔方陣の効果は消えるんですか?」
     「あの魔方陣の構成を見る限りでは、ざっと二三日は持つわね。それとも、あの女に魔方陣を消して貰う様に頼んでみる? 無駄でしょうけどね」
     「何か他に対処法はないんですか? 例えば、貴方の魔法であの魔方陣の効果を打ち消すとか……」
     「難しいわね。二流三流が描いた魔法陣なら兎も角、アイツが描いた魔法陣の構成はかなりのレベルだわ。そもそも魔法陣の特徴は、一度発動してしまえば、使用者の魔力を必要としないのよ。あの魔方陣を構成している文字の一部には、魔法陣自体が大気中からマナやエーテルを吸収して、魔法陣の維持に充てると云う物が必ず含まれているの。そして魔方陣を構成している文字が緻密で多ければ多いほど、その魔法陣自体の性能も上がるのよ。もっともその分、魔法陣を描く事自体に多大な時間が掛かるから、実戦向きじゃないの。逆に言えば、魔方陣を描く時間さえあれば、アレほど有能な魔法は他には無いわ」
     女が放つ魔法の爆音が響く中、二人は冷静にそんな会話をしていた。
     「ふむ、では打つ手は無しですか?」
     対して困ったふうにも見えない様子でレオンは言った。それにユナは首を振り、
     「言ったでしょう? 私なら砦ごとあの魔方陣も吹き飛ばせるわ。もっとも、そんな簡単には殺さないけどね。私を怒らせたんだから、楽に一撃では殺さないわ。じっくり、いたぶって殺してやるんだから」
     そのユナの台詞を聞いて、レオンが肩を竦ませた。
     表情には出さなかったが、内心では「これではどちらが悪者か分かりませんね」と思っていた。
     「それに魔法陣には、幾つか欠点があるのよ」
     「欠点……ですか?」
     先程まで考えていた事を表情と声には微塵も出さずに、レオンは聞き返した。
     「そうよ。魔方陣には三つの欠点があるの。一つ目はさっきも言ったけど、魔方陣を描く事に時間が掛かること。二つ目が、魔方陣を構成する文字が間違っていたりすると、期待通りの効果を発揮しないどころか、下手をすれば発動もしないこと。そして、私が狙うのは三つ目―――……よ」
     女が放った魔法による爆音で、微かにしか聞こえなかった三つ目……。
     だがしかし、そんな事が可能なのだろうか? そんなレオンの疑問を察したのか、
     「忘れたの? 私が国王から貰った二丁の魔装銃の特性を?」
     そしてレオンは思い出した。ユナが持つ、この世に二つしかない魔装銃の特性を。
     「では……」
     「ええ、後は任せて」
     二人は頷きあって、二手に分かれた。
     レオンは部屋の隅で本物の『ユナ・フレイヤ』に怯えているグレン達の元へ。
     ユナは、この戦いの決着を着ける為に。

     「決着つけるわよ! 年増のオバサンッ!!」
     ユナのその言葉に反応して、女が言い返す。
     「誰がオバサンよ?! この乳臭い小娘が!!」
     「誰が乳臭い小娘ですって?! このぺチャパイ!!」
     「んなっ!?!!」
     売り言葉に買い言葉。
     言い合いながらも、魔法を打ち合う様は流石と言うべきなのだろうが……いかんせん、緊張感が著しく欠けていた。
     「このっ! 本物のユナ・アレヤだからって調子に乗るんじゃないわよ! この魔法陣がある限りは、私の方が絶対有利なのは覆せないのは事実! 偽者が本物を超えられないと誰が決めた!? 私は今、お前を超えてやる!!」
     「はん、お前には無理よ。何故なら、お前は此処で死ぬんだからね」
     そう言ってユナは、手印を切りながら呪文を詠唱し始めた。
     「炎よ、その身を幾多の業火の剣と化し、我敵を射殺し、焼き滅ぼせ!」
     「なっ!? その呪文は!! くっ! 炎よ、我は願い奉る! その偉大なる力の元、我に仇名す全ての炎から守り賜え!」 
     ユナの詠唱を聞き、その呪文に心当たりがあるのか、慌てて防御呪文を詠唱する女。
     呪文の効果か、女の身から炎が溢れ出し、女の体を守る様に炎の衣となった。
     そして次の瞬間に、ユナの呪文も完成した。
     「汝には、如何なる距離も障害も無し!!」
     その瞬間、女の魔法陣内部に、二本の炎の剣が出現した。
     炎の剣は女に狙いを定めると、女を射殺そうと飛翔した。
     だが、女の体を守る炎をの衣は、そうはさせじと炎の剣に巻きついた。
     炎の剣と炎の衣。
     二つの炎の力は互角なのか、互いに一歩も譲らずに、空中で鬩ぎ合った。
     結果―――
     パキィィィ……ン……と云う澄んだ音と共に、二本の炎の剣と炎の衣は砕け散った。
     「流石は『ユナ・フレイヤ』ね。……まさか空間設定型魔法を使うなんて……でも、惜しかっわね。もし私が魔法陣に、対空間設定型魔法の文字を組み込まなかったら、数十本の炎の剣が私の周りを囲んで、刺し殺していたのにねぇ? 本当に残念だねぇ。いくらアンタでも、これ以上強力な空間設定型魔法は使えないだろう? これで、私の勝ちは決まったね」
     女が勝ち誇った口調で言った。

     通常は術者自身の手か、術者が手にしている武器の先端からでしか発動はしない。
     だがしかし、女が言った『空間設定型魔法』はその名の通り、術者が好きに魔法の発動場所を選べる魔法の事である。
     勿論、『空間設定型魔法』のも制限はあり、魔法具現化可能範囲は、最長でも術者の視界が届く範囲である。
     そして『空間設定型魔法』の中では、もっともユナが好んで使う魔法である。

     (ユナ・アレイヤに勝つには、通常の方法ではダメね。だとしたら……)
     女は一瞬の内に作戦を決め、実行に移した。
     「魔方陣内部に溜まったマナとエーテルを圧縮……。それをユナ・アレイヤに向けて解き放つ!!」
     女が圧縮したマナとエーテルは、圧縮から開放された勢いそのままに、ユナへと襲い掛かった。
     「くっ……」
     とは言っても、何も細工のされていない物である。それでけではユナを傷付ける事は出来ない。
     だがしかし、ユナの体勢を崩すには十分な衝撃波だった。ユナが体のバランスを崩し、石畳の上に膝を付いた。
     「我が放つは火竜の息! 炎よ、全てを焼き尽くす火炎の息吹となれ!!」
     これは、女が使える中では最強の炎系魔法だった。
     女が放った魔法は、まさしく火竜のブレスの如く、石畳を溶かしながらユナへと迫った。
     タイミング的に、回避は間に合わない。ユナは両腕を二丁の魔装銃へと伸ばし―――

     火炎がユナを飲み込む様を見届けた女は、高笑いを上げた。
     「あは、あはは、あはっはははははは!! 遂に、遂にユナ・アレイヤを殺したわ!! これで、これで私が最強の炎系魔法使いよ! 何が、何が僅か15歳で炎系魔法を極めた天才魔法使いよ。私の手に掛かれば、ただの乳臭い小娘じゃない!!」
     だが其処まで言ったところで、ピタリと女の哄笑がやみ、ユナが居た地点へと視線を向けた。
     まだ其処は、炎が渦巻いていた。
     「そうね、相手はあのユナ・アレイヤだったわね。念には念を入れて、止めを刺しておきましょう」
     女はそう言うと右手を天に掲げ、火球を作り出した。
     「これで本当にさよならね。バイバイ、小娘」
     女は掲げていた手を振り下ろす―――

     ボン……

     そんな軽い何かが破裂する音がして、そして―――

     「あ、あああ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
     女は喉から苦痛の声と、信じられぬ物を見る目つきで、己の二の腕の半ばから無くなっている右腕を見つめた。
     その右腕からは、噴水の様に血が溢れ出した。
     そして、女が作り出した火球は制御を失い、女自身を焼いた。
     「がぁぁぁ!!」
     女は苦痛の中、魔法を制御。何とか右腕を焼くだけで済んだ。
     そして幸いにも、傷口が焼けたお蔭で、右腕でからの出血は止まった。
     荒い息を吐き、女はユナが居た場所を睨んだ。何かあるとすれば、其処しか考えられなかったからだ。
     そしてその予想は当たり、炎の中から二丁の魔装銃を手にしたユナが姿を現した。
     ユナが着ている服は所々が焼け爛れていたが、ユナ自身には火傷の跡は見当たらなかった。
     「な、なぜ……」
     女は痛みから来る苦痛の所為で、それだけを言うのがやっとだった。
     「ああ、何も言わなくってもいいわ。何を聞きたいか分かってるから。私が無事な理由と、何故魔方陣が破られたのかでしょう?」
     ユナは銀色に鈍く光る魔装銃、『デット・アライブ-01』と黒光りする魔装銃、『デット・アライヴ-02』を女に見易いように前に出し、
     「この二丁の魔装銃は国王から貰った物なんだけどね。二丁とも、魔科学を研究中に精製できた希少金属で出来ているの。その希少金属の所為かどうかは知らないけど、この二丁の魔装銃にはある特性があるのよ」
     「……特、性……?」
     「そう、特性。『デット・アライヴ-02』……黒い方ね。それには、私が特定の魔力を流し込むと、魔力壁を作り出すの」
     そう言って、魔力を『デット・アライヴ-02』に流し込んだユナ。
     すると、確かに『デット・アライヴ-02』の銃口の前方には、魔力壁が現れた。
     「これは、私が流し込む魔力の量によって強度も大きさも変わるわ」
     そう言って、魔力壁の大きさや強度を変化させていく。
     「さっきの魔法はこれで防いだの。タイミング的に魔法で防いでも、無傷ではいられなかったからね」
     今度は『デット・アライブ-01』を魔方陣を構成している文字に銃口を合わせた。
     「こっちの『デット・アライブ-01』にも、特定の魔力を流せば、特定の弾丸かE・Cを使用すると―――」
     ―――発砲。
     すると、頑丈なはずの魔法陣の結界を突き破り、魔方陣を構成している文字を打ち抜いた。
     打ち抜かれた場所は、どれほどの威力が込められていたのか、大きな穴が出来た。
     そして、魔方陣を構成する文字が崩されると、あれほど強固だった結界が、嘘のように消え去った。
     「―――っ!!」
     それに顔を強張らせる女。そして女は理解した。これで、さっきは自分の腕を吹き飛ばしたのだと……
     「今使用しているのは、魔力弾。何故だかは知らないけど、私が魔力を込めると、通常の数倍も威力が上がるの。でなければ、あの結界を打ち抜くには辛かったでしょうね」
     「……なるほどね。そんな隠し玉があったなんてね……。もういいわ、殺しなさい」
     ユナに勝てない事を悟ったのか、諦めた様に全身の力を抜き、石畳に横たわった。
     「ええ、もちろん。最初からそのつもりよ」
     ユナは罪悪感も感じていない口調でいった。
     すると女は僅かに苦笑し、
     「じゃあね、乳臭い小娘」
     「ええ。じゃあね、ぺチャパイオバサン」
     そして二丁の魔装銃から放たれた弾丸は、女を打ち抜いた。
     「……そう言えば、名前聞くの忘れてたわ」
     そう言ってユナはポリポリと頭を掻きながら、出口へと向かった。
     すでに外で待っているであろう、レオンの元へと―――
     ユナが立ち去った後に部屋に残ったのは、性別さえ判断出来ないほどに壊された、一人の人間の遺体だけだった。


     街道沿い―――
     ユナとアレンは、『ミルス』から伸びる街道を歩いていた。
     事後処理をさっさと済ませた二人は、そうそうに『ミルス』を後にしたのだ。
     その主たる理由が、本物の『ユナ・アレイヤ』におっかなびっくりしながらも、遠巻きに観察する町の人達にユナが切れかけたのが原因だったのだが。
     「では、ご苦労様でした。これが今回の報酬です」
     そう言ってレオンが取り出したのは、お金が入った袋と、数個のE・Cが入った小箱である。
     ユナは宮廷魔法使い入りを謝絶した後も、謝絶した際に何故か国王に気に入られ、度々国王や国からの依頼を受けているのだ。
     「どうも。あ、後国王に、これ役に立ってるって言っておいて。私がお礼を言っていたって」
     謝絶した際に何故か非常に気に入られたユナは、二丁の魔装銃もその際に国王から贈られたものだった。
     ちなみにユナが貰った魔装銃は、他の魔装銃に比べて製造費が恐ろしく高かった。
     その為にコスト的にも考えても、今後作られる事は無いであろう。その為に、現存するのは現在ユナが持っている二丁だけである。
     ちなみに制作スローガンは、制作費は無視して、軽くて頑丈で扱い易くて、威力は抜群。ついでに女の子でも、片手撃ちができればなお結構……だったそうだ。
     結果は見ての通りで、二度と作ろうとは思わないほどお金が掛かったらしい。
     「分かりました。それでは、失礼します」
     そう言って丁寧にお辞儀をしたレオンは、王都へと帰って行った。
     ユナはユナで、義兄を探す旅に戻った。
     「もう、お義兄ちゃ〜ん!! 一体何処にいるの〜〜〜?!」
     夕暮れの空に、ユナの声が木霊した。



     その頃、義兄は薄暗い森の中―――

     「ん? 今、ユナの声が聞こえた様な気が……気のせいか。せいやっ!」
     右手に握っていた連接剣を振り回し、寄って来た魔物を数体切り飛ばした。
     今、義兄の前には、魔物、魔物、魔物。見渡す限りの魔物の群れ。
     その一番奥に、真祖のヴァンパイヤが控えていた。
     何故こんな所に真祖が? と思わずには居られないのだが、答えは簡単。
     義兄が、その真祖の縄張りに入り込んだからだ。正確には、道に迷っている内に、迷い込んだのだが。
     ちなみにこの吸血鬼君、真祖だと自分では言ってはいるが、実際は真っ赤な嘘である。
     ただ単に、覚醒遺伝子、あるいは先祖還りをした人物である。
     その為だろうか、力だけは限りなく真祖に近いヴァンパイアであった。

     そんなこんなで、今、義兄は大ピンチ中。
     「E・C起動! うぉぉぉおおおっ!! 全員纏めてくたばれぇぇぇえええ!!」
     体全体を捻り、遠心力を利用しての斬撃。義兄が使用したE・Cは風属性の物。
     連接剣が纏った風は、その斬撃をより鋭くし、触れる物全てを切り飛ばした。
     「でやぁぁぁ!!」
     一回転を終え、二回転目には、剣に纏った風を開放。
     刃と化した風は、義兄を中心として、伸びた剣が届かない所に居る敵を切り飛ばした。
     「俺は、俺はこんな所で死ねない! 俺は再びユナに笑顔を取り戻させるその日までは、死ねないんだぁぁぁっ!!」
     鬼神と化した義兄は、群がる魔物を蹴散らし始めた。
     それを見ていた真祖がポツリと漏らした。
     「奴は本当に人間か?!」
     チョッピリ、逃げ腰気味の真祖だった。


     現在の義兄の位置―――
     故郷から直線距離で137km
     果たして義兄は、無事自力で帰郷できるのか!?



     次回予告―――

     次回予告は俺っチ、マオ様がやるのだー!
     んー? 関係ないやつがいるってー?、何故かだってー? それは俺っチの魅力に取り付かれた奴が居るからだー!!
     ではー、いくぜぇー!
     次回、『捜し、求めるもの』
     嘗て義兄が迷い込んだ薄暗い森の中ー、ユナは新たな仲間を得るかもなー?
     予定は予定であって、未定なのだぁー!
     そこんところー、宜しく―!!
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