Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■274 / 2階層)  ツクラレシセカイ(シーン1-1)
□投稿者/ パース -(2006/05/19(Fri) 19:49:21)
    シーン1-1「日常」


    まぶたを開く。
    見えたのは見知らぬ場所。
    ぼんやりと広がる視界に映るのは慌ただしく動く人々。
    彼らの誰もが何かを叫び忙しく走り回る。
    彼らは口々に何かを言い合い、操作盤を殴るように操作する


    (何だろ・・・・これ・・・)


    どこかの研究所のようだ。
    走り回る人々は皆白衣を着ている。
    自分は何かの入れ物に入っているらしい。
    意識は遠くなりがちで、何より・・・・眠い。


    (そっか・・・これは夢か・・・・)


    夢の中だということに気付けば今見えている物も何の意味もない物だと理解する。


    (夢の中なら何がどうなっても変じゃないよね、うん、きっとこれは夢、何より眠いし)


    夢の中で眠ると目が覚めると聞いたことがある、もう一度眠りにつこうと目を閉じる。
    別に聞きたくもないが走り回る人々の声が聞こえた。

    「どう――――――、誰か――――のか!」

    「ダメで――――、―――が――――起動――――ません」

    「―――反応が―――――ません!、――A-10からA-7――――ロスト、――――危険です!!」

    「まさか――――――反乱―――」

    「誰か!――署長を――――早く!」

    ほとんど言葉の意味を考えるまもなく『夢』の中で眠りにつく。

    ――――――――――――――――――――――

    ――――――――――――――――

    ―――――――――


    ◆  ◇  ◆


    ――朝――

    エルリスは目を覚まし、体を起こすと同時に一言

    「変な夢」


    顔を洗ってすっきりしよう、エルリスはそう考えベッドから抜け出す。
    階段を下り、洗面台へ向かう。
    鏡を見ると眠そうな目をしている自分が鏡に映っている。
    蛇口をひねり、水を出す。

    ――バシャッ

    水は冷たかった。
    しかし顔を洗うと気分はすっきりする。
    鏡を見ると、いつもの顔に戻っている自分が映っていた。
    鏡を見ながらふと思う。

    (そういえば、何の夢を見てたんだっけ?)

    ついさっきまで見ていた『夢』のことは既に頭の中からきれいに消えていた。

    (ま、いっか)

    忘れてしまった夢のことなんてどうでもいい。

    (それで、今からどうしよっか)

    時計を見るといつもよりかなり早い時間だった。
    もう一度眠ろうか、朝ご飯にしようか迷っていると


    「珍しいな、エルリスがこんな早くに起きるなんて」


    すぐ後ろにクライスが立っていた。


    ◆  ◇  ◆


    「珍しいな、エルリスがこんな早くに起きるなんて」

    朝、いつものように起きて、顔を洗おうと洗面台に向かうとエルリスがいた。
    エルリスにしては早い起床だったので、声をかけると

    「お、おはよう、クライス」

    返ってきたのは朝の挨拶。エルリスは少し慌てているように思えた。
    俺もエルリスの目を見て挨拶を返す。


    「おはよう、エルリス」


    「・・・・・・・・・」

    「・・・・・・・・・」

    見つめ合ったまま、数秒の沈黙。

    「・・・・・・・・・」

    「・・・・・・・・・」

    うっすらとだが、エルリスの顔が赤くなったような気がする。

    「・・・・・・・・・・・・・・」

    「・・・・・・・・・・・・・・」

    さらにエルリスの顔が赤くなる

    「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

    「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


    「あのー・・・・・・・クライス?」


    沈黙に耐えられなかったのか、エルリスが口を開く。


    「何?」

    「何か用があって話しかけてきたんじゃないの?」

    「まぁ、用というか」

    用事と言うほどでもない簡単な事である。

    「俺も早く顔を洗いたいから、待ってるんだけど?」


    途端にエルリスの顔が赤くなり、慌てて洗面台から離れる。

    「あ、ああ!!そう、そうよね!あはは、ごめんなさい!私はもう終わったから、クライスが使って」

    エルリスはそう言うと、スタスタと食堂の方へ向かっていった。
    俺も顔を洗おうと洗面台の前に立つとエルリスが何かを思い出したようにクルリとその場で半回転して声をかけてきた。

    「そういえば、朝食は何にする?」

    「いつものように、トーストとミルクとベーコン」

    「わかったわ」

    そう言ってエルリスは食堂に向かって歩いていった。
    さっさと顔を洗って食堂に行こう。


    ◆  ◇  ◆


    食堂に向かって歩いていたエルリスはふと立ち止まりうしろを振り返る。
    そしてクライスがいないことを確認し、一言


    「なんで、気配もなくいきなり後ろに立つかな・・・・・・・・びっくりするじゃない」


    時々、クライスは全く気配がないことがある。
    そのせいで、驚かされてしまうこともよくある。
    なんでクライスの気配が全くしないのか、それはよくわからない。



    「うにゅ・・・・・・・お姉ちゃん・・・・?」

    セリスが階段を下りてきた。

    「おはよう、セリス」

    「うん・・・おふぁ・・・・・ぁよう」

    半分くらい眠ったままのセリスが挨拶を返す・・・・が

    「ムササビーどこー?」

    「・・・・はぁ・・・?」

    「ムササビーがこうグワーって飛んできてバァーってなったの・・・・」

    「なに寝ぼけてんのよ・・・」

    セリスはそのまま「ムササビー」とか意味不明なことを呟きながらフラフラと洗面所の方へと歩いていった。
    フラフラ歩くセリスの背中を見ながら、エルリスは

    (ご飯の準備しよ・・・・・)

    少し疲れた気分でそう思った。


    ◆  ◇  ◆



    ―――朝食

    あの後、朝食の準備をしたエルリスと、それを手伝いに来たクライス、そして顔を洗ってやっと目が覚めたらしいセリスの3人で朝食を食べていた。
    テーブルのひとつを3人で囲う、朝食の内容はいつも通りトーストとベーコン、ミルクである。
    トーストにはジャムかバター、好きな方を付けたり付けなかったりする。
    3人とも、それほど食べるわけではないので、朝はこれで十分である。

    そして、食べ終わると、3人で朝の会議をするのが毎日の日課である。



    ◆  ◇  ◆


    「今日の予定は何だっけ?」

    と、クライス

    「私とセリスは学校、クライスはギルドにお仕事、よね?」

    これは私のセリフ

    「毎日同じ事の繰り返しだー」

    セリスが少しつまらなそうにぼやく。

    「だってそうなんだから仕方ないだろ」

    実際その通りである。

    「でもさ〜たまには刺激が欲しいよー」

    「刺激って言ってもねぇ」

    「ねぇ、クライス、この前言ったこと考えてくれた?」

    「この前?」

    「ほら、この家を旅館代わりにしたらどうかって話」

    「ああ、あれね・・・却下」

    「なんでー?」

    「何回も言っただろ」

    「知り合いから預かってる物って話?」

    「そうだ」

    「「ちぇーもったいないのー」」

    私とセリスの二重奏を最後に一旦会話がとぎれる。


    それにしても、本当にもったいない話である、このやたらとでかい家を使えば旅館くらい簡単にできそうな物である。
    無論、旅館をやることが目的ではない、セリスの言う「ちょっとした刺激」である。

    今まで何度言っても却下されたので今回も期待はしていなかったが、やっぱり却下された。
    予想通りに却下してくれたクライスの顔をなんとなく見ながらこの屋敷のような家のことを考える。

    この家には現在3人しか住んでいる人はいない。
    ――そう、3人だ

    今、私達が住んでいるこの「家」、大きさはその辺の宿泊施設を軽く超え、ヘタをすれば貴族の屋敷と間違えんばかりのサイズを誇る。
    すると当然のように部屋の数もかなり多く数十人が同時に泊まることが出来る。
    それゆえ、食堂も無駄に大きく宴会が出来そうなほどあり、そのための長テーブルやイスがかなりの数使われないまま、食堂の隅に放置されている。

    ――一度、何でこんなに大きな家をクライスが持っているのかと聞いたら、

    「知り合いが旅に出てる間、俺が預かることになってるんだ」

    と、言っていた。
    (クライスの知り合いって一体何者・・・?)

    そして、この広大な屋敷に、住んでいるのはたった3人である。

    (もったいないなぁ・・・)

    当然のようにそう思う、エルリスであった。
    そうしていると、クライスがこっちの方を向き、目があった。


    ◆  ◇  ◆


    こちらの方を少し恨めしそうに見ているエルリスと目があった。

    何度言われてもこれは譲る気はなかった。

    本来の持ち主に何の断りもなく、別の使い方をするのは気が引けるし、何より問題なのは

    (奴の持ち物だからなー・・・勝手に旅館やってどこか壊したりした日には・・・・・血の雨が降るな・・・・)

    自分の考えに自分で冷や汗をかきながら、いまだに恨めしそうにこっちを睨んでいるいるエルリスを見る。

    (何度言われても、この家を本来と違う目的で使うのはダメだ)

    そういう意志を込めてエルリスをにらみ返す。

    しばらくにらみ合うこと数秒。

    「朝っぱらからお二人はアツアツですねー」

    セリスの一言に二人ともずっこけた。




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