Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■281 / 2階層)  ツクラレシセカイ(シーン2-2)
□投稿者/ パース -(2006/06/10(Sat) 12:01:14)
    ――サンドリーズギルドアウルスエリア本部――


    サンドリーズギルドは大陸中の都市に存在するが、その中でも各地域の首都にはエリアごとに本部が設置されている。
    その中のアウルスエリア本部にエルリスとミコトは到着したのだった。

    アウルスエリアの本部は、全部で5階建ての砦のような作りをしている、1階では受付があり、ここで仕事の依頼や、任務完了の報告などをすることが出来る。
    2階以降はアウルスエリアを本拠地としているチームの事務所などが置いてある。

    エルリスとミコトの二人は、サンドリーズギルドにたどり着くと真っ直ぐ受付に向かい、そこで用件を伝える、しばらく待つと本部内へ入ってもいいという意味の許可証が発行される、ギルドに所属しているメンバー以外はこれがないと内部に入ることは出来ない。


    ◆  ◇  ◆



    エルリスは許可証を発行して貰うと、クライスの事務所に向かうために階段へと向かい、階段の前で見知った顔と出会った。

    「あれ、グランツさんじゃないですか」

    エルリスが声をかけた大男が返事を返す。

    「ん、おう!エルリスじゃないか、久しぶりだな!ガハハハハ!元気か」
    「あ、はい、元気です、それに昨日会ったばっかりです」
    「ん?そうじゃったか、グハハ!」

    彼、グランツ――グランツ・ライアガストは、70歳近くとは思えないほどの健康的な肉体をしていて、いつ見ても変わらない黒い鎧をまとい、仕事にも戦闘にも使える巨大な金槌を背中に付けていて、笑うたびに揺れる口元の髭のせいかなんというか山男のような見た目をしている。
    彼はクライスのチーム所属の鍛冶師である、武器の作成や修理等を一手に引き受けている。(戦闘員兼補助要員といったところだ)

    「エルリス、お主だけか?ミコトが来ると聞いていたんじゃがな!」

    彼は口元の髭を揺らしながら意味もなく豪快に笑う(この笑い方はむしろ山賊か)。

    「相変わらず元気そうじゃないか、グランツのじーさん」
    「おおっ!ミコトもいるではないか!グハハ、若い娘が二人!ガッハッハ、こりゃ縁起がいい!!」

    グランツがミコトに近づいていき、ミコトの笑顔が一瞬で引きつる。
    見るとグランツがミコトのおしりを触っていた。

    「グハハハ!いい尻をしとるのう」
    「何しやがるこのスケベじじい!!!」

    ミコトがグランツの腕を瞬く間に捻り上げる。

    「うぐあ!!冗談じゃ、ミコト、冗談じゃから離し・・・イデデデデ!年寄りはもっと優しく扱うもんじゃぞ!!」
    「まったく・・・・このエロオヤジめ・・・・・ほんっとに変わらないね・・・・」
    「ミコト〜やりすぎないでね〜」

    この二人は割と仲が悪い、というよりミコトが一方的にグランツを警戒している、なぜならグランツは時々若い女の子のおしりを触ったりするからだ(エルリスやセリスもたまに触られてそのたびにクライスかミコトが鉄拳制裁を喰らわせている)ちなみにエルリスはそれほどグランツのことが苦手ではない。

    (おしりを触る癖さえなければいいお爺さんなんだけどね・・・・)

    エルリスは苦笑いをしながらいまだに腕を捻り上げられているグランツを眺める、そしてふと思ったことを口にする。

    「そういえばグランツさんはここに何しに?」
    「おう、そうじゃったクライスからミコトがそろそろくる頃だと聞いていてな、迎えに来たんじゃった、ガハハハハ・・・・・・・・・ミコトや、そろそろ離してくれんかのう、腕が痺れてきたんじゃが」
    「このエロボケじじいめ・・・・まったく・・・・・今度やったら許さないよ」

    今まで何度も言ったセリフを言ってミコトがグランツの腕を放す。

    「グハハハハ、ミコトも相変わらずのようじゃな!若い娘は活きがいいわい!ガッハッハ!クライスのところに案内するぞ、付いてこい!グハハ」

    まんま山賊のようなことをいいながらグランツが歩き出す。

    「相変わらず元気なお爺さんだね」
    「あのじいさんだけは何度やっても苦手だ・・・・・」

    エルリスはミコトの疲れた声を聞きながら歩き出し、ミコトものろのろと付いてきた、そうしてエルリス達はグランツに案内されてクライスの事務所へと向かったのだった。


    ◆  ◇  ◆


    ちょっとここでサンドリーズギルドでのいくつかのシステムについて説明してみよう。

    ギルドに参加するためにはある程度の戦闘能力が必要で、いくつかの試験をパスした者がギルドに参加できる(ギルドに参加した者達は総じて「傭兵」と呼ばれ、特に個人および少人数で活動する者のことを「ハンター」と呼ぶ)

    ギルドでは各傭兵ごとに任務達成率や、高難易度任務達成などによってA〜Eランクに分類される、チームを開いた場合は、その集団に所属する傭兵のランクの平均によってそのチームのランクが決定される、ちなみにチーム(パーティーでもグループでも団でも呼び名は様々だが)を開くためには5人以上がその集団に所属していること、設置にかなりのお金がかかることなどいくつか条件がある。

    とはいっても、当然のことながら、人数が多い方が任務遂行には楽であることや上位ランクチームにはギルド内に事務所が設置できることなどチームでいる方が得であることは言うまでもない。

    ギルドではランク分けで上位に入るチーム(A〜Bまで)にはそれぞれに事務所を設置しても良いことになっている。
    クライスが開くチーム「ノーザンライト」はメンバー数が最低限度の5人というかなり小さなチームだが、文句なしのAランクに分類されている。


    ◆  ◇  ◆


    グランツに案内されたエルリス達は、そのまま階段を上がり、4階へと向かった。

    そして、クライスのというより「ノーザンライト」の事務所に到着した。

    「ガハハ、さぁ、入れ入れ」
    「お邪魔しまーす」
    「邪魔するよー」

    事務所の中は割とこざっぱりした雰囲気で、ソファーがひとつありテーブルを挟んで向かい合う形にもうひとつ置いてあり、その向こう側にデスクがひとつ(書類や雑誌などの様々なモノがごちゃごちゃになっている)、その他は左側の壁に本棚がひとつ置いてあるだけだ、それから奥の方に扉がひとつあった。

    「あれ・・・・クライスは?」
    「む、奴なら奥じゃろうて」

    そう言うとグランツはズカズカと奥の扉を開けて入っていってしまった。
    エルリスは慌ててそれを追う。

    「―――うわっ・・・・」

    扉をくぐると、今度はやたらと生活臭溢れる空間だった。
    先ほどの部屋より広い部屋で、左側にキッチンが付いていて、食器棚などがあった、部屋の真ん中には先ほどのより大きなテーブルがひとつとソファーがふたつ(そのうちひとつにクライスが座っている)、先ほどのよりは遥かに整理整頓されたデスクがふたつ、奥の壁際には本棚が三つに窓がひとつ、部屋の隅に目をやると、グランツの私物と思われる小型のハンマーや石の塊が置いてあった。

    「なんか・・・・雰囲気違いすぎない・・・?」
    「うむ、そのような細かいことはあまり気にするでない」
    「はぁ・・・・・・・・・・」

    細かいことなのかなぁ・・・とエルリスが考えてるうちに、グランツはクライスのところまで歩いていった。

    「おう!クライス!エルリスとミコトを迎えてきたぞい!」
    「ん、ああ、どうも・・・・・って何でエルリスが?」

    そこでようやくクライスがこっちを振り返る。

    「や、やっほ〜」

    エルリスがちょっと抜けた挨拶をする。

    「・・・・・・・・・・・・・・・・」

    それを見たクライスはちょっと頭を抱えてから、右手を挙げて固まっているエルリスを無視して、ミコトに言う。

    「ミコト、何でエルリスを連れてきたんだ?」
    「ん〜?別に隠すほどの事じゃないだろう」
    「まぁ確かにそうだが・・・・・連れてきてしまったモノは仕方ないか・・・・」
    「むー何よ、私が来ちゃまずいことでもあるわけ?」

    エルリスがむくれる

    「そう言う訳じゃないんだが、今度の依頼エルリスとセリスには危険すぎる任務だったからな」
    「危険すぎるって、ただの盗賊退治じゃないの?」
    「そういえばそうだね、エルリスに黙ってるほどのことだったのかい?」

    少なくとも、エルリスは学校で普通以上の戦闘訓練は受けている、普通の盗賊程度なら今のエルリスでも十分相手に出来るはずだ。

    「あのな、普通の盗賊退治がAランクまで上がってくると思うか?」

    「え・・・・・?」

    そういえば、確かにそうだ、Aランクといえばギルドの顔、いわば看板役者だ、そんなかなりの腕を持つ者達を、「ただの」盗賊退治にわざわざ駆り出す必要は無い。

    「えーと・・・・それじゃあ・・・・どういうわけ?」

    「わかったわかった、今からちゃんと説明してやるから、エルリスもミコトもまず座れ」

    クライスに促されて、二人はクライスに向かい合うようにして、座ると、クライスの少し長い話が始まった。


    ◆  ◇  ◆


    クライスの話をまとめると、次のような話らしい(ミコトよりはわかりやすかった)。

    まず、アウルスのずっと西の方にあるコルクス砦に盗賊が住み着いて近隣の村々を荒らし回っていて、村の人から依頼が届いたという、ここまでは、ミコトから聞いた話だ。

    だが、どうやら話はそれだけではなかったらしい、近隣の村々から依頼を受けたギルドは初めDランクやEランクの傭兵でも十分任務を達成できるだろうと判断し、EランクとDランク、それからCランクの傭兵チームを複数投入した。

    しかし結果は惨敗だった、50名以上のE~Cランクの傭兵を投入した作戦だったがほとんどが全滅、わずかに数名帰還した者達の話によると、盗賊は全部で500人ほど、盗賊達の頭、「チカブム」と呼ばれる男が異常な強さを誇ることなどが知らされた。

    この大失態に、サンドリーズギルドは自らの威信をかけてA~Cランクの上位ランクの傭兵達をコルクス砦の盗賊討伐戦に参加させることになった、と言うことらしい。


    ◆  ◇  ◆


    「はー・・・・・・・」

    クライスの話を聞き終えたエルリスはなかなか複雑な話に、軽くため息をつく。

    「サンドリーズギルドもメンツってモンがあるからな、次は確実に盗賊を叩き潰すつもりだ、噂じゃ100人以上の傭兵達を使うとか言われてる、報酬もかなり高額だそうだ」

    「へー・・・・・・大変だねぇ」

    ミコトが意味のない感想を漏らす。

    「それで、エルリス、お前はどうしたい?参加したいか、したくないか」


    クライスの問いにエルリスは


    「行くよ」


    そうはっきりと答えた。
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