Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■290 / 5階層)  ツクラレシセカイ(シーン2-5)
□投稿者/ パース(前回よりさらに増量中)(ぇ -(2006/06/17(Sat) 13:41:09)
    エルリス達は先ほど捕らえた盗賊から聞き出した、親玉がいると思われる砦の最奥部への近道を歩いていた。
    近道と言っても人1人通るのがやっとというとても狭い道で、そこをエルリス達はノロノロと進んでいた。


    「それにしても、かなり狭い道ね・・・・・」
    「ホント、時々ネズミも出てくるし・・・・・嫌な道ね」
    「全くだな、砦に入ってからまだ一度も戦ってないのにこんなに汚れちまった」
    「あのな、おぬし等はまだなんマシじゃぞ・・・・・・ワシなんか体がでかいからこうして・・・・・・・イデデデデ・・・・・無理矢理すすんどるんじゃからな」


    本人の言うとおり、ただでさえ体の大きい上に大鎧を着込んでいるグランツはガリゴリ、ゴリゴリ、と隊列の後ろでエルリス達が通った後の道を無理矢理進んでいた、そんなグランツにアレスがちょっかいをかける。


    「グランツのじーさん、痩せた方が良いんじゃねえか?」
    「うるさいわい・・・・・(ゴリゴリ)ワシの体はな(ズリズリ)太ってるんじゃなくて、筋肉質なだけじゃい・・・・・・」
    「だったらせめてその鎧だけでも脱いだらどうなんだよ」
    「この黒鎧はな、ワシが自分で作った特注品なんじゃぞ!(ゾリゾリ)これには様々な能力が付加して(ボクボク)あってな、なんどこの鎧に命を救われたことか、思い出すだけで(ガゴッ)・・・・・む?・・・・・・・・・・・むむ・・・・・ぬおっ!はまった!動けん!!」
    「やっぱり痩せたほうがいいね」
    「そうだな」
    「・・・・・」
    「まて、お前達!置いていくな、ミコト、後ろから押して(ゲシゲシ・・・・・)イデデデデ・・・・・ミコトや、蹴るんじゃない!」
    「日頃の行いが悪いからね(ゲシゲシゲシ)、その報いを受けてるんじゃないかい?(ゲシゲシゲシゲシ・・・・・)」


    なんというか、とても敵中にいるとは思えないような平和な会話だった。
    (ちなみに、紫ローブの彼はいまだにエルリス達の後ろを一言も喋ることなく付いてきていた。)




    ◆  ◇  ◆




    エルリス達はクライスを先頭にして、いくつかの隠し通路を通り、階段を登ったり降りたりしてしばらくの間進み続けた。
    そして、いくつの小通路を抜けたのか分からなくなってきた頃、クライスがようやく出口に付いたことを告げる。

    「おい、みんな、そろそろ外に出るぞ、いきなり敵とはち合わせるかもしれん、準備しろ」

    「やっとついたぁ・・・・」

    エルリス達は今のところ一度も戦闘をしていないが、着ている服は隠し通路やら地下通路やらを通っているうちに泥だらけになっていた。
    しかし、たくさんの盗賊と何度も戦うことになるよりは遥かにマシである。

    「よし、行くぞ」

    耳を澄まして、外の様子を探っていたクライスが最初に小通路から外に飛び出る。
    それに続くようにアレスが飛び出し、さらにリリアが続く。
    そして、エルリスも飛び出そうとした直後、



    「なんだぁ・・・・誰かいるのか?」



    クライス達が飛び出したのとは反対側の壁から(そっちも隠し扉になっていたらしい)盗賊が一人顔を出したのである。

    「え・・・・・?」
    「ん・・・・・お前は・・・・・・・・?」

    盗賊と見つめ合うこと数秒。

    「うわぁ!盗賊!!」
    「・・・・・ッ!!・・・・・・・敵だぁ、ここに敵がいるぞ!!!」

    エルリスはびっくりして大声を出し、そして盗賊は仲間を呼ぶために大声を出した。

    「てめぇ!ここで何してやがる!!」

    そう言って盗賊が掴み掛かってくる。

    「うわ!エイッ!」

    それに対し、エルリスはとっさに半歩下がって槍を突き出す。
    エルリスの突き出した槍は盗賊の肩に突き刺さり、盗賊を壁に縫い止める。

    「ぐあっ!!!」

    そして、エルリスは槍を左手に持ち替えて、空いた右手を盗賊の鳩尾みぞおちに叩き込む。

    「ハアッ!」

    ごふっと声を漏らして盗賊は沈黙する。
    ふぅとエルリスが気を緩めた瞬間、

    「どこだ!どこに敵がいる?」
    「おい、そこでなにしてんだ・・・・ってテメェよくも仲間を!!」

    そう言って盗賊が二人通路に飛び込んできたのだ。

    「うわっ、マズ!」

    エルリスはたった今倒した盗賊の肩から槍を引き抜き構えようとするが、如何せんこの狭い通路、途中で引っ掛かってうまく構えることが出来ない。

    「ヒヒッ、こんなところでそんな長得物が使えるわけねえだろうが!!」

    そう言って盗賊の片方がナイフを構え、一気に突撃してくる。

    「「エルリスッ!」」

    ミコトとグランツが叫ぶが間に合わない。
    これまでか、と諦めかけたとき、



    ―――ヒュッヒュッ



    風切り音が聞こえ、

    「ぐあっ!!」
    「がっ!!」

    盗賊二人の胸に二本のナイフが突き刺さった。

    「え・・・・・・?」

    盗賊はすぐにその場で崩れ落ちる。
    ナイフの飛んできた方を見るが、ミコトとグランツが呆けた顔をしているだけ―――イヤ、違った、もう一人、紫ローブの奴がいた。

    「えっと・・・・あなたが助けてくれたの?」

    そう紫ローブに声をかけてみるが、そいつの反応は軽く頭が動いただけだった(もしかしたら頷いたのかも知れない)。

    「ありがとね」

    そう言ってみたが、紫ローブは、特に反応を返してこなかった。

    (なるほど、ホントに無口な人だね)

    そう思いながらエルリスは、通路の外に飛び降りようとして、ふと気付く、

    (ちょっと待って、さっき盗賊と紫ローブの人との間には私だけじゃなく、グランツとミコトもいたよね・・・・・・それなのに正確に盗賊二人に投げナイフを命中させるって・・・・・・・)

    どうやら、もただ者では無いらしい、そう理解して通路の外に飛び降りた。




    ◆  ◇  ◆




    小通路の外では、クライスとアレス、そしてリリアが心配そうな顔で待っていてくれた。

    「なにか、声が聞こえたが、大丈夫だったか?エルリス」

    そう声をかけてきたクライスに、エルリスは笑顔を返す、

    「うん、ちょっと危なかったけど、紫ローブの人が助けてくれたよ」
    「アイツが・・・・・?なんでまた」
    「わかんないけど・・・・・」
    「まぁ、エルリスが無事で良かった」
    「うん!」

    そうしてると、グランツとミコト、そして紫ローブが通路から飛び降りてきた。

    「よし、みんな無事だな、この部屋を抜けるとすぐに盗賊の頭チカブムがいると思われる場所だ、気を引き締めていくぞ」
    「「「おー!」」」




    ◆  ◇  ◆




    エルリス達が小通路から飛び降りた部屋から出ると、そこは先ほどの小通路とはまるで違う広さを持つ長い廊下にだった。

    「チカブムって奴はどこにいるのかな」
    「・・・・・・たぶんこっちだ」

    しばらく周りを見回した後クライスが答える。

    「何でそっちだと思うわけ?」
    「勘だ」
    「勘って・・・・・・・」

    クライスが走り出してしまったのでエルリス達も仕方なくそれに追従する。

    しばらく走っていると、正面に大きな扉が見えてきた。

    「たぶん、あれだな」

    そう言ってクライスは一気に加速し、扉を蹴り開けた。


    「なんだぁ・・・?」
    「誰だ!?」
    「おいおい、もう敵が来たぞ」


    しかしそこには10人ほどの盗賊がたむろしてるだけだった。
    それを見回したクライスは、

    「チッ、ハズレか、雑魚しかいない」

    そう言うが、しかしそのセリフはしっかりと盗賊達にも聞こえたようで、

    「おいおいおいおいおいおい、俺らがただの雑魚だってぇ?」
    「てめぇ、自分が置かれてる状況わかってんのかコラ」
    「ヒャハハ、ぶっ殺しちまえ!!」

    ものの見事に盗賊達はブチキレて各々の武器を手に襲いかかってきた。

    しかし、クライスはそれほど気にした風もなく、ただ言う、

    「グランツ、任せた」
    「任せい!」

    そう一声吠えると、グランツは自分が背負う大金鎚を手に取り、盗賊達に向かって大股で前進した。

    「ガハハハハ!さっきのような狭いところならまだしも、ここならワシも全力で戦えるわい!!」

    そして、大金槌を大きく振りかぶって、思いっきりフルスイング。

    「があっ!?」
    「ゲハッ!!」
    「うごぉぁあ!!」

    愚かにも受け止めようとした盗賊が3人まとめて吹き飛ばされる。

    「ば、馬鹿野郎!!そんな奴を正面から相手してどうすんだ!!囲め!!囲んで殺せぇ!!」

    そう言ってグランツの背後に回り込もうとした、盗賊は、しかし

    「バカはお前だ」

    グランツの後ろにいたクライスによって一撃で斬られる。
    さらに、

    「グアッハッハッハ、ほら!もう一丁いくぞい!!」

    グランツが再度突進しながら放った大金槌によって、二人の盗賊が打ち倒される。
    そして、

    ―――ヒュン

    紫ローブが放ったであろう、投げナイフが盗賊の喉元を切り裂き、また一人崩れ落ちる。
    またたく間に半数を倒された盗賊は、

    「おい、こいつらヤベェ!」
    「逃げるぞ!!」
    「お、オカシラに報告だぁ」

    そう言って逃げ出そうとするが、

    「おいおい、今さら逃げだそうってのは虫が良すぎるよ!」
    「雑魚は雑魚らしくさっさと寝てろ!」

    アレスとリリア(裏)によってすぐさま切り倒され、10人いた盗賊達は全滅していた。
    そして、


    「しまった・・・・」
    「何?」
    「・・・・・・・・・・・活躍し損ねた」
    「そうだね・・・・・・・」

    ミコトとエルリスの呟きは、誰にも相手にされなかった。




    ◆  ◇  ◆




    「それで、チカブムって奴はどこにいるんだい?」

    ミコトが聞いて、クライスが答える、

    「さてな、俺の勘もアテにならん、まぁここに10人ほどいたってことはこの近くにいる可能性が高いと思うんだが・・・・・・・・・」

    これに対して、アレスとリリア(裏)が言う、

    「んなめんどくせぇ事ウダウダ考えるより、このあたりの部屋を全部調べたほうが早くねぇか?」
    「アタイもそっちの方が手っ取り早いと思うがね、どうするんだい?」
    「そうだな、分からないことをいちいち考えるより、手っ取り早く全ての部屋を調べた方が・・・・・・・・・待て」

    考え事をしていたクライスが急に鋭い声を出す。

    「なんだい?」
    「なにか、音がする・・・・・・誰かがここに近づいて来ている」

    クライスの言葉にエルリス達は臨戦態勢になる。

    皆が静かになり、あたりに気を配っていると、確かに、複数の足音がこちらに近づいているのが分かった。

    いつ敵が現れてもいいように、全員が武器を構えて息を潜めていると。

    「うおおおおおおおおおおお!!!!盗賊めぇえ!!!どこだ、どこにいるうううううう」

    エルリス達とは別の扉から入ってきたのは、エルリス達より先に砦に侵入したグレアムだった。



    グレアムは初めエルリス達を敵かと思い、剣を向けるが、こちらが何者か分かると、すぐに声をかけてきた。
    それからしばらくの間、グレアムとクライスが情報交換をしていたが、その間にぞくぞくとグレアムの部下達がエルリス達のいた広間に集まってきた。
    さらにもう少し待っていると、クライスが戻ってきて、「グレイブラバーズ」が全滅していたこと、グレアムの部下達も何度かの戦闘によって人数を減らし、今では20人ほどしかいないことが伝えられた。



    「それで、肝心のチカブムの居場所はわかったのかい?」

    「いや、まだだ、これからグレアム達と手分けして探すことになるが・・・・・・・!!」

    急にクライスが上を見上げた、そして――

    「グレアム、下がれ!!!!」
    「あ・・・・・?」

    声をかけられた、グレアムはしかし、間に合うことはなく、




    頭上から降ってきたチカブムによって踏みつぶされた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



    「ウハハハハハ、お前等があまりにも遅いんでこっちから出向いてやったぞ!感謝しながら死にやがれ!!!」

    チカブムは悠然と言い放った。


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