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■99 / 15階層)  〜第14節〜<夢憂鬱>
□投稿者/ べんぞ〜 -(2004/12/19(Sun) 02:32:41)
    2005/03/06(Sun) 13:16:51 編集(投稿者)

    〜第14節〜<夢憂鬱>


     死ぬ予定の人間に愛情は注がれなかった。
    ハーネットの家の長子は、500年ごとにアレイヤの長子と共にこの世から消えなければならないという、
    定めがある。子孫を残すことも認められなければ、文章を残すことも認められない。
    この4500年の間、この掟は破られたことが無い。
    「なんで・・・お母さん・・・。」
     ハーネット家の長女であり長子のシルクの声はむなしく響く。
    シルクには、充分な食事も与えられず、寝る所でさえ充分に備わっていなかった。
    「なんで・・・妹ばかり・・・。」
     母親への愛情を求める言葉は、時が経つにつれ、
    親の愛情をいっぱいに受けている妹リーンへの嫉みの言葉へと変わった。
    「私のほうが強いのに・・・私のほうが、優秀なのに・・・。」
     シルクは、宝剣『エレメンタルブレード』を手にし、妹へ呪いをかけた。
    ハーネット家とアレイヤ家にかけられた呪いと同じ方法を用いた、同種の呪いをリーンにかけた。
    リーンは姉に抵抗しなかった。リーンは、何より虐げられている姉を前に何も出来なかった自分を悔やんでいた。
    それが、シルクのかけた呪いを、妬みから渇望に変えた。
     エルリスは、この様子をあたかも傍観者のように見つけることしか出来なかった。


     夜になり作戦に移される時間帯になった。
    城内に進入したエルリスとレイヴァンは、二手に分かれると危険なので、
    一緒に探すという方法を取ることとにした。
    通常、夜間の城内への進入は困難なのであるが、レイヴァンが抜け道を知っていた。
     ところが、いざ行動開始という状況になって、突然エルリスが眠ってしまったのである。
    昼間の稽古の疲れが出てしまったのだろうか。レイヴァンはため息をついた。
    疲れている体を行使してもしかたがないので、中庭に身を潜めて休憩することにした。
     それから、2時間が経った。
    「す〜す〜〜〜。」
    「・・・。」
    「スースー・・・」
    「・・・。」
    「すぴ〜すぅ・・・。」
    「おい・・・いい加減に起きろ。」
    「す〜・・・ん?何?」
     ちっとも起きないエルリスを呆れつつ、レイヴァンはエルリスを起こした。
    エルリスは、『なんでこんな時間に起こすのよ。』と非難の眼差しでレイヴァンをにらんだ。
    しかし、エルリスが見ていた夢はあまり心地よいものではなかったので、
    いつもよりは落ち着いている。
    レイヴァンから諦めたような声が飛んできた。
    「『何?』じゃないだろ!今から城内を探すんだろ!」
    「はぁ?ここは何処?」
    「・・・。」
     エルリスは寝ぼけているとレイヴァンは思った。
    「おいおい・・・城内に真祖がいるから助けに行くって言ったのお前だろ?」
     レイヴァンはやれやれって仕草でエルリスを糾弾する。
    「え?・・・たしかに、真祖は城内にいるって情報は、精霊に調べさせたから間違いないけど・・・
    なんであんたが知ってるの?」
     エルリスは相変わらず訳が分からないという表情で答える。
    「はぁ?おまえがそう言ったじゃないか。って・・・精霊を使えるのか?初耳だぞ。」
    「やばっ・・・。」
     エルリスはあからさまに『しまった〜!』って表情でたじたじになった。
    しかし、話が食い違っている。
    エルリスには、レイヴァンに真祖の居場所のことを言った覚えも無ければ、
    今、自分が城内らしき場所にいる理由も分からない。



    「まさか・・・城内にこんな形で侵入されるとは・・・盲点でした。警備は万全でしたのに・・・」
     女性の声にエルリスとレイヴァンはおもわず振り向いた。
    そこには、女王ディシール・ネレム・フェルトとヘンリーが立っていた。
    「ククク・・・ん?・・・!?じょ、女王様!あいつらは・・・。」
     初めは余裕を見せていたヘンリーの顔がエルリスを見て豹変する。
    「どうしたのです?」
    「あ、あいつらです。ルードさまを殺したのは・・・。」
     レイヴァンは女王に敬礼して、単刀直入に言った。時間をかけたくないという気持ちが働いたからだ。
    「女王様。真祖はバンパイア達にとって大切な存在です。なぜ、このような行動をされたのです。」
     女王はレイヴァンの目を見た。敵意は感じられなかったが、剣はしっかりと握られていた。
    「剣を納めなさい、騎士よ。戦わずして解決するに越したことはありません、理由を話しましょう。」
     女王がそう言うと、レイヴァンは剣を納めた。
    「およそ1年前、連邦は突如、わが国戦争を仕掛けてきました。
    戦いはすでに泥沼化し、国の軍では持ちこたえられない状況になました。
    私は、民に苦しい思いをさせたくはありません。ですから、民を戦争に巻き込むことなく、
    勝利する方法を模索しました。」
    「それで真祖を?」
     エルリスが口を挟んだ。
    「ええ・・・。覚醒した真祖の血を飲めば、その人物には究極の力が入ると言われています。」
    「たしかに・・・もし国が滅べば、何万もの人が苦しむことになります。
    女王様のお話は良く分かります。正直な話、それを聞いても貴方と戦うことは出来ません。
    いえ・・・それは、してはならないことだと思います。でも・・・他に方法は無かったんですか?」
     レイヴァンは、エルリスの言葉に驚いた。是が非でも戦う姿勢を見せていた昼間とは別人のように感じられる。
    たしかに、無駄に戦闘を仕掛けるのは得策ではない。だから、落ち着いて話すことも重要だ。
    しかし、昼間も今の、エルリスは本音で話しているような雰囲気だった。
    「本来であれば、ありました・・・。でも、今回はそれは無理です。」
    「その方法とは?」
     エルリスがしつこく迫るので、女王は諦めたように語りだした。
    「すでに無理な話なのですが・・・。8000年ほど昔に、この地を支配権を争っていた、
    真の王家にして最強の家系、アレイヤ家かハーネット家の長子の力を使うことです。
    両家が持つ家宝を行使すれば、一撃で敵の軍の全てである1万5千人を葬り去ることが出来るといいます・・・」
    「!?」
     エルリスは固まった。
    「女王様。」
     レイヴァンは様子を伺うように尋ねた。
    「なんです・・・騎士よ。」
    「もし・・・アレイヤの長子が生きていて、彼女が王家を再興するといえば、真祖様を開放してくれますか。」
     レイヴァンは言った。彼にどういう意図があったかは分からない。
    しかし、これは昔ユナと約束した事に対する裏切りの言葉でもある。
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