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■184 / 親階層)  赤き竜と鉄の都第1話
□投稿者/ マーク -(2005/04/12(Tue) 22:00:30)
    『鉄甲都市』









    ビフロスト連邦の小さな一国の街外れの館。
    私はそこで育った。
    もっとも、私が6歳の時には既にこの大陸の中央に位置する大陸中、
    最大規模の魔術学校、リュミエールゼロのある都市に学園都市にいたので
    実際に暮らした年数は今まで生きた都市の半分にも見たず、
    すごした記憶はほとんど無かった。
    魔術学園へはどんな簡単な魔術でもいいから魔術式を構築できれば
    何歳でも入学できることになっている。
    だが普通、入学するのは十歳前後。
    はっきり言って学園としても私は異例だったのだろう。
    私がそんな小さな頃に学園としに入学したのはひとえに兄と離れるのが
    嫌だったからだ。
    その頃兄は十歳。
    既に魔術を構築することは可能だったため、入学に問題は無かったのだが、
    私が駄々をこね一緒についていくと言い出したのだ。
    無論、兄も両親も困り果てた。
    そして、兄がコレが出来たらついてきてもいいと言って、簡単な炎を出したのだ。
    必死だった私は兄が構築した魔術式を真似て無我夢中で式を構築した。
    今思えばあの時兄が炎以外の魔術を使ってたら、私はここにいなかった。
    結果で言えば、私はその魔術式を完全に、いや兄以上の精度で発動させた。
    両親も兄も信じられないといった顔で私を眺め、
    もう一度やってみるように言った。
    既にコツをつかんでいた私はさらなる精度で発動させ、
    全員に学園都市の入学を認めさせた。
    もしかしたら。
    もしかしたらと何度も考えた。
    あの時に何かが違っていたら私も兄も両親と共に笑ってあの家で
    過ごしていただろう。
    焼け落ち、廃墟となった家を思い出し、いつも思う。













    ―チュンチュン

    「ん」

    朝か。
    久しぶりに昔の夢を見た。
    でも、泣いてなんていられない。
    ミコトも言っていた。
    後悔先に立たず、過ぎ去ったものは戻らない。
    昔を振り返ることも大事だが囚われてはならない。
    今これからどうするかを考えるべきだ。

    「行くわよ」

    軽い朝食を取り、見張りとして実体化させていた使い魔に飛び乗る。
    向かう先はアイゼンブルグ。
    王国の内部に存在する独立都市であり、その優れた技術力により発展し、
    他国からも注目される技術都市である。
    アイゼンブルグは出入りこそはある程度自由だが、都市全体が外壁に囲まれ、
    閉鎖的な部分もある。
    だがその結果、魔法文明時の技術が他の国に流れることもなくその内部でのみ
    受け継がれ、その知識と技術で街は発展し現在でも世界最高レベルの技術力を誇る
    鉄の都となっている。
    また、都市自体も王国の内部にありながら他種族を好意的に受け入れており
    王国から逃げ出したものはほとんどここで暮らしている。
    位置的にも近いため学園都市、協団とも関わり合いは深いが、
    私はここに来たのは初めてである。
    市場やメインストリートは遠目にも活気に溢れ、人ごみで溢れかえっている。
    商品も食料から銃器までありとあらゆる物が揃えられ、その分混沌としている。
    兄、レイヴァン=アレイヤを探しにここまで来ていた訳だが、
    昔から、ここアイゼンブルグにはいづれ来たいと思っていた。
    鉄鋼業が盛んであり、様々な武器、銃器も揃えられたこの街ならではの物も多く、
    ここにある銃器には大変、興味をそそられている。
    兄を探すついでに見物することが出来るためここに来たのは正解だったと思った。
    無論、仲間に頼まれたことも忘れていない。
    アイゼンブルグが王国に協力体制をとっているか、
    それともただの技術流出かの調査。
    そして、もう一つはある物の返却である。
    だが、たまには少しくらい羽を伸ばしてもいいだろう。
    そう自分の中で結論を出し、街に入ったユナは一目散に立ち並ぶ店へと
    入っていった。



    「高い!!
     ベネリがこれってどういうことよ!!」
    「高いってそれが相場だぞ・・・」
    「確かに普通ならコレぐらいでしょうけど、
     こんな状態の銃が相場の値段と一緒な筈無いでしょ。
     ふざけてるの!?」
    手に持ったショットガンはすでにかなり使い込まれておりボロボロだが、
    十分修理して使える物だ。
    だが、このような中古を通常と同じ値段で売るなど容認出来る筈が無い。

    「ああ、もう分かった。
     コレでどうだ」

    そういって、提示してきた値段は中古の相場よりも少々低いくらいだ。
    無論、その値段なら文句は無い。

    「商談成立ね」
    「畜生もってけドロボー」

    金を支払い、アーカイバに仕舞う。
    流石は鉄甲都市と呼ばれるだけあって種類も豊富で
    店の数も多し、何よりその完成度が高い。
    さて、次は何を探すかな。

    「おい、嬢ちゃん」
    「何よ?」
    「そいつを修理する気ならこの先の路地を抜けたところにある店の
     偏屈ジジイに頼むといいぞ。
     選り好みが激しいから受けてくれるかどうかは分からんし、
     性格も最悪だが、腕は確かだ。
     嬢ちゃんなら気に入るかもしれん」
    「ふ〜ん」

    そういって、男が親指で指した先の細い通路を覗き込む。
    どうせ、当てもないしデッド・アライブのメンテも予定していたので
    腕のいいジャンク屋などを探していたから都合はいい。
    男が示した先の路地に入り、少し歩き細い道を抜けると
    一軒の店がぽつんとあった。
    はっきり言ってお世辞にも大きいとも繁盛しているともいえない。
    が、こんな場所にあるならそれも仕方ないだろう。
    とりあえず、ドアを開け覗き込むと店のカウンターには店主と思わしき老人が
    座って新聞を読んでいた。
    男の言ったとおり確かに初老の老人で、気難しそうな顔をしている。

    「ここって、ジャンク屋?」
    「ああ、そうだ。嬢ちゃんなんか直して欲しいのか?」
    「・・・これと、あとコレのメンテナンス」

    名前を知らないのだから仕方ないとはいえ、さっきの男といい
    さんざん嬢ちゃんと子供扱いされてるのは気に食わないが、我慢しよう。
    そう自分に言い聞かせ先ほど店で買ったショットガンと
    愛用のデッド・アライブを老人に見せる。
    それを見た瞬間、老人が驚き目を見開いた。

    「これは凄い。こいつのメンテか?」
    「ええ。完璧に整備して欲しいの。
     あと、こっちは修理より、折角だから改良して欲しいけど出来る?」
    「ワシを誰だと思っている。
    クククッ、久しぶりにやりがいのある仕事じゃ。
     二日じゃ。二日後に取りに来い。
     それまでには両方とも完璧にしといてやる」

    そういって、老人は3丁の拳銃を持って奥に潜り込む。
    店の中を見ればかなりの量の銃や機械が棚や壁に置かれている。
    そのほとんどが使い込まれた物を修理した物だと分かった。
    手にとって念入りに見てみると、型自体はそこらで売っている様な
    ごく普通の物だが、内部にかなりの改良が加えられている。
    驚いくべきことはその改良が素晴らしい。
    なるほど、これを見た限り、確かに腕はいいだろう。
    だが、なんせ預ける物が物だ。
    疑うわけではないが、念のため使い魔を一匹、霊体化させて
    ここに見張らせて置くとしよう。
    さてと折角来たんだし、どうせだからここのやつも買っていくか。
    見渡して幾つか気になるのを見つけては手に取り、確かめる。
    手の大きさなんかも気にしないと使いづらいだけだ。
    候補に入れては除外し、やっと2つにまで絞り込んだが、

    「どうしよう?」

    迷う。凄く迷う。
    ここにあるのは中古とはいえ、かなりのカスタマイズがされた物ばかりだ。
    幾つかの候補は簡単に除外できたが今度のはどちらも捨てがたい。
    かといって、両方買うというのも無駄なだけだ。
    どちらにする?
    右手に持っているのはベレッタ・M92F。
    改良点は銃身などが強化されていて、実弾の代わりにE・Cで魔力弾を撃つ点。
    銃身の強化は実弾を撃つことを考慮に入れてないため、
    魔力を阻害しない素材で強化されている。
    左手にはコルト M1911A1 。
    こっちも銃身の強化が施されてあるがこっちは純粋にベレッタよりも強固に
    改良されている。
    理由は実弾をE・Cで魔力を通して強化する点の対処のためだろう。
    威力が高ければその分銃身の磨耗度も高いからこの対処しかない。
    そうすると連射するならベレッタだが、威力ならコルトガバメントとなる。
    他にも強化点はあるかも知れないが目に映ったのはその辺だ。
    ・・・・・決めた。ベレッタで行こう。
    威力は他のことでも補えるし、実際に使うこともほとんど無いだろうから
    これでいいだろう。
    あとは他のところで弾を仕入れておくか。
    店主を呼びだし、金を払ってアーカイバにしまう。
    名残惜しくコルトガバメントを見ながら、店を出た。



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