Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■203 / 12階層)  赤き竜と鉄の都第13話
□投稿者/ マーク -(2005/04/29(Fri) 19:40:15)
    『霊眼』






    ―ガシャン!!

    「出しやがれーーー!!」
    「全くだ。
     早く戻らないとユナが心配する。
     こんな悪趣味な真似はとっとと止めて、開放しろ」

    なにやら、巨大な鳥籠のように天井から吊り上げられた牢の中には二人の男が
    閉じ込められながら、30近くの女性に向けて叫び、あるいは言い聞かせていた。

    「それは出来ない相談ね。
     貴方がこの義手の製作者、つまり彼の義手のコピーに成功した青年でしょう?
     ぜひ我が社に欲しい人材だわ」

    女はギンから奪った義手を片手で抱き抱え、反対の手で弄りながら話す。

    「それなら、俺は関係ないのだろう」
    「いいえ、貴方は間違いなく普通の人間ではないわ。
     とても興味深い存在。
     是非とも我が社に協力して欲しいと思っているのよ」
    「ようは実験動物か」
    「さすがに、そこまではしないわ。
     ただ、ちょっと調べるのに協力してもらうだけ」


    全く、よく言う。
    もはや、何を言おうとこの女には意味がない。
    この女は我が社といっていた。
    つまり、今『金眼』を取り仕切る責任者がこの女なのだろう。
    それにしても悪趣味なものだ。

    「ふふふ、強情ね。
     あのままだったら確実に死ぬところを情けをかけて助けてあげたというのに
     随分と頑固な子供たちなのね」

    全く持っていい笑い種である。
    ユナが出した霧によって前が見えないところで偶然壁にあった
    罠に二人そろってかかってしまい、捕えられてしまった。
    あまりにも情けない。

    「そりゃ、30過ぎの女から見れば俺たちは子供だろうな」
    「!!??
     いっ、今なんていった?」
    「30過ぎのババアっていったんだよ」
    「!!!!!!!! ふっふふふふ、いいわ。
     あんたたちと一緒にいた小娘たちも連れてきてあげる。
     そうすれば、貴方たちの気も変わるでしょう。
     今、協力するといえばこの子達には情けをかけて命だけは
     助けてあげるわよ」
    「止めた方がいいぞ。
     アイツを怒らせるぐらいなら魔族に喧嘩売ったほうがマシだからな」
    「何とでもいいなさい。
     直ぐに二人ともつれてきてあげる。
     この小娘たちが泣き喚く様を特等席で見せてあげるわ。
     オーホッホッホ」


    そういって、女が下がっていく。
    ・・・・・不味いな。
    このままだと―

    「この建物が崩壊するぞ」


















    「お兄ちゃん、どこ〜?」

    全くどこ行ってしまったんだろう?
    あの道は一本道だったから兵たちが来た先に進んでみたのだが、
    結局、行き止まりだった。
    今は行き止まりにあった部屋にいるのだが、どうもこの部屋で兵は
    待ち伏せしていたらしいが、今はそんなことはどうでもいい。
    お兄ちゃんは・・・ついでにギンはどこに行ったのだろう?

    「いたぞ、1人だ!!」

    また、やられに来た。
    ドアからと顔を出してきた兵に手当たりしだい、銃を撃ちこむ。
    これではストレス解消にもならない。
    まったく、お兄ちゃんはどこに行ったの?


    「どうです、ユナ?」
    「あっ、リン。
     こっちは駄目。そっちも?」
    「はい。それにあの二人の痕跡はやはりあの廊下で途絶えています」
    「じゃあ、一体どこに・・・」
    「分かりません・・・・・でも、もしかしたら―」
    『ふふふ、我が城に迷い込んだ愚かな鼠たち』
    「「誰!?」」

    突如聞こえた声に身を固める。
    すると、部屋にあった水晶の壁に何者かの姿が浮かび上がり、
    そこから声がしている。

    「映像?」
    『ええ、そうよ。
     貴方達の大切な人はこの通り私が捕えているわ』

    そういって、画面が変わる。
    そこにいたのは奇妙な籠の中にいるギンとお兄ちゃんの姿。

    「お兄ちゃん!?」
    『ふふふ、助けたかったら、私の元までいらっしゃい。
     まあ、来れたらの話だけど、でも安心して殺したりはしないわ。
     その代わり死んだ方が楽という思いをするかもしれないわね。
     オーホッホッホッホ』

    と癇に障る笑い声と共に、画面が再び透明な水晶に戻る。

    「ふっ、ふふふふ」

    今まで感じたことがないほど強大な憎悪が心の中に渦巻いている。
    いいわ、今すぐ行ってあげるわ年増のババア。
    お兄ちゃんに手を出した罪、その身を持って償いなさい!!

    「リン」
    「任してください。
     私も少々怒ってますから」

    満面の、だが普通の者なら見るだけで萎縮し、ガタガタと震えだして
    しまいそうな笑みを浮かべている。
    そして、いつもは閉じている瞼を開き、辺りを見渡す。

    「ふふふ、隠れても無駄ですよ。
     この目にかかればギンがどこにいるかなんて一発ですからね」

    どうやら、リンも実は私と同じ人種だったらしい。
    しかし、あの目は一体?

    「気になりますか?この目が」
    「ちょっとね」

    嵐の前の静けさというべきか、先ほどの憎悪はひとまず静まり返っており、
    普段どおりの会話だ。もっとも、周囲の温度は已然、下がったままだ。
    はっきり言って、ここだけ極寒の世界か、もしくは逆に地獄の業火の中かという感じだ。
    そして、あくまで怒りをしまい込んでいるだけ。
    あの女を見つけたら再び爆発することだろう。

    「この目は魔力だけを見るという変った目なんです。
     空気中みたいに魔力の濃度が本当に僅かなものなら見えないですが、
     常人の魔力程度なら全て見通せまし、魔力の個人差なんかも
     手に取るように分かります。
     さて、ギンの魔力は・・・」

    そういって、周り見回しある一点で止まる。

    「真下?」
    「というより、もしかしたらこれは地下かもしれません。
     ここから真下に21、243メートルといった位置です」
    「ふーん、方向は合ってるのね?」
    「寸分の狂いもありません」
    「じゃあ」

    と、この怒りを元にして以前創った炎の剣や炎の竜をも上回る力を
    創りだし、それを形にする。
    限界まで圧縮した炎の槍。
    あらゆる障害を焼き尽くし、撃ち破る絶対的な破壊の炎。
    そして、その槍をリンが指差した床からほんの少し離れた位置の床へと
    垂直に突き降ろす。
    放たれた槍はその圧倒的な熱量で床を溶かし、焼き払いながら下へと落ちていく。
    そうして出来た穴にリンと共に大きさを人一人掴まるのにちょうどいいくらいの
    大きさに調整した竜の足に掴まり、穴の先へと下降する。
    ふふふ、待ってなさい。







    「なあ、すごく嫌な予感がするんだが?」
    「奇遇だな。俺もだ」

    そういって、二人そろって上を見る。

    「上か」
    「上だな」

    なにかとてつもなく危険なものが来る予感を察知し、
    この先に起こりうることを想像をする。
    答えは1つ。
    それが絶望的な答えだということはこの予感を感知したときから分かっている。
    だが、それでも僅かな希望にしがみつきたかった。

    「ふふふ、そろそろ気が変ったかい?」
    「ああ、あんたか。
     あまりこっちには近づかないほうがいいぞ。
     間違いなく危険だから」
    「危険?
     いったい、何がよ?」
    「直ぐに分かるさ」

    もう、音までしてきた。
    その音は不吉な想像を現実だと認めさせるものだ。

    「まあ、いいわ。
     あなたの妹さん。
     そろそろ捕まる頃じゃないかしら?」
    「ああ、それなら平和でいいだが」
    「そうも行かないか」

    そして、何メートルもある高さの天井を何かが突き破って落ちてきた。
    落ちてきた炎の槍が鳥かごの真横をかすめ、深々と地面に突き刺さり、沈んでいく。
    そして、天井に出来た穴から二人の少女が竜に捕まりながらゆっくり
    地面まで降りてきた。

    「助けに来ましたよ。
     感謝してください」
    「ああ、あろがとう。
     ただ、もう少し大人しく来てくれ」
    「大丈夫お兄ちゃん?」
    「あっ、ああ。大丈夫だ。
     もう少しずれてれば今ごろ蒸発していただろうが大丈夫だ」
    「良かった。
     さて、ちゃんと着たわよ。
     年増」

    突然のことにぽかんと口を開いたままで固まっていた女が
    私の言葉に気を取り戻し引きつった笑みで喋りだす。

    「ふっふふふふ、散々私をコケにしてくれるわね」
    「そんなことはどうでもいいわ。
     お兄ちゃんに手を出した罪、その身を持って味わいなさい。
     年増」
    「一度ならず、二度までも・・・・。
     いいでしょう。
     貴方たちを手放すのは惜しいですが、
     ここで共に死んでもらうことにしましょう」

    そういって、女が指を鳴らしまるで何かを封印するかのような分厚い、
    巨大な壁のような扉が開いていく。
    僅かにあいた隙間から巨大な腕の先が姿を見せ、扉をこじ開けていく。
    その大きさ、姿、威圧感。
    どれをとっても今まで見たことのあるそれとは大違いだ。
    あれは何万年もの歳月を過ごしたといわれる最高種たる竜の中でも
    最長寿、最強を誇る伝説の存在。

    ―エルダードラゴン―






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