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■192 / 4階層)  赤き竜と鉄の都第5話
□投稿者/ マーク -(2005/04/24(Sun) 00:30:03)
    『手がかり』






    「どう?」
    「はあ、駄目でしたそちらはどうですか?」
    「こっちも駄目」

    お兄ちゃんの手がかりも妙な動きをした組織の情報も無い。
    が、それが逆に怪しい。
    だって、かなりの数の技師が学園都市を訪れたというのに
    その情報すら無いのだ。
    これは大きな組織が大規模な情報規制でもしたからだろう。
    おかげで、組織が王国と極秘裏につながっている確証は持てた。
    あとはそれがどこなのかだ。
    にしてもあの男はどこ行ったのよ。



    「メルナ鉱の武器だと?
     あれはまだ精製不可能、いや解析すら不可能だと聞いてたが」
    「まあな。だが、アーティファクトという可能性もあるだろう?
     とにかく、そいつを持ってる男がいてな。
     その欠片を見つけたわけだ。
     どうだ、買ってかないか?」
    「メルナ鉱か。何とか手に入れたいものではあるが・・・」
    「何やってるんですかギン」
    「ああ、情報収集だ。あのメルナ鉱を持ってるやつがいたらしいぞ。
     なんとか精製できないものか。
     サンプルがあるかないかでかなり変わってくると思うがどう思う?」
    「真面目にやってください。あまり期間がないんですよ」
    「分かってる。だが」
    「メルナ鉱って何?」

    さっぱり分からない。
    話の様子からしてなにかの希少金属だろうが聞いた事がない。

    「メルナ鉱。
     魔法文明時ですらもほとんど存在しなかった超希少金属です。
     金属としての耐久度と軽さではミスリルには敵いませんし、
     オリハルコンのような対魔力性を持っているわけではないのですが、
     ある性質を持っているんです」
    「ある性質?」
    「ええ。魔術を蓄える金属といわれ、この金属を溶かした際に完全に
     固まる前に魔術を掛け続けるとその力を備えた金属になると言われてます」
    「それって、炎の魔術を掛ければ炎の魔力を備えた魔剣になるってこと?」
    「間違ってはいませんがそのようなのは序の口です。
     たとえば重力変化の力を加えれば、魔力を通すことで剣自身の重さを
     任意に変更できる重力の剣になり、
     空間転移の魔術ならば空間を断ち、繋げる力を持つと言う話もあります。
     もっとも、魔術を長時間かける必要がありますからこれらの魔術を利用した剣は
     現在の魔術師のレベル的に考えてもほぼ製造不可能でしょう」
    「なるほど。それでも十分とんでもない金属ね」
    「はい。しかも全くと言っていいほどにこの金属は存在せず、
     精製法も不明なため伝説の金属の一つとされてます」

    重力変化といえば、バルムンクの剣も重力変化の剣って言ってたけど、
    このメルナ鉱の剣なのかな?
    もう一方はあの時に失くした武器と同じ形状変化の剣だったし。
    ということはあの武器もこのメルナ鉱の武器だったということか。

    「それにしても、メルナ鉱の武具か。
     噂の男が持っているのは形状変化に特化した武器らしいが一度見てみたいな」
    「形状・・・変化?」

    バルムンク?
    いえ、違う。
    ・・・なら、まさか!?


    「それどこの話!?」
    「ん?」
    「その武器の使い手はどこにいるの!?」
    「おい、落ち着け。どうしたんだ?」
    「・・・・お兄ちゃん」

    きっと、間違いない。
    形状変化に特化した武器、おそらくはMOS。
    だが、それはあの時に失くした物。
    それを持っているとしたらお兄ちゃんだけだ。

    「やっと・・・見つけた」






    商人に話を聞いてみるとその武器の使い手は一週間ほど前に
    ここから西に行った所の鉱山地帯に現れたらしい。
    アイゼンブルグは鉄鉱業が盛んなため当然その材料となる金属の産地でもある。
    そのため、都市内の各地で実に多種多様の鉱物が産出される。
    西の鉱山もその一つで、たまに魔物が出没するらしいが他の山に比べれば
    比較的平和なところらしい。
    が、最近その山が荒れていいるらしく、ごく最近では先ほどの商人が鉄鋼を
    仕入れに来た際、大量の魔物の襲われ逃げようとした際、助けられたらしい。
    その後、その使い手は山の中に向かい、それ以降の行方は分からない。

    「まだここにいるといいんですけどね」
    「うん」

    鉱山内の洞窟を歩いているが人っ子1人どころか魔物一匹すらももおらず、
    静まり返っている。
    情報があったのは一週間前。
    他の場所に移った可能性のほうが高いくらいだ。
    でも、可能性はゼロじゃない。
    それに手がかりだってあるかもしれない。
    クロアがいたら、お兄ちゃんの匂いを追わせれば一発なのに。
    無理やり連れて来れば良かったかな?

    「・・・なんか用か?」

    私の視線に気付いたらしく訝しげに聞いてくる。
    こいつはどうみても、只の人。
    臭いを追うなんてことは出来るはずがないだろう。
    ということはクロアより使えない男だ。

    「役立たず」
    「テメッ!?」
    「二人とも押さえてください」
    「「フンッ!!」」

    どうしても駄目だ。
    今までで散々分かっていたことだがこいつとは生理的に合わない。
    理由はお兄ちゃんの手紙を燃やした原因だからだが、
    どうやらそれ以外の理由でも気に食わない。
    でも、多分これは私のものじゃない。
    そう私の中の・・・

    「なんだコレ?」

    ギンの声に我に返り、思考を中断する。
    あったの途中の分かれ道に立ててあった看板。
    書かれた内容は危険につき進入禁止とのことだ。

    「・・・おかしいですね」
    「なにが?」
    「こっちの道にはなんの痕跡もないのですが、こっちの
     進入禁止の方の道の先からなにか音が聞こえます」
    「確かにおかしいわね」

    現在工事中だから進入禁止と書いてあるとも考えられるが
    今だ魔物と会ってない状態ではあくまで噂に過ぎないが
    この周辺は荒れてて、魔物が異常発生してるらしいから
    そんな危険な状態で工事をしているとは考えにくい。
    現に、今まで通った道にはここ最近で大量の魔物が通ったあとが見つかった。
    少なくとも魔物の異常発生は事実だろう。
    なら、この先にいるのは?

    「・・・行ってみるか」
    「そうですね、少々危険ですが向こうには何もないでしょうし
     この道を行きましょう」
    「ありがと」








    「危険と書いてあってが地盤もそんなに緩くないし壁もしっかりしてる。
     全然大丈夫じゃないか」
    「言えてますね」

    確かにそうだ。
    危険なんて書いてあったから最初はかなり慎重に動いていたが
    全然、安全なものだ。
    洞窟内だから光は手に持ったランタンのみ。
    さすがに足元は暗いが一本道だし、危険は全くと言っていいほどない。
    はっきり言って拍子抜けである。
    それにしても。

    「魔物の異常発生はどうなったのかしら?」
    「そうですよね。今まで一匹も会ってないのは流石に私もおかしいと思います」
    「もし、この先に集中してたら厄介だな。リン、気配はどれ位の数だ?」
    「そうですね、ちょっと分かりづらいのですが少なくとも集団では
     ありません」
    「じゃあ、あまり心配する必要は無いな。
     魔物は噂の男が全て倒したのかもしれない」

    確かにお兄ちゃんならそれぐらいやれそう・・・いや、やるだろう。
    でも、お兄ちゃんはここで何を?

    ―ガラ、ガラ。

    「あっ!?」
    「崖ですね。ここで行き止まりなのでしょうか?」
    「大丈夫。どうやら大きな空洞になってるだけみたい」

    細い洞窟を抜けると、大きな丸い空洞になっている空間に出た。
    大きさ的にどうも山の中心だろう。
    周りは丸く沿っていて、崖が螺旋を描いて下へと続いていて、
    通れるくらいに道はあるから下まで降りられそうにはなっている。
    ただ、足元に気をつけたほうがいいだろう。

    「ここからは気をつけていきましょう」
    「ええ、そうね。リン気配はある?」
    「・・・・音は下から聞こえます」
    「じゃあ、やっぱり降りるしかないか」

    道の幅は人一人が何とか通れる程度。
    足元の明かりが乏しいので結構危険だ。
    もっとも、もとより目が見えないリンには
    どうってことの無いことだろうが。
    崖に右手を着きながらゆっくり崖を歩く。
    さきほど、落ちた石の音からしてなかなか深い。
    でも、落ちたらどうなるやら。
    と、崖の下を見ようと内に少し体を乗り出した途端。

    ―ピシッ、ガラッガラッ!!

    「えっ!?」
    「ユナ!?」

    ―嘘!?

    落ちる落ちる。
    深き深淵へと落ちていく。
    深い深い闇の中へと引き釣り込まれていく。








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