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■197 / 7階層)  赤き竜と鉄の都第8話
□投稿者/ マーク -(2005/04/26(Tue) 00:39:16)
    2005/06/08(Wed) 22:07:33 編集(投稿者)

    『氣孔士』






    「レイス・・・クロフォード?」

    ・・・・駄目だ。
    名前を聞いても全く思い出せない。
    お兄ちゃんがいればそれでよかったからあまり他人のことを
    気にしないで生きてきたから周りにどんな人がいたかも
    ほとんど覚えていない。
    ふと、兄は知っているのか気になり顔を上げると何時になく
    深刻そうな顔つきでレイスを見ていた。

    「あっ、レイヴァン君は思い出してくれたみたいだね」
    「まさか、お前は・・・」

    お兄ちゃんがこんなに動揺するなんて、この男は一体。

    「五艘飛び!!」
    「はっ?」
    「・・・・そっちが出てきたか」

    五艘飛び?
    いったいなんのことだ?

    「忘れはしない。あの卒業式の日を!!
     お前は俺の、いや俺たちの敵だ!!」
    「いや、でも君もなかなか人気あったと思ったんだけど?」
    「ふざけるな!!
     卒業式の時、お前が学園中の女子を全て独占しやがったせいで
     お前以外誰も告白を受けなかったんだぞ!?」
    「学園?
     もしかして学園都市の人なの?」
    「ははは、同期だった筈なんだけどね。
     覚えてないんだ・・・」
    「そうだったんだ」

    あいにく、お兄ちゃん以外に感心が無かったものだから、
    もはや学園都市の卒業生などほぼ全員、名前も顔も覚えていない。
    これもその1人だったのか。

    「で、その卒業式で何があったんだ?」
    「卒業のお約束、告白タイムだ。
     みんな期待してたというのに結局誰も来なかったんだ。
     学園中の男子の期待が殺意に変わるのは当然の事だろう?」
    「・・・否定はしない。確かにコイツは俺たち男の敵だな」
    「ああ、全くだ」


    お兄ちゃんとギンがなにか同調してる。
    けど、下手なことはいえない。
    なぜなら、お兄ちゃんに告白する人がいなかった一番の理由は
    私のお願いという名の脅迫があったからだ。
    もっとも、それでも告白しようとしたのもいたにはいたが、
    全て実力行使で止めた。
    これは絶対に知られるわけにはいかない。
    うう、お兄ちゃんのバカ。
    私だって毎年チョコ上げたり、さりげなく学園都市にあった告白すると
    絶対に成功するというジンクスのある木の下まで連れて行って
    告白したというのに全然本気にしてくれないんだから。
    失敗したときはお兄ちゃんがいたから流石にやらなかったが
    もし1人だったら、失敗した腹いせにその木を綺麗に燃やしていたことだろう。
    ・・・・やっぱり私ってお兄ちゃんの妹でしかないのかな。

    「で、五艘飛びというのは?」
    「数多の女性を落とし、その度に女をとっかえひっかえしていたので
     ついたあだ名が『五艘飛び』だ」
    「ちなみに君たちにも有ったよ。あだ名」
    「ほう、どんな?」
    「兄バカとブラコン姫」
    「ぶっ、あっはっはは。ピッタシだな!!」

    ―プツッ

    「ちょっと、傷が広がります!!」

    お兄ちゃんの腕から離れ、爆笑してるギンへと走ろうとしたところで
    リンに羽交い絞めにされて止められる。

    「離して!!コイツだけは、コイツだけはーーーー!!」







    「落ち着き・・・ました?」
    「なん・・・とか」

    でも、無茶したせいで足の傷が悪化したかも。
    今はそこらにあった岩に腰を下ろして休んでいる。
    お兄ちゃんでも良かったけどこの状況では少々気が引けたので
    しっかりと断った。
    ほぼ初対面(本当は違うが)の人の前でアレはやっぱり恥ずかしいものがある。

    「それにしても一体あなたはどうやってここまで来たんですか?
     音も気配も魔力もその・・・・匂いもありませんでしたし」
    「匂いってリン・・・」
    「かっ勘違いしないでください!!
     そういう意味ではなくて!!」
    「安心しろ。
     ここにいるやつらはみんなそんな事気にしないさ。
     ただ、ちょっと変わった性癖なだけなんだし・・・・」
    「なっ!?
     もっ、元はといえばギンがこんな体にしたんでしょう!!」

    顔を真っ赤にして抗議してくる。
    というか、会話が凄く危険な方向に向かっている気がする。

    「ちょっと、待て!
     なんだ、そのどう考えても勘違いしてくださいといった発言は!?」
    「先に言ってきたのはギンの方です。
     それに紛れも無い事実じゃないですか」
    「それにしたってほかに言い方が」
    「そんなこと知りません!!」
    「あ〜、なんか話が脱線してるけど?」
    「あっ、ゴメンなさい。
     それでどんなトリックなんですか?」
    「それはこれのおかげさ」

    そういって、大きな外套を取り出す。
    とくに変わった様子は無いがさて?

    「高位のアーティファクトの一つでね。
     着けるとどんな音や匂い、気配も外に漏らさず、
     姿も完全に見えなくする優れものさ。
     ただ、つけてる間は喋れないと言うか喋っても気付いてもらえないし、
     何かに触る事も出来ないけどね」

    そういって、外套を被るとレイスの姿と気配が完全に消えた。
    そして、外套を脱ぐとまた見えるようになる。

    「なるほど。では次に、貴方はいったい何しに来たんですか?」
    「いや、ちょっと用事があってね」
    「協団がか?
     とすると俺たちに・・・それともこっちの二人に用があるのか?」
    「まさかアレを盗んだのはお前たち協団か?」
    「もしかしてこのキメラもあんたの差し金?」

    矢継ぎ早に放たれる質問に呆れながらレイスは肩をすくめる。

    「とりあえず、質問は一つずつにしてくれないかな。
     まあ、まず大きな間違いが一つあるからそれ訂正しておくべきか」
    「大きな間違い?」
    「そう、先入観のせいで勘違いしてるね。
     物事には常に例外が、変わり者がいるって事さ」
    「もったいぶらずに教えたらどうだ?」
    「やれやれ、簡単に言えばボクは協団の者ではないということさ」
    「「はっ!?」」
    「ボクが所属するのは教会。
     ちょっとここでキメラが大量に巣食ってるって聞いて
     教会から討伐に行けと言われたんだけど来てみればもう片付いてるじゃないか。
     いや、本当に感謝だよ」

    どうも胡散臭い。
    大体、アイゼンブルグの領土のごく一部で起きた事件に
    協会が介入するとは考えにくい。
    多分、何か別の目的があって隠しているはずである。

    「と言いたいところだけど実はちょっぴり嘘なんだ。
     教会に報告したのは僕自身。
     ここに気になる物があって領内で法規的に動ける権限が欲しかったんだよ。
     まあ、信じにくいかもしれないね。
     だから、態度で示そう」
    「態度?」
    「そう。ボクは君たちが欲しがっている情報を幾つか持っている。
     なんなら、それを提供してもいい」
    「まさか・・・腕のことか」
    「うん、それもその1つだね。あとはユナ嬢たちが知りたがってる筈である
     裏切者の正体。
     ただ、こちらだけが提供するというのはいくらなんでも
     不公平だと思うだろ?
     だから一つ勝負をしよう。
     それに勝てたら僕の持つ情報は全て渡す」
    「それで、こっちは何を賭ければいいわけ?」
    「そうだね、賭けるのは君たちのもつオーパーツか、
     そこのギン君の持つ腕のレプリカが望ましい。
     どうする?」
    「いいわ。こいつの腕を賭けるわ」
    「それが一番だろう」
    「ちょっと待て勝手に話を進めるな!!」
    「何言ってるんですかせっかく見つかった手がかりですよ。
     どうせ、腕なんてまた作れるんですから提供してください。
     ここで逃したら本気で留年ですよ?」
    「ふざけるな。こいつを作るのにどれだけ苦労したと思ってやがる!!」
    「そうですか・・・ならあの事を言いふらしましょうか?」

    ―ッピクン!!

    突然ギンが怯えるようにして顔をゆがめ、リンを見る。
    一体何があったのだろう?
    凄く気になる。

    「まっ、まさか―」
    「ギンとは付き合いが長いですからね。
     色々と知ってますし、例えば11歳のときの―」
    「ああ〜!もう、分かった!!
     コイツを賭けてやる!!」
    「良し、交渉成立。
     ボクから仕掛けたことだからね。
     4対1でいいよ」
    「といっても、勝負って何をするの?」
    「ああ、忘れてた。
     簡単なトランプゲームさ」
    「「「「トランプ!!??」」」」





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