Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■185 / 1階層)  赤き竜と鉄の都第2話
□投稿者/ マーク -(2005/04/15(Fri) 18:59:48)
    『銀と鈴』






    「あいつだな」
    「反応はあの少女からありますがそうとは決まってませんよ?」
    「分かってるさ」
    「いつも思いますけど本当に分かってるですか。
     いえ、すみません。
     そんなはず無いですね。
     分かってたらもっと穏やかに終わるはずですもんね。
     だからお願いします。もう少し考えて動いてください」

    そういって、最初に呆れ、次にため息をつきながら切実な願いを込めて男に
    頼みこむ少女とそんな言葉を意に返さずに銃を構える男。

    「ってちょっと、ギン。言ってる傍から何をしてるんですか!?」
    「威嚇射撃だ、当てはしない」

    言うが否や、男が引き金を引き銃口より銃弾が放たれる。
    放たれた弾は店から出てきたユナの足元へと突き刺さる。
    足を止め、立ち止まったユナは飛んで来た足元の弾丸に視線を移し、
    次に銃弾が飛んで来た方向を見る。
    と、1組の男女が屋根から飛び降りて来た。
    少女は奇妙なイヤリングを耳につけ、まぶたを完全に閉じているが
    慣れた感じで危なっかしさは微塵も感じさせない。
    男は肩に黒い長身の銃を担いで少女となにやら口論している。

    「なにか用?」
    「お前の持っているブツを置いてけ。
     そうすれば、見逃してやる」

    自分が持っているものに何か狙われるようなものはあっただろうか?
    というより、むしろこれはただの物取りだ。

    「ちょっと、ギン!!これではまるで―」
    「そういうわけだからとっとと置いてけ。
     素直に渡せば痛い目にあわずに済むぞ」
    「嫌よ」

    ギンと呼ばれた男の言葉をきっぱりと拒絶する。
    誰に手を出したか思い知らせてやる。

    「そうか。それじゃあ―
     後悔すんなよ!!」

    そういって、男が銃を捨て殴りかかって来る。
    それに対応すべく普段、腰に掛けている銃を構えようと手を回すが
    手は空を切り何もない。

    「あっ・・・」

    慌てて、体を強化し振るわれる拳を避け、距離をとる。
    いけない。
    両方ともメンテに出してしまい、使える武器は
    サンダーボルトと先ほど買ったベレッタのみ。
    慣れてない物と明らかにに接近戦では使えないもので
    しかも、両方ともアーカイバの中だ。
    この状況では取り出してる暇も無い。
    武器が使えないならせめて魔術を使える場所に行かねば。
    そう判断を下し、反転し、男に背を向けて走り出す。
    幸い、ここは路地裏だから人も少なく、拓けた所なら十分に力を振るえる。
    路地裏を駆け、寂れた広い道に出る。
    ここなら、暴れても被害は少ない。
    今出てきた細道に振り返り、追ってくる男たちに向き直る。
    少し心とも無いが市場で仕入れておいた銃を一丁左手に構え、詠唱する。

    「煉獄より来たりし焔、牙となりて我が敵を貫け。
     フレイムファング」

    細い路地へ向け、炎が一本の槍となって放たれる。
    放たれた槍は一直線に飛び、男に迫る。
    細い路地では避けることも出来ないだろう。
    槍は盾にするようにして構えた男の腕が振るわれた瞬間、

    「なっ!?」

    その構成が崩れ、バラバラに散った。

    「キャンセルされた!?」

    驚いてる間にも崩壊した槍の抜け、目の前まで男が迫ってくる。
    突き出された男の腕を斜め後ろへ飛んで回避。
    そして続けて大降りに振るわれた男の右腕の袖口から飛び出す形で剣が現れる。
    その分のリーチを踏まえてさらに後ろに飛んで剣を避け、さらに距離をとる。
    距離が十分に開いたところで左手に構えた銃を男に向け、引き金を引く。
    まだ試してないし、魔力弾だから威力は低いと思うが対人戦闘なら十分だろう。
    しかし、男はそれらの銃弾を容易くかわす。
    スピード自体は決してそう高いわけではない。
    ただ、銃弾の軌道が見えているかのごとく最低限の動きで銃口から
    放たれた瞬間にはもう回避運動を取っている。
    そして、運悪くかわされた銃弾が幾つかその先にいた少女に向かう。

    「危ないですね」
    「あ!?」

    しかし、少女も男と同じように、いや目を閉じたままで少し体をずらすだけで
    銃弾を避ける。
    その光景に驚き、一瞬気を取られたところで男が接近してくる。
    ギリギリのところで気を取り戻して後ろに下がり剣を避ける。
    その時、懐から白い紙が落ち、男の剣が刺さりそのまま切り裂かれた。

    「あっ、ああっ〜!!?」
    「なんだコレ?」

    おっ、お兄ちゃんの手紙。
    よくも・・・よくもっ!!

    「覚悟しなさい!!
     あんたには地獄を見せてやる!!」

    ユナの背後に比喩でなく本当に炎が燃え上がり、炎が竜の姿を形作る。
    体全体を炎の魔力が覆い、周囲の温度が上昇している。

    「・・・なんていう魔力だ」
    「ギン!?」

    男と少女は焦りを含んだ声で呟き、ユナを覆う魔力と背後の炎の竜を見る。
    竜が鎌首を掲げ、咆哮を上げる。
    その間にも竜の体は膨れ上がり、どんどん巨大になっていく。

    「いいぜ。相手になってやる」

    男がアーカイバより銀色の機械を実体化させる。
    先端がランスのようになっており、尖った円錐の側面に掘られた溝は
    螺旋を描いている。
    取り出したものを地面へと突き刺し、右腕に触れる。
    奇妙な操作と共に、重い音を立て腕が落ち、袖を破り捨て
    剥き出しになった義手の付け根が露になる。
    取り出したものを腕へとはめ込み、水平に構え竜に向ける。
    先端のランスが物々しい駆動音と共に高速で回転しだし、風が吹き荒れる。

    炎の竜が最大まで膨れ上がり、弾かれえるように男へ向けて突撃した。
    迫り来る竜を迎え撃つべく、高速で回転するランスを装備した義手を後ろに引き、
    渾身の力で突き出す。
    荒れ狂う暴風と炎が拮抗し、轟音と共に竜が爆発し、両者とも吹き飛ばされた。

    先に立ち上がったのはユナだった。
    距離が離れていたため、爆発の衝撃が少なかったが
    反対に爆発の中心地にいた男は動くことはできないだろう。
    だが、煙で前が見えず男の姿は見つけられない。
    男がいるであろう方向に向き、進もうとしたら男と一緒にいた少女が
    男を引きずりながら目の前に現れた。

    「すみません。迷惑をかけて。
     ですが、話だけでも聞いてくれませんか?
     ギンにはあとで殺さない範囲なら好きにしてくれて構いませんから」
    「・・・・話だけなら」

    男と明らかに違う態度に面を喰らいながらも、敵意は無いようだから
    とりあえず提案を飲むことにした。

    「申し送れました。私はリン。
     このおバカはギンです」




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