Release 0シルフェニアRiverside Hole

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

■190 / 3階層)  赤き竜と鉄の都第4話
□投稿者/ マーク -(2005/04/20(Wed) 20:07:05)
    『霧の銃』


    「ふああ〜あ、いらっしゃい。
     っと、お前さんか。頼まれたのは出来てるぞい」
    「さすがね」

    老人が取り出した三つの銃。
    メンテを終えたデッド・アライブとベネリだが・・・・

    「ふ〜ん、一体どんな風に改良されてるの?」
    「一応、E・Cも装備できるようにしたがショットガンのため
     あまり期待はできんな。
     あと、接近戦を考えて後部を少し長くしトンファーにしてあり、
     またイリュージョンミストという姿をくらませる特殊能力を装備させてある」
    「・・・・たった2日でそこまでするなんて凄いわね」
    「まあ、やるからには完璧にやる主義でな。
     フォッフォッフォッフォ」
    「でも、もしかして寝てないんじゃないの。
     大丈夫?」

    良く見ればこの老人どことなくフラフラしてるし目が真っ赤だ。

    「なに若い頃は一週間寝ずにやってたこともある。
     このぐらいどうってことは無い。
     まあ、確かに老いたとは自分でも感じ取るんじゃがな。
     して、名はどうする?」
    「そうね・・・ノーザンライトでどう?」
    「ふむ、そこら辺はお主に任せるとしよう」
    「あっそ。代金は?」
    「まあこんなもんじゃな」

    提示してきた金額はあまりにも安すぎる。
    それが顔に出たのだろう。
    無言で老人の顔を窺うと笑いながら答える。

    「久しぶり満足の行く仕事じゃった。
     それはそのお礼も含めた代金じゃ」
    「あとで請求されても困るからね」
    「安心せい」

    なるほど、確かに妙な老人だ。
    腕は良くてもこれでは繁盛しないのも仕方が無い。
    が、それでいいのだとも思う。

    「ちょっと、試させて」
    「ああ、いいぞ。
     こっちの来い」

    そういって、老人が手招きし奥へと消える。
    それを追う様にして扉を抜け、目立たない小さな階段の入り口で
    待っていた老人の後を追い階段を下りる。
    階段を降りると、なかなか広い空間に出た。
    どうも、射撃の練習所か何からしい。

    「撃って見ろ」
    「分かった」

    まずは、デッドアライブ01。
    いつも通り右手だけで持ち、向こう側にある的を狙う。
    結果は予想以上の精度で命中。
    なにより、握りやすいし反動も僅かだが小さくなった気がする。
    続いて、左手に02を持ち同じように発射。
    こちらも文句なしの使い心地だ。
    さて、では問題のノーザンライトだが―

    「ねえ」
    「なんじゃ?」
    「弾ってある?」
    「・・・・・・ない」

    ああ、失敗した。
    これなら先に買っておくべきだった。
    なら、せめてこいつの特殊能力だけでも確認するか。

    「これってどう使えばいいの?」
    「慣れれば魔力を通すだけでもいいが
     初めの内は何か詠唱でもした方が効果が安定するやもしれん。
     やってみい」
    「じゃあ、とりあえず」

    ひとまず、魔力を通すだけで―

    「へえ、なるほど」

    やって見ると自分の周りをある程度覆う範囲で白い霧が出てきた。
    範囲はあまり大きくないしこっちからも見辛いが、まあ当たり前かな?
    でも、これは使いようによってはかなりの効果を期待できる。
    試し撃ちの方はデッドアライブを見た限り、この老人の仕上げたものだから
    いきなり暴発ということもないだろう。

    「ありがと、近くまで来ることが会ったら、
     また修理をお願いするわ」
    「ああ、まっとるぞ」













    「ご免、遅れて」
    「いえ、私たちも今来たところですから」
    「ああ、ちょうど半刻前に着たばかりだ」
    「ギン!!」
    「・・・悪かったわね」
    結局、2日かけて街を一周し、元の場所へと戻ってきたところで
    周りが暗くなってきたから一先ず分かれた。
    そして、今日の朝十時に別れた場所で集合ということになったのだが
    修理に出していたものを取りに行ってて遅れてしまったのだ。
    にしてもどうしてもこいつとは合わない。
    向こうも同じらしく、街を周っている時も常にこんな感じだった。
    本当、腹が立つ。

    ―ぐ〜。

    (あっ!?)

    「なんだ今の音は?」

    さっ最悪!!
    急いでたから朝ご飯食べずにこっちに走ってきたけど
    そのせいでなんて間が悪い時に!!

    「音?何のことです」
    「いや、なんか今聞こえなかったか?」
    「いえ。私は聞こえませんでした」
    「・・・・リンが聞こえなかったってことは空耳か」

    え?
    もしかして・・・
    ギンが視線を戻し再び歩き出すと、今度はリンがこっちを向いて
    どこか悪戯っぽい笑みでこちらを見た。
    ああ、そっか。

    「・・・ありがと」
    「いえ」
    「おい!!早く行くぞ。
     唯でさえ遅れてるんだ」
    「分かってるわよ」






    「そういえば、そんな大切なものならかなりの人員が動いてる筈だと思うけど
     あんた達一体何者なの?
     私なんかと勝手に動いて上の人とかは構わないの?」
    「言っとくが俺たちはそんな大層な身分じゃないぞ。
     ただのごく普通の学生で、ちょいと頼まれただけだ。
     しかも非公式なことらしいから動いているのは俺たちのみ。
     仲間もいないし、頼んで来た人物からは自由に動いていいといわれているから
     誰と動いても問題ない」
    「はああ!?学生ってどういうことよ?」
    「そう言わないでください。
     うちの校長先生は変人で有名なんです。
     私たちも突然呼び出しを喰らったら腕が盗まれたから取り返して来いですよ。
     貴重な3期と4期を潰して・・・」
    「あ〜、大変なんだ」
    「はい。私もギンも技術は学園でも頭1つ飛びぬけて優秀でしたから
     まるまる3年期と4年期がつぶれてもそれほど困るわけではないんですが
     今年中に片付けて復学しないと丸二年留年なんです」
    「2年?」
    「ああ、はい。私たちの学校は5年期からは共同作業が中心になるため
     5年期、6年期の2年間はほとんど卒業制作のためグループで作業するんです。
     そのため来年までに終えなければグループにあぶれてしまい、
     再来年の卒業試験を行えないんです」
    「ああ、そっか。だから急いでるわけか」

    もう、季節は夏も中旬。半年強しか期限が無いということだ。
    話の口ぶりからすると入学早々、こんなことを頼まれたのだろう。
    そうすると、もう探して一年くらいは経っていることになる。
    つまりタイムリミットまでもう3分の2が過ぎたということだ。。
    焦るのも無理は無いだろう。

    「頼んだ校長って言うのは?」
    「アイゼンブルグの技師を目指すものが皆一度は訪れるという
     西区の領土の三分の二近くの占める都市最大の学園、
     まあ、学園都市の『リュミエールゼロ』のアイゼンブルグ版程度に
     考えてください。
     で、校長はその学園の総責任者でこの都市でも随一の技師です。
     いろいろな技術を生み出した天才なのですが、
     例に漏れずとんでもない変人なんです」
    「じゃあ、その銀の腕は校長が保管してたの?
     それとも学園が保管してたの?」
    「えーと、それは学園の所有物ですね。
     だからギンが腕を貸してもらえたのですから」
    「なるほど。じゃあ奪ったのって学園の関係者とは考えられないの?」
    「いえ。腕自体とレプリカには発信機がついていて大雑把にしか分からないですが
     ある程度近づけば反応する仕掛けにはなっていたのです。
     しかし、学園内をしらみ潰しに探したのですが反応は全くなし。
     どうやら、既に学園の外に運び出されたみたいです。
     でも、都市からは離れてないのでアイゼンブルグの外にも
     運ばれてないようですので、おそらく腕の解析が目的でしょう。
     ですからギルドを調べていけば何か手がかりが見つかると思います」

    ギルドか。
    その最高の技師でも完全に解析できないものを個人でどうにか出来るはずが
    ないから大きな組織がやったと見るのが妥当だろう。
    そういえば、意図的な技術流出だとしたらこっちもやっぱり組織的な行動。
    もしかしたら、奪われた腕との関係も意外と無関係な話ではないのかも。
    それにしても、そんな腕のレプリカをこの年で作れたってことは
    ギンの技術は恐ろしく高いということだ。
    全くギンといいあの老人といい噂の校長といいここの技術者って腕が
    いいのに限って性格が悪いの多いわね。
    でも、確かにあまり時間が無いっては大変そうだ。
    こいつのためって言うのは癪だからリンのためということで手を貸そう。
    正確には足を貸すが正しいけど。

    「わかった。じゃあ、急ぐわよ。
     ここにはないのね?」
    「はい。幾つかの地区に分けれて街が存在してるので次は南下して南の地区に
     向かいます。
     歩いて3日というところですね」
    「3日は掛かり過ぎるわ。1日でいく。
     乗って」

    実体化される黒と白の竜。
    大きさは自由に変更できるから出来る限り目立たぬよう小さめだ。
    無論、既に街の中心街からは抜けているから他に人もいない。

    「―竜の使い魔。お前、一体何者だ」
    「聞いてなかった?
     私はユナ・アレイヤよ」

    ギンは今更ながらユナと挨拶していないことに思い至り、
    バツが悪そうに頭をかきこちらを向く。

    「悪いな。俺はギンだ。
     まあ、この前の事は水に流してやる」
    「それは私の台詞よ!!」






記事引用 削除キー/

前の記事(元になった記事) 次の記事(この記事の返信)
←赤き竜と鉄の都第3話 /マーク →赤き竜と鉄の都第5話 /マーク
 
上記関連ツリー

Nomal 赤き竜と鉄の都第1話 / マーク (05/04/12(Tue) 22:00) #184
Nomal 赤き竜と鉄の都第2話 / マーク (05/04/15(Fri) 18:59) #185
  └Nomal 赤き竜と鉄の都第3話 / マーク (05/04/20(Wed) 20:04) #189
    └Nomal 赤き竜と鉄の都第4話 / マーク (05/04/20(Wed) 20:07) #190 ←Now
      └Nomal 赤き竜と鉄の都第5話 / マーク (05/04/24(Sun) 00:30) #192
        └Nomal 赤き竜と鉄の都第6話 / マーク (05/04/24(Sun) 02:42) #193
          └Nomal 赤き竜と鉄の都第7話 / マーク (05/04/24(Sun) 02:43) #194
            └Nomal 赤き竜と鉄の都第8話 / マーク (05/04/26(Tue) 00:39) #197
              └Nomal 赤き竜と鉄の都第9話 / マーク (05/04/26(Tue) 00:40) #198
                └Nomal 赤き竜と鉄の都第10話 / マーク (05/04/26(Tue) 00:42) #199
                  └Nomal 赤き竜と鉄の都第11話 / マーク (05/04/27(Wed) 20:10) #201
                    └Nomal 赤き竜と鉄の都第12話 / マーク (05/04/27(Wed) 20:11) #202
                      └Nomal 赤き竜と鉄の都第13話 / マーク (05/04/29(Fri) 19:40) #203
                        └Nomal 赤き竜と鉄の都第14話 / マーク (05/04/29(Fri) 19:41) #204
                          └Nomal 赤き竜と鉄の都第15話 / マーク (05/05/01(Sun) 16:52) #206
                            └Nomal 赤き竜と鉄の都第16話 / マーク (05/05/01(Sun) 16:52) #207
                              └Nomal 赤き竜と鉄の都第17話 / マーク (05/05/01(Sun) 16:53) #208

All 上記ツリーを一括表示 / 上記ツリーをトピック表示
 
上記の記事へ返信

Pass/

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

- Child Tree -