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■202 / 11階層)  赤き竜と鉄の都第12話
□投稿者/ マーク -(2005/04/27(Wed) 20:11:42)
    『突入』









    「あ〜あ、退屈だな」
    「仕方が無いだろう。ここはそれだけ重要なところなんだ」
    「そういったってここに攻めてくるような非常識なバカはいるかよ」
    『ふむ、随分と緊張感のない男たちだね』

    そういって、決して目の前の自分以外には聞こえない声で呟き、
    そのまま男たちを無視して、周りを調べる。
    学園都市においても魔科学については多少は学ぶ。
    彼にとってはこの程度の機械の操作は朝飯前である。
    だが、あいにく今の状況では触ることも出来ない。

    (さてどうしたものかな?)

    目的はあくまで屋上のオーパーツと内部にあるはずの動力とを
    繋ぐパイプライン。
    そこの場所を探し当て、破壊することがまず一番の目的なのだが。

    (少し・・・眠ってもらうか?)

    今なら目の前の制御版の方を向いてるし、何の警戒もない。
    外套を取り、一瞬で二人に意識を刈り取る。
    最悪、気絶した後に記憶をいじれば寝ぼけただけで済むかもしれない。
    そう考え、相棒である2本の木の棒を取ろうとし

    ―チャリィィーーーーーン

    「誰だ!!」

    あのポーカーで使っていた金貨の一つが落ちた。
    次の瞬間には男は二人とも振り返り、金貨のところまで歩み寄ってくる。
    慌てて男たちの来そうに無い、壁の方による。
    この外套がある限り向こうが気づくことはないが、偶然にも触れられてしまえば
    それは変ってくる。
    触れられるはずが無いものに触れていると言う矛盾、そして触れているのに
    触れてはいないと言う矛盾が生じるとこの外套は意味をなくす。
    つまり、これをつけている状態で他の物に干渉してしまうと、
    外套はその効力を失うのだ。
    しかし、これでは先ほどのように全く警戒の無い状況で昏倒させるのは
    ほぼ不可能となった。だが、そこで気付く。
    男は入り口付近に落ちている金貨を拾い、廊下へと出て行った。
    しかも、わざわざ扉についた3錠もの鍵を律儀に全てかけてドアを閉めてである。
    どうやら、僅かにドアが開いてた所為でこの部屋を覗き見していたやつでもいて
    廊下に逃げていったと考えたらしい。
    だが、これはチャンスだ。
    今の状況なら機械を操作できるし、近づいてきてもドアの鍵を開ける音で
    気付くことが出来る。
    しかも、この部屋の鍵は外からは鍵がいるが中からは不要なタイプだ。
    今なら進入者だと確信がないから確かめに行ったのだろうが
    そうすると早く動いた方がいい。
    そう考え、すぐさま行動へと移し、端末に触れる。
    ひとまず、この要塞の見取り図でも出てくるといいのだが―

    「なんだこれは?」











    「どう?反応は」
    「まだですね」

    リンが耳のイヤリングに手を当てながら答える。
    ギンが作った感覚の補助具だが、実は通信機能もあるらしい。
    もう一つの端末はギンが持っていたが今は無い。
    作戦が成功したかどうかなどの連絡の取り合いに使うことになったのだ。
    ギンは僅かに渋っていたが結局、レイスに渡した。
    しかし、そう簡単にことが進むとは思ってなかったからこの程度の遅れは
    想定の範囲内だが、やはりただ待つのはストレスがたまる。

    「あ、そうだ。リン」
    「はいなんでしょう?」
    「中に入ったら、ちょっと手伝ってくれない?」
    「私がですか?」
    「そう、リンにしか出来ない事よ。
     いい、実は―」



    「―なるほど分かりました。
     確かにそれなら私が適任ですね」
    「じゃあ、入ったらお願い」
    「任されました」

    よし、後はレイスからの報告を待つだけ・・・・

    『あ〜、聞こえる?』
    「あら、随分とタイミングがいいですね。
     こちら『鈴』。
     状況はどうですか」
    『こちら〈氣公子〉。
     ラインは断ったが、気付かれればすぐさま修理されると思われる。
     少々、急いでくれ。
     念のため〈サキモリ〉を破壊してから突入するように全員に伝えてくれ。
     それでは中で会おう』
    「―というわけです。
     行動開始ですね」

    というか、その名前は何?
    はっきり言って盗聴の心配なんて絶対にないのに
    なんでそんなことしてるの?
    そんな疑問が顔に浮かんだのだろう。
    にっこりと微笑みながらリンが私が心の中で聞いた疑問に簡潔に答える。

    「気分です」
    「ああ、そう。
     もういいや、一気に突入するわよ」

    2匹の竜を両方とも実体化させ、黒い竜に飛び乗る。
    ギンとお兄ちゃんは白い竜に飛び乗り、リンに手を貸して
    背中へと引っ張り上げる。
    全員乗ったのを確認し、竜に指示を与え、飛翔する。
    飛び上がった竜は一直線に巨大な建物の屋上へと向かう。
    レイスはしっかりと仕事をこなしたらしく、大筒は何の動きも示さない。
    やがて、大筒の上空へと差し掛かり、お兄ちゃんがMOSを大剣へと変え、
    それを下に突き出すようにして飛び降りた。
    降下したときのスピードも加わって、大剣は大筒の内部へと深く突き刺さり、
    その次の瞬間、弾かれるようにいて剣を引き抜き他の三つの大筒へと突進し
    剣を突き立てる。
    全部の大筒が無残な穴を開け、内部の機械を露出させながらスパークを起こす。
    どうやら、今は爆発する気配はないらしい。
    だが、私から見てもこれでは使い物にならないだろう。
    念のためギンとリンに顔を向けるが同じ判断らしい。
    しかし、まだ気付いてないのか?
    下からは全く慌てた様子はない。
    おそらく、この大筒を信用しきっている結果だろう。
    リンに聞いても内部に異変はないらしい。
    なら―

    「やりなさい」

    言うがいなや、竜の尾がまるで鞭のようにしなり大筒へと叩き込まれる。
    竜の強靭な力に負け、床に刺さっていた根元ごと台座がへし折れ、
    下へと叩き落す。
    そのままの勢いで、二匹とも二つ目の大筒を叩き落し、この高さから
    圧倒的な質量を持つものが落とされたことによって、凄まじい轟音がする。
    その音によって、下の階層などから慌てて駆け出す音など完全にパニックに
    陥っている様子がが伝わってくる。
    初めからこうしてば、もっと楽だったかもしれないが
    不確定な要素があったのだから仕方ない。
    それに既に魔力を集めた状態で破壊してたら暴発という危険もあったのだから
    これでいいだろう。
    まあ、今だけなら屋上よりも下に意識が行ってるから有利だろうが、
    落ちてきた物の正体が分かれば今度は逆にこちらに意識が向かう。
    だから、ある程度の時間が経ち、出来る限り人が減ったところで
    奇襲をした方がいい。

    「そろそろ行くぜ」

    そういって、付け替えたあの奇妙な槍(ドリルと言うらしい)を構え
    回転させながら下へと突き立てる。
    どうも、下に敷いてある石のようなものは魔力を吸収、保存するE・Cと
    似た性質の物質のようで竜を地面に降ろすと妙に疲れる。
    というより、魔力を吸われている様な感覚だ。
    でも、その分強度はそれほど高くない。
    案の定、ギンの義手によって屋上には大穴が開き、
    下を覗くが暗くてよく見えない。
    意を決して、そこから飛び降りて静かに着地する。
    出たところは特に何の変哲もない物置のような部屋だ。
    保管室と言うには寂れすぎているが念のため、確認するべきだろう。

    「ありそう?」
    「いえ、もっと下ですね」
    「わかった。
     多分、この物音で気付かれただろうから、多分敵もこの辺りまで
     近づいてきてると思う。
     一気に突破するわよ」

    皆黙って頷き、戦闘の準備をする。
    ギンは腕をいつもの義手に戻し、お兄ちゃんもMOSを一番使いやすい基本の形の
    手ごろな片手剣にかえる、今まで戦闘にはあまり参加しなかったリンも
    小型のハンドガンを手に持っている。
    私は腰の左右にデッド・アライブ、後ろにノーザンライトを装備。
    あと、腰のポーチやポケットには銃弾がたっぷり詰まっている。
    全員の準備が整い、近づいてくる足音を静かに聞き、立ち止まって
    ドアを開けたと同時に腰のデッドアライブを抜き、撃ちこむ。
    崩れ落ちる男の隣を抜けて部屋を飛び出し、廊下を走ってくる二人の敵に
    引き金を引く。

    ―ダッーーーン

    「こっちも片付きました」

    そういって、硝煙の吐き出す手元のハンドガンを両手で握りながら
    こちらを見る。
    見れば、向こう側にも同じように二人の男が仰向けに倒れている。
    そして、出番を奪われたギンとお兄ちゃんがどこか居心地悪そうに
    今更ながら出てくる。

    「はやく移動した方が良さそうだな。
     まずはレイスに合流するとしよう」








    「撃てぇぇぇ!!」

    目の前にはもう何度目かも分からない、一列に並んだ形で銃を構えた
    何人もの兵が現れる。
    同時に放たれた銃弾は逃げ場を完全に消し、避けることは出来ない。

    「リン、後ろに」

    リンが自らの後ろに入ったのを確認し、銃に魔力を通して魔力の
    障壁を生み出す。
    デッドアライブに備わった特性の一つなのだが、あくまで簡易的な障壁なので
    高い強度を出そうと思ったら使用する魔力が半端でなく上昇する。
    比例ではなく、むしろ二乗とかそんな感じで膨れ上がっていくため
    大規模な攻撃には耐えられない。
    けど、多少魔力が篭もっているかいないか程度の弾丸では
    最低限の魔力障壁でもひび一つ入らない。
    同じようにギンも装備した腕についている力で障壁をつくり防いでいる。
    お兄ちゃんにいたってはMOSを大きな盾にして身を守っている。
    だが、敵は何の学習能力もないのかそんな私たちに対して
    何の成果もない攻撃を続けている。
    はっきりいって、どう考えても私たちの力が尽きるより、
    弾丸が尽きる方が早いだろう。
    だが、こんなところで時間を食われてはたまらない。
    銃撃の僅かに弱まった隙を突き、お兄ちゃんとギンが並んだ兵の目前まで迫り、
    一人づつのしていく。
    そうして開いた道を走り抜け、私たちも後を追うようにして走り去る。
    しかしここは広すぎるうえに複雑すぎる。
    突入してから結構時間が経っているが私たちは
    まだ最上階から二階分しか降りていない。
    というより、なかなか階段が見つからず降りられない。
    今のところ、兵の来た道を追ってきているが、おかげで兵との遭遇もかなり多い。
    あと、ギンとお兄ちゃんが最初に全く出番がなかったのがショックだったのか、
    先ほどから前に突出しすぎている気がする。
    しかも、何か胸騒ぎがする。

    「む、またか」

    ちょうど、曲がり角の先に再び兵隊が顔を出してきたところだった。
    まだ、しっかりと準備もしていないのか慌てて列を作っているようだ。
    そんなへに向かってお兄ちゃんとギンが突撃する。
    今までと同じよう、銃をこちらに向けるよりも早く行動不能にさせようと
    ふたりとも、腕を振り上げる。
    が、ギンの腕もお兄ちゃんの剣も兵が腰に下げていた剣により止められる。

    (罠!?)

    まさか、わざと銃を構えるのに時間を食わせることによって
    接近戦を仕掛けられたのか?
    絶対に当たると踏んでいた一撃を避けられ、お兄ちゃんたちも
    さすがに一瞬不意を突かれる形で剣が交差し、膠着状態に陥る。
    だが、この状態ではお兄ちゃんたちに当たる危険もあるから銃は撃てない。
    何とか動きを止められれば・・・
    そうだ。

    「リン。アレ行くわよ」
    「了解です」

    デッドアライブを戻し、腰に下げたもう一つの銃、ノーザンライトを引き抜く。

    「幻影の霧よ。かの者たちを夢現なる世界へと誘え。
     イリュージョンミスト」

    まだ、慣れてないから魔力を通すだけでは使えないので簡単な詠唱で発動させる。
    銃から白い霧が現れ、周りを包んでいく。
    本来ならば、これは相手に幻影の霧を見せる効果もあるのだが今回は少し違う。
    幻影よりも視界を覆うことによって周りを見えなくするために霧を生み出して
    振りまいただけだ。
    だが、これで相手は全員周りが見えずに迂闊に動けない。
    もっとも、それら私たちも同じで前が全く見えないから動くに動けない。
    ―1人を除いて。

    「98、67、6.2ならびに86、112、6,8です」

    リンの声にその言葉が指す方向へと両腕の銃を向ける。
    一人目が上に8度、右に27度で距離6,2m。
    二人目は下に4度、左に22度で距離は6,8mだ。
    迷うことなく、引き金を引き、この霧の中で動くに動けず
    立ち止まっている兵へと銃弾が突き刺さる。
    元から目の見えないリンだからこそ、この状況では敵はいない。
    リンの指示の元、次々にこの視界の中、立ち止まる兵へ向け引き金を絞る。

    「それでラストです。16、85、7」

    下に74度、ということは銃弾を避けるために体を伏せてやり過ごそうとしたわけか。
    だが、甘い。
    銃口を下に下げ、最後の1人に向けて引き金を引き、全員片付いたところのを
    確認し、霧を解く。

    「ってあれ?」
    「なんででしょう?」

    何で・・・・なんでお兄ちゃんがいないのよーーーーーーー!!

    「ギンもいないのですが・・・って気にしてないみたいですね」







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