Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■389 / 4階層)  蒼天の始まり 第4話
□投稿者/ マーク -(2006/10/11(Wed) 13:59:18)
    熊の店




    「結局ついてきちゃったわね。」
    「だね。」
    森から出た私とセリスは後ろにいる一匹に眼を向ける。
    むろん、昨晩出会った魔犬のことである。
    あの後、あの場所から離れた私たちの後ろに魔犬がついて来たのだ。
    理由はおそらく昨晩、助けてくれたお礼といってセリスが餌を与えたためだろう。
    つまり、餌付けだ。さすがにそれだけではないと思うが。
    まあ、敵意があるわけでもないから。あんまり気にしてなかったけど。
    ただ、セリスが朝ご飯のときにまた勝手に食料を与えてたが、
    その量がちょっと問題だった。
    ちなみに頭もいいらしく人の言葉を理解している節がある。
    もしかしたらどこかの貴族が飼われてて、逃げだしたか、
    捨てられたのかもしれない。
    それにしても、森の外までは着いてこないだろうと思ったけど
    どうやら戻る様子はない。このままついて来る気だ。
    どうしよう。

    「ねえ、お姉ちゃん」
    セリスがなにか欲しい物があったり、頼みたいことがあるときの声だ。
    セリスの言いたいことはすぐ分かった。
    まあ、食費は掛かるだろうがソレに見合った働きはしてた。
    でも、これからのことを考えるとこの魔犬にまでは面倒が掛かるかもしれない。
    偶然かもしれないけどお父さんがわざわざ、武器を持たせて
    冒険者の店に向かわせた。ということは少なくとも
    平穏な日々というものは望めないだろう。
    それでも・・・
    「分かったわよ。つれてきたいんでしょ」
    「いいの?」
    「セリスもこの子も駄目って言っても聞かないだろうしね。
    ただし、この子に何があっても無理強いはさせないこと
    私は反対はしないだけだから」
    「うん、分かった!ありがとうお姉ちゃん!!」
    それでも、きっと、この選択でよかったのだ。
    「どんな名前がいいかな〜」
    だって、こんなセリスの喜びようを見れたのだから。


    魔犬の名前はケルスに決定した。
    セリスは他の名前が良かったらしいけど、
    セリスの名前のセンスは少々変わっているため、
    魔犬はセリスがいった名前をことごとく嫌がった。
    私もこの犬をそんな名前で呼びたくはなかったから
    助け舟を出したら速攻で魔犬が頷いた。そんなに嫌だったんだ。



    日が暮れる間際、私たちはやっとレムリアの街に辿り着いた。
    レムリアは王都を囲むように位置する4つの街のなかでも
    小さめな街らしいが、それでもスノウとは雲泥の差である。
    日が落ちる前にベアという店を探さなきゃいけない。
    冒険者の店ならとりあえず、冒険者らしき人に聞いてみればいいだろう。
    「あの。」
    「なにか?」
    「ベアという冒険者の店を知りませんか?」
    「ベア?ああ、眠り亭のことか。」
    「眠り亭?」
    どういう意味だろ?
    ベアの店の場所は入り口からかなり近いところだった。
    これなら日が完全に暮れる前にはつけるだろう。


    「ここだね。」
    教えられた店は思ってたより大きくは無いが比較的、綺麗な店だった。
    看板にもベアと書かれている。間違いないだろう。
    もう外は暗くなりだしているが、まだ営業中の札があるだ。

    「おじゃましま〜す。」
    扉を開けて中を見ると客の姿は見えなかった。
    いたのは棚の整理をしているらしい一人の少女。
    少女はこちらを見ると一冊のノートを持って、駆け寄ってきた。
    そして、こちらに来るとノートを開き、こちらに向ける。
    ‘‘いらっしゃいませ。何の御用ですか?’’
    ノートにはそう書かれていた。
    「お姉ちゃん、この子・・・」
    「たぶん、そうね。」
    おそらく、声が出ないのだろう。
    ノートに文字がすでに書いてあったということは
    店番なのかな?
    「えっと、この店の主人に会いたいんだけど。」
    ‘‘少々お待ちください’’
    そうして少女は店の奥へと消えていった。
    少し経つと少女は40代ぐらいの1人の大柄な男を伴って戻ってきた。

    「いったい、なんの・・・」
    途中、私とセリスの顔を見たところで、主人と思わしき男の言葉が止まった。
    そして、
    「エリス・・・」
    私たちに聞こえないほど小さな声でなにか呟いた。
    「すまんな、知り合いに似ていたもので少々驚いた。で何の用だ。」
    男はさっきとは打って変わり親しみのある声で聞いてきた。
    私はカバンに入っている手紙を取り出し、目の前の男に渡す。
    「私はエルリス・ハーネット、こちらは妹のセリスです。
    お父さんの、ラウル・ハーネットの紹介で訪れました」
    「なるほどな。あの二人の子か。」
    手紙を渡し、自己紹介すると、
    目の前の男は楽しそうに破顔していた。
    そして、手紙を開け、眼を通し終えると再び手紙を戻し、
    こちらに向き合った。
    「ラウルから何か聞いてるか?」
    「ベアの店に行けとしか聞いてませんけど?」
    「そうか。ふむ」
    男は少し悩むような素振りをし、
    「手紙にはお前たちに冒険者をやらせると書いてある」
    「ええええ〜〜〜!?」
    これは今まで黙っていたセリスの悲鳴だ。
    私はなんとなく予想していたため悲鳴は上げずにすんだ。
    だが、しかし、予想していても現実になってみると結構ショックだ。

    「自己紹介がまだだったな。
    俺はバート・ベアルス、ベアでいい。
    この子がチェチリア、チェチリア・ミラ・ウィンディスだ」
    ‘‘よろしく’’

    そう言った男、ベアの顔が先ほどお父さんの名前を聞いたときよりも
    さらに楽しそうに見えたのが印象に残った。


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