Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■396 / 11階層)  蒼天の始まり 第6話、B
□投稿者/ マーク -(2006/10/11(Wed) 14:08:31)
    『赤き焔』





    ザワザワザワ
    外が騒がしい。一体なんだろう?

    ガチャッ。キィー、バタンッ!!

    扉の開く音がした。持っている魔道書から眼を外し、入ってきた人物を見る。
    眼を引くのは背にある、大きな羽。そして、太い腕に、鋭利な鉤爪。
    鳥の獣人。何故そんなのがここにいるかは直ぐ見当がついた。
    王国で噂になっているレジスタンスグループ、獣人の『ベヒーモス』、
    魚人の『リヴィアタン』と共に知られている鳥人のレジスタンス、
    『フェニックス』だろう。
    国王はこのような者がいるから獣人は危険だといってるが、順番が逆だ。
    王国が獣人を排他しているから、このようなものが生まれたのだ。
    私は国王の肩を持つ気はない。
    私自身も、王国の方針には否定的だ。
    ディシール王女が亡くなって以来、王の行いは余りにも度が過ぎている。
    だが、この飛空艇は協団の物だ。
    協団の魔術師として見てみぬフリをするわけにはいかない。
    そうこう考えている内に獣人はこちらに歩み寄って来る。
    ・・・仕方が無い。これも、仕事だ。そう割り切ろう。
    腰に差した2丁の愛用の魔操銃を両手に取り、獣人に数発、発砲。
    撃ったのは魔力弾だ。獣人の生命力なら致命傷にはならないだろうが、
    これだけ撃てば、当分戦うのは無理だろう。
    撃たれて怯んだ獣人を魔力で強化した足で蹴り飛ばす。
    獣人は衝撃により扉を破壊しながら外へと吹き飛ばされた。
    壊れた扉を抜けて外を見回すと、獣人は完全に伸びていた。
    が、それよりも気になったのは一部の景色が歪んで見えることだ。
    常人なら分からないだろうが、確かに魔力による揺らぎだ。
    揺らぎのある方向へ魔力弾を撃ちだす。
    すると、突如、3人の女性が姿を出現した。
    いや、二人は私より少し年上といった位で、
    まだ少女と言っても差し支えない年だ。
    ・・・結界か。
    結界魔法は現在、廃れつつある魔法の1つだ。
    習得が困難だったり、必要な魔力が多いこと、行使するのに時間が掛かることが
    理由。
    しかも、最近では魔科学の力によって、術者がいなくても同じ効果を
    生み出すことが出来る。
    いや、むしろ、魔力を通すだけで何度でも行使できる魔科学のほうが便利だ。
    「貴方たちは敵?」
    結界魔法は準備が必要な魔法だ。
    あれだけの結界があった。ということは事前に張っておいたとしか
    考えられなかった。
    それなら、この襲撃を知っていたということになる。が、
    「・・・いや、生憎とテロの助けをする気は無い」
    「・・・でしょうね。いいわ、こいつらは私が片付けるから、また隠れてたら?」
    どうも、この人たちが獣人の協力者とは思えなかった。
    まあ、敵だとしても倒せばいいだけの話だ。
    結界についても、私の銃弾を防いだ際に簡単なものだが一瞬で張っているし、
    少し準備をしていれば出来ないこともない。
    勘のいい人なら、事前に何か起きるというのがわかるものだ。
    かく言う私も面倒なことが起きるだろうとは予想していたが、無視した。
    そんなことで、予定を狂わされるほうが気に入らない。
    っと、物音を聞きつけ、他の獣人たちが集まってきたみたい。
    幸い、ここは行き止まりだから挟み撃ちということは無い。
    後ろの三人が襲ってくるとも考えられないことはないが大丈夫だろう。
    私は愛用の銃を構え直し、甲板の先にいる獣人へと駆けて行った。


    ある程度獣人に近づき、魔力弾を連射する。
    殺傷能力は低いから、何発か当てないと倒すには至らない。
    銃弾をばら撒きながら、魔術の詠唱をする。
    大きな魔術を使えば船にも被害が出る。
    船が落ちようと私は助かる自信があるが、それは不味い。
    仕方なく、攻撃ではなく足止めとして簡易、しかも得意な炎以外の魔術を放ち、
    獣人たちの動きを封じる。
    あまりいい状況じゃないけど、いいハンデだ。

    数匹の獣人を相手にしていると後ろから、ナイフが飛んできて獣人へと刺さった。
    ナイフの一本や二本、獣人には効果は無い。
    が、ナイフが刺さった部位が一瞬にして凍りついた。
    後ろを見ると先ほどの3人の内1人がナイフを構え、直ぐ隣まで歩いて来る。

    「手伝わせてもらおう。焔の申し子よ」
    私の二つ名はそれなりに有名だ。知られていても不思議は無い。
    それにしても、さっきのナイフはおそらく、結界魔法と同じく
    廃れつつあるルーンの魔術だろう。
    「ルーンの魔術に、結界魔法。そういう貴方は『結界王』ね」
    「昔の名だ」
    なるほど。これで、さっきの結界の謎が解けた。
    この人物なら、一瞬であのレベルの結界を張るのは造作も無いだろう。
    その力を持ってしてウロボロスにいるのだから。



    『結界王』と共に十匹以上の獣人を戦闘不能に追い込んだところで数人の部下を
    引き連れ、
    1人の男が現れた。
    「ほう、協団の者が乗っているとは思ったがこれ程とわな」
    「団長!?」
    現れた男に残っていた獣人が声を上げる。
    どうやら、あれがレジスタンスのリーダーのようだ。

    「貴様が、『フェニックス』のリーダーか?」
    「いかにも、俺が『フェニックス』の団長、鳥獣の長ストラスだ。
    貴様らが立ち塞がるというのならば我らが理想のため、容赦はせん!!」
    その言葉と共にお互いに動き出す。

    こちらを走ってくる獣人の長に銃弾を撃ちだす。が、それらはすべてかわされた。
    獣人の身体能力は人より高いが、それだけではかわせない。
    かわせた理由は鳥人の持つ高い動体視力のおかげでもあるだろう。
    「その程度で!!」
    「ちっ!!燃えろ!!」
    『結界王』が投嚇したナイフを弾く。
    けど、あまり意味が無い。
    ナイフが弾かれた際に、当たった部分から火が昇り、燃え移る。
    「なっ!!」
    だが、炎はどこかから取り出した剣により掻き消された。
    「退いて!!」
    嫌な感じがし、両方の銃に溜めてあった魔力を一気に出し切る。逃げ場は無い。
    しかし、それらは剣に弾かれ、あるいは、見えない壁に逸らされ
    獣人には届かなかった。
    神秘は更なる神秘には勝てない。
    そういうことだろう。

    「Sクラス、神話級の武具か。
    おそらく、スィームルグの羽。この場合は剣と言うべきだがな」
    これで生半可な魔術は効かないという事だ。ならば、
    「結界を張って」
    私の最高の魔術を持って打ち勝つしかない。
    「構わんが勝つ気か?」
    「当然よ。何であろうと負けはしないわ」
    自己に潜り、意識を高める。
    「ふっ、おもしろい。
    第8結界、封印結界」
    世界が揺らぎ、閉ざされる。

    詠唱は自分自身に捧げる言葉。
    『ユナ・アレイヤ』という存在、その起源を示すもの。
    「我は赤き焔の化身なり
     我は赤き王の化身なり
     我は赤き竜の化身なり」

    求めしものは
    「世界を焼くつくせし業火の刃よ。その力、我に手に!!」
    炎が集まり、剣を形作る。
    「焼き尽くせ!!レーヴァティンッ!!」

    これが私の最強の魔術の1つ。
    炎の魔力を剣の形に圧縮、固定して撃ちだし、触れたもの全てをその魔力を持って焼き尽くす。
    かの女神スルトが持つ世界を焼き払った炎の剣の名を冠したとっておき。


    撃ち出された炎の剣が獣人へと迫る。獣人はそれを手に持った神剣で受け止め、
    「ヌォォォーーーーー!!!」
    ゴォォォォォーーーー

    ガキンッ!!


    勝負あった。私の勝ちだ。
    獣人の剣がはじかれ、私の前に落ちる。
    「ガハッ」
    獣人はこの魔術を喰らったにしては傷が少なかった。
    おそらく神剣の所為でかなりの力が削られたからだろう。
    それでも、まだ戦える傷でもない。

    「・・・逃げたら?今なら見過ごしてあげるわ」
    「我らに恩を売ってどうする気だ」
    「別にあなた達のためなんかじゃないわ。
    このままじゃ、あなた達の所為で王国内での獣人の立場が更に危険になる。
    それが気に食わないだけよ。
    今ならこの件は学園都市だけで処理できるから」
    「・・・・我々の負けだ。娘、汝の名は?」
    「ユナ・アレイヤよ」
    「覚えておこう」
    「待ちなさい。コレ、大事な物でしょ」
    足元に転がる神剣を獣人へ放り投げる。
    「・・・・・律儀な者だ。礼を言う」
    投げられた神剣を掴み、獣人たちは全員、空へと去っていった。



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