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■404 / 19階層)  蒼天の始まり (第9話)終
□投稿者/ マーク -(2006/10/11(Wed) 14:22:05)
    『出会い』



    ダルイ・・・
    3ヶ月にわたる修行を終え、レムリアを離れた私たちは南の街リディスタにいる。
    運悪く、魔術都市行きの列車は出た後で今日中にはもう出なかったため、
    この街の宿で休むことになった。
    しかし、最近運が悪い気がする。というか間が悪過ぎ。
    修行が終わった開放感からか、大切なこのことを忘れていた。
    しかも、いつもならもっとマシなのに、今回に限ってかなり症状が悪い。
    まあ、たぶん疲労の所為だろう。
    あっ、もう・・駄目・・・・
    「お姉ちゃん!?」
    「エルリス!?」
    ・・・・・・・・・・・・




    「エルはどうしたの?」
    「・・・いつものやつだと思うけど、今月は酷いみたい」
    「いつも?今月?」
    「もしかしてアレか?」
    「下ネタやめい!!」
    ズガッ!!
    「ハイ・・」
    「で、いったいなんなの?」
    「お姉ちゃんの事は聞いてるよね?」
    「ええ、精霊でしょ」
    「うん、今日は満月の日とは逆に魔力が最も減退する新月の日・・・
    精霊はお姉ちゃんの魔力で存在するからか、新月の日は魔力不足になっちゃうの」
    「なら、魔力を渡さなけりゃいいんじゃないのか?」
    「そうもいかないみたい。
    強制的に吸い取られてるからお姉ちゃんの意志じゃどうにもならないの」
    「う〜ん。まあ、つまりただの魔力不足ということ?」
    「うん、そう。でも魔力が極度に不足すると貧血みたいになっちゃうから
    お姉ちゃんいつも辛そうだったの。
    流石にここまでひどかったのは今まで無かったけど」
    「そっか。とりあえず、このままってわけのも行かないし宿まで運びましょ」
    ―そして、私たちはこの光景を見ていた何者かがいたことにそのときは
    気付けなかった。



    「さてと、セリスついてきて」
    「えっ、何処に?」
    「道具屋。魔力不足ならその類の薬があればどうにかなるんじゃない?」
    「あっ!!」
    「・・・気付いてなかったの?」
    「あう〜、ごめんなさい」
    「私に謝ってもしょうがないんだけど。
    で、私は魔法には詳しくないからついて来てくれない」
    「う〜ん、いいけど・・・」
    「安心しろ。エルリスは俺に任せて・・・」
    「あんたは薬草でも探してきなさい!!」
    「信用ね〜な」
    「当然でしょ。むしろ、そのまま朝まで帰って来ないほうがうれしいわ」
    「つまり朝帰りと。まあ、俺はそっちでも構わないが」
    「・・・・付き合いきれない。やっぱり、フィーアがいないと手の負えないわね」
    「えっと、良く分かんないけどお願いできる?」
    「おう、俺に任せとけ!!」
    「・・・単純」
    「あははは、じゃあ行ってくるから。
    ちょっと待っててね。お姉ちゃん」





    ―ムクリッ
    「あれ、ここは?」
    見覚えがない部屋だ。
    とりあえず、自分がどうなったのかは理解できた。
    たぶん、ここはミコトたちが運んでくれた宿だろう。
    きっと心配かけただろうな。
    ・・・私はかなり特殊な存在だ。
    氷の精霊をこの身体に宿し、共存している。
    精霊が宿ったのは2年前。セリスが暴走し、私が大怪我を負った時の事だ。
    セリスはその前後の記憶は無いみたいだが、私はそれでいいと思う。
    だって、思い出せばセリスが傷ついちゃうから。
    ただセリスの暴走、そして精霊が宿った時期が問題。実は魔王の戦いの時だったりする。しかも、街の郊外にお父さんたちのお墓参りに行ったときで結構山の近くまでいたのだ。だからこそ、ミコトから精霊使いの話を聞いたとき、この精霊を宿したのはバルムンクかもしれないと思ったし、セリスの暴走についても何か関係があるかもしれないとも思った。
    故に私はシンクレアに会えばセリスのこともどうにかなるかもしれないと思った。

    ただ、私が精霊を宿してから、今のような魔力不足を除けばあまり不自由は無い。
    私には魔術の才能はほとんどなかったが、おかげで氷の魔術だけなら使えるようになったし、魔術を使うのに私の魔力をほとんど使わずに済んでいる。
    実は、魔術を使う際に使う魔力は精霊が汲み上げる周囲のマナなのだ。
    精霊が私の魔力を必要とするのはわたしの中にいるために必要だからだと思う。
    そう、不自由は無い。
    けれど、この存在は私にとって恐怖なのだ。
    精霊が宿り数日が経ったある日、私は森で野生の魔獣に襲われた。
    そのとき、コイツは目覚めた。
    私が目を覚まして時に残ってたのは私以外、一つの命も存在しない氷の世界。
    それは私から見ても異様な状況だった。
    そして、セリスにはこの時に精霊が宿ったと嘘をついている。
    私はこの存在が恐ろしい。
    なによりも、いつまた自分が自分でなくなるのか、それが一番恐れることだ。
    ―キィィーー
    「誰!?」
    扉を開けて入ってきたのは2人のローブを纏った人物。
    慌てて動こうとしたが、思うように体は動かず、
    さしたる抵抗も出来ずにローブの人物によって私の意識は刈り取られた・・・





    「ただいま・・・」
    「どうしたのセリス」
    先に部屋へと入りベッドを見たままセリスが動かない。
    覗き込むとベッドはもぬけの空で本来、そこにいるはずの人物がいない。
    しかし、あの状態じゃ自力で動いたとは思えない。なら、何故?
    そして、思い至った。あまりにも迂闊過ぎた。
    あんな話をするからには周りの気配を探っておくべきだったのだ!!
    おそらく、先ほどの会話を偶然だろうが盗み聞きされたのだ。
    ならば、攫ったのは・・・
    「あっ、ミコト!?」

    一番可能性の高い目撃者は当然、店の主人だ。
    見ていても、気付かなかったかもしれないが聞くしかない。
    「ねえ!!誰か妙な人物が来なかった?」
    「妙?・・・そういえば、ローブを纏った二人組みが来たような」
    当たりだ。やはり攫ったのは魔術協団の人物。
    協団のローブには見た者に怪しくないと思わせる暗示が掛かっている筈だから
    店主がその時気付かなかったのも仕方ないだろう。
    だが、協団自体がこんな荒っぽい方法を取るはずはない。
    つまり、独自で動いた非公式の集団。なら、
    「この辺りで買い取られた遺跡ってある?」
    魔術師の工房は本来、自らで造る。
    だが、元からある遺跡の方が気付かれにくい物だ。
    だから、非合法の魔科学者の工房はほとんど、遺跡を改造したやつである。
    「ああ、ここから南に3時間も歩けば着く所に崖が見える。
    その内部にある遺跡はたしか、数年前に買い取られたはずだ」
    「ほかは?」
    「ない」
    「ありがと!!」

    「ミコト、どうした!?」
    「エルリスが攫われたわ!!」
    「!?―セリスは?」
    「セリスは無事。攫ったのは協団の者よ。
    工房に目星はついてる」
    「わかった。セリスはどうすんだ」
    「置いていくのは不味いでしょ、あんたが背負って行って」
    「了解!!」
    そういって、クロアが獣の姿に変わる。
    「乗れ、セリス」
    「うん!!ミコトは?」
    「大丈夫よ。シリウスの名を忘れたの?
    ・・・開放、俊」
    あまり使いたくはないが、そうもいってられる状況ではない。
    私の持つ宝刀の力を解放し、身体を『強化』する。
    「行くわよ!!」
    そして、私は風になる。
    宝刀『天狼』に蓄えてきた魔力を開放し、足へと回す。
    この状態なら、私の身体能力は獣人や魔獣を超える。
    「・・・凄い!!」
    「呆けてると振り落とされるぞ。
    しっかり掴まっていろ!!」
    「うっ、うん」
    ケルスがセリスを乗せながら私の横に並ぶ。
    さーて、待ってなさいよ!!











    暗い部屋、石の床、手首の手錠に鉄格子。
    どうみても、監獄という感じだ。
    どうして、こう運が悪いんだろう。
    どうもここ最近、不幸が続いている。
    まあ、せめてもの救いはセリスが一緒に連れて行かれてはいないことと、
    何かされたわけではないことだろう。
    「起きたか」
    声がした方を見ると、いたのは大柄の男だった。
    これが、さっきのローブの人物だということは流石に無いだろう。
    「気の毒だが、こっちも仕事だ。悪く思うなよ」
    「あっそ!!」
    仕事・・・ということは雇われた冒険者か傭兵かな。
    ただ、こっちだって自分の命が掛かってるんだ。
    やられたって文句は無いだろう。
    牢から去ろうとする男に向かって狙いを定める。
    私に魔力は残っていないが、精霊の力で魔術は使える。
    目が覚めたときから構成していた魔術を男に目掛けて放つ。
    が、何も起きない。
    「いい忘れたが、その鎖は魔力封じの品だそうだ。
    魔法は使えんぞ」
    そう言い残して男は牢屋から出て行った。
    良く考えれば、当たり前のことだった。
    もはや、打つ手なし。
    あとは、ミコトたちが助けにきてくれるかどうかだ。
    せめて、助けが来た時に動けるよう体力を温存しよう。
    ほんと、運命の女神さんとやらはよっぽど私が嫌いらしい。



    ―カツッ!カツッ!!
    誰だろう?さっきの男か、ローブの男か・・・
    ―キイィイ
    「ここは・・・牢屋か。何か罪でも犯したのか?」
    「へっ!?」
    部屋に来た男の言葉につい間抜けな返事をしてしまった。
    ・・・暗がりでしっかりとは見えないけど、かなり美形だ。
    紺に近い蒼い髪と対照的な赤い瞳。
    赤と言ってもクロアとは少し色が違うみたい。
    何故だろう何か懐かしい感じがする。
    けど、同時になんだかイライラする。
    「いったい誰?
    あなたこそ、ここで何をしてるの?
    というかここの関係者?」
    「質問は1つにして貰いたいのだが・・・
    とりあえずここの関係者かといったらノーだ。
    そして、俺が誰かといったら、そうだな観察者だ」
    「観察?どういう・・・まあいいや。部外者なら助けてくれない?」
    最早、藁にもすがる気持ちだ。
    何で部外者がいるのかなんて気にしてる余裕は無い。
    重要なのは目の前に助かる可能性があるということだ。
    せめて、この鎖さえなければ何とかなる。
    この男に頼ることになるのはなんか癇に障るがそれも我慢だ。
    「別に構わないが、俺の質問に答えてないぞ」
    「えっと、なんだっけ?」
    ここで機嫌を損ねられたら不味い。
    我慢しなきゃ。
    「罪を犯してここにいるのかと聞いたのだ」
    「ああ、そっか、そうだったわね。
    そんな理由で捕まったわけじゃないわ。
    でも、罪を犯したかといえば犯したと思う」
    少なくともセリスのためとはいえ、騙してきたのは間違いなく罪だろう。
    他にも、いっぱいある。なにより、
    「あいつにあんなこと言っちゃったんだもん」
    それ以来アイツとは会ってない。
    私の責任ではないと思うが私があんなこと言ったのは事実なのだから・・・
    「ククッ」
    「むっ、何笑ってんのよ!!」
    なんかこいつに笑われたのが凄く腹が立つ。
    今まで我慢してきたがこの男に頭を下げて頼み込むのは絶対に嫌だ。
    機嫌を損ねることなんて気にしてられないくらいに。
    「いや、失礼。どうやら、先程の質問は失言だったようだ」
    「そんなことは良いから助けてくれるならこの鎖と鉄格子をどうにかしてよ」
    「やれやれ」
    今だ笑いながら、男が手を振るう。
    ―ガランッガランッガランッ!!
    鉄格子が斬られ石の床に落ちる。
    何時の間に手にしたのかわからないがその手には剣が握られていた。
    全く見えなかった。
    もっとも、ミコトの剣も見えないからどっちが速いかは分からない。
    そして、手に掛かっていた手錠と鎖も斬って貰う。
    身体はまだダルイが、宿の時よりは十分動ける。
    「さて、こんなところさっさと出てしまったほうがいいぞ」
    「そうするわ」
    「なら・・」

    ―ズブシュッ!!

    突如、男の体から剣が生え、口から血を流した。
    そして、その後ろには先ほどの傭兵の男。
    傭兵が剣を引き抜き、大量の血が傷口から流れ出す。
    男は膝をつき、おびただしい量の血を吐く。
    「残念だが、そう簡単には逃がしてやれん」
    私は傭兵を睨みつけることしか出来ない。
    悔しいけど詠唱をしようにも、コイツの剣の方が絶対に早い。
    かといって、素手で戦うなんてあまりにも無謀だ。
    それに、戦う気力なんてあるはずが無い。
    自分の所為で人が死んだ。それはあまりにも重かった。
    「逃げるならもっと早くすれば良かったのに、詰めが甘かったな」
    「お前もな」
    「!?」
    傭兵の肩から腹の辺りまで、一直線に鋭い剣戟が走る。
    「安心しろ。動かなければとりあえず死にはしないだろう」
    「グッ!!きさま、その傷で何故動ける!?」
    信じられないけど、斬ったのは貫かれたはずの男だった。
    しかも、あんな重傷を負ったのにこんなに速く動けるなんて。
    とりあえず、目の前の男が死んでいないことに安堵しつつ、感心する。
    「こんな簡単に死ねるような体のつくりではないからな」
    「っち、クソがっ・・・」
    そして、傭兵は床に倒れこんだ。
    男は平然とし、傷のことなど気にせず・・・いや、良く見れば傷なんて無かった。
    服は血で真っ赤に染まってて分かりづらいがどう考えてもあんな重傷を負ったようには見えない。
    どうなってるんだろ。

    ――ザワザワザワ
    「不味いな。下にバレたらしい」
    「えっ!?」
    それは不味い。早く逃げなきゃ、また牢屋に逆戻りだ。
    「ふう、仕方が無い」
    そういって、溜息をつき、私でも分かるほど強大な魔力が男の手のひらに集まる。
    壁に手をかざし、集めた魔力を壁に叩きつける。
    ―ーズゴンッ!!
    たったの一撃で外壁は崩れ、外から光が差し込む。
    だが、どうもここは遺跡か何かの内部らしく、外は崖になっていた。
    ―さすがに、ここからじゃ出られないわよね。
    「行くぞ」
    「へっ!?」
    突然、抱きかかえられ素っ頓狂な声を上げる。
    「っちょっ、ちょっと待っ」
    「黙ってろ!舌を噛むぞ」
    ―まっ、まさか!?
    嫌な想像というのは当たるらしく、男は崖から勢い良く飛び降りた。
    ―うそでしょ〜〜〜〜〜!!???
    目をつぶって来るであろう衝撃に備える。がそんな私を嘲笑うかのように
    ほとんどなんの衝撃も無く、男は地面に降り立った。
    目を瞑ってたから分かんないが高位魔術である重力制御でも使ったのか、
    言い方が悪いが人外の存在。
    どちらでも、先ほどの傷の治りの速さは説明がつくがそんなこと、今はどうでも良かった。ただ、心臓に悪い・・・というか、いろんな意味でありえない。
    「ここからは1人でも大丈夫か」
    「多分・・・あなたはどうするの?」
    「まだ、後始末があるからそれを済ます」
    「そっか、それじゃ」
    「ああ」


    そして、男が見えなくなった辺りで足を止める。
    さて、ああは言ったもののここはどこだろう?
    とりあえず落ち着いたら、疲れが出てきたし実は結構不味い。
    そういえば、結局お礼言ってなかった気がする。
    いくら、余裕がなかったと言ってもこれは失礼だったかな。
    「・・・リス〜」
    ん?
    「エル〜」
    「お姉ちゃ〜ん」
    あっ、セリスたちだ。探しに来てくれたんだ。
    助かった〜。
    「お姉ちゃん!!」
    「エル!!大丈夫!?」
    「うん、何とか。探しに来てくれたんだよね。ありがと」
    「・・・はあ。なんだ、全然大丈夫じゃない。心配して損したわ」
    「でも、お姉ちゃんが無事でよかった」
    「だな。どうやって脱出したんだ?」
    「助けてもらったの」
    「誰に?」
    「…とりあえず変な人。観察・・・なんだっけ。
    とりあえず、そんな風に名乗ってたけど」
    「もしかして、観察員のことかしら」
    「違うような、そうだったような・・・」
    「もしそうだとすると地獄に仏と言うより、地獄で悪魔に助けられたような物ね」
    「どっ、どういう意味」
    「観察員と言うので1つ心当たりがあるわ。
    これは協団のある組織のことなの」
    「協団の!?」
    「そう。魔道士の非合法、非公式研究所の視察と警戒、取り締まりを行ってる調査組織のことで、独自の判断で殲滅まで許されてるらしいわ」
    「じゃあ、後始末って・・・」
    捕まってた山を見る。別段変わりは無いが中はどうなっているやら。
    なら、魔術師だったのかな。
    「まあ、早いとこ、ここから離れたほうがよさそうね」
    同感。


    「う〜、やっとついた〜」
    「まったく、あんなことがあったのに能天気ね。
    流石に学園都市の外周部なら安全だろうけど、気を付けなさいよ」
    「分かるってるって、もうコレで何度目?」
    「列車の中のを含めたら今日だけで、8回目だよ」
    「でも、実際に起きたことだし、エルリスも身を持って実感してるだろ?」
    「甘いわよ!!大体、こんな風に無事なことの方が奇跡なのよ!!
    もう少し緊張感を持ちなさい!!」
    「はいはい」
    あの事件からミコトはずっとこの調子だ。
    きっとそれだけ心配させてしまったのだから素直に聞いておく。
    でも、8回は流石に――
    「・・・今の」
    チラッとしか見えなかったが、あの顔はこの前の・・・
    「ちょっとゴメン!!」
    「あっ、こら、エルリス!!」


    「あっ、あの!!」
    「ん?」
    「えっと、この前はありがとう」
    「何の話だ?君とは初対面のはずだが」
    「えっ!?覚えてないの、5日前にリディスタで・・・」
    「リディスタ?ああ、王国の南の都市か。
    あいにく、俺は2ヶ月も前から学園都市の外に出ていない。
    何かの間違いではないか?」
    「だって、こんなに・・・」
    そこで、やっと気付いた。
    髪の色があの人より薄い。
    まあ、これは暗かったから見間違えたとも考えられるが瞳の色が明らかに違った。
    だって、あの人は目は赤かったが、目の前の人物の髪と同じ青色。
    つまり――
    「人・・・違い」
    「らしいな。そいつはそんなに俺に似ていたのか」
    「はい・・・髪の色が薄いか濃いかと、瞳の色以外全く同じだったんですけど
    兄弟ですか?」
    「さあ、どうだろうな。俺は記憶喪失と言うやつで家族のことは分からない」
    「!?ごめんなさい・・・」
    「別に謝る必要などないが」
    「記憶・・・戻ると良いですね」
    「ああ、ありがとう。
    そろそろ、連れが痺れを切らしそうだ。
    縁があったらまた合おう」
    「はい!!」



    「エルリス!!勝手にいなくならないでよ。心配したじゃない。
    しかも、あれって教会の人じゃない・・・」
    「えっ!?あれって、教会の人なの!?」
    「ええ。しかも、あの制服。もっとも厄介なクロイツのじゃない。
    まったく、前といい今回といい」
    「クロイツ?」
    「そう。教会の非公式対魔法及び対魔族部隊
    別名『業たる十字架』。教会の中でも最強の実戦部隊よ」
    確かに、それはまた関わり合いたくない相手だ。
    失礼かもしれないけどこれから先、縁は無いほうがいいかも。
    「で、知り合いだったの?」
    「ううん、人違いだった」
    「そう。じゃあ、とっととユナの工房に行くわよ」
    「わかった」









    「クライス。さっきの少女は誰だ?
    もしや、お前にも春が来たか」
    「勘違いするな、ただの人違いだ。
    大体俺にもって、リューフもそんなのいないだろ」
    「それはまた手厳しいな。
    てっきり、そうだと思ったのだがハズレか」
    「・・・・なあ、俺に兄弟はいるのか?」
    「いや、そんな話は聞いたことないぞ?」
    「そうか、ならいい。で、リューフは本当にこちらでよかったのか」
    「・・・ああ、今回の作戦ははっきり言ってただの虐殺だ。俺は納得していない。
    だから、防衛に回る。お前こそ、何でこっちに?」
    「相棒に付き合うのは当然だろ」
    「そうか。まあ、お前がそれで良いって言うなら構わない」



    「ねえ、教会と協団て仲悪いんだよね。どうしてなの?」
    私も両者の仲が悪いという話は聞いた事があるけど、理由は全然知らない。
    ってそういえば、さっきの人がこの前の人と兄弟だとすると記憶喪失の前は
    協団にいたのかな?
    「えーと。確か教会は異端は全て滅ぼすべしとか考えてて、
    魔術師には魔族の力を利用しようとしたりするやつがいるでしょ?
    そういう考えの違いから生まれた画してなんかが原因だし、
    いわゆる魔術師の造るホムンクルスやキメラなんかも原因の1つね」
    ホムンクルスとキメラ。
    どっちも魔術によって生み出される新しい存在のことだ。
    ややこしいことにキメラと混血種、つまりクロアみたいに自然に生まれてきた
    複数の種族の血が流れるものは別物で混血種はキマイラともいう。
    「まあ、ここまで仲が悪くなった理由は宝の取り合いなんだけどね。
    っと、着いたわ。ここよ」
    「これはまた・・・」
    目の前の家は以前の屋敷ほどではないがかなり大きい。
    工房ってこの大きさが普通なのかな。
    「・・・やっぱり、いないわね」
    「つまり、無駄足?」
    列車だけでも結構な額を払ったのに・・・
    「仕方ないでしょ。それに行き先は分かるんだから
    丸っきり、無駄足と言うわけではないわ」
    「でも・・・」
    「お姉ちゃん、抑えて」
    「・・・ゴメンね、セリス。で、どこなの?」
    「ちょっと待ってて。えーと、ああ、アイツだ」
    そういって、屋敷の上に止まっている一匹のカラスを指差す。
    「えーと、『白き牙より赤き竜へ、汝が主の居場所を示さん』」
    すると、カラスが翼を広げて屋根から離れ、庭にある池の淵に止まる。
    そして、その目が不気味に光り、池に地図が浮かび上がる。
    「フォルスね」
    地図の一点、王国の東の果ての街フォルスに当たる位置に赤い点が浮かんでいる。
    ここがユナ・アレイヤの現在地。
    にしても、やっぱり無駄足のようなもんじゃない。
    ああ、どんどんお金が飛んでいく・・・。



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