Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■390 / 5階層)  蒼天の始まり 第5話、@
□投稿者/ マーク -(2006/10/11(Wed) 14:00:29)
    『これから』                                    

    コンコン。

    眠い、全く起きる気になれない。
    どうも数日ぶりのベッドがいけないらしい。

    コンコン!!コンコン!!!

    先ほどまでのドアのノックとは打って変わりノックの音が激しくなった。
    けど、これでもまだ起きる気にはならない

    音が止んだ。またゆっくり寝れる。
    そう思っていたら、ドアが開き、誰かが入ってきた。

    「コケコッコ〜!!!!」

    余りの音にベッドから飛び起きると目の前に鶏を抱きかかえた見慣れぬ少女が
    立っていた。
    とりあえず、状況を整理しよう。起きたばかりの頭を活性化させようと努力する。

    ・・・ああ、そうだ、ここはレムリアの街のベアという店の宿の一室で
    目の前の少女はそこで働くチェチリアだ。
    「おはよう、チェチリア。ごめん、寝過ごした」
    チェチリアは手が塞がってるので、それに笑顔で答えた。
    背筋を伸ばし、もう1つのベッドを向く。
    セリスはあの音をくらった筈なのに何事も無かったかのように眠っている。
    別にセリスは寝起きが悪いわけではないのだが、
    普段から眠りが深く、外界に対する反応が希薄になる。
    まあ、つまり死んだように眠るわけだ。
    たとえ大地震が起きようとおそらく目覚めない。
    チェチリアはそんなセリスを見て困っているようだ。
    ・・・残念だがセリスを起こすのはかなりの労力を必要とする。
    だから、今までの経験上、自分で起きるのを待った方が利口だ。
    部屋の時計を見れば11時過ぎ。
    うん、これならいくら疲れてるといっても、そろそろ起きるだろう。
    そう思っていたら、セリスが何の前触れも無く、起き上がった。
    「・・・おはよう、おねえちゃん」
    ほらね。


    「ふあ〜。おはようございま〜す」
    「ああ、おはよう。て、もう昼前だがな。
    どうやら、ちゃんと眠れたようだな」
    「うん!!」
    未だ欠伸を噛み殺している私と違ってセリスは朝から元気だ。
    さっきまで爆睡してたっていうのに。
    挨拶を済ますと大柄な男、ベアは手に持った書物に再び眼を向けた。
    かなり厚さで、同じような本がテーブルにあと6冊積まれている。
    「何コレ?」
    カウンターに積んであった本を一冊取り、開く。
    ・・・読めない。分かる単語もあるが全体的に、分からない言葉のほうが断然多く、
    内容はさっぱりだ。
    少なくとも現代の標準語では書かれてないことだけはわかる。
    「ふんふん」
    見るとセリスも同じように本を開いていたが
    私とは違い、すらすらとページを捲っていた。
    もしかして、読めるの?
    「ほう、セリスは読めるのか?」
    「うん、一応。コレって魔道書だよね」
    「ああ、魔道書の写本だ」
    写本。というのは分かる。
    昔の魔術師の魔道書はそんなに数が無く、危険なことも書いてあったりする。
    だから、オリジナルの魔道書を一般に出回っても大丈夫な程度の中身だけを写して
    学園都市の者たちが出版したのが写本だ。
    「でも、さっきのは標準語で書かれてなかったけど?」
    「間違って訳されることもあるからな。
    ちゃんとしたやつは原文のまま写されるんだ」
    なるほど。でも、私としては不親切だわ。
    どうせ読まないだろうけど。


    店には客は来ておらず、ベアたちと共に遅い朝食、いや、ベアたちにとっては
    早い昼食をとる。
    食べ終えると、セリスは再び魔道書に向かっていった。
    読めない私は少々手持ち無沙汰だ。
    魔道書ね〜。
    「ねえ、なんでこんなの読んでるの?」
    ベアに聞いたらあから様にバカにしたような呆れたような顔をされた。なぜ?
    「ったく、ラウルに魔法文明時の資料を調べてくれって頼まれたんだ」
    あっ、そういえば、ベアに着いたら聞いとけって言われてたんだっけ。
    忘れてた。
    にしてもセリス、魔道書に集中してて、全然こっちの話聞いてないわね。
    「で何か分かった?」
    「いんや、サッパリだ。
    写本じゃ載ってる内容より写されない内容のほうが多いからな」
    ガクッ、まあ、そんなもんか。写本じゃ無理ってことはオリジナル・・・
    学園都市の中央図書館の物か。・・・遠いな。
    まあ、望みは薄いだろうけど、ほかの事についても駄目もとで聞いておくか。
    「じゃあ、話変わるけど、バルムンクについて知ってる?」
    「そりゃ、多少わな。それがどうした?」
    「実はバルムンクに会いたいんだけど」
    言うとベアの顔が険しくなった。なんかまずいこと言った?
    「なぜだ?・・・会ってどうする気だ?」
    ・・・言うべきだろうか?少なくとも、セリスのことについては知ってるわけだし、
    これからお世話になるんだから、コレについても話して置くべきだろう。
    「実は・・・・」






    「・・・なるほどな」
    とりあえず、私のこと、そして、バルムンクの噂について話したが、
    ベアの顔は険しいままだ。
    「生憎だが、バルムンクについては知らん」
    まあ、そうだろう。
    「が、他のやつなら1人知っている」
    「っ!?ほ、他ってまさかシンクレアの!?」
    「ああ、そうだ」
    共に旅した仲間ならバルムンクについての
    有力な手がかりが掴めるかもしれない。
    駄目もとでもやってみるもんだ。
    「だが、簡単には会わせられん」
    「っ!?・・・どうして?」
    「1つ、お前さんたちでは邪魔になる。アイツはいつも、足手まといになるって
    いって他の奴とパーティーを組みたがらないからな。
    2つ目、本人に口止めされている。
    3つ目はあいつは此処の常連なんだがな、生憎、何時来るか分からん」

    1つ目はそりゃ、確かに私たちでは足手まといになるだろう。
    せめて自分の身は自分で守れるようでなきゃ。
    2つ目、これは仕方がない。何でシンクレアが、素性を隠してるか分からないけど、冒険者の店は情報を取り扱う以上、
    信頼が第一のはずだ、裏切りはご法度だろう。
    3は、意味が違うが確かに簡単には会わせられないだろう。
    不満はあるがこれも仕方ない。
    それに、此処でお世話になってればいずれ会えるということだし。

    「分かったわ。で、どうすればいいの?」
    簡単には、ということは、何か条件つきで会わせるとか
    そういうことのはずだ。
    「とりあえず、腕を磨け。
    そうだな、あいつの欲しがりそうな物でも見つけれれば正式に紹介してやれる。
    仲介ならあいつも文句はいわんだろうしな」
    「曖昧ね・・・まあ、いいや。それで‘‘アイツ’’って誰のこと?」
    シンクレアのメンバーは蒼き空と銀の月、赤き竜、そして、
    「シリウスだ」
    白き牙か、確かシンクレアの中でも後のほうで入った、瞬速の剣士だ。
    「質問は終わりか?」
    「ああ、あと1つ。どっちでもいいことなんだけど、
    この店が眠り亭って呼ばれてたのは何で?」
    「むっ、それか。初めは北の街の店で冬、ベアが熊、冬の熊で冬眠ということ
    だったんだが、最近では暗にこの店の客の出入りが多くないことだな」
    「なるほど。それで眠り亭か。
    でも、やっぱり、繁盛してなかったんだ」
    「むっ、別に客がいないわけでも困ってるわけでもないのが。まあ、いい。
    話は終わりだ。そろそろメシにするからセリスをどうにかしろ」
    「は〜い」
    ちなみにさっきからいないチェチリアがご飯を作っている。
    「セリス、そろそろご飯だって」
    「えっ!?もうそんな時間?」
    もう6時過ぎである。ちょっと早いが客もいないしこんなもんだろう。
    にしても、客がいないわけでないって言ったけどぜんぜん来てないじゃない。
    本当に大丈夫なの?
    「それにしても、わざわざセリスの発作について調べてたのに、
    話し聞いてないんだもの」
    あからさまに起こってるという顔をする。
    調べたのは私じゃなくてベアだけど。
    「あう〜、ごめんなさい」
    「冗談よ。それじゃご飯に・・・」
    ご飯?アレ?何か忘れてるような??
    「ねえ、セリス・・・ケルスは?」
    「あっ、そっ、そういえば・・・」
    確か店に入れるのは不味いかな、と思って、
    昨日の夜から店の外で待たせたままのはずだ。
    そうすると、丸1日ご飯を食べてない計算だ。
    「どうする?」
    「はっ、早く、何か食べるものを持ってって上げないと」
    「じゃあ、ベアにケルスをどうすればいいか聞いてみるわ」
    「うん、ありがと」



    「犬?別に構わんぞ」
    「いいんですか!?」
    「ああ、よくチェチリアが子犬やら子猫やら子馬やら、とにかく
    いろいろと拾って来てな。いまさら一匹や二匹増えても気にせん」
    頼んどいてなんだけど、店に動物置いていいの?
    ってゆーか、馬!?しかも、一匹や二匹っていったいどれぐらい飼ってるんだろ?
    あっ、まさか朝の鶏も!?


    ちなみはケルスは腹が空いてグッタリしていた。
    どうも、私がここで待ってろといったのを
    律儀に守ってたらしい。ゴメン


    「それで、私たちは具体的に何をすればいいの?」
    ベアに聞き忘れていた。というより、セリスが話を聞いてなかったから
    聞かなかったことだ。
    「冒険者のことか?」
    「ええ」
    これから冒険者をやれなんていわれても
    いったい、どうすれば良いかなんて分からないと思う。
    「まっ、とりあえず、力試しだな。
    まずはそっからだ。そうだな、ルスランたちと遺跡にでも潜らせるか」
    「遺跡?」
    「ああ、もっとも、殆んどは昔の魔術師の工房だがな」
    「ふ〜ん、じゃあ、ルスランってのは誰なの?」
    「此処の常連の冒険者だ。腕は立つし、害は・・・ない。
    ・・・・はずだ。・・・・・多分」
    「何でそんなに不安げなのよ」
    「まっ、まあ、とりあえず3日も経てば会えるだろう。
    それより、今日は満月だがセリスは大丈夫か?」
    「うん、大丈夫そうだよ」
    「そうか。それと、魔道書に興味を持ってたな。借りてって良いぞ」
    「ありがと!!」
    ははは、私には関係ない話ね。
    「安心しろ。ちゃんと、標準語のやつもあるからな。お前もちょっとは勉強しとけ」
    「・・・・・・アリガト」

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