Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■395 / 10階層)  蒼天の始まり 第6話、A
□投稿者/ マーク -(2006/10/11(Wed) 14:07:16)
    『飛空艇』



    目の前にあるのは巨大な鉄の乗り物。
    空を飛び、世界を巡る魔科学の産物、飛空艇だ。
    街を出て様々な物を見たがこれもまた、『凄い』としか言いようが無い。
    スノウから出た私たちはこの言葉ばかり言ってる気がする。
    それぐらい、世界は広く、知らないことに満ち溢れている。
    私たちがほんとうに小さな世界の中で生きていたのがあらためて分かった。


    「搭乗券はお持ちですか?」
    「搭乗券は無いけど、これなら」
    そういって先生が銀時計を見せる。
    「・・・かしこまりました。そちらの2人は?」
    「連れよ、構わないかしら?」
    「ええ、客室へご案内します」
    先生の話によると、魔科学によって生み出されたこれらの乗り物は
    魔術協団の管轄にあるため、
    銀時計の保持者は無料で利用できる特典があるらしい。
    しかも、弟子などを取ってる人もいるから、一緒にいる人も無料で
    利用できるのだそうだ。
    ここ、南の街リディスタに来るのにも列車を利用したが、それもタダだった。


    案内された部屋に入り、イスに腰を落とす。
    セリスも同じく、イスに座り、先生はべッドに腰を下ろした。
    「エルリス、魔道書持ってきてるわよね。見せてくれないかしら」
    「はい、どうぞ」
    アーカイバから何冊か取り出し机の置く。
    「・・・これだけ?」
    「いえ、まだ、だいぶありますけど?」
    「じゃあ、悪いけど全部出して」
    言われたとおり本をすべて取り出し、机の上に重ねる
    先生はそれらの本の題名を調べ、一冊だけ手に取った。
    「他のは、しまっていいわ」
    「それだけでいいですか?」
    わざわざ全部出したのに・・・
    「いくらなんでも2冊同時には読めないわ」
    ・・・とりあえず、私は読めないからセリスのために2冊だけ残して、
    あとはしまった。
    暇だな。何もすることがないや。
    「暇なら景色でも見てきたら?
    なかなか凄い物よ」
    ふ〜ん、行ってみるか。


    「うわ〜」
    飛空艇から見た地上の景色は想像以上だった。
    地上の物がとても小さく。それでいて、果てが見えない。
    こんな景色、見る機会は滅多に無いだろう。
    ふと、店に置いてきたペットとその世話をしているだろう1人の少女を
    思い出した。
    ケルスは列車や飛空艇に乗せる訳には行かなかったから置いてきて、
    チェチリアの方ベアは連れてかせるつもりだったらしいが
    本人が頑なに行こうとしなかった為、店で待っている。
    たぶん、動物たちを置いていけなかったのだろう。


    この先にある学園都市は魔術協団の本部がある場所だ。
    中央図書館があるとはいえ、実はあまり行きたくない場所でもある。
    理由はセリスの魔力が狙われるかもしれないから。
    でも、最近分かったことだが、実は魔力が高すぎる所為で、
    逆にはっきりと知覚できないらしい。
    魔法を使えば流石にバレてしまうが、常人の魔力量では高すぎる魔力に
    感覚が麻痺してしまい、ただ『大きい』ということだけしか知覚できないそうだ。
    その証拠にアウラさんも最初は気付かず、セリスが魔術を使ってやっと
    その魔力の異常さに気付いたほどだ。無論、アウラさんは秘密にして貰っている。
    それに、街を歩いてたときや列車に乗ったときもそれらしい人は見つけたが
    誰も気付いてはいない。
    ただ、発作の日って収まりきらない魔力が溢れ出す日だから、常に魔術を
    放ってるような物だし、気付かれる可能性は高い。
    幸い、先生の予定では1週間くらいで帰るらしいから発作は大丈夫のはずだ。
    あと、魔力殺しの道具が有ったから付けているが、これはハッキリ言って
    気休め程度。
    まあ、一発でばれない限りは大丈夫だと思う。
    それでも、絶対ではないからあまり出歩かないようにしよう。



    「お姉ちゃん」
    「あれ、セリス。どうしたの?」
    「私も見に来たの。
    うわ〜。全然、果てが見えないや。凄いね〜」
    「そうね、私たちの知らないことがいっぱいで驚いてばかりだわ」
    「うん、レムリアに来たときは凄いおっきいと思ったけど、
    世界ってまだまだ、こんなにも広かったんだね」
    「全くね」
    チェチリアにも見せてあげたいな。
    「でも、ちょっと残念かな」
    「なにが?」
    「前にミコトから聞いた海の話。やっぱり、見えないんだよね〜」
    そうか、王国エインフィリアは四国の中で唯一海に面していない国なんだ。
    見ようと思ったら、他の国行かなくては見ることは出来ない。
    ・・・・海か。
    「・・・いつか、見にいこうか。一緒に旅行にいって、泳いだりして」
    「うん、そうだね。いつか・・・絶対行こうね」
    「ええ!!」
    そのために、頑張らなくちゃ。


    「お〜い、そろそろ昼食にするわよ」
    「あっ、先生だ」
    「どう、飛空艇は?」
    「もう、凄いとしか言いようがありません」
    「そりゃよかった。じゃあ、食堂にでも・・・・・」
    「どうしました?」
    「・・・・・・何か来る」
    先生の睨みつけている方角を見ると黒い点がチラホラと空に見えた。
    「鳥?」
    にしては、妙だ。
    大体、この季節にあんな大勢が飛んでるのはおかしい。
    近づくにつれ、点だった物の輪郭が見えてくる。
    ちがう、鳥じゃない!!

    「「「ウォォォーーーーーー!!!」」」

    「獣人!?」
    「静かにしなさい」
    先生は腰につけていたナイフを両手に取り、私たちの囲むように
    一定間隔で床に射した。
    「第七結界、‘‘幻影結界’’」
    「なっ、なにを?」
    「シッ!黙ってなさい!!」
    船へと突っ込んできた何十匹もの獣人の中の一匹がこちらを向く。
    が、まるで見えていないかのように私たちを素通りしていった。
    見えていないかのよう。ではなく、見えていないのだ。
    それが先生が張った結界の効果だろう。まさか、一瞬でこんなこと出来るなんて。
    だが、通り過ぎた獣人の一匹は辺りを散策し、直ぐ近くの客室に入っていった。
    「先生」
    「・・・・・・駄目よ。これを解いたら、直ぐにでも襲ってくるわ。
    二人を危険にさらすわけにも行かない。それに、いくらなんでも無謀だわ」
    「そんな!?」
    「せめてもう1人いれば・・・・」

    ドッォォーーーン

    「ギァァーーーー」
    とてつもない轟音と悲鳴と共に先ほど入っていった獣人が部屋から
    扉を壊しながら吹っ飛んできた。
    続いて、壊れた扉から赤い髪の少女が出て来る。
    少女は見えないはずの私たちの方を見ると手に持った銃を向け、引き金を絞った。
    「っ!?第二結界、‘‘甲盾結界’’」
    先生の作った2つ目の結界により見えない銃弾は弾かれた。
    が、さっき張った結界は消えたらしく、少女は鋭い目で私たちを、
    先生を見ている。
    「貴方たちは敵?」
    「・・・いや、生憎とテロの助けをする気は無い」
    「・・・でしょうね。いいわ、こいつらは私が片付けるから、また隠れてたら?」
    そういって、少女は両手に銃を構え、未だ獣人のいる甲板を駆けていった。
    「・・・今のは」
    「知ってるんですか?」
    「本人には会ったことは無いけど赤い髪と瞳、そしてあの2丁拳銃、
    おそらく、焔の申し子、ユナ・アレイヤ」
    アレがあのユナ・アレイヤ・・・。
    確か14,5歳でウロボロスに入った天才魔道士で、その若さで焔の魔術を
    全て極め、赤き女神、爆炎の魔女、焔の申し子とも言われる。
    「とすると、まいったわ」
    「どうかしたんですか」
    「いるのがバレてしまったわ。
    ちゃんと仕事をしないと協団でまた何か言われることになるのよ」
    「って、そんなことですか!?」
    「いや、結構深刻なことなのよ。
    まあ、いいわ。これなら何とかなるし。
    運が悪いわね。ウロボロスを二人も相手にすることになるなんて」
    先生はその長い髪を紐でまとめ、左手の指の間にナイフを3本、
    右手に短剣を構える。
    「先生?」
    「あそこまで言われたら黙ってられないでしょ!!」
    そういって、先生は先ほどの少女『ユナ・アレイヤ』の向かった先へと同じように
    駆けていった。
    私たちはどうしよう・・・?

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