Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■401 / 16階層)  蒼天の始まり 第7話、B
□投稿者/ マーク -(2006/10/11(Wed) 14:16:45)
    『白き牙』






    ―キィー、ガチャン!!
    「おお、早かったな。ってなんか機嫌が悪いな」
    「別に、ちょっと薄情な友達がいてね」
    「??よく分からんがちゃんと渡してくれたんだろうな」
    「当たり前でしょ。ハイッ、これ」
    「ああ、ありがとう。報酬は」
    「良いわよそんなの。ただのついでだし。
    それよりなんかいい仕事無い?
    ちょっとムシャクシャしてるのよ」
    「あいかわらず、物騒なやつだな。
    とりあえずお勧めはこの街に範囲を広げつつあるはぐれの吸血鬼。
    最近、犠牲者が増えてついに賞金首になった」
    「ああ、前から言われてたやつね。
    ちょうど良いわ3日もあれば片付くから。
    その後は当分、こっちにいるから」
    「気をつけろよ」



    「あれ、こんな時間にどうしたの?」
    「ああ、常連が来てな。ちょっと仕事を紹介してやったんだ」
    「常連ってルスランたち?」
    「いや、別のやつだ」
    他の人・・・
    「そしかして、シリウス?」
    「さあ、どうだろうな。
    それより、アーカイバが届いたからとっとと契約して開けてくれ」
    「あっ、ありがと。そっか、刻印つけなきゃ開かないんだよね」
    「そうだ」
    契約を終え、入っている中身を全て取り出してベアに渡す。
    ページはほとんど埋まっていて、全て出すだけで一苦労だ。
    そういえば、私が契約しちゃったけど良いよね。
    ・・・セリスが怒るかな。
    「こいつは・・・・バースト80、セイクリッド40発と
    いったところか。通常弾もかなりあるな。
    なんというか、運はいいが、間は悪いな」
    「それって銃弾だよね?そんなに珍しいの?」
    「ああ、特別な種類の銃弾で、アーティファクトといってもいい。
    しかし、こんなに早く見つけるとわな。
    まあ、運も実力のうちと言うしいいだろう、約束は約束だ。
    シリウスに会わせてやる」
    「えっ、本当!?」
    「嘘は言わん」
    嘘!?こんなに早く合えるなんて。
    つまり、これってそれほど、珍しいものなんだ。
    「とはいえ、アイツが来るのは数日後だな。
    それまでおとなしくしてろ」
    「分かったわ」
    楽しみだわ。どんな人だろう?





    ベアにシリウスを紹介して貰えると決まってから数日が経ち、
    私とセリスは本職(といってもまだ新米だが)であるはずの冒険者仕事をせず、
    チェチリアと共にベアの手伝いをしている。
    理由は私たちがいない間に来て、行き違いになるのは御免だし、
    なによりも、そんなことになったらシリウスに失礼だ。


    ―シリウス
    白き牙といわれる俊足の剣士、
    他の三人、蒼き空バルムンク、銀の月アルテ、赤き竜サラたちと
    同様に名前以外知られていない謎の英雄。
    白き牙というのも、そのあまりの速さに白い影としか映らず、
    抜かれた剣の煌きから、白き狼の牙と言われたらしい。
    というのも、まともに見たのは王城の一部の騎士と女王ディシール様と
    その娘の第一王女リリカルテ様のみだからそれほど詳しくは伝わっていないのだ。
    もはや、シンクレアは生きた伝説といってもいいだろう。
    そんな人物に会えるなんてほんと、夢のようだわ。


    「お姉ちゃん、早く帰らないと日が暮れちゃうんだけど」
    「えっ!?あっ、ゴメン」
    いけない、ベアに頼まれた買出しの帰りなんだった。
    しかも、もう日が暮れる間際だし、早く帰らなきゃ。
    「・・・なにあれ?」
    「えっ!?」
    沈みかけつつある太陽と反対側の空から、近づいてくる黒い影。
    「獣人かな?」
    「どうだろ・・・でも、いやな予感がするわね」
    黒い影が大きくなり、真っ直ぐ私たちの方へ進んでくる。
    念のため、アーカイバから剣を取り出す。こういうときアーカイバは凄く便利だ。
    影の形が判別出来るほど近づいてくるとそれは人の姿をした何かだと確認できた。
    だが、何か違う気もする。
    そうこう考えている内に影が勢い良く降りてきた。
    降りてきた影はわたし達の周りにいた1人の女性に襲い掛る。
    私は慌てて影に切りかかるが、黒い翼を広げて、再び空へと飛び上がって
    避けられた。
    襲われた女性を見ると血の気は無かったが、どうやら気を失っているだけだった。
    だが、眼を引くのは首筋から流れる血と噛まれた痕。
    つまりコイツは獣人なんかではなく、
    「吸血鬼!?」
    セリスが驚き、身構える。
    吸血鬼は、魔族の亜種だ。
    獣人以上の生命力と、人を超える魔力、魔族同様永遠に近い寿命を持ち、
    人を狩り血を欲する。それが吸血鬼という存在だ。
    しかし、この吸血鬼はボロボロだった。
    勝てるかどうかは分からないが、放っては置けないし、
    傷ついている今なら私でも、何とかなるかもしれない。
    剣を構え、いつ降りてきても対応できるようにする。
    だが、吸血鬼は降りてこず、あまつさえ魔術の詠唱を始めた。
    慌てて詠唱の邪魔をするべく氷を打ち出すが、届かずに地に落ちてしまう。
    いまから、大きな魔術を詠唱しようと相手のほうが先に完成する。
    しかも、私もセリスも飛んでいる敵に対する有効な手立ては無い。万事休すだ。
    目に見えて、吸血鬼の魔力が高まり、詠唱が完成しようとしたところで
    突如、吸血鬼の翼が消えた。いや、斬られたのだ。
    飛ぶ術を失った吸血鬼は、自然の法則に従い、地に落ちる。
    地面に叩きつけられた吸血鬼が顔を上げ、
    「鬼ごっこもここまでね」
    ―ザシュッ!!
    翼を斬ったと思われる人物に躊躇無く剣を突き刺され、灰となり消滅した。
    「ふぅ、取り逃がすなんて腕が鈍ってきたかしらね「ミコトだ〜〜!!」って、ええっ!?」
    セリスがその人物に勢い良く抱きつく。
    「セリス!?、にエルリス」
    そう、吸血鬼を倒したのは紛れも無く。
    私とセリスの親友である、ミヤセ・ミコト、その人だった。
    ・・・・わたしはついで?
    「ミコト・・・・どうしてこんなところに?」
    「それはこっちのセリフよ。一体なにしてんのよ、あんたたちは」
    「えっ!?一応、冒険者だけど」
    「そうじゃなくて、何であたしに何も言わずに出てったのかってことよ!!」
    「むう、だってミコトいなかったんだもん!!」
    「うっ、でも、挨拶も無いのは問題でしょ」
    「いや、だって早めに出なきゃいけなかったし」
    ・・・実際はスノウを出て少しして思い出したんだけど。
    わたしって結構薄情なのかな?
    「それでも、せめて置き手紙くらい・・・まあ、いいわ。
    どうせ会えたんだし、今回のことは許してあげる」
    「ありがと。そうだ、さっきの女性」
    「もしかして噛まれたの?」
    「・・・うん」
    私たちがもっと早く動ければこんなことには・・・
    「どれどれ・・・なんだ。ほとんど血も吸われてないし、大丈夫よ」
    「でも、噛まれたら、吸血鬼になるんじゃ」
    「それも大丈夫みたい。吸血って力を注いで自らの手下を作るためか、
    力を得るための手段だから、絶対になるわけじゃないの。
    私に追われてたから、ただの『食事』だったみたい」
    「そっか、じゃあ、大丈夫なんだね。良かった」
    「ところで二人とも宿は?」
    「ベアっていう冒険者の店でお世話になってるの」
    「ベアって、あのイカツイ熊みたいな店長の?」
    「うん、そうだけど」
    ボソッ
    「なんだ、ベアが言ってた新入りって、エルたちのことなんだ」
    「何か言った?」
    「ううん、なんでもないわ。私もベアには用があるし、一緒に行く?」
    「そうね」



    「にしても、二人とも妙にうれしそうね?」
    ベアは遅過ぎる私たちに痺れを切らし、探しにいったらしい。
    が、すれ違いになるのもゴメンなので、チェチリアの料理を食べながら久しぶりに
    三人で雑談に没頭している。
    にしても、やっぱり顔に出ちゃうかな?
    無論ミコトに会えたのもうれしいんだけど、
    「実はね、ベアにシリウスに会わしてもらえることになってるんだよ。
    ミコトも紹介して上げよっか?」
    「ブッ!!ゴホッ!!ゴホッ!?」
    ミコトはセリスの答えた言葉に驚き、口に含んでいた水を吹き出しかけた。
    「ちょっ!!ミコト!?」
    「ゴホッ!!ゴッ、ゴメン、ちょっと用を思い出した。じゃあ」
    「あっ、ミコト、お金!?」
    ドンッ!!
    「キャッ!!」
    「おいおい、王国の英雄ともあろうものが食い逃げか?」
    「ィッタ!!ってベア、あんた私を売ったわね!!」
    「売ったとは人聞きが悪いな。ただの仲介だぞ」
    「王国の英雄・・・って、えっ?ええっ!?」
    まっ、まさか!??
    「同じことじゃない!!第一、なんでこっちの方の名前出すのよ!!」
    「まあ、いいじゃねえか。どうやら知り合いだったみたいだし。
    こいつら、頼まれてた品を見つけてきたんだぞ。
    エルリス、もう分かったかもしれないがこいつが」
    「はははは、まっ、まさか」
    だってそんな!?行く何でも有り得な・・・
    「はあ、もういい。そうよ、私がシンクレアの白き牙、シリウスよ」
    うそ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!??
    硬直。私もセリスも凍りついた様に固まった。
    なんとか、意識を戻し、
    「私の憧れを返せ〜〜〜!!」
    「何の話よ!?」
    結局その後の記憶は無い。
    ベアの話によるとセリスと共に酒に逃避して潰れたらしい。
    なんかとんでもない一日だった。
    私の夢を、理想を、憧れを返せ〜!!!





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